王妃 ジョア~日本人水島朔が王妃と呼ばれるまでの物語 ~

ぺんぎん

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水島朔の話 十六歳

水島朔の話 ~専属契約~

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 ジョンは仕事以外では、寡黙で情が深く、理性的な人だった。

 パウルは彼をよく理解しており、時折、ひどく言い争ったが、日々の食卓には静かで豊かな愛情がつねに横たわっていた。

 三人で食事を重ねるたび、わたしの心は落ち着きと余裕を取り戻し、減りすぎていた体重も徐々に戻っていった。
 
 最初のステージが次のステージを呼び、まるで示し合わせたように、わたしは他のブランドのステージモデルにも選ばれた。
 
 モデルのかたわら、わたしは毎日、二人に料理を作り、お弁当を持たせた。
 
 はじめてのパリコレクションが終わっても、モデルの仕事は尽きなかった。

 日本とパリ。ニューヨーク、ロンドン。

 ジョンのステージには、どこへでも呼ばれた。

 コレクション中はジョンとパウルのために食事を作り、宣伝のためのパーティーには、ジョワのモデルとして出席した。

 二シーズン目に入ろうという時、他のブランドモデルの仕事が舞い込み、彼らの食事の支度ができなくなった。

 パウルは、すぐさまパリのクローディアと日本の中川社長に連絡をとった。

 朔は、ジョワの仕事に専念できるようしてほしい。

 電話口でクローディアは狂喜した。

 ブランドモデルの、専属契約。
 
 みたことのないゼロが並ぶ契約金と、医師になりたいというわたしの夢を、最大限応援してくれる契約内容だった。

 さすがに料理のことは契約書には書いていなかったが、それコミであることは、二人のニヤニヤ顔で察しがついた。





 契約はフランスで行われた。

 中川社長も吉田弁護士を連れて、意気揚々とパリ入りをした。

 クローディアは中川社長に会うなり、ひどく怒鳴っていたが、吉田弁護士が笑いながら「気にするな」と言った。

 ミカエルという天使の名の、いかめしい顔をしたジョワの顧問弁護士と、中川社長の吉田弁護士に挟まれて、ジョーとパウルとわたしの三人は、笑いをかみ殺しながら分厚い契約書に何枚もサインをした。





 コレクション中、二十四時間ジョーとパウルと一緒にいることは、メリットの方が多かった。

 ビジネス絡みの様々なパーティも、未成年であることを理由に、九時に帰ることを許された。

 わたしは九時までは、政財界の重鎮やマスコミを相手にし、それ以降の時間は、数学と物理を相手にした。
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