JKになってみたー

ドライパイン

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B_ 202_Accepted

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部室での活動、もといオタク的会合を終えて、2年生である神田はネットサーフィンをしつつ活動予定について頭を悩ませていた。

「同人誌といっても、そんなノウハウないでヤンスね……」

そもそも、どんな題材で描くのかといった知識すらない。色々な神絵師達の描いた作品が本棚には収められているが、それがどんな風に作られているのかは全く分からないのだ。改めて何冊かを帰ってから読み返しても、自分なりのアイデアなんてものは浮かばない。

「おっと、これ返すの忘れてた」

1年の浦添から借りていた、日常ものの漫画。中学生や高校生が、ギャグコメディチックに日常生活を過ごす漫画は、今まで何冊か借りたり買ったりして読んできた。何で面白いのかは分からないが、不思議と読んでしまう。こういうのを、同人誌の題材にはできないだろうか?

「学校あるある、みたいなので描けたり……いや男3人でってなると難しいし……そうだ、全員女の子にすれば絵面の問題は解決する……?」

おっさん趣味全開の漫画でも、美少女がやっていると面白くなるという経験則もある。仮に。うちのSF研の3人が女子高生だったとしたら、どんな感じになるだろうかと神田は夢想する。

「そうだなぁ、笹倉先輩は昔の不良って感じで制服がアレだけど、案外優しいし……目つき悪いけど。女の不良、は違うな……ギャル?」

目つき鋭い、優しいヤンキー系ギャル。描きたいお題をアバウトに決め、手元にルーズリーフを一枚出してシャーペンでラフを描き始める。教室内で『手癖』のように昼休みに絵を描く習慣がある神田は、家でもたまに落書きをするのだ。

「でもちょっとカワイイ感じ出すってなると、ちょっと身長は小さめで、短めのツインテみたいに……」

筆がノるにつれ、シャーペンが折れるのが気になり、鉛筆を取り出す。少しキツめの目線、校則ギリギリの短いスカート。アウトローに見せかけてはいるものの根は優しく、年下の弟や妹にあげる用のキャンディを何個もポケットに忍ばせ、そのうち1つを口にくわえている。そんな設定を脳内で巡らせ、姿を鉛筆で描く。脚の絶対領域をいかにイイ感じに描くかに苦心しつつ、筆を走らせる。

「フード付きパーカーとか着せてみたり……いよっし!」

一人を描き上げてしまうと、どんどんとスピードが乗る。一年の浦添は、寡黙な文学少女。憂いを帯びた表情で、窓際でお気に入りの本を読む姿が、どこか話しかけづらい印象を与える。しかし好きな本の話となると、距離感を考えずに一気に話す、距離感を間違える系少女。前髪のために普段は気が付かないけど、顔を突き合わせると彼女が美人だったことに気が付く感じに。

「ショートボブだけどちょっと前髪長めで、メカクレ気味みたいな感じにして、っと。先輩よりちょっとおっぱい盛って良いよね……うん……おっぱいは盛っていいんだよ……」

片目が隠れるぐらいに髪を伸ばし、制服のワイシャツから膨らみを主張させる。我ながら可愛い感じに描けた、と神田は少し嬉しく思う。ああ、こんな美少女と同じ部活だったら楽しい部活がもっと楽しくなるだろう、そんな事を思いつつ。だが次に書こうとしたタイミングで、流れるような筆の勢いは急に止まる。

「――自分を、描く」

人の事なら勝手に女体化させても、自分となると筆が止まる神田である。数分間、完全に手が止まってしまった。頭を悩ませていると、ふと昔SNSでバズった診断メーカーを思い出した。自分のハンドルネームを入れると、適当に女の子にしてくれるもの。スマホで検索をかけると、すぐさま結果が表示された。

「ああ、あの時の絵師女体化絵も良かったでヤンスねぇ……」

しかして、描き出すべき姿は現れた。鉛筆を強く握り、3枚目のルーズリーフを卓上に置く。

「2年A組神田志保ちゃん、身長は175cmで髪の毛は栗色の三つ編み、目は茶色で目元になきぼくろ、得意科目は国語……」

アタリをつけ、服を描く前に裸体の状態で描き出す。柔らかい感じのタッチの、少しお姉さんっぽいキャラで描き出す。何故ならば。

「特徴はゆるふわ、お世話好きと本好きとの相性良し、そしてっ――」

彼が画竜に点を描くかのように、力を込めて『ソコ』に筆を入れた。

「バスト、Eサイズッ……!」

胸は盛っても良い。神田の信条であった。だが、まだここからが神田にとっての本番。形状だけ整えた髪の毛を、鉛筆でちゃんと三つ編みを結っているように描きなおす。目元を少し微笑んでいるかのように細めさせ、くちびるをほんの少し色っぽく描き。そこまで描いたあたりで、なんだか少し肩こりを感じた。首を回し、少し伸びをする。

「んんーっ……でもこれ描き終わるまで……」

ここまで描いたなら、最後までいきたい。途中で止めてしまうと、上手くいかない事の方が多いのだ。しかし、ふと出た声が何だか自分の物ではないような気がする。もうちょっと、自分は低い声だったような。――ダメだ、今は絵に集中するんだ。カリカリと鉛筆が机にぶつかる音だけが十数分響き、ようやく神田は手を離した。

「いよっし――めいさくっ!」

会心の出来。我ながらカワイイ娘を描けたのではないか。もちろん神絵師と呼ばれる人々とは比ぶべくもないが、これはこれで自分の好みなのだ。もう一度3枚の線画を並べ。少しだけ頷く。

ぐでーっ、と椅子に体を預けた、が。バランスを崩して倒れそうになってしまう。頭が普段より重く感じた。そんなに髪の毛を切らなかっただろうか。それになんだか、胸の部分が何かに引っ張られている感じ。

「んーっ、風呂入らなきゃ……あ……?」

立ち上がって神田は思う。こんな、ふわふわなスリッパなんて履いていたっけと。それだけではない。すね毛だらけだった脚が、剃ったかのように毛一つない。それどころか、まるで『自分の物じゃない』かのように細くてスベスベだ。脚に触れた時の手が、普段の自分より綺麗な手をしている。

「へ……何……これ……」

一瞬脳が反応を拒否していたのか。彼が胸元の『それ』に気づくのは一瞬遅れた。脚を見るときに何かが邪魔だなと思ったが、視界を遮っていたものは自分の身体の一部。教室でたまに陽キャグループからいじられる、腹部のでっぱりではない。

「あっ……」

腫れかと思ったが、痛みは無い。だが、自分の躰に元々あったかのような感触。それがそこにあるのが、自然だという感覚。クラスの女子にあるそれを、神田がじっと見つめようものなら吊し上げにあうだろう。そのことにようやく気が付く。

自分の身に起きた異常、それを確かめるために立ち上がり。ふと、普段は気にも留めない壁の鏡に気が付く。――知らない少女がそこに居た。いや、見覚えがある。先ほど懸命に描いた、自分の絵。見開かれた目が、保と同じように動いたことで、ようやく気が付く。

栗色の長い髪を三つ編みにして、優しげな雰囲気を纏っている。まばたきしたときの綺麗な瞳。美しさすら感じる佇まいだが、口を少しすぼめると、彼女の印象は途端に色っぽくなる。そして彼女の胸元を見ると、ルームウェアの下から主張するわがままボディ。恐る恐るボタンを外すと、薄い水色のブラに包まれた、たわわな果実。

絵に描いた彼女そっくりな、神田じぶんが居た。――その事実を理解して、『彼女』は恐怖よりも興奮が勝る。恐る恐る、しかし昂ぶりつつも自らの身体を探ろうと、手をたわわな膨らみに当てようとした。

「姉ちゃん、飯だってよー」
「おわぁっ!?」
「……急に受け身の練習なんかして、どうしたの?」

突然、自室のドアが乱暴に開かれて飛び込んでくる弟の声。『そういう事』をしそうになったのがバレそうになり、慌てて神田は床にもんどりうった。不審げな顔はされたものの、ギリギリセーフ。

「……って、待って。さっき何って言った?」
「いやだから飯だって」
「その前!」
「はぁ?姉ちゃんって呼んだだけだけど」

――そうだ。今の状況だって、本当ならば兄である神田の部屋に居る不審者だと言われてもおかしくない。それなのに弟である涼真は、「いつも通りの姉に対する対応」をしているのだ。

「早くしないと飯抜きだってさ」
「あぁっ、待って」

慌てて神田も階段を降りた。家族と話を合わせるのに少し苦戦したものの、次第に話題がテレビなりニュースなりに移り、夕食の後。もう一度自分の部屋に戻って、『志保』は不思議な感覚を覚える。いつもの風景なのに、初めて見るかのような興奮。

「色々と、『思い出して』きちゃったなぁ……そっか、私ってこんな部屋で暮らしていたんだ」

様変わりしてしまった自分の部屋を眺め、『神田志保』は呟く。数時間前にあったはずの、好きなキャラのポスターやタペストリーは綺麗さっぱり無くなっている。数十冊は有った漫画の山も、PCゲームのCDも存在しない。およそ趣味に繋がるような物は全くない、全く見知らぬ娘の部屋に入ってしまったような違和感を覚えてしまう。

「でもここにっ……あったっ!」

だが、志保は『彼女自身の記憶として』知っている。なんの気は無しに見始めた魔法少女のアニメにドハマリしてしまって、こっそりグッズを買い集めてる事。そしてそれらを、ベッドの下の収納ケースに隠している事も。――そして、その箱の中には。

「うわぁ……やっぱり、あるんだ……」

自作の、自分すら袖を通したことのないコスプレ衣装。とんでもないものを保存していた。去年の文化祭で、クラスの出し物がコスプレ喫茶に決定し、衣装作成に勤しんでいたころ。クラスメイトの誰かがおふざけで、アニメキャラのコスプレが数人居ても面白いんじゃ、などと言い出した。

その意見は割と受け入れられていたようで、数着は途中まで作られていたが「統一性が無さすぎる」との意見が支配的になり頓挫。市販のコスプレ衣装を数着買うだけで、作りかけの衣装はあえなく廃棄となってしまったのだ――――いま、『シホ』の手元にある魔法少女の服を除いて。

「久々に見ても、結構頑張ってたなぁ。昔の私」

同時に仕舞われている、いくつかの型紙や使い切れなかった生地も出てくる。クラスメイトの提案に積極的に賛成はしなかったものの、心の内では「魔法少女キュアメリー」の服が着れるのでは、と興奮して。クラスの意見が一致する前に思わず作ってしまったのだ。そのため、一度もこの服には袖を通していない。元々は、誰かに着てもらうために作ったのだけど。

「――着れるよね?私、でも……」

『カワイイものを恥ずかしがっているけど身に着けてしまう女の子は最高に可愛い』というのは元々の保の掲げている信条である。今、可愛い女の子になっていて。そしてカワイイ衣装がここにある。志保シホの心が羞恥心を感じても、保にとっては関係の無い事。やるべき事は1つしかない。

「でもっ……これ、脱がないと……」

服を着替えるには、今着ている服を脱がなければならない。当然の事ではあるが、今の志保にとってはとても難しい問題だった。この服の下には、いったい何があるのだろうか。脱ごうとして服を手で掴んだまま、数分間固まってしまう。

「女の子でも……『自分の身体』だし、いいよね……」

誰にともなく、言い訳の様な独り言を口にする。ようやく決心がついて、上の服をまくり上げた。瞬間、ふわりと柔らかい香りに包まれる。いつも使っている柔軟剤の香料と、いつもは気づかない、女の子じぶんの匂い。入り混じったそれらが、とても新鮮に志保の身体を蕩けさせる。

「すぅーっ……はぁーっ……♡んうぅぅ……ジブンのにおいなのに、すごくいいっ……♡」

脱ぎ掛けた服を顔に近づけ、深呼吸を何度も繰り返す。いつも身に纏っているはずの衣服が、こんなにも素晴らしく思えるなんて。だけど、ずっとこうしている訳にもいかない。名残惜しさを感じつつも、上の服を脱いでベッドに置く。

「これがキャミソール……うん、そうだよね……」

保の意識からすれば、形状はランニングシャツに近い。しかし、それと明確に違うことがあるとすれば、胸のあたりの僅かな圧迫感。足元を見ようとしても、視界を塞いでしまう志保ジブンの乳房。女の子のソレを見てしまった事と、それが今自分にある事の興奮。再び、着替えの手が止まってしまったことに志保はかぶりを振る。

「だっ……だめだっ……!今はカワイイ服を着たいんだ……!」

何とか保の意識ホンノウを振り払い、志保は部屋着のズボンに手を掛ける。えいやっ、と下ろしてしまって。ようやく気付く、自分の下半身を守っているのが、パンツだけになっていることを。見たら戻れなくなる。だけど、見てしまいたい。そんな葛藤のまま、抗えずに足元に目を向け――

「あぅ……そっか……今は見えない……いや、見ない方がいいよ……」

見ることが出来なくて、残念な様な、ほっとした様な。そんな表情のまま、トップスとズボンをベッドに軽く畳んで置く。スカートを手に取り、腰元まで。少しだけ丈が合わないので、微調整。ベルト位置を微調整。胸元の飾りが外れないよう注意して、上の服に頭を潜らせた。少し首元がきつかったので、頭を出すのが大変。ボサついた髪を軽く手櫛で戻し、後ろに戻す。鼻歌まじりに、初めての服に袖を通したところで。

「……あれっ?」

違和感に気が付いたのは、志保が着終わったぐらいのタイミングだった。なぜ今、一連の動作を全く戸惑うことなく出来たのだ?少なくとも、オトコだったときはスカートの着用方法は知らなかった。それに、脱いだパジャマをキチンと畳むなど、そんな行儀のよい行為は普段していない。いつも短髪なのだから、髪は適当に流しているだけなのに。

「ヘンな感じだなぁ、悪い気はしないんだけど」

志保女子としての自分と、おとことしての自分が混在している。自分自身に欲情するなんておかしいのに、今はそれが自然なものに感じられて。それなのに、着替えなどのいつもの習慣やちょっとした動作は、志保のものになっている。奇妙な感覚で、焦ってもいいはずなのに今の志保ジブンにはそれが心地よくすらある。

「ひょっとして、この中も……」

ふと思いつき、自室の室内収納クローゼットを開く。もともとの自分たもつであれば、学生服の他は着古したような部屋着とコートぐらいしか入れていなかった。でも、今の志保かのじょの目の前にある光景は違う。春用のワンピースも、冬用のレディースコートも。全部覚えている思い出せる。そして、開いたクローゼットの裏側には、壁掛けの鏡が貼ってある。映った少女ジブンの姿を目にして、志保は思わず声を漏らした。

「うわぁっ……かわいいっ……」

今まで何度も見たはずの、志保ジブンの顔。柔らかい印象を与えた風貌ながらも、驚いた表情の瞳は可愛らしく、頬はほんのり赤い。それらと対照的なまでの、潤いを帯びたくちびる。直視できない、美少女。――その声を出したのも、自分自身彼女自身であるというのに。自分で絵として書いた人物が、そのままそっくり出てきたかのよう。栗色の三つ編みで、瞳も茶色。なきぼくろもあり、絵に再現しきれなかった唇の妖艶さも、実物で見ることが出来る。ただ、緊張した面持ちをしてしまっているせいか、少し作った笑顔がぎこちない。

「自分で描いておきながら……いや、我ながらって言った方が正しいのかな……志保わたしのオッパイ、相当大きい……」

両の手の平では零れ落ちてしまうほど、そのバストは豊満で。誰でも着用できるよう、多少サイズに余裕を持たせている筈の魔法少女姿でも、たわわな乳房はその存在を主張している。フリル衣装越しに、不慣れな手つきで掌を重ねる。手の平からは柔らかく、少しだけ鼓動を感じて。同時に、胸元からは『触られた』感触が伝わってきた。自分の身体を自分で触っているだけなので、嫌悪感こそないものの、どうにも変な居心地。乳首を触れると、少しこそばったくて。もう少しだけ触ってみようと思ってしまう。

「って……うぁ……」

自分がとった動作が、鏡の向こう側に反映されるのは自明で。立ちぼうけだった志保カノジョは、今や胸元を見せつつ、乳首を弄ろうとしている。こんな姿の女子を見た事のないたもつにとっては、興奮というよりはパニックを引き起こしかねない光景。しばし固まって、手をおろしてもう一度自分自身の姿を確認する。

「それでも、似合ってるよなぁ……」

元々、志保シブンが着たいと心のどこかで思っていたからこそ、作ってしまった衣装。それなのに、どうしても今日まで着る勇気が出ずに、仕舞いこんだままだった。少し丈の短いスカートで、素足が出てしまう恰好。それに、フリルが付いた服なんて、志保ワタシだって着たことが無いのに。それでも。

「自分で着ないなんて……勿体無いなぁ、こんなにカワイイのに」

ポツリと口から溢れた言葉が、ナルシスト的な発言だった事に少し経ってから気がつく。でも、それが事実なのだ。寸法が少し合わず、絞りめのフリル衣装を身に纏っている『彼女じぶん』は、可憐さを損なっていないのに色気を感じてしまう。だが、今の志保カノジョは女でありながら、たもつとしての意思もある。

「えへ、えへへ……こんなこと、しちゃっても、いいよね……」

元の自分だったら気持ち悪くしかならないような笑いですら、志保を通してしまうと可愛らしい照れ笑いになってしまう。そんな清純な彼女を、自分自身の手で汚すような行為。フリルスカートの端をつまんで、ゆっくりと持ち上げる。当然、徐々に露わになるのは志保にとって隠しておかなければならない大事なところ。

「あっ……♡ももいろ、なんだ……♡」

自分の下着の色を、自ら答えさせる破廉恥な行為。そしてそれを見せつける痴態。羞恥心と興奮の間で、志保タモツはせめぎ合う。『昨晩、風呂上りに何の気も無しに身に着けた』という、志保としての記憶はあるのに、今はそれから目を離すことができない。

「何だか恥ずかしいけど、もっと見てたいっ……」

立ち上がって、ただスカートをたくし上げるだけの行為。それですら、目線は彼女ジブンの絶対領域に吸い込まれてしまう。もう少し、全身が見れる位置まで動こうと後ずさった、瞬間。足元にあったクッションでバランスを崩し、尻もちをつく形で転倒してしまった。頭こそぶつけなかったものの、受け身を取った肘が痛む。

ったた……ああっ!?ご、ごめんっ!?」

眼前には、尻もちをついた少女。あられもない姿の彼女を見て、神田は反射的に謝って視線を逸してしまう。――自分の姿だった、と2秒と経たずに思い直すのではあったが。しかし、その体勢から動けない。鏡の向こうでは、自分の下着を見られてしまって恥ずかしがる少女。志保じぶんのパンチラとはいえ、まじまじと見つめていると何だか変な気持ちになってくる。

「――そっか、今は自分が女の子……自分なんだ…………」

焦った自分を落ち着かせるように一人呟き、深呼吸。だけれども、落ち着くことが出来ない。鏡に映る、志保しぶんの姿に目が釘付けのままになってしまう。アクシデント気味に、エッチな姿を晒したまま固まっている彼女を、もっと見ていたい。――あるいは、もっと辱めたい。

「自分のカラダなんだから、触っても、良いよね……」

誰にともなく言い訳をしつつ。男の頃とは違う、未知の領域。恐る恐る自分の右手をスカートに潜り込ませる。本来ならあるはずの神田の愚息は存在せず、しかし近い部分に何かがある。ショーツ越しに、指先でそっと触れてみた。

「ッ――!?」

敏感なところに手が当たり、思わず身体が跳ねてしまう。体験したことのないいつもシているときの痺れるような心地よい感覚。ゾワゾワして、変なカンカク。好奇心から、もう一度撫でるように指を沿わせる。全身が脱力するような、こそばゆさ。それと同時に、自分の全神経が『自分この娘秘所だいじなトコに集まっていくような感覚。

「あっ……ゆび、ぬれてる……」

指先に違和感を覚え、一度確認すると僅かに湿っていた。『濡れて興奮している』のだと、志保ジブンの記憶が教えてくれる。――無理もない。自分自身を昂らせる至高の存在が、今目の前に居て。そんな彼女が、自分を悦ばせるかのように振る舞って。そして何より――その娘が、自分自身で、彼女の快楽を味わうことができるのだから。

「んっ……♡んんうぅっ♡♡」

再び手を、スカートの中に潜らせる。今度はほとんど確信的に、わざと相手じぶんに見せつけるかのように。初めて見る、いつものショーツ。濡れてしまったソレは、ピッチリと志保わたしの肌に張り付いていて。恥ずかしいのに辱めるために、わざとアソコの形になぞらせるように指先で擦る。

「すごっ……ぴりぴりっ……♡するっ……♡」

いつもシている全く知らない、男のときの自慰を思い返す。敏感な所に触れて、身体が反応してしまう感じ。だけれども、肉棒だけに血流が集中してしまうあの時の感覚とは違って、全身がふわふわと、甘く麻痺させられているかのよう。体中が暖かくて、心地よい。

「はぁっ……♡んくうっ……♡」

初めて感じる2日ぶりの、オナニーしているときの昂り。全身がほんのりと火照ほてって、勃ちあがった乳首の感覚がブラに触れて伝わる。左手で、軽くつまんで揉むように。ひねって、ちょっとだけ刺激を加える。

「うぁぅっ……♡はわぁ~……♡♡」

痛みを感じる。でも、痛気持ちいい。ピクリ、と肩が跳ねてしまう。身体の力が抜けて、ふわふわした心地。もっと、シたくなる。摘んだ乳首を、ゆっくりと時計回りに。初めてのいつもの、胸でのオナニー。

「んんぅ……♡ふんぅぅ……♡♡」

甘い吐息が自然に漏れ、全身に熱が籠るのを感じる。女の子の自慰なんて、知るはずもない。それなのに、本能シホがやり方を知っているかのように肉体が勝手に動く。気持ち良い所が解っているかのように、股座に当てられた右手が動くで弄る

「あぁっ……♡ひやぁぅっ♡♡♡」

段々と、ふわふわとした感じがつよくなる。びりびりして、ういているかんじ。じぶんがじぶんで、おさえられない。もっと、もっときもちよくなりたい。それだけが、じぶんをつきうごかして。

「はぁっ……♡♡あ゛っ♡♡♡ん゛う゛ぅぅ~……♡♡♡♡」

ビクン、と全身がはねる。脚や肩にちからがはいらない。ブワッとこもった熱が、弾けたみたいに身体じゅうを襲う。イッたんだ、とぼやけた頭で理解できたのは、数秒後。鏡を見ると、志保わたしの顔がヒドイことになっていた事に気が付く。

「はぁっ……♡♡あはぁっ……♡♡♡こんなにえっちなかお、してるっ……♡♡」

真っ赤になったほっぺたに、口元はヨダレでベトベト。思わず、目元に涙が出てしまっていた。聖母のような優しい顔が、今は完全に雌の表情になっていて。パンツは、すでにぐちょぐちょ。

「はぁっ……♡♡もうっ、がまんできないっ……♡♡♡」

立ち上がって、ヨロヨロと志保わたしのベッドに潜り込む。毛布を被って、声が漏れないようにする。隣の部屋の弟にバレたりしたら、恥ずかしくて顔も見れない。

「でもっ……♡♡キモチいいのっ♡♡抑えられないぃっ……♡♡♡」

ベッドに潜ったのは逆効果だったことに気がつく。充満しきった女の子わたしの香りに、余計に身体が疼いてしまう。ジュクン、と下腹部が反応したのを感じて。

「はぁあっ……♡♡♡♡」

パンツに両手を突っ込む。ぬるりと生温かい感触。そのまま、左手でクリトリスに触れ、優しく皮を剥く。外気に触れた感覚が、きもちいい。右手の指を、ゆっくりと自分のナカに挿入れる。指先からの熱っぽい感じと、身体に入ってくる異物感。

「んひゅっ……♡♡♡♡くぅぅん……♡♡♡♡」

自分の身体を触っている犯しているだけなのに、もどかしくて、せつなくて、ひどく興奮する。身体が、勝手に気持ちよくなろうと動いてしまう。おっぱいも、ベッドにこすりつけてしまって。痛くなるはずなのに、ただぼんやりと心地よい。四つん這いになった状態で、身体じゅうを擦りつける。

「はぁあっ……♡♡♡♡んうううっ……♡」

指先だけしか入らなかった膣。でも、自分わたしの興奮が増すにつれて、どんどんと薬指が呑み込まれていく。敏感なところがあちこちに広まって。どこを触っても、温かくて、もっと刺激したくなって、おかしくなる。

「ひあっ♡♡んあぁぅぅ♡♡」

乳首をつねったのと同時に、思わず声が出てしまった。まずい、とりせいが叫ぶ。隣の部屋には弟が居て、まだ両親も起きている。声を聞かれて、オナニーをしているなんてばれたらまずい。まずい、のに。

「ふぅぅっ……♡♡♡♡あんっ……♡♡」

自分の手で作った衣装、自分のパンツ。そして、他ならぬ自分の躰。それらを、性欲の捌け口として見てしまう。汚したくないのに、グチャグチャにしたい。理性シホが止めなければと叫んでも、本能タモツの収まりがつかない。

「ヤダっ……♡やめなきゃ、いけなひっ、のにっ♡♡こえでっ♡♡でちゃ♡♡♡♡あっ――あ゛あぁぁぁ♡♡♡♡♡♡」

体勢が崩れて、ベッドに倒れこんでしまう。薬指が、『ソコ』に触れたと同時に。全身に電気でも流れたかのように衝撃が走る。毛布を吹っ飛ばしかねない程に、脚が跳ねる。下半身アソコに籠っていた熱が、身体じゅうにはじけて。

「あ゛ぁっ♡♡はひっ♡♡♡あ゛うっ♡♡♡♡ん゛んんううぅぅ――♡♡♡♡」

――数十秒だったのか。数分だったのか。じんじんと、その感覚だけが身体の奥底に響いていて。気が付いたら、ベッドの敷布団がぐしょ濡れで、身体がふわふわする。ただその感覚が病みつきになる。もう一度、今の感覚を味わいたい。そう思った瞬間、視界がぼやけて――

――――――――――――――――――――――――――――――

目を開けたのに、視界がぼやけて何も見えない。数回瞬きして、ようやく今の自分の状態を確かめる。机に伏せて、眠ってしまったらしい。

「えっ……夢……?」

喉から出る声は、いつもの自分の低い声で。着ている服も、体つきも、間違いなく元のじぶん。時計を見ると、夜9時。空腹感は無いので、ご飯は食べた後なのだろうが。だとしても、どこからが夢だったのか自分でも良く分からない。

「これは……」

机にあった、数枚のルーズリーフ。部活動の先輩と後輩を女の子に書き換えたページがそれぞれ1枚と、自分を「あなたをJKにしてみたー」で描いたキャラ。夕食前にその3枚を描いたことは覚えている。――その裏側に、魔法少女姿の志保じぶんが居た。

「描いた覚えないけど、これって夢で見た……いや、着た衣装だ」

少なくとも、こんなにフリル地の多い衣装や凝った髪型で描いた覚えはない。足元に、別のルーズリーフが落ちていた。……あられもない姿の、魔法少女の志保。しかもカラーで。

「わぶっ」

思わず冷や汗。後ろに家族がいないか確認し、素早くそういった物の隠し場所へ。間違いなく、自分が描いたものではない。――だが、この絵を知っているのは自分だけの筈で。

「夢では、なかったのか……?」

しばらく考えた後、グループSNSを起動。クラブの先輩と後輩に、今起こったことを伝えなければ。
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