59 / 86
水島朔の話 十六歳
水島朔の話 ~専属契約~
しおりを挟む
ジョンは仕事以外では、寡黙で情が深く、理性的な人だった。
パウルは彼をよく理解しており、時折、ひどく言い争ったが、日々の食卓には静かで豊かな愛情がつねに横たわっていた。
三人で食事を重ねるたび、わたしの心は落ち着きと余裕を取り戻し、減りすぎていた体重も徐々に戻っていった。
最初のステージが次のステージを呼び、まるで示し合わせたように、わたしは他のブランドのステージモデルにも選ばれた。
モデルのかたわら、わたしは毎日、二人に料理を作り、お弁当を持たせた。
はじめてのパリコレクションが終わっても、モデルの仕事は尽きなかった。
日本とパリ。ニューヨーク、ロンドン。
ジョンのステージには、どこへでも呼ばれた。
コレクション中はジョンとパウルのために食事を作り、宣伝のためのパーティーには、ジョワのモデルとして出席した。
二シーズン目に入ろうという時、他のブランドモデルの仕事が舞い込み、彼らの食事の支度ができなくなった。
パウルは、すぐさまパリのクローディアと日本の中川社長に連絡をとった。
朔は、ジョワの仕事に専念できるようしてほしい。
電話口でクローディアは狂喜した。
ブランドモデルの、専属契約。
みたことのないゼロが並ぶ契約金と、医師になりたいというわたしの夢を、最大限応援してくれる契約内容だった。
さすがに料理のことは契約書には書いていなかったが、それコミであることは、二人のニヤニヤ顔で察しがついた。
契約はフランスで行われた。
中川社長も吉田弁護士を連れて、意気揚々とパリ入りをした。
クローディアは中川社長に会うなり、ひどく怒鳴っていたが、吉田弁護士が笑いながら「気にするな」と言った。
ミカエルという天使の名の、いかめしい顔をしたジョワの顧問弁護士と、中川社長の吉田弁護士に挟まれて、ジョーとパウルとわたしの三人は、笑いをかみ殺しながら分厚い契約書に何枚もサインをした。
コレクション中、二十四時間ジョーとパウルと一緒にいることは、メリットの方が多かった。
ビジネス絡みの様々なパーティも、未成年であることを理由に、九時に帰ることを許された。
わたしは九時までは、政財界の重鎮やマスコミを相手にし、それ以降の時間は、数学と物理を相手にした。
パウルは彼をよく理解しており、時折、ひどく言い争ったが、日々の食卓には静かで豊かな愛情がつねに横たわっていた。
三人で食事を重ねるたび、わたしの心は落ち着きと余裕を取り戻し、減りすぎていた体重も徐々に戻っていった。
最初のステージが次のステージを呼び、まるで示し合わせたように、わたしは他のブランドのステージモデルにも選ばれた。
モデルのかたわら、わたしは毎日、二人に料理を作り、お弁当を持たせた。
はじめてのパリコレクションが終わっても、モデルの仕事は尽きなかった。
日本とパリ。ニューヨーク、ロンドン。
ジョンのステージには、どこへでも呼ばれた。
コレクション中はジョンとパウルのために食事を作り、宣伝のためのパーティーには、ジョワのモデルとして出席した。
二シーズン目に入ろうという時、他のブランドモデルの仕事が舞い込み、彼らの食事の支度ができなくなった。
パウルは、すぐさまパリのクローディアと日本の中川社長に連絡をとった。
朔は、ジョワの仕事に専念できるようしてほしい。
電話口でクローディアは狂喜した。
ブランドモデルの、専属契約。
みたことのないゼロが並ぶ契約金と、医師になりたいというわたしの夢を、最大限応援してくれる契約内容だった。
さすがに料理のことは契約書には書いていなかったが、それコミであることは、二人のニヤニヤ顔で察しがついた。
契約はフランスで行われた。
中川社長も吉田弁護士を連れて、意気揚々とパリ入りをした。
クローディアは中川社長に会うなり、ひどく怒鳴っていたが、吉田弁護士が笑いながら「気にするな」と言った。
ミカエルという天使の名の、いかめしい顔をしたジョワの顧問弁護士と、中川社長の吉田弁護士に挟まれて、ジョーとパウルとわたしの三人は、笑いをかみ殺しながら分厚い契約書に何枚もサインをした。
コレクション中、二十四時間ジョーとパウルと一緒にいることは、メリットの方が多かった。
ビジネス絡みの様々なパーティも、未成年であることを理由に、九時に帰ることを許された。
わたしは九時までは、政財界の重鎮やマスコミを相手にし、それ以降の時間は、数学と物理を相手にした。
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる