TS怪奇談

ドライパイン

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短編

触手の怪物に体を乗っ取られる少女の話

 足元でグジュリ、という音が響く。最悪だ、と柏崎芳奈はため息をついた。テストの点数は悪かったし、友達との会話もイマイチ楽しくなかったし、傘を忘れて雨に振られるし。トドメにこれだ。

 渋々、踏んづけてしまったものを見る。噛みかけのガムだろうか、と見てみると何かが飛び散っている。

「……うぇ」

 やたらと大きい、黒緑がかったミミズのようなもの。長細いくせにテラテラと光を反射するそれは、余計に気持ち悪さを増長させる。こんなに無惨にも潰れているのだから、流石にもう死んでいるはず。嫌悪感に駆られるまま、学生靴の底に残った汚れをなんとか路面に擦りつけた。

「はぁ……ほんと、もう走る意味もないや……」

 制服もかばんも、履いている靴も雨でぐしょ濡れ。今更走ったって、湿った気持ち悪さが減るわけでもない。水たまりで、さっき潰した虫を洗い流してしまえば良い。

「ていっ」

 道路の側溝角で、靴の裏を強めに擦り付ける。外出用のお気に入り靴だったら、こんなに乱暴にはできなかったろうと芳奈は思う。荒い水流で靴下に多少水が弾かれるが、今更だ。

「どこかで一旦、雨宿りしたほうがいいかなぁ……」

 時間を潰せるファストフード店のようなものは、この辺りにはない。住宅街にさしかかったここらでは、コンビニもあまり無いのだ。となると。

「悪さするわけじゃないし、いいよね……」

 ちょうど近場にあったマンションに走りこむ。学校の知り合いも何人か、ここに住んでいると芳奈は聞いたことがある。なぜエントランスにいるのか、と怪訝な顔をされるかもしれないがズブ濡れで帰るのはもう勘弁だった。

「もうびしゃびしゃ、寒いし疲れたし……」

 ようやく屋根の下にたどり着いて、芳奈は傘をたたむ。タオルは持っていないが、持っていたとしてもどうにもならなかっただろう。出来る事といえば、せいぜい髪にかかった雨を払って、スカートの湿りをどうにか絞って、風邪にならない事を祈るだけだった。

「あれ、芳奈じゃん? どうしたん?」

 ふと彼女が顔をあげると、芳奈と同じソフトテニス部の古瀬周子が居た。そういえば、ここに住んでいるという話を聞いたことがあった。

「ちょっと雨が収まるまで雨宿りを……」

「あー、今日のは一段と酷いもんねぇ」

 周子の手にも、傘が握られている。これから出かける予定なのだろうか。すると、周子の方から提案があった。

「流石にそのまんまだと風邪ひいちゃうよ、ウチに来る?」

 有難い提案ではあったが、芳香は流石に申し訳なく感じてしまう。

「いや、悪いよ……それに今から出かける所だったんでしょ?」

「部屋にお母さんがいるから大丈夫! あたしはいったん確認しに行くだけだから」

 周子は言うなり、エントランスのインターホンから自室のチャイムを鳴らした。

「お母さん? 今から友達がそっち行くから! あたしも後で帰る!」

返答が何と言っていたか、芳奈には聞こえなかったが閉ざされていた自動ドアが開く。

「部屋は805ね! あたしもすぐ戻るから!」

 芳奈があっけにとられるままに、周子は傘をさして豪雨の中に突っ走っていった。

「……だいじょぶかなぁ」

 エントランスの自動ドアが閉まりかけたのが目に入り、慌てて芳奈は駆け込んだ。すぐそこにあるエレベーターのボタンを押し、十数秒待つ。確かに、タオルやドライヤーで乾かすことができれば本当に助かるのだが。

「周子ちゃんの家に行くの、初めてなんだよねー……」

 ひとりごとにため息が混ざる。部活の帰りに店に寄ったり、一緒に遊んだりはするが。いきなり家族と話すとなるとどうしたものやら。

 ピンポン、とエレベーターのチャイム音、中には誰もいない。8のボタンを押してドアを閉じる。空調からの風が、濡れた服に当たって余計に寒さを感じてしまう。

「はくしゅっ……」

 クシャミまで出る始末。確かに、このままだと風邪をひいていたかもしれない。大人しくご厚意に甘えるしかない。エレベーターが上昇を止め、機械アナウンスの声が響いた。

「芳奈ちゃんかしら?」

「……え、あっ、はい! 同じ部活の大沢芳奈です! いつもお世話になってます!」

 ドアが開くと既に、そこには主婦らしき人が立っていた。料理中だったのだろうか、エプロン姿のままサンダルで出ている。おそらく、先ほど周子がインターホン先で話していた母親だろう。

「あらまぁ、そんなにかしこまらなくてもいいのに。ほら、こっちよ」

 にこやかに対応してくれる。迷惑がられてそうで恐縮だったが、何といったらいいか芳奈には分からなかった。

「す、すいません。突然あがりこむことになって、お忙しいところに」

「いいのよ、周子ちゃんが部屋に友達を呼ぶことなんてあんまりないもの。ちょっと散らかってるかもだけど、ほら上がって」

 あくまで前置きではあったのだろう、玄関先の靴がそろっていたり、玄関マットが敷いてあったり。普段から部屋は綺麗にしているのだろう、ということが伝わった。芳奈は少し、自分の部屋の散らかり具合を反省する。

「おじゃまします、でもこのまま上がっちゃったら部屋まで濡れちゃいますし、ここで大丈夫ですよ」

「だめよ、さっきクシャミもしてたじゃない。ほら、タオルあるから軽くふいて。こっちがお風呂だから、着替えは周子ちゃんの貸してあげるから」

「へ、えっ、でもそんなっ」

「いいのいいの、髪は女の命っていうじゃない。濡れたまま放っておくとぼさぼさになるんだから」

 勢いに押し切られるかのように、芳奈は脱衣所まで連れていかれてしまう。

「上がったら教えてねー」

 有無を言わせずに周子の母はドアを閉めてしまった。ご丁寧に、タオルや着替え用のパジャマまで置いてあった。流石に下着は無かったが、それを期待するのは流石に虫が良いだろうと芳奈は思う。友人の下着を着るのはおかしいだろうし、そもそも周子のブラだと合わない。

 まだ水を滴らせている制服のシャツとスカートを脱ぎ、もう一度軽く風呂場で絞っておく。これ以上は、寒気が限界だった。下着もささっと脱いでしまい、風呂場に入る。赤色のボタンがついた蛇口を捻り、シャワーを浴びた時ようやく、芳奈は心安らぐ気分になった。

「ふーっ……」

 同じ水に濡れるのに、温かいシャワーと冷たい雨とでは雲泥の差だ。あんまり長く使うとガス代がかかるだろうけど、正直なところもっと浴びていたい。髪の毛を馴染ませ、首筋を暖める。冷え切って固まっていた体の芯が、少しずつ解けてゆく感覚。

 ふと、芳奈の体に冷たい風があたった。吹き込んだ場所を見ると、風呂場に窓があることに気が付く。高層マンションということもあり、窓は小さくて格子がはまっていた。窓の向こうは土砂降りが続いている。しかし、芳奈の視線は窓枠の『モノ』に自然と吸い寄せられてしまったのだ。

「さっきの……ムシ……?」

 先ほど潰してしまった、ミミズのような虫。それを彷彿とさせる黒緑の、細長いもの。体の表面に水気は無く、干からびたように潰れていた。なんでこんなところに。同じようなやつが登ってきたのだろうか。

「……えいっ」

 芳奈はシャワーの蛇口を窓枠に向ける。水流で死骸は流れ、窓の外に落っこちていった。この雨だから、出歩いている人もいないだろう。いたとしても、傘に水がかかるだけだ。ミミズは弾かれて何処かへ行くはず。今は、嫌な気分を温水で流してしまいたかった。

――――――――――――――――――――――

畳まれた服をいそいそと着て風呂を出ると、部屋は妙に静かだった。カチリ、カチリと壁掛け時計が秒針を刻む音だけが響いている。周子の母親は、どこへ行ったんだろう。見知らぬ部屋で一人だけというのは、どうにも居心地が悪い。勝手にソファーに座っていいものかもわからないから、居心地が悪かった。だが、勝手にお暇するのも流石におかしいだろう。

ゴトン、と何かが落っこちる音が聞こえた。物音のする方は、障子に仕切られた部屋。恐らく和室なのだろう。障子に手を掛けようとしたときに、誰かの声が聞こえた。

「あ゛っ♡ はいっ♡ 今から眠らせて♡ あの子にっ♡ 入れますっ♡」

 電話中なのだろうか。誰かと話している声が聞こえた。少し気になって、気づかれないよう音を立てずに引き戸を動かした。

「…………!?」

 向こう側には、想定もしない光景。

 周子の母親は、なぜか下着姿であった。そのことよりも私を驚かせたのは、彼女の様子。両手をだらんと垂らして立っており、耳元には電話などを持っているわけではない。ワイヤレスの通話機でもなく、彼女の耳元についていたのは。

 ゆらゆらと揺れる、何らかの糸。まるで意思を持っているかのように、時折周子の母親の躰に纏わりついて、胸元を滑るように動いている。それと同時に、喘ぎ声。

「ありがとう♡ ごじゃいましゅ♡ できたらぁ♡ ごほうびっ♡ くだしゃいっ♡」

 会話の相手が、『ソレ』だということを、私は理解してしまった。目の前に居るのは、怪物だった。横顔で、周子の母親は涙を流しながら、それでも喜びに満ち溢れた表情をしていることが分かる。その顔が動いて。

 目が、あってしまった。

 自分でも驚くぐらいの勢いで、体が動く。部屋の壁に体をぶつけながら、玄関のドアまで疾走する。靴のかかとを踏みつけていることなど、どうだっていい。今は逃げるんだ。息をする余裕もなく、全身を動かす。

 エレベーター前まで着く。階段だと、いつ下に着くかわからない。幸い、ディスプレイの階数は7を示している。今のうちにボタンを押しておけば、何とか逃げ切れるかも。

「はやくっ……! はやくっ!」

 意味もないとは分かっているのに、必死でボタンを連打してしまう。ようやく、エレベーターがチンと言う音を立ててやって来た。助かった、と思い開いたドアから。

 ドサリ、と頭から落ちるように周子が倒れていた。エレベーターにはもう一人、買い物かごを持った主婦らしき人がいる。しかし、異常事態を意にも介さず立ったまま。

「ね、ねぇ……ちょっと……!?」

 前のめりに倒れた周子をなんとか起こそうとする。何か声を発しているのに気がついて、彼女の顔を持ち上げた。

「……あー……ぜぇ……ぜぇ……」

 目は開いている。しかし、その瞳には何も映っていなかった。発している声も、ただのうめき声。荒い呼吸を繰り返しているだけ。

「だいじょうぶ……!? 起きてよ!?」

 必死で肩を叩いたり、ゆらしたりした。だけど、友子はグラグラと体を揺らすだけで、ちゃんとした会話は望めそうにない。ましてや、二人で背後の怪物から逃げようなんて。

 エレベーターから出てゆく主婦。なんとか、誰でもいいから助けてほしかった。

「たすっ……お願いしますっ……助けてっ……!」

 彼女は、確かにこちらの事に気がついた。
 なのに、その人は虚ろな目をしたまま踵を返して何処かへ向かってしまう。

「どうしてっ……! お願いだからたすけてよっ……!」

 どうにか、周子をエレベーター室内に押し戻す。そのまま、殴るように「閉」ボタンを強く押す。どうにか、ここから逃げたい。


 だが。
 締まりかけたドアから、腕が伸びてきた。
 挟まりを検知したドアは、再び開く。向こう側には、怪物がいた。

「マンションの住人には助けは通じないよ、だって『俺』がそうしたんだもの」

 思わず悲鳴を上げてしまった。

「嫌だ……やめて……来ないで……!」

 何とか、何とかしないと。パニック寸前の頭で、もう一度周子を起こそうと思った。駄目なら引きずってでも逃げ出さないと。

「周子っ! 引っ張っていくよっ!」

 階段でもいい。とにかく逃げなくては、周子も危険な目に合う。抱え起こそうとした瞬間、ぐったりとしていた彼女の体に力が入った。こちらの肩をしっかりと握って、ようやく立ち上がれそうになる。

「周子、気がついたの……?」

 だが。

 周子は突然、こちらを羽交い締めにするかのように抱きついてきた。頭の中で、怪物の言っていた事が反芻する。

 この階のマンションの住人は、怪物に操られている。
 じゃあ、周子は?

 抱きついている周子が、顔を上げてこちらを見てきた。寝ぼけたような眼で、ちょっとだけヨダレをたらし――――耳元からは、あの時と同じように紐状の『ナニカ』が蠢いていた。

「ヒッ……! いやだっ、いやっ、はなしてっ、やめてつ……!」

「周子ちゃんの友達なのに、そんな冷たい言葉言うのね。お母さん悲しいわぁ」

 冗談めいた口ぶりで、しかし怪物は。身にまとう衣類などほとんどないままに近づいてきていた。

「だから、今ここで仲直りのキスをして頂戴」

 周子の顔が急に迫り、次の瞬間には強引に口を開けられていた。

 舌ではない何かが、私の口から喉元を貫いて犯している。
 強烈な嘔吐感と、呼吸が止まった息苦しさで全身が冷えたようになる。痺れて、動けない。頭が、殴られたように痛くて重い。

 眼前の周子の顔が、暗くなって見えなく――――

―――――――――


 今日は最高の日だ、と『ソレ』は思っていた。分体が潰され、危うく正体が露見しかけたときにはヒヤリとしたが、それでも得た物は大きい。

 今は、部屋に戻って新しい『カラダ』の調整中だ。先ほどまでの『入れ物』であった周子の母親には、褒美がてらに自慰をさせている。

触手ちんぽごしゅじん様きもちいいのっ♡ こすってるだけなのにっ♡ ぜんしんビクビクしちゃうっ♡」

 オナニーを覚えたての子供のように、生やされたモノを抜くことで一杯になっている。事実、彼女の躰には元々の肉棒と同じ様に働くものをつけている。快楽は、本来のそれとは比較にならないものだが。

「あっ♡ あっ♡ 触手ごしゅじん様がっ♡ ごほうびくれりゅ♡ いくっ♡ からだいじられて♡ いくっ♡」

 涎と涙を流し、しかし喜び以外の感情は彼女にはない。終わることのない絶頂の中、多幸感の奴隷となった母親を傍目に、周子の体で寝室に向かって歩き出した。そこには、意識を失った芳奈が眠っている。衣服を脱がされ、生まれたままの姿にされている彼女は、すやすやと安らかに眠っているようだった。――だが。

「……くふふ」

 周子を操り、芳奈に跨らせた。そして、体内の『自分自身』と『周子』の神経を繋げた。頭の中がこんがらがる感覚。纏まらない思考が、一つに合わさる。周子を『操作する』のではなく。彼女自身に、あたし自身に――

「あ……うっ……はぁーっ♡」

……あたし、何をしていたんだっけ? 確か、エレベーターで芳奈ちゃんに会った時から急に眠たくなった気がする。最近、こういうことが多い。よく覚えてないけど、今は自分の部屋に戻っているみたいだった。

 すう、すうという寝息が聞こえて振り返ると、あたしのベッドの上で、芳奈ちゃんが眠っていた。どうして、という声をあげてしまうよりも前に、あたしは芳奈ちゃんに見とれてしまう。

 今にも襲ってくれと言わんばかりの、無防備な姿。芳奈ちゃんから、目が離せない。ぷるんとした赤い唇が柔らかそうで、まんまるとしたオッパイに包まれたくて、ぴっちりと閉じたオマンコを味わってみたくて。

「あれ……なんでそんな事考えているんだろ……」

 芳奈ちゃんとは部活動で一緒に遊んでいたけど、今日みたいな感覚は初めてだった。何故だか全くわからないけど、あたしは物凄くドキドキしていた。多分、普段夜に隠れてえっちな事をシているときよりも昂っている。ひょっとしたら、あたしは女の子にどきどきする体質だったのだろうか。

「なんであたし、裸なんだっけ……」

 そういえば、肌寒い気もしてきた。羽毛布団に入ってしまえば、寒さも無くなるかもしれない。そうだ。二人一緒のベッドで眠れば、もっとあったかい。

「よいしょ……」

 隣に居ても、芳奈ちゃんは目を閉じたままだった。顔が近くなった分、余計にあたしのドキドキが激しくなってしまう。キスしちゃおうかな。キスしてしまおう。

「ん……♡」

 唇だけをそっと触れさせる、そのつもりだった。だけど、体が勝手に動いたみたいに、舌が芳奈ちゃんの口に入り込んでしまう。ヌルヌルしてあったかい芳奈ちゃんの口の中。息遣いがあたしの顔に当たって、あったかい。

「ふーっ♡……ふーっ♡」

 これだけしているのに、芳奈ちゃんは全く起きる様子を見せない。段々と自分だけがドキドキしているのに、よく分からないけど腹立たしさを感じる。

「あむっ……♡」

 イタズラがてらに、オッパイを軽く口にしてみる。あたしのよりも少し小ぶりだけど、それでも柔らかくてすべすべしている。ふざけて吸ってみたりしたけど、流石に何も起きない。代わりに、芳奈ちゃんのピンク色の乳首が少しだけ硬さを増す。ハリ良くピンと上を向いたそれを、あたしは舌で舐めてみる。

「ちゅ……♡ れろ……♡」

 あたしも、知らぬ間に昂ってきているのがわかる。だけどびっくりしたのは、芳奈ちゃんのアソコも少し濡れていることだった。軽く指で触ってみると、ヌルッとした感覚とあったかい体温が伝わる。

「はぁっ……♡ んうっ♡」

 ずっと前からトロトロになっていた、あたしのアソコと、芳奈ちゃんの綺麗なオマンコをすり合わせる。そのまま、仰向けになっている彼女に全身を預けた。ちょうど眼前にある芳奈ちゃんの唇を奪って、あたしは好き放題する。

「んちゅっ……♡ よひなちゃん……♡ だいすきっ……♡」

 水音が響いて、身体じゅうがじんわりとしびれるような感覚。眠っている芳奈ちゃんを、起こしたい気持ち。起きてしまうまでに好き放題したい気持ち。相反した気持ちに潰されそうになって、あたしは芳奈ちゃんを強く抱きしめた。……だけど、足りない。

「よしなちゃんの……♡ おまんこ……♡」

 手の指で芳奈ちゃんのアソコを、少しだけ弄る。キツキツになっていて、人差し指の先だけを入れるのでやっと。指先だけでも、芳奈ちゃんのあたたかさが伝わる。あたしじゃあ、これだけしか芳奈ちゃんと触れ合えない。芳奈ちゃんを愛することが出来ない。もしも、あたしが男の人みたいにおちんちんがあったら……

「ひゃうっ……♡」

 突然、体に電撃が走ったかのように。飛び跳ねた体は、だけど痛みを感じさせない。だんだんと、全身にこそばゆいかのような感触。段々と、それは強くなっていく。からだじゅうが気持ちいい。あたしのアソコが、どんどんと脈打つように熱くなっていく。

「あっ……♡ はぁっ……♡ んぅうう♡」

 普段オナニーしているときのような、何かが吹き出しそうな予兆。だけど、普段のそれとは違って、もっと下半身に集中した感じの。

「あ……あれ……あたし……なんで……?」

 あたしの腰元……もとい、股には見慣れないものがあった。
保険の授業だったり、偶に読むエッチな本に載っている、そそり立つソレ。男の人にしか本来ないはずの肉棒が、あたしに備わっている。

――ああ、そうか。あたしは動揺も、困惑もせずに、ソレを芳奈ちゃんの膣に挿れる。

「はぁぁっ♡」

 おちんちんが、気持ちよさを伝えてくる。指すら入らなかった芳奈ちゃんのアソコは、あたしに生えた肉棒をあっさりと受け入れたのだった。ゆっくりと、しかし確実に最奥まで押しとどめる。

「ぜぇんぶ……♡ はいっちゃった……♡」

 仰向けで寝ている芳奈ちゃんの股と、あたしの股が重なる。産毛ひとつ生えていない芳奈ちゃんが可愛くて、挿れたまま芳奈ちゃんにまたキスをする。あたしのおちんちんは、しっかりと芳奈ちゃんの内側の感覚を伝えてくれる。

「キツいけど……♡ あったかぁぃ……♡」 

 挿れたときにはすんなりと入ったのに、内側に入った時にはキツキツで全く動けない。芳奈ちゃんが、あたしの肉棒をくわえて離してくれない。そのことが、余計にあたしの嗜虐心を煽る。

「いいよねっ……♡ よしなちゃんでっ♡ 気持ちよくなってもっ♡ だってこんなに可愛いのに全然起きないんだもんっ♡」

 自分の言っていることが破綻しているのは、自分でもわかっている。だけど、衝動が抑えられない。勝手に腰が動くのを、止めることが出来ない。全身に伝わる快感を、拒絶できない。

「あっ♡ おちんちん♡ むずむずするっ♡」
 
 ぱん、ぱん、と肉と肉とがぶつかり合う音。時折響く水音。眠ったままの芳奈ちゃんの顔に、ほんの少し赤みがかかる。快楽と同時に、襲い掛かる射精の感覚。

「でちゃうっ♡ だしちゃうよっ♡」

あたしの絶頂と共に、全身から何かが吹き出すような感覚。芳奈ちゃんに注ぎ込んだ瞬間に、あたしの意識ははじけ飛んだ。 

―――――――――――

――肉体操作。感情操作。記憶操作。人格操作。『ソレ』は、人間の理解を強めていた。芳奈の内側に入り込んだ後の手際は素早い。周子にそうしたのと同様に、彼女の思考を支配する。現状に違和感を覚えない暗示、肉体の感度の調整。そして、周子への感情のコントロール。友人としての好意、それを急激に増幅させる。親愛の情を肉欲へ。友達ではなく、つがいとして。

 ビクン、ビクンと芳奈の体が跳ねる。操るものが抜け落ちた周子の体は、だらりと芳奈の体に倒れ掛かったまま。やがて、芳奈の手がゆっくりと動き出し、周子の体を押しのける。裸に剥かれた自身の体を気にすることなく、芳奈は立ち上がりベッドを降りた。そのまま、周子の部屋にある姿見の前に立つ。

 生まれたままの姿、僅かに恥辱を受けて上気立った肌。しかし、それらに気を止めることをなく、芳奈は自身の胸に手をあてる。そのまま、乳房全体をゆっくりとこねくり回し始めた。激しさは無く、ちょうど脂肪を胸に寄せる為の動きに近い。その動きにつれ、彼女の体に異変が起きる。段々と、揉みしだいている胸が、大きくなってゆく。

 慎ましやかだった膨らみは、周子のものよりも更に大きくなる。最早、着ていた制服には入らないであろう。普通ならばありえない現象に、しかし彼女は無表情のままであった。やがて芳奈は手を止めて、再びベッドに横たわる。

 この怪現象を起こしている、芳奈の中に潜むモノ。全身の細胞、神経に影響を与えていたソレは、一気に芳奈の中枢へと駆け巡る。芳奈を支配し、操作する。そして、彼女を模倣し、同化する。拒絶反応すら起きない。最早、異物では無くなったから。

 そうして。芳奈は目を開いた。

――――

「……ん?」

 何だか大変な夢を見てしまった気がするけど。どんな夢だったのか、今ひとつ思い出せない。誰かのベッドで横になっている自分自身に気がついた。なんだろう、凄くいい匂いがする。柔らかい、女の子の匂い。

「すぅ……すぅ……」

 寝息が聞こえる。周子ちゃんが、裸のままでベッドに倒れ込んでいた。体じゅうベタベタで、疲れ切ってるみたいだけど。そういえば、私も裸だった。
 だけど、不思議と心は落ち着いていて、なにもかんじない。

「ねぇ、起きてよー」

 ゆさゆさと、周子を揺らす。涎でべっとりとしたほっぺたを、うにうにと伸ばしてみる。

「起きないとくすぐっちゃうよー」

 そう言いながら、私は手をワキワキさせる。指先が、周子ちゃんのおまんこをスッと撫でた。ついさっきまで濡れていたのか、生暖かい感覚が伝わる。……なんで、私は友達の秘部を弄っているのだろうか。

「どうしよう、起きないなぁ……」

 もっと激しくしてみよう。自分の内側でそんな声が聞こえた気がして、人差し指をワレメに突っ込んでぐにぐに、ぐにぐにとと動かしてみた。

「んぅ……♡ ひぅん……♡ あれ……芳奈ちゃん……あっ♡」
「やっと起きたぁ」

 だけど、指先の動きを私は止めなかった。周子ちゃんは膣に指が入っていることを気にしていない。むしろ、手先がもっと奥に行くように体の姿勢を直していた。

「ごしゅじんさまぁ……♡ 芳奈ちゃんのカラダに、ちゃんと入れましたかぁ……♡」

 周子ちゃんの言っていることが、ピンと来ない。ふと、私の髪の毛がハネてしまったのか、目の前に細い糸のようなものが見えている。軽くつまんで根元を確認しようとすると、ソレは私の耳元から生えているかのようだった。

…………?

「ああっ、だめだよぉ。まだ混乱してるのかな……?」

慌てた様子で、周子ちゃんが制止する。そのまま、彼女は私に抱き着いてきた。

「あわっ、周子ちゃん?」
「そっか、まだ入ったばっかりだから記憶が混濁してるのかな?」

 むにゅりと、周子ちゃんのおっぱいがあたしのモノと触れ合う。いつも大きくて、羨ましいと思っていた。だけど今は私も遜色ないのだ。反旗を翻さんと、体を動かして乳首を擦り合わせる。

「ひぅん♡ そっか♡ 芳奈ちゃんをっ♡ 気持ちよくさせてあげればいいんだっ♡」

 既に体が紅くなっている周子ちゃんは、ちょっと私がつまんだり、舐めたりするだけで嬌声をあげる。私を気持ちよくしたいみたいだけど、そんな事させない。私の方が、オンナを犯すのが上手いんだ。

「周子ちゃん、なんでココがぐちょぐちょになってるの? 」

 指先を抜いて、私の膣口と周子ちゃんのソレを合わせた。貝合わせ、というのを聞いたことがある。トロけていた周子ちゃんの表情が更に崩れた。

「あっ♡ よひなちゃん♡ あたしがっ♡ きもちよくっ♡」
「私のこと、寝てる間に犯しちゃったんだ……友達がレイプ魔のレズなんて思わなかったなぁ」

 そう言いつつ、周子ちゃんのおっぱいを唇で咥えた。そのまま、ストローでジュースを吸うみたいにちゅう、ちゅうと引っ張る。

「あ゛っ♡ でりゅ♡ でてりゅ♡」

 ビクン、ビクンと体を震えさせている周子ちゃん。吸い付いたおっぱいからは、母乳が。沢山出てくるわけじゃないからじっくり味わえないけど、ほんのりと甘い。周子ちゃんの中にいた間の調整はうまくいったらしい。

…………? なんだか、私、変なことを考えていたような。

「よしな、ちゃん……♡」
「ん、んぅ」

 少し考え事をしていた時に、周子ちゃんが口づけしてきた。粘っこい何かが、私の口に入ってくる。それがどうしてか気持ちよくて、私も周子ちゃんと唇をくっつけて、舌を絡め合わせる。

「……んっ♡ うぅん♡ ふぅう……♡」

 周子ちゃんから流れ込むモノを飲み込むたび、気持ちよさが溢れてくる。体がぽうっとして、ドキドキする。心臓の鼓動が、耳元で響くのが聞こえた。おいしい。もっと欲しい。

「ごくっ♡ ちゅぅ♡」
「ぷはぁっ♡ ふぅっ♡」

 どちらともなく、キスを止める。息苦しいほどに接吻していたためか、息が荒くなる。だけど、私の興奮は抑えられずにいた。

 とん、と私の体が押される。体勢が崩れて、仰向けにベッドに倒れることになってしまった。ぬう、と立ち上がった周子ちゃん。ああ。そうか。私が周子ちゃんを犯したいと思ったんだけど。どうやら今は、私が食べられてしまう側らしい。

「……来てっ♡」

 嬉しそうな顔をして、周子ちゃんが私に覆いかぶさってきた。ほぼ同時に、私の下腹部に何かが入り込む感触が伝わる。異物感と同時に、私と周子ちゃんが『繋がっている』ことに私の全身が震えている。

「芳奈ちゃん♡ あたしのっ♡ おちんちん♡」
「うんっ……♡ きもちいいよっ……♡」

 必死で腰を振っている周子ちゃんがなんだか愛おしくて、キュッと腰に力を入れてあげる。締め付けが強くなったのか、周子ちゃんが喘ぎ声を漏らした。これじゃあ、周子ちゃんが私を犯しているのか、私が襲っているのかわからない。それもそうだ、俺もオンナの体の気持ちいところはある程度理解しているつもりだもの。

「あむっ……♡」

 もう一度、ぶるんぶるんと揺れている周子ちゃんのおっぱいを口に含む。ほんの少しの刺激のはずなのに、周子ちゃんの表情は激変した。快楽を味わうのに必死で、心ここにあらずといった感じ。

「よしなひゃん♡ あたしっ♡ もうでる♡ いっちゃう♡」

 周子ちゃんの動きが一段と激しくなり、パンッ、パンッと肌のぶつかり合う音が響く。蕩けた顔の周子ちゃんを見ていると、私がコイツを気持ちよくさせている支配感に満足する。俺も、そろそろ限界だ。受け入れる用意をしなければ。足を周子の体躯に巻き付けて、一滴も逃さないようにホールドした。

「あっ♡ あ゛っ♡ お゛っ♡ あ゛ぁっ♡」
「……くっう♡ ……んぅん♡」

 獣のような声をあげて、周子が放出する。彼女の液を受け入れ、芳奈の体を支配する最終段階に入った。芳奈の体が絶頂に至る瞬間に、彼女の躰を作り替える。

 気持ち悪さは無い。全身がじわじわと重くなり、また軽くなる。神経の感覚が一度バラバラになり、再びつながる。私の存在が、俺と交じりあい溶けあう。潜んでいたもう一つの意識を、混ぜ合わせて一つにする。俺の喜びが私の喜びで、私の楽しいが俺の楽しい。

 そうして。怪物は再び人間になった。

――――――――――――――――――――――

 とくん、とくん、と心臓の跳ねる音。ぷはぁ、と息を漏らして私は呼吸する。

「あっ……芳奈ちゃん? それとも、ごしゅじんさま?」

 ずっと私を見ていたのだろうか、周子ちゃんは目を覚ました途端に抱き着いて質問攻めにしてきた。触れてくるおっぱい、また吸いたいなぁ。

「ちょっと違うかな……なんだろう。私は私のままなんだけど、混ざったみたいな感覚?」

 私は私なんだけど、私自身の躰に興奮してる。そして、周子ちゃんやお母さんを支配したときの感覚を覚えている。だから、これから私がすることは決まっているのだ。

 ヌルリ、と私の秘部から俺のペニスを出す。触手であったときのものではなく、人間だった時の再現品。目を輝かせた周子ちゃんが、それを咥えてくれた。

「あっ……♡」
「ぺろっ♡ んちゅっ♡ あむぅ♡」

 このまま、周子ちゃんと乱れ合うのもいいだろう。だが人の体を取り戻し、女の躰についての知識を得て、怪物じみた能力も身に着けた。こんなことだけでは満足できないのだ。

 私が意識を集中させるとビクン、と周子ちゃんの躰が跳ね上がる。この現象は、マンションに居る分体を仕込んだ女性全てに起こっているはずだ。体を絶頂に至らせ、全員に命令する。

「――――ほら、オレと気持ちよくなろう?」

 嬌声の合唱が、建物に響き渡った。
 やがてこの部屋に彼女らが集まり、淫らな宴が始まるであろう。体を乗り換えるのにも、新たな分体を増やすのにも、全く苦労しないだろう。これからの日々を思うと、自然と私の口元は緩んでいく。

 今日はとても、幸運な日だった。
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お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。