すれ違いがちなヒカルくんは愛され過ぎてる

蓮恭

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47. 相川の事を話してくれてホッとする回

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 そう言って賢太郎は俺の手を握った。プライベートビーチにはまだわりかし人が居て、男同士の俺たちが手を繋いでいるのを偶然遠くで見ている人もいる。

「俺はきっと、いつまで経っても賢太郎には敵わないよ」
「俺はずっと、ヒカルに頼られたいし守りたいから敵わなくていいんだよ」

 一度強くギュッと握ってから手を離す賢太郎は、沖の方へと視線を向けた。自分もつられてそちらを見ると、海にポッカリと浮かぶ島や遠くに見えるボート、まだ泳いでいる人たちが、夏特有のまだ明るい太陽に照らされている。

「早く陽が沈めばいいのに……」

 ボソッと呟いた賢太郎の言葉はどういう意味だったのか、俺はおかしな想像をしたせいで急に騒がしくなった胸の鼓動を抑えるのに必死だった。さっきまですぐ近くでザザサッと波音がしていたのに、今は自分の動悸の方がよほどうるさい。

(実は夕焼けをみたいとか、星空を見たいとかそういう意味かも知れないじゃないか)

 このキャンプが決まってからというもの、実は今日の夜の為に自分なりに準備してきた身としては、それの事では無いのかとすぐに考えてしまう。だって賢太郎だってもっと俺に触れたいって言ったんだから。

(やるのか……、とうとうやるのか。いや、怖くない……怖くないぞ。相手は賢太郎だ)

「……ル、ヒカル!」

 遠くの方から俺を呼ぶ声がした。あんまり考え過ぎてボーっとし過ぎてたみたいだ。賢太郎がいぶかしげな顔をしてこちらを見ている。

「ご、ごめん! ボーっとしてた!」
「疲れたのか? そろそろテントに帰るか」
「うん、そうしようか」

 いつのまにか随分遠くまで歩いてきていたから、戻った頃にはちょうど夕飯用のアヒージョを作ることになった。
 アウトドア用の調理器具がこんなにたくさんある事も最近になって知ったけど、それが全部家にあるなんてやっぱり賢太郎の家はアウトドアが好きなんだろう。

「アウトドアでアヒージョって、すげぇおしゃれじゃないか?」
「割と簡単だからな。昼はカレーだったし、夜は米以外を食べてもいいかなぁって」
「家族で行く時もしてるのか? こういうの」
「とにかく父親がこういうの好きなんだよ。前に悠也と行った時も……」

 そう言って賢太郎は言葉を切った。その目線はどこか寂しそうにも見えたから、俺から声を掛けてしまう。

「相川と、何かあったのか?」
「いや、まぁ……」
「何があったんだよ? 話せよ」

 珍しく歯切れの悪い賢太郎の口調に、俺は何故か問い詰めるようにしてしまう。賢太郎からあの終業式の日の廊下での出来事を話してくれるかどうか、試しているようで居心地が悪い。

「高校に入学する時、悠也は俺と一緒の部活に入るって言ってて。俺は『自分がしたいと思う部活に入れよ』って言ったんだけど、結局同じ山岳部で……」
「うん、それで?」
「アイツは昔から俺の真似をする事が多かったから、多分山岳部に入ったんだと思うけど。俺はヒカルと一緒に居たいからって理由で選んだ部活だったからヒカルと一緒に退部しただろ?」
「……そうだね」

 話してくれるんだ、そう思うとホッとした自分がいて、なんだかそれがひどく浅ましくも思えた。知ってるくせに、賢太郎の口から説明して欲しいなんて、意地悪じゃないかと思う。

「それが悠也は気に食わなかったみたいでさ。俺に、『山岳部に戻れ』って言ってきたんだよ。アイツはヒカルとの事知らないから」
「……そうなんだ。知らないんだ」
「昔、アイツが俺んちに遊びに来た時に保育園の頃の写真立てを見られて、小さい頃のヒカルの話はしたぞ。だけどそれがお前だって多分分かってないと思う。別に言ってもないし」

(……ん? 保育園の頃の写真立て?)

「保育園の頃の……、写真立て? 何だそれ?」
「いや、まぁほら作ってただろ! 木の枠で周りに乾燥したマカロニとか毛糸とか貼り付けてさ!」
「ああ! なんか色塗って飾り付けて……。作ったな! それに保育園で撮った写真を入れて!」

 確かに保育園で写真立てを作って、そこに普段の生活で撮った写真を入れて飾っていた時があった。俺はサツマイモを掘って、それを賢太郎に見せてる写真を入れていた気がする。

「俺は……、ヒカルと二人で七夕の飾り付けの下で撮った写真だったから」
「あーっ! そんなのあった気がする! え、それをまだ持ってて……」
「そうだよ、悪いかよ。それを部屋に置いてたからよく遊びに来てた悠也に揶揄われてたんだよ」

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