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一週間後。
「もしもーし」
先週と同じく、地学準備室のドアを3回ノック。ドア部分をよく見ると、SF研のタグもつけられている。
「……ん?」
『SF研』と書かれているタグの、一番左側にキズがある。クロスマークのようだが、片方の線は交わるところで止まっている。Xの左上が欠けている、Tの文字のような……
「――ちわ。何か用?」
ガラリ、とドアが開き部員と目が合う。先週と同じように、一瞬宮園は身構えてしまう。時折、同級生に不良と思しき生徒が歩いているのを見かけたりする。『彼女』だろうか。
「っと、すいません。先週のSF研の活動予定に関する相談なんですけど」
膝上ギリギリまで引き上げたスカートに、ニーハイ。制服のブレザーにパーカー付きコートを重ね着という、校則ギリギリの姿で登校している、不良生徒の噂すらある『笹倉七海』。同学年の人物と言えども、なんだか話しがたい印象を受ける。先週も気圧されてばかりだったし、と宮園は思い起こす。
「アー、あの話カァ。良いよ、入リナ」
ひらひらと手招きする彼女。ツインテールに結んでいる髪を揺らし、笹倉は部室に入った。もう少し、仏頂面で居ないで欲しいなと宮園は思う。ただでさえ目つきで怯むし、声は女子と思えないぐらい偶にドスが効いてるし。
「あ、そうだ」
ふと立ち止まった笹倉が、ブレザーの胸ポケットから何かを取り出す。スタンガンでも出てくるのかと宮園は身構えた、が。
「ほら、ペロペロキャンディ」
「……あ、ありがとう」
おずおずと宮園が包み紙を破いて放り込むと、プリン味の飴が甘ったるく口の中で溶ける。笹倉ももう一本取り出して、口に咥えた。
「いつもお菓子を持ち歩いてるんですか?」
「マアね」
部室内は今日も3人。机のノートPCで作業しているのと、本を読んでいるのと、不良で3人。
「委員長さん、いらっしゃい。お姉ちゃんに何か用かしら?」
「……?」
椅子から立ち上がり、来客である宮園を見かけるとぴょんぴょんと跳ねる神田。サイド三つ編みヘアーの彼女が、姉を名乗っている。胸元には良く分からないが、やたらと大きいピンク色のリボンが付いていた。数秒、完全に停止した宮園は、ようやく声を絞り出す。
「おねえ、ちゃん?いや、そのリボン何ですか?」
「ふふーん♪これはお姉ちゃんが、皆を守るために必要な装備なのです」
「…………えっ?」
完全に当惑している宮園に、部活の先輩である笹倉が助け舟を出してくれる。
「日曜日の午前に、魔法少女のアニメやってるダロ。主人公の魔法少女のコスプレがあのリボン。作中で主人公の娘が、大人になりたいと背伸びした結果、皆に姉を名乗っているらしいゾ」
「なかなか、ぶっ飛んだ設定ですね……人気なんですか?」
「大きなお友達にナ。みんな弟になりたがってる」
「ソレ色々と大丈夫なんですか……?」
こうしてみると、『彼女』は意外に長身だ。体を曲げて鞄を弄っている様子が目に入る。……むにゅりと主張する胸元の膨らみで、宮園は一瞬目が留まってしまった。目ざとく、『神田志保』はニヤリと笑う。
「あっ……♡見ちゃいました?弟クンのえっち♡」
「ちっ、違わい!誰が弟じゃ!」
笹倉が近づいてくる。ケジメを付けられるのかとヒヤリとしたが、彼女はむしろ神田の方に近づいて彼女の胸をはたく。
「可愛い後輩の無駄な贅肉だよ、ぺしぺし」
「ちょっとぉ!?そこ叩かないで下さいよぉ!?意外と痛いし!」
「可愛い子には鞭を与えよ、古事記にもそう書かれている」
「イヤーッ!グワーッ!アバーッ!」
「……仲いいんですね君たち?」
多分内輪の会話で盛り上がっているのだろう、しばらく相談できなさそうだ。諦めて宮園がそっぽを向くと、また本を読み続けている少女が居た。目元も隠れるぐらいに髪で前が隠れているが、鴉の濡れ羽のように艶やかな長い髪をしている。深窓の令嬢すら思わせる空気を纏っていて、一瞬声をかけるべきか宮園は悩む、が。
「あー……大貴族シリーズちょっと読んだんだけど、あれってどれから読めば良かったんだっけ……」
前髪に隠れていた彼女の瞳が、見開かれたかと思うと浦添は急に立ち上がり宮園の肩をガバッと掴んでまくし立てた。急に近づかれたものだから、引き離すこともできず。鼻孔を彼女の香水がくすぐるなか、宮園は一方的に話しかけられる。
「読んでくれたんですかっ!うんうん、やっぱりシリーズものってちゃんと第一巻から読みたいですよね!『季節限定ショコラティエ事件』が一番最初で、次が『期間限定エクレア事件』なんですよ!その次が『毒入りアイスクリーム事件』で、そっから先が単行本未収録なんです、逆順で読んでも大丈夫ってみんな言うけどやっぱり最初から読みたいでしょう、あーっ、そういえば記憶喪失探偵シリーズもどこから読むか混乱したんですよね私、最初に掴んだのが本編の中盤ぐらいで登場人物のほとんどが分かんなかったんですよね……宮園さんも読んだりしましたかっ!?」
よくもまぁ、これだけの長台詞を一人で喋れるものである、と宮園は変に感心してしまう。言葉を頭の中で処理するのが追いつかず、彼の返事は遅れた。
「あー……そっちはまだ読んでないかな。今度読んでみる」
あっけにとられた宮園の様子を見て、『浦添優子』は自分の行動を顧みる事になる。
「あっ……あうぅ……すみません……また驚かせてしまいました……」
「いや、いいんだけど。受験が終わったら読んでみようかな」
「あ……そうでした。宮園委員長、今年で受験ですね。好きな本が……読めないのは……嫌だなぁ……」
「確かに、最近は勉強漬けだよ。なかなか好きな本なんて読めないね」
この部室に入ってから、浦添が読書以外の事をしているのを見ていない。本の虫、という感じなのだろう。
「それで、活動予定はどうしましょうか?」
背後のわちゃわちゃした動きが止まったのをなんとなく感知した宮園は、3人に問いかける。すると、神田が作業していたノートPCを見せてきた。どうやら、イラストソフトを起動しているようだ。
「同人誌、って聞いた時に考えたんですよ。自分たちをモチーフにしてキャラを描いてみようって」
「ちょっと見て良いですか?」
マウスホイールのローラーを動かし、ページを数枚見る。女子高生が部活を称して好き勝手するギャグ漫画。ヤンキーっぽいが優しい3年生、色気はあるものの、どちらかと言うとオタク気質の2年生、寡黙だが好きな本の事になると周りが見えなくなる1年生。
「題材というか。キャラクターのモデルは君たちですか?」
「おお即答」
「どことなく見た目が似てた……から……」
部室に入った時から。否、あるいは今日の昼頃に同学年の笹倉が歩いているのを廊下で見かけたタイミングで既に、宮園は違和感を覚えていた。『彼女たち』は、先週もこうだったっけか。
部室内に置かれた資料のうち、おそらくSF研の棚だろうと思しき箇所を宮園は見つける。その部分だけ、本のサイズが文庫本程度に小さくなっているためだ。男主人公もののハーレム系小説、らしい。タイトルや挿絵からして、どちらかというと男子向けの書籍、という印象を受ける。女子生徒は読まないはずだ、とまでは言わないが、どうにも不自然な感じを受ける。
「こんなこと急に言って、変だと思われそうだけど……部員に変更がありましたっけ?男子生徒が居た気がするんですけど」
――沈黙。しかし、神田が目を見開いて驚く。
「な……そんなことはないでゴザルよ!?」
「どうした神田、口調が変ダゾ」
自分でも荒唐無稽な事を言っているのは、宮園も理解している。だけど、一度口にしてしまえば、思い出せることは有るのだ。
「確か僕は、笹倉さんを『見上げてた』気がするんですよね。今は自然に『目線が合う』から……なんだか急に身長が変わったみたいに感じたんです」
笹倉は咥えていたキャンディを、ガリッと割って口を閉ざしている。やっぱり圧があるけど、ひょっとして無意識にやっているのだろうか、と宮園は思った。
「神田志保さん……さんでいいのかな、口調というか言動がヘンテコは元からなんですけど、なんか極端に女の子っぽくアピールしている気があるというか……」
宮園はなるべく口に出して、不安を確信に変えてゆく。先週、浦添優子と話した記憶はある。だが、今みたいに身体を急に抱き着くなどしてきただろうか。――確かに、先週の3人と今目の前にしている彼女らは何かが違うのだ。
「だから、女子部員3人が新しく入ったのかなぁ……と思ったけど、そんな報告は受けてないんですよね。SF研の部員は今年の4月から変わらず、ずっと3人のままで、身長や体格が明らかに記憶と違うから変装ってわけでもない」
そこまで言って、宮園は常識的な結論が出せない事に気が付く。分からないが、3人の反応からして見当違いなことを言っているわけではないだろう。
「これって……どういうことなんですか?」
女子たちが3人とも、互いの顔を見合わせる。ふう、と一息ついて最初に喋ったのは神田だった。
「オイラ達も良く分からないんでヤンスよ。ほら、先週委員長に提案頂いて書き始めた同人誌。これをもう一度よく見て欲しいでヤンス」
宮園がもう一度よく漫画を読み進める。脚色こそあれど、彼女らの体格、髪型、性格などがそのまま描かれているように見える。――待てよ、と彼は今更のように気が付く。
「瞳の色が水色や緑色の人なんて、今までの学校生活で居たか……?」
全員が首を横に振る。そんな人物が居たら、新入生で入った頃から同級生の話題の種だろうに。それに、この場には金髪、茶髪、黒髪の3人が居るが全員地毛。そのことに違和感を抱かなかったことに、神田は当惑した。校則で髪を染めるのは禁止、ただし地毛が黒以外なら認められる。だが、今までの学生生活で金髪の生徒など居た試しがない。
「地毛がそんなカラフルな人、今まで学校で見た事なかったはずなのに、全然気が付かなかった……」
「というか、俺や勇も、タモちゃんに言われるまで気が付かなかったんだよ」
「一番初めは、自分の部屋で描いてたのがキッカケで。初めの日は元に戻っちゃったんだけど、何度か描くうちに『この姿』で居られるようになったんです」
浦添はなにやら部室から本を取り出す。昔のSF研の部誌、年代を見るとかなり過去に印刷されたバックナンバーのようだ。蛍光ペンで印字に記されている部分には『世界の記録媒体へのアクセス方法』。周りに書かれている図画が、明らかにオカルティックな雰囲気を醸し出している。
「浦添先輩の絵での変化は、本当に偶然だったんです……だから、この特殊な条件をより確実なものに変更するために色々とやりました……ほら、部室のドアにも……書かれてた通りです。SF研の頭に……『T』を書いて。つまりはそういう風に……世界を『再定義』したんです」
「何を……言って……?」
話のスケールがデカすぎて、宮園はついていけないと思う。
「そこは『な、なんだってー!』って言って欲しかったんですけど……」
「オカルトは昔流行ってたけどナァ」
多分何かのネタだろうが、宮園には拾いきれない。
「ただ困った事に……このアカシックレコード……『世界を定義するデータベース』への書き込みは……完璧にはできなかったんです。委員長が異常に気付いたのが……その証拠です。一度エラーが出たら……システムはバックログを参照して元に戻す……つまり私たちは男に戻ってしまう」
浦添は、最後のセリフを悩ましく口にする。色々と試したが、戻る条件や維持する方法などが未だにハッキリしていないとのこと。
「女子に変身した、って他の人には知られていないんですよね?」
「まァ、そんなのがバレりゃあ大騒ぎになるシな。……というより、委員長が初めて気が付いたんだよ、俺たちが女子に変身してるって」
突如、浦添が何かを思いついたかのように、オカルト研のバックナンバーをもう一度指で追う。目的の文章を見つけ、宮園に突き出してきた。あまりの勢いに一瞬たじろぐも、指で指示している場所に目を通す。
「ええと、ここですか?……『アカシックレコードには、並行世界の記録も当然含まれる。ユーザーでありながら、データの一部である我々が世界を書き換えようとしても、DBは変更を最小限に抑えようとする』」
IT情報の授業のような内容。オカルティズムな内容に、急にデジタルな分析が加えられたことに宮園は少し意外だという感想を持った。更に無言で読み進める。
『アカシックレコードにアクセスできた時点では、ユーザーはデータへの書き込みが出来ない。仮に別の人間に変身するよう世界を書き換えたつもりでも、「元々その姿だった世界」にアストラル体が移動しているだけでしかない。このため、変化はクロック数が一巡するまでに修正される』
「時間経過で元に戻る、っていうのはこれですか」
宮園の疑問に、1年の浦添が頷く。更に下に文章が続いていた。
『だが、自動的に修正が行われることを逆に利用して、改竄を固定化することが可能であることが判明した。データの容量削減と圧縮のため、我々の存在する世界と類似する世界では、並行世界同士が「接触している」。そしてその繋ぎ目となるデータ(ここでは【観測者】と定義)が、世界をどのように認識・観測しているかで世界を分岐させている』
似ているデータや、連続したデータを一通りにまとめる事で圧縮できる、というのはいつかの授業で聞いた覚えがある。画像データの話だったとは思うが、と宮園が回想。
『アストラル体が並行世界に移動し、1つの肉体に2人分の魂が存在する、矛盾が生じている状態では、【観測者】は2つの世界を同時に認識することになる。この時、【観測者】の認識がどちらかの世界に傾くことで、魂の存在が移動先の世界に固定される。言わば、【観測者】がトロッコのレールを切り替えることで別世界に移動が可能になるのだ』
説明用の絵が描かれてあるページ。トロッコを切り替える棒人間の絵だった。――内容に対して、何の説明にもなっていない。むしろこれでは哲学実験のトロッコ問題でしかない。
『「我々」は、この事実を現在世界に遺す。「我々」の抜け殻は残るだろうが、意思は世界中心に向け旅を続ける。』
文章はそこまでだった。――読んだはいいものの、説明不足なSFモノ、という印象しか宮園は感じれなかった。こんなものを文化祭で出していて、果たして読む人は居たんだろうかというどこかニヒルな思いすら出てくる。
「この文章が……どうかしたんですか?」
だが、部活メンバーの2人の印象は違ったようで。腕組みをして考え、3年の笹倉が呟く。
「委員長だけなんだよナ、オレたちが変化したことを見破ったのッテ。だから、宮園がこの文章で言うところの【観測者】だと思うンダガ」
「その……SFモノの小説か何かの内容ですよね、コレ?まさか本当にそんなことがあるなんて信じているんじゃ……」
半笑いする宮園だったが、神田志保は浦添に問いかける。
「そ、それでっ!世界を固定する方法って……!」
「つっ……つまりは委員長に……『私たちは女子だ』って……認識させればいいんです」
沈黙が流れる。発言の意図を理解できなかった宮園は、他の二人の顔を見るが、どちらもキョトンとした表情のままであった。
「そうですか……じゃ、じゃあ……恥ずかしいけど……僕から……」
そう言うと、浦添はパイプ椅子に座り込む。俯いて赤面した彼女は、おそるおそるといった感じで自らのスカートの裾を掴んで、ゆっくりと持ち上げ始めた。
「なっ……!?」
浦添は校則を守るタイプで、膝丈までスカートの裾部分が隠れるようにしていた。だが、徐々に露わになる彼女の太ももを見せつけられた宮園は、制服規則の意味を理解する。確かに、短くあっては男子生徒もたまったものではない、と。そして、浦添はスカートの奥に手を差し込んだ。何かを撫でる様な動きと共に、表情は切なげなものに変わる。
「ふうっ……♡はぁっ……♡見られてる……♡」
宮園は、自分が汗ばんでいることを感じる。空調のせいか、狭い部屋に4人も固まっているせいか。そう感じたのは、痴態を演じる彼女もだったらしく、やや乱暴に上着のワイシャツを脱ごうとしている。
「ちょっと……あつくなってきた……はぁっ……♡」
空いている右手で、上からボタンを1つ、2つと外し。胸元を開くと、そこに谷間があるのが見て取れる。紫色のブラジャーに包まれた彼女の膨らみは、浦添の手で握るのにピッタリぐらいの、丸みを帯びた美乳。上品さを湛えた彼女は、しかし粗雑にブラの上から胸を愛撫する。
「くっ……♡んっ……♡もっと……♡もっとぉ……♡」
美しい顔が快楽で歪むさまを、宮園は眺める事しか出来ない。人間は、予想外の事が起きると咄嗟に行動できないらしい、という誰かの薀蓄を思い出す。隣の笹倉も同じようだが、神田は何か得心して、PCとペンタブで操作を始めた。
「あっ……♡ぬれて、る……♡」
思わず漏れた声。ヌラヌラと濡れる彼女の指先を見て、宮園は自分の愚息に熱い血が通うのを止められなかった。仮に女子学生の居る場所でそんな事をしようものなら、翌日から居場所は無いであろう。しかし、この場にそれを咎める物は誰も居ない。
「は……あぁっ……♡ゆび……♡はひっ……♡たっ……♡」
クチュリ、と響く水音。荒くなる彼女の息。恥ずかしさで赤らんでいた顔は、だらしない表情になっていて、心ここにあらず。口元から涎が垂れているのにも気がついていない。
「きつい……けど、いい……♡これっ……♡はぁっ……♡」
指先を動かすのと同時に、浦添が悶える。乱雑な胸への愛撫、指を前後させるだけの単調な動き。だが、それだけでも彼女が気持ちよくなるのには充分だった。熱っぽい吐息が自分にかかっているかのように、宮園には感じられる。気づけば、制服のズボンから分かるぐらい自分のソレが立ち上がっている。誰にもばれないよう、こっそりと脚を組み替えた、だが。
「せんぱいっ……♡いいんですよっ……♡もっとボクをみて……♡」
見透かされていた事で、一瞬ヒヤリとする宮園。だが、浦添は胸元を見せつけるかのように前傾する。あえて扇情的に振る舞う彼女から、目が離せないでいた。
「はぁっ♡あぁん♡むねっ♡おまんこっ♡きもちいいっ♡はっ♡あっ♡ん゛っ♡」
喘ぎ声に濁りが混じった瞬間。ビクン、と彼女の体躯が跳ねる。一瞬声をおさえようとした浦添だったが、一度絶頂を迎えたカラダは、収まりがつかなくなっていた。
「ふっ♡むっ♡んんっ!――っ……♡」
くぐもった嬌声と、ペンタブの音だけが響き、宮園は自分がどこに立っているのかすら分からなくなる。むせ返る様な雌の香りが漂って、頭がじんわりと痺れるような感覚。目の前の彼女が、男であった可能性。いや、どうあったかは無関係に。今の浦添はどう見ても女子学生でしかなかった。
「……ぇへ♡おんなのこ……♡きもちいいっ……♡うん……♡いまのボクはおんなのこなんだっ……♡」
絶え絶えの息でそんな事を漏らす彼女を尻目に、いつの間にやら机に座っていた同学年の笹倉は、少しバツが悪そうに髪を弄っていた。宮園と目が合うと、その手弄りはさらに雑になる。
「あァ……うん、見たダロ?浦添優子は女、今はそう認識出来ているヨナ」
否、より正しく口にするならば、今の宮園は違う印象を覚えていた。
「――不思議な感じですね、一週間前は男、ってことはしっかり覚えている。けど今の彼女は間違いなく女になっている。2人の別人が居るのに、それが同じ人間だって感覚が不思議なんですけど……」
「むぅ……どうなんだろうナ、その場合。とはいえ、オレもああしないといけないのかネェ……」
流石に毎回自分にオナニーを見せつける必要があるのか、と宮園は疑問を抱く。羞恥心というものもあるだろうし。しかし、パイプ椅子をギシィと揺らしその疑問に答えたのは、興奮冷めやらぬ彼女。浦添優子は、机に座っていた笹倉七海に覆い被さるように抱き着いた。
「せーんぱい♡」
「なっ……痛っ!」
オンボロの長机に、二人そろって倒れこむ。宮園が見ると、体格上小さい3年の笹倉が1年の浦添に襲われているかのよう。実際に笹倉の方は、少し怯んだ様子だった。
「急に、何ダヨっ……!」
「1人でするのが恥ずかしいのは、分かります。ボクもそうだったけど、見られてるのが気持ち良くて……」
急に露出の性癖をぶち込まれてきた。宮園はどこか冷静にそんな事を考えていた。
「知るかよ、そんな事……」
見つめてくる視線から目をそらす、小柄な笹倉。
「でも、2人で一緒に気持ちいい事したら、恥ずかしいのも無くなりますよぉ」
「バッ……オマエッ……!?」
襲われそうになっているのを見て、宮園は慌てて止めようとする。しかし、いつの間にか背後に居た神田に先に制された。
「大丈夫ですよぉ、むしろ委員長にはよく『見て』もらわないと」
半ば無理やりに椅子に座らされる。これでいいのかと思ったものの、かといって事態を荒げるのも間違っているような気がしたため、宮園は諦めて静観する事に決めた。一応、部外者というのもある。
「っ……こんなの舐めて……楽しいかよ……んっ……♡」
「センパイのちょっぴり小ぶりなおっぱい、ボクは大好きですよ♡」
「お前の方が……あっ♡……大きいくせにっ……くそっ」
「ひゃうっ♡センパイ、ブラ越しに吸わないでくださいよっ♡ちゃんと外してあげますからぁ♡」
時に相手の乳首を攻めたて、時に相手の乳房を愛撫する。互いに横に向き合う形になって、机に寝ころんでいる2人の女子。甘い声が時々、室内に広がる。
「はぁ、オレももう少し……あんっ♡大きく描いてもらえたら……ひうっ♡良かったのにっ……」
「センパイは、大きい方がいいんですか。――今の笹倉センパイ、と~ってもカワイイのに」
「へっ……?カワイ……んにぁゃっ♡」
疑問への答えを待たず、彼女のワレメに指が入り込む。
「少しだけですけど、嬉しそうでしたよ♡さっきカワイイって言われたときに」
「言うナっ…クっ♡」
耳元で囁かれる誉め言葉で、笹倉の顔が赤らむ。どちらともなく、二人の少女が唇を近づけ、そして重なる。
「ん…ちゃぷ♡んむっ♡あっ……」
「ちゅっ♡ぺろっ♡――どうしたんですか、センパイ。物欲しそうな顔をして♡」
接吻を途中でやめた浦添が、挑発的な言い方をする。満足しきれない片方は、しかし求めることができない。
「ぅう、なんでお前にずっとしてやられてるんだよ……オレは」
「――ダメですよ、センパイ。甘えたくて、気持ちよくなりたかったら、しっかり言うんです……こんな風にっ♡」
「んんっ!?」
二度目のキスは、互いを求めあう激しいもの。唾液と唾液、舌と舌。相手を自分のものにせんとばかりに、抱き合った二人が重なる。
「じゅるっ♡あむぅ♡ふうっ♡んうっ♡」
「んっ♡んむっ♡むぅぅ♡」
実際にはそうでないにしても、宮園には甘い香りがしたように思えた。姉妹が甘えるような、しかし肉欲に溺れた、アンバランスな乱れ合い。
「ぷはぁっ♡んうぅ……ふふっ。センパイはいつも堂々としてて、格好いい。男の時、ボクはずっとそう思ってたんです」
「はぁ……はぁっ……ありがとう、よ」
「でも、不良っぽい恰好。あの服って疲れませんか」
笹倉は虚を突かれたかのように、言葉を失う。神田のペンタブ操作も止まった。浦添が、ゆっくりと彼女を抱きしめる。
「無理、してたんですよね?」
「そこまでの話じゃあねえよ……引っ込みがつかなくなっただけで。1年の頃、クソッタレ共を黙らせれば、それでよかったのにさ」
宮園が1年生の頃、隣のクラスが荒れていたのを思い出す。テストの成績が半端に良いものの、教師に従わない数人の生徒が授業をボイコットするなどして、学級崩壊しかけていたらしい。それが二学期の初めを境に、全員大人しくなったのを噂話で聞いた。
「喧嘩も別に得意じゃあねえさ。だけど見てくれだけ整えて、数人を一度ビビらせて大人しくさせりゃ充分だったんだよ」
「笹倉先輩と普段から接して思うのは、逆に不良っぽい格好なのが不思議なんですよ。……だけど、校舎裏でボクを助けてくれた時は、その姿が一番だったとは思います」
聞いていた宮園も合点が行く。普段からツッパリっぽい服装の同学年が居る事は知っているが、何か問題を起こしたという話は聞かない。あれは教師への反発というより、他の学生への圧力をかけるものだということ。――そんなことを、3年も続けていたとは。
「笑っちまったけどな、アレは。高1にもなって好きな漫画が買えないからって、カツアゲなんざするかよ」
「そんなもんですよ。――でも、ボクはとっても怖かったです。ずっとこんな生活が、3年間続くんだって思ってましたから。先輩が助けてくれて、部活に誘ってくれなかったら。学校がずっと嫌になってました」
生徒会という組織はあるものの、学生同士のイザコザには殆どソレは関与できない。決して真面目というわけではない宮園だが、1年生のイジメを見過ごす事になっていたのを、少なからず申し訳なく思った。
「ボクがもし、女の子だったら。あるいは、先輩が女の人だったら。憧れ以上になってしまいそうでしたよ」
「あぁ……今は両方だけどよ」
軽く笑い合う2人。だが、次の一言には宮園も度肝を抜かれる。
「でも、今のセンパイはカッコよくはないんですよ」
「……は?」
「逆にボクが守ってあげたいぐらいに小っちゃくて、いやらしくて、可愛い女の子なんですもの♡」
「ちょっ……まっ……ひゃっ♡やめてっ♡ひゃめろぉっ♡」
再び、膣への攻めが始まる。指が二本、三本と水音と共に入り込み喘ぎ声が響き渡る。
「あっ♡やっ♡くうんっ♡んんんぅ♡やめっ♡うぁぁ♡」
「ふふっ。今のセンパイ、本当にえっちで……好きになっちゃいそうです♡」
脱力しきった笹倉の衣服を更に脱がし、スカートと制服をはぎとった浦添。グジュリ、と互いの肉壺が重なり合った。
「うぁぁっ♡はぁっ♡あうっ♡やめてっ♡やめてよっ♡」
「あぁっ♡センパイっ♡いますっごく女の子みたい♡かわいいっ♡」
甲高い嬌声が重なる。どちらの体液かが分からなくなるぐらい、お互いの肉体が触れ合い、擦れ合う。隣で物凄い勢いで神田が線画を描いているのが分かるが、彼女らからも目が離せずにいた。あの不良っぽい格好をした生徒が、少女のように声を上げて喜んでいる。
「ああう♡もうっ♡だめっ♡きてるっ♡」
「そう、そうですっ♡いっしょにっ♡イキましょうっ♡」
「あっ――ああああっ♡♡♡」
別々の2人が、全く動じのタイミングで跳ねる。潮が机に広がり、隙間から床にポタリと垂れてゆくのが宮園にも見て取れた。女同士の、雌同士の乱れ合い。実際に入り込んでいる訳ではないのに、自分自身も異様に興奮しているのが宮園にもわかった。
「……うぅぅ、くそっ、ばかぁ」
「そんなに涙目で色っぽく言われても、嬉しいだけですよっ♡」
「ひゃんっ♡」
再び抱き合い、二回戦になりそうな雰囲気すら出している。その時、宮園の隣で行われていた神田の作業が止まる。ペンタブを机に置き、神田がニヤリと笑った。
「ねぇ、委員長。ずっと人のエロい所ばっかり見てて、もどかしくなってそうですね」
「あっ……あはは……失礼。分かったよ、ここの部活には全員女子しか居なかった。記録上そうなってるんだからそうなんでしょう」
離席しようとした宮園。しかし、神田に肩を掴まれる。
「だーめ♡」
「へっ?」
「もう準備は出来たんです。折角だから、『宮園直』先輩にも楽しんでほしいんですよ?後は保存するだけ――」
PC画面のマウスポインタを神田が動かし、保存アイコンのフロッピーディスクが押される。瞬時に、宮園はくらりと眩暈がして――
――――――――――――――――――――――――――――――
椅子にぐったり座りこんでいた自分の状態を、『宮園奈緒』は確かめる。風紀委員で有る以上、あまりオシャレと称して校則ギリギリの格好は出来ない。膝下までしっかり隠れたスカートに、飾り気のないセーラー服、マニキュアができない分、しっかり手入れした爪――うん、『いつも通りの自分』だ。
「ねぇ、だいじょうぶ?」
頭上から、聞き覚えのある声が降ってくる。2年生の『志保お姉ちゃん』だ。確か部活の予算の関係で部室に来たんだっけ、と自分の記憶を奈緒は掘り返す。
「ちょっと気分が悪くなったのかも、ごめん。今は大丈夫だよ」
「よかったぁ……心配したんだよぉ」
志保ねぇがそう不安げな声をかけ、抱き着いてきた。大好きな、お姉ちゃんのにおい。小さい頃は、ずっとお姉ちゃんに抱き着いていたなぁ、と昔の事を思い出して。――『なんで、お姉ちゃんの方が年下なんだっけ?』
「ちょっと、おねえちゃん……ここ、学校の中だからっ……!」
「ぎゅーってされるの、嫌なの……?」
「いや、じゃ、ないけどっ……びっくりするよ……」
「えへへ、よかったぁ」
『志保お姉ちゃん』に優しく抱かれたまま、頭を撫でられる。この時間がいつも好きで、『私』の緊張やストレスがほぐれてしまう。だけど、今は少し気分が違った。体がくっついたときに、自分の身体に当たる胸の膨らみに、心穏やかではいられない。心臓が、ココロが、なんだかドキドキする。
「――あれぇ?スカートに、何か入れてる?」
自分の体温が、急激に下がるのを奈緒は感じる。隠そうとする動きよりも先に、志保にその先端部分を握られた。
「うぁっ♡」
「どうしたの、なにか変なものでも入ってるんじゃ……?」
「やめっ……あっ……♡」
志保は大胆にも、奈緒のスカートの内側にある『ソレ』を掴んだ。もう、否定のしようがない。ショーツからはみ出るように勃ち上がったペニス。見られてしまった、というショックで全身の血の気が無くなっていくのを、奈緒は感じていた。嫌われてしまう、そんな単語が頭をよぎる。しかし。
「――そっかぁ、お姉ちゃんでドキドキしちゃった、かな?」
いつもの優しい笑顔で、志保姉ちゃんが囁く。だけど、耳元に触れるお姉ちゃんの吐息が。くっついている身体が。どうしても奈緒の興奮を抑えさせてはくれない。何故だか、彼女の手から宮園は逃げられなかった。
「ごめんね、知ってたんだ。奈緒ちゃんの身体が、ちょっとお姉ちゃん達と違うってこと」
「それ、って……んうぅっ♡♡」
志保のなめらかで、柔らかい指先に奈緒のアソコが握られていて。何故か、手慣れているかのように肉棒を扱かれる。いつも奈緒が、隠れて自室で行っている自慰よりも、射精までの昂ぶりが早い。抑えが効かなくなり、何とか堪えようと歯を食いしばった、が。
「そんな悲しそうな顔しないでっ♡ほら、がーんばれ♡がーんばれ♡いーっぱいお姉ちゃんに甘えていいんだよっ♡♡♡♡」
「はぁん♡んむぅ♡もうっ♡」
ペニスを弄られるのと同時に、奈緒の制服越しに『初めて感じるような』胸への愛撫の感覚。いつもより乱暴で、だけどじんじんしてキモチイイ。知っている感覚なら耐えられても、知らないものに耐えようがない。限界が、すぐそこまで来ていた。
「あっ♡あ゛あっ♡♡♡ひぁぁあっ♡♡♡♡」
「わぁっ♡すっごい♡いーっぱいでてるぅ♡」
潮吹きと射精が同時に起こり、全身が爆発したかのようにぼやけた暖かさで満たされる。射精したときの喪失感よりも、イッたあとの快楽がじんじんと続く。こんなのは初めてだ、と宮園は感じ……思案する。
「はぁっ……ハァっ……ぐっ……待って……」
『宮園直』は思い出す。神田の描いた絵。体つきは明らかに女子生徒に見えるが、股間部分に男性器が付いている少女が描かれていた。あれが、『宮園奈緒』だと直感で理解する。
「なにすんのさ……こんなにする必要、ある?」
「――やっぱり、委員長は改変の影響が薄いってことですね。ともあれ、最後まで付き合ってもらいますよ、『奈緒ちゃん』」
その一言で、考えていたことが一瞬にしてぼやける。纏まりかけていた思考が、一瞬にして靄に溶けてしまう。――今、何を考えようとしていたのだろう。
「うん……やっぱり、男子とセックスするのは、流石に抵抗あるけど……男の娘とか、ふたなりとかなら抵抗感が薄くなるのかな……?」
『志保お姉ちゃん』が、良く分からない事を言っている。――そして、志保の口がそそり立つソレを飲み込む。亀頭から竿の一部まで、彼女の口に飲み込まれて。生暖かい感触が局部から伝わり、奈緒は悶えるような声しか出せない。
「くぅう♡きたないよっ♡やめてっ♡♡♡……やめ、ろぉっ♡♡」
「ふごいっ♡んんっ♡じゅぽっ♡♡♡んじゅるる♡♡♡」
床に座り込んでフェラチオをする『志保お姉ちゃん』の表情。いつも笑顔で、優しくて――そんな志保お姉ちゃんが、今日だけはなんだか違って見えた。雌であるかのように。自分の性を、全身でアピールしているかのようで。
体が痺れたかのように、奈緒は逃げようという動きが出来ない。自分の精液で汚れてしまったスカートが志保によってまくられて、ショーツをもずらされる。志保も、自身の下着を脱いでスカートをたくし上げた。
「委員長が悪いんですよぉ……?男の時の姿をちょっと弄っただけで、こんなに可愛い姿になるんですから♡やっぱり素材が良いんですよ♡♡♡」
「――絵の才能があるのは認めるけどお前怖いよ!?」
一瞬だけ、宮園ナオは正気を取り戻しかける。しかし、既に神田の淫壺は濡れていて。たくし上げたスカートで、宮園の局部を隠すようにして座り込み、そして。
「うぁっ♡」
「ひぃぅ♡――んぅぅ♡ぷふぅ、はいっ、たぁ♡」
対面座位の形で、性交が始まる。痛みのために、神田は宮園の体に強く抱き着いた。ようやく自分の身体が動くことに、『奈緒』は気が付く。だが、今更突き飛ばす気持ちにはなれなかった。
「だいじょうぶ、かよ……痛いでしょソレは……」
「はぁっ……はぁっ……少し、落ち着いたッス」
男口調に戻ってしまった神田志保。呼吸も絶え絶えな事から、結構な激痛なのではないかと推測して、宮園は背中をさする。『妹』としての恋慕の情だろうか。
「本来の口調はどっちなんだよ、普段からキャラ付けでヤンスとか言ってるんじゃ……」
「ふんっ♡んうぅ♡」
「ぐぅっ♡きゅうにっ♡うごくなぁっ♡」
神田が動き出すのに対抗するように、宮園も腰をゆっくり動かす。パン、パンッと肉と肉のぶつかる音。一瞬、上下の動きが噛み合うと互いから洩れる喘ぎ声。どちらも少女の声で、知らぬ人が見れば女子生徒同士が乱れ合っているようにすら見える。
「あっ♡はっ♡あ゛っ♡♡♡やんっ♡♡♡♡いいん♡ちょっ♡すごっ♡い゛いっ♡♡♡♡う゛あぁっ♡♡♡♡」
「うぁっ♡ひやぁっ……♡からだ、ぽわぽわするっ♡♡♡」
男性器を突き上げ、締まる膣にぶち込みながらも、女性としての昂ぶりも起こっている。本来ならば片方の性別でしか味わえない快楽に、脳が侵される。どちらが犯されているのか、宮園も分からなくなってきていて。肉体は欲望には抗えず、宮園は自らの蜜壺を慰め始めた。
「うあぁっ♡ぐぅぅ♡♡♡むうぅぅ♡♡♡」
「あぁん♡すごくえっち♡♡♡♡♡かわいいっ♡ぼくもっ♡♡♡♡あああっ♡♡♡♡」
可愛いと言ったのは、誰に対してだろうか。鏡に映った誰かなのか、それとも今の自分なのか。宮園の思考も、もはや限界に達していて。だが、絶頂がすぐそこであることだけ理解している。
「射精るっ♡♡♡もうむりっ♡♡♡♡いくっ♡♡♡くるっ♡♡♡」
「だしてっ♡かわいい顔♡♡みせてっ♡♡♡いってっ♡♡いっしょにっ♡♡♡きもちよくなってっ♡♡♡♡」
爪が立つほどに、体を締め付ける。ぐっと全身に力が漲り、そしてすべてが放出された。
「イ゛っ――♡♡♡♡♡ああっ♡♡♡♡♡♡うあぁっ♡♡♡あ゛あ゛ああっ――♡♡♡♡♡♡」
「あ゛っ♡♡♡きてる゛っ♡♡♡♡膣内にっ♡♡♡♡あ゛ぁぁっ♡♡♡♡♡」
獣のように、生娘のように、2人は達する。部屋に充満する、雌の匂いと僅かに雄の匂い。フェロモンで充満されたこの部屋に、正気を保つ者は居ない。ただ体が疲れ果てるまで、互いを求めあう4人が居るのみであった。
「もしもーし」
先週と同じく、地学準備室のドアを3回ノック。ドア部分をよく見ると、SF研のタグもつけられている。
「……ん?」
『SF研』と書かれているタグの、一番左側にキズがある。クロスマークのようだが、片方の線は交わるところで止まっている。Xの左上が欠けている、Tの文字のような……
「――ちわ。何か用?」
ガラリ、とドアが開き部員と目が合う。先週と同じように、一瞬宮園は身構えてしまう。時折、同級生に不良と思しき生徒が歩いているのを見かけたりする。『彼女』だろうか。
「っと、すいません。先週のSF研の活動予定に関する相談なんですけど」
膝上ギリギリまで引き上げたスカートに、ニーハイ。制服のブレザーにパーカー付きコートを重ね着という、校則ギリギリの姿で登校している、不良生徒の噂すらある『笹倉七海』。同学年の人物と言えども、なんだか話しがたい印象を受ける。先週も気圧されてばかりだったし、と宮園は思い起こす。
「アー、あの話カァ。良いよ、入リナ」
ひらひらと手招きする彼女。ツインテールに結んでいる髪を揺らし、笹倉は部室に入った。もう少し、仏頂面で居ないで欲しいなと宮園は思う。ただでさえ目つきで怯むし、声は女子と思えないぐらい偶にドスが効いてるし。
「あ、そうだ」
ふと立ち止まった笹倉が、ブレザーの胸ポケットから何かを取り出す。スタンガンでも出てくるのかと宮園は身構えた、が。
「ほら、ペロペロキャンディ」
「……あ、ありがとう」
おずおずと宮園が包み紙を破いて放り込むと、プリン味の飴が甘ったるく口の中で溶ける。笹倉ももう一本取り出して、口に咥えた。
「いつもお菓子を持ち歩いてるんですか?」
「マアね」
部室内は今日も3人。机のノートPCで作業しているのと、本を読んでいるのと、不良で3人。
「委員長さん、いらっしゃい。お姉ちゃんに何か用かしら?」
「……?」
椅子から立ち上がり、来客である宮園を見かけるとぴょんぴょんと跳ねる神田。サイド三つ編みヘアーの彼女が、姉を名乗っている。胸元には良く分からないが、やたらと大きいピンク色のリボンが付いていた。数秒、完全に停止した宮園は、ようやく声を絞り出す。
「おねえ、ちゃん?いや、そのリボン何ですか?」
「ふふーん♪これはお姉ちゃんが、皆を守るために必要な装備なのです」
「…………えっ?」
完全に当惑している宮園に、部活の先輩である笹倉が助け舟を出してくれる。
「日曜日の午前に、魔法少女のアニメやってるダロ。主人公の魔法少女のコスプレがあのリボン。作中で主人公の娘が、大人になりたいと背伸びした結果、皆に姉を名乗っているらしいゾ」
「なかなか、ぶっ飛んだ設定ですね……人気なんですか?」
「大きなお友達にナ。みんな弟になりたがってる」
「ソレ色々と大丈夫なんですか……?」
こうしてみると、『彼女』は意外に長身だ。体を曲げて鞄を弄っている様子が目に入る。……むにゅりと主張する胸元の膨らみで、宮園は一瞬目が留まってしまった。目ざとく、『神田志保』はニヤリと笑う。
「あっ……♡見ちゃいました?弟クンのえっち♡」
「ちっ、違わい!誰が弟じゃ!」
笹倉が近づいてくる。ケジメを付けられるのかとヒヤリとしたが、彼女はむしろ神田の方に近づいて彼女の胸をはたく。
「可愛い後輩の無駄な贅肉だよ、ぺしぺし」
「ちょっとぉ!?そこ叩かないで下さいよぉ!?意外と痛いし!」
「可愛い子には鞭を与えよ、古事記にもそう書かれている」
「イヤーッ!グワーッ!アバーッ!」
「……仲いいんですね君たち?」
多分内輪の会話で盛り上がっているのだろう、しばらく相談できなさそうだ。諦めて宮園がそっぽを向くと、また本を読み続けている少女が居た。目元も隠れるぐらいに髪で前が隠れているが、鴉の濡れ羽のように艶やかな長い髪をしている。深窓の令嬢すら思わせる空気を纏っていて、一瞬声をかけるべきか宮園は悩む、が。
「あー……大貴族シリーズちょっと読んだんだけど、あれってどれから読めば良かったんだっけ……」
前髪に隠れていた彼女の瞳が、見開かれたかと思うと浦添は急に立ち上がり宮園の肩をガバッと掴んでまくし立てた。急に近づかれたものだから、引き離すこともできず。鼻孔を彼女の香水がくすぐるなか、宮園は一方的に話しかけられる。
「読んでくれたんですかっ!うんうん、やっぱりシリーズものってちゃんと第一巻から読みたいですよね!『季節限定ショコラティエ事件』が一番最初で、次が『期間限定エクレア事件』なんですよ!その次が『毒入りアイスクリーム事件』で、そっから先が単行本未収録なんです、逆順で読んでも大丈夫ってみんな言うけどやっぱり最初から読みたいでしょう、あーっ、そういえば記憶喪失探偵シリーズもどこから読むか混乱したんですよね私、最初に掴んだのが本編の中盤ぐらいで登場人物のほとんどが分かんなかったんですよね……宮園さんも読んだりしましたかっ!?」
よくもまぁ、これだけの長台詞を一人で喋れるものである、と宮園は変に感心してしまう。言葉を頭の中で処理するのが追いつかず、彼の返事は遅れた。
「あー……そっちはまだ読んでないかな。今度読んでみる」
あっけにとられた宮園の様子を見て、『浦添優子』は自分の行動を顧みる事になる。
「あっ……あうぅ……すみません……また驚かせてしまいました……」
「いや、いいんだけど。受験が終わったら読んでみようかな」
「あ……そうでした。宮園委員長、今年で受験ですね。好きな本が……読めないのは……嫌だなぁ……」
「確かに、最近は勉強漬けだよ。なかなか好きな本なんて読めないね」
この部室に入ってから、浦添が読書以外の事をしているのを見ていない。本の虫、という感じなのだろう。
「それで、活動予定はどうしましょうか?」
背後のわちゃわちゃした動きが止まったのをなんとなく感知した宮園は、3人に問いかける。すると、神田が作業していたノートPCを見せてきた。どうやら、イラストソフトを起動しているようだ。
「同人誌、って聞いた時に考えたんですよ。自分たちをモチーフにしてキャラを描いてみようって」
「ちょっと見て良いですか?」
マウスホイールのローラーを動かし、ページを数枚見る。女子高生が部活を称して好き勝手するギャグ漫画。ヤンキーっぽいが優しい3年生、色気はあるものの、どちらかと言うとオタク気質の2年生、寡黙だが好きな本の事になると周りが見えなくなる1年生。
「題材というか。キャラクターのモデルは君たちですか?」
「おお即答」
「どことなく見た目が似てた……から……」
部室に入った時から。否、あるいは今日の昼頃に同学年の笹倉が歩いているのを廊下で見かけたタイミングで既に、宮園は違和感を覚えていた。『彼女たち』は、先週もこうだったっけか。
部室内に置かれた資料のうち、おそらくSF研の棚だろうと思しき箇所を宮園は見つける。その部分だけ、本のサイズが文庫本程度に小さくなっているためだ。男主人公もののハーレム系小説、らしい。タイトルや挿絵からして、どちらかというと男子向けの書籍、という印象を受ける。女子生徒は読まないはずだ、とまでは言わないが、どうにも不自然な感じを受ける。
「こんなこと急に言って、変だと思われそうだけど……部員に変更がありましたっけ?男子生徒が居た気がするんですけど」
――沈黙。しかし、神田が目を見開いて驚く。
「な……そんなことはないでゴザルよ!?」
「どうした神田、口調が変ダゾ」
自分でも荒唐無稽な事を言っているのは、宮園も理解している。だけど、一度口にしてしまえば、思い出せることは有るのだ。
「確か僕は、笹倉さんを『見上げてた』気がするんですよね。今は自然に『目線が合う』から……なんだか急に身長が変わったみたいに感じたんです」
笹倉は咥えていたキャンディを、ガリッと割って口を閉ざしている。やっぱり圧があるけど、ひょっとして無意識にやっているのだろうか、と宮園は思った。
「神田志保さん……さんでいいのかな、口調というか言動がヘンテコは元からなんですけど、なんか極端に女の子っぽくアピールしている気があるというか……」
宮園はなるべく口に出して、不安を確信に変えてゆく。先週、浦添優子と話した記憶はある。だが、今みたいに身体を急に抱き着くなどしてきただろうか。――確かに、先週の3人と今目の前にしている彼女らは何かが違うのだ。
「だから、女子部員3人が新しく入ったのかなぁ……と思ったけど、そんな報告は受けてないんですよね。SF研の部員は今年の4月から変わらず、ずっと3人のままで、身長や体格が明らかに記憶と違うから変装ってわけでもない」
そこまで言って、宮園は常識的な結論が出せない事に気が付く。分からないが、3人の反応からして見当違いなことを言っているわけではないだろう。
「これって……どういうことなんですか?」
女子たちが3人とも、互いの顔を見合わせる。ふう、と一息ついて最初に喋ったのは神田だった。
「オイラ達も良く分からないんでヤンスよ。ほら、先週委員長に提案頂いて書き始めた同人誌。これをもう一度よく見て欲しいでヤンス」
宮園がもう一度よく漫画を読み進める。脚色こそあれど、彼女らの体格、髪型、性格などがそのまま描かれているように見える。――待てよ、と彼は今更のように気が付く。
「瞳の色が水色や緑色の人なんて、今までの学校生活で居たか……?」
全員が首を横に振る。そんな人物が居たら、新入生で入った頃から同級生の話題の種だろうに。それに、この場には金髪、茶髪、黒髪の3人が居るが全員地毛。そのことに違和感を抱かなかったことに、神田は当惑した。校則で髪を染めるのは禁止、ただし地毛が黒以外なら認められる。だが、今までの学生生活で金髪の生徒など居た試しがない。
「地毛がそんなカラフルな人、今まで学校で見た事なかったはずなのに、全然気が付かなかった……」
「というか、俺や勇も、タモちゃんに言われるまで気が付かなかったんだよ」
「一番初めは、自分の部屋で描いてたのがキッカケで。初めの日は元に戻っちゃったんだけど、何度か描くうちに『この姿』で居られるようになったんです」
浦添はなにやら部室から本を取り出す。昔のSF研の部誌、年代を見るとかなり過去に印刷されたバックナンバーのようだ。蛍光ペンで印字に記されている部分には『世界の記録媒体へのアクセス方法』。周りに書かれている図画が、明らかにオカルティックな雰囲気を醸し出している。
「浦添先輩の絵での変化は、本当に偶然だったんです……だから、この特殊な条件をより確実なものに変更するために色々とやりました……ほら、部室のドアにも……書かれてた通りです。SF研の頭に……『T』を書いて。つまりはそういう風に……世界を『再定義』したんです」
「何を……言って……?」
話のスケールがデカすぎて、宮園はついていけないと思う。
「そこは『な、なんだってー!』って言って欲しかったんですけど……」
「オカルトは昔流行ってたけどナァ」
多分何かのネタだろうが、宮園には拾いきれない。
「ただ困った事に……このアカシックレコード……『世界を定義するデータベース』への書き込みは……完璧にはできなかったんです。委員長が異常に気付いたのが……その証拠です。一度エラーが出たら……システムはバックログを参照して元に戻す……つまり私たちは男に戻ってしまう」
浦添は、最後のセリフを悩ましく口にする。色々と試したが、戻る条件や維持する方法などが未だにハッキリしていないとのこと。
「女子に変身した、って他の人には知られていないんですよね?」
「まァ、そんなのがバレりゃあ大騒ぎになるシな。……というより、委員長が初めて気が付いたんだよ、俺たちが女子に変身してるって」
突如、浦添が何かを思いついたかのように、オカルト研のバックナンバーをもう一度指で追う。目的の文章を見つけ、宮園に突き出してきた。あまりの勢いに一瞬たじろぐも、指で指示している場所に目を通す。
「ええと、ここですか?……『アカシックレコードには、並行世界の記録も当然含まれる。ユーザーでありながら、データの一部である我々が世界を書き換えようとしても、DBは変更を最小限に抑えようとする』」
IT情報の授業のような内容。オカルティズムな内容に、急にデジタルな分析が加えられたことに宮園は少し意外だという感想を持った。更に無言で読み進める。
『アカシックレコードにアクセスできた時点では、ユーザーはデータへの書き込みが出来ない。仮に別の人間に変身するよう世界を書き換えたつもりでも、「元々その姿だった世界」にアストラル体が移動しているだけでしかない。このため、変化はクロック数が一巡するまでに修正される』
「時間経過で元に戻る、っていうのはこれですか」
宮園の疑問に、1年の浦添が頷く。更に下に文章が続いていた。
『だが、自動的に修正が行われることを逆に利用して、改竄を固定化することが可能であることが判明した。データの容量削減と圧縮のため、我々の存在する世界と類似する世界では、並行世界同士が「接触している」。そしてその繋ぎ目となるデータ(ここでは【観測者】と定義)が、世界をどのように認識・観測しているかで世界を分岐させている』
似ているデータや、連続したデータを一通りにまとめる事で圧縮できる、というのはいつかの授業で聞いた覚えがある。画像データの話だったとは思うが、と宮園が回想。
『アストラル体が並行世界に移動し、1つの肉体に2人分の魂が存在する、矛盾が生じている状態では、【観測者】は2つの世界を同時に認識することになる。この時、【観測者】の認識がどちらかの世界に傾くことで、魂の存在が移動先の世界に固定される。言わば、【観測者】がトロッコのレールを切り替えることで別世界に移動が可能になるのだ』
説明用の絵が描かれてあるページ。トロッコを切り替える棒人間の絵だった。――内容に対して、何の説明にもなっていない。むしろこれでは哲学実験のトロッコ問題でしかない。
『「我々」は、この事実を現在世界に遺す。「我々」の抜け殻は残るだろうが、意思は世界中心に向け旅を続ける。』
文章はそこまでだった。――読んだはいいものの、説明不足なSFモノ、という印象しか宮園は感じれなかった。こんなものを文化祭で出していて、果たして読む人は居たんだろうかというどこかニヒルな思いすら出てくる。
「この文章が……どうかしたんですか?」
だが、部活メンバーの2人の印象は違ったようで。腕組みをして考え、3年の笹倉が呟く。
「委員長だけなんだよナ、オレたちが変化したことを見破ったのッテ。だから、宮園がこの文章で言うところの【観測者】だと思うンダガ」
「その……SFモノの小説か何かの内容ですよね、コレ?まさか本当にそんなことがあるなんて信じているんじゃ……」
半笑いする宮園だったが、神田志保は浦添に問いかける。
「そ、それでっ!世界を固定する方法って……!」
「つっ……つまりは委員長に……『私たちは女子だ』って……認識させればいいんです」
沈黙が流れる。発言の意図を理解できなかった宮園は、他の二人の顔を見るが、どちらもキョトンとした表情のままであった。
「そうですか……じゃ、じゃあ……恥ずかしいけど……僕から……」
そう言うと、浦添はパイプ椅子に座り込む。俯いて赤面した彼女は、おそるおそるといった感じで自らのスカートの裾を掴んで、ゆっくりと持ち上げ始めた。
「なっ……!?」
浦添は校則を守るタイプで、膝丈までスカートの裾部分が隠れるようにしていた。だが、徐々に露わになる彼女の太ももを見せつけられた宮園は、制服規則の意味を理解する。確かに、短くあっては男子生徒もたまったものではない、と。そして、浦添はスカートの奥に手を差し込んだ。何かを撫でる様な動きと共に、表情は切なげなものに変わる。
「ふうっ……♡はぁっ……♡見られてる……♡」
宮園は、自分が汗ばんでいることを感じる。空調のせいか、狭い部屋に4人も固まっているせいか。そう感じたのは、痴態を演じる彼女もだったらしく、やや乱暴に上着のワイシャツを脱ごうとしている。
「ちょっと……あつくなってきた……はぁっ……♡」
空いている右手で、上からボタンを1つ、2つと外し。胸元を開くと、そこに谷間があるのが見て取れる。紫色のブラジャーに包まれた彼女の膨らみは、浦添の手で握るのにピッタリぐらいの、丸みを帯びた美乳。上品さを湛えた彼女は、しかし粗雑にブラの上から胸を愛撫する。
「くっ……♡んっ……♡もっと……♡もっとぉ……♡」
美しい顔が快楽で歪むさまを、宮園は眺める事しか出来ない。人間は、予想外の事が起きると咄嗟に行動できないらしい、という誰かの薀蓄を思い出す。隣の笹倉も同じようだが、神田は何か得心して、PCとペンタブで操作を始めた。
「あっ……♡ぬれて、る……♡」
思わず漏れた声。ヌラヌラと濡れる彼女の指先を見て、宮園は自分の愚息に熱い血が通うのを止められなかった。仮に女子学生の居る場所でそんな事をしようものなら、翌日から居場所は無いであろう。しかし、この場にそれを咎める物は誰も居ない。
「は……あぁっ……♡ゆび……♡はひっ……♡たっ……♡」
クチュリ、と響く水音。荒くなる彼女の息。恥ずかしさで赤らんでいた顔は、だらしない表情になっていて、心ここにあらず。口元から涎が垂れているのにも気がついていない。
「きつい……けど、いい……♡これっ……♡はぁっ……♡」
指先を動かすのと同時に、浦添が悶える。乱雑な胸への愛撫、指を前後させるだけの単調な動き。だが、それだけでも彼女が気持ちよくなるのには充分だった。熱っぽい吐息が自分にかかっているかのように、宮園には感じられる。気づけば、制服のズボンから分かるぐらい自分のソレが立ち上がっている。誰にもばれないよう、こっそりと脚を組み替えた、だが。
「せんぱいっ……♡いいんですよっ……♡もっとボクをみて……♡」
見透かされていた事で、一瞬ヒヤリとする宮園。だが、浦添は胸元を見せつけるかのように前傾する。あえて扇情的に振る舞う彼女から、目が離せないでいた。
「はぁっ♡あぁん♡むねっ♡おまんこっ♡きもちいいっ♡はっ♡あっ♡ん゛っ♡」
喘ぎ声に濁りが混じった瞬間。ビクン、と彼女の体躯が跳ねる。一瞬声をおさえようとした浦添だったが、一度絶頂を迎えたカラダは、収まりがつかなくなっていた。
「ふっ♡むっ♡んんっ!――っ……♡」
くぐもった嬌声と、ペンタブの音だけが響き、宮園は自分がどこに立っているのかすら分からなくなる。むせ返る様な雌の香りが漂って、頭がじんわりと痺れるような感覚。目の前の彼女が、男であった可能性。いや、どうあったかは無関係に。今の浦添はどう見ても女子学生でしかなかった。
「……ぇへ♡おんなのこ……♡きもちいいっ……♡うん……♡いまのボクはおんなのこなんだっ……♡」
絶え絶えの息でそんな事を漏らす彼女を尻目に、いつの間にやら机に座っていた同学年の笹倉は、少しバツが悪そうに髪を弄っていた。宮園と目が合うと、その手弄りはさらに雑になる。
「あァ……うん、見たダロ?浦添優子は女、今はそう認識出来ているヨナ」
否、より正しく口にするならば、今の宮園は違う印象を覚えていた。
「――不思議な感じですね、一週間前は男、ってことはしっかり覚えている。けど今の彼女は間違いなく女になっている。2人の別人が居るのに、それが同じ人間だって感覚が不思議なんですけど……」
「むぅ……どうなんだろうナ、その場合。とはいえ、オレもああしないといけないのかネェ……」
流石に毎回自分にオナニーを見せつける必要があるのか、と宮園は疑問を抱く。羞恥心というものもあるだろうし。しかし、パイプ椅子をギシィと揺らしその疑問に答えたのは、興奮冷めやらぬ彼女。浦添優子は、机に座っていた笹倉七海に覆い被さるように抱き着いた。
「せーんぱい♡」
「なっ……痛っ!」
オンボロの長机に、二人そろって倒れこむ。宮園が見ると、体格上小さい3年の笹倉が1年の浦添に襲われているかのよう。実際に笹倉の方は、少し怯んだ様子だった。
「急に、何ダヨっ……!」
「1人でするのが恥ずかしいのは、分かります。ボクもそうだったけど、見られてるのが気持ち良くて……」
急に露出の性癖をぶち込まれてきた。宮園はどこか冷静にそんな事を考えていた。
「知るかよ、そんな事……」
見つめてくる視線から目をそらす、小柄な笹倉。
「でも、2人で一緒に気持ちいい事したら、恥ずかしいのも無くなりますよぉ」
「バッ……オマエッ……!?」
襲われそうになっているのを見て、宮園は慌てて止めようとする。しかし、いつの間にか背後に居た神田に先に制された。
「大丈夫ですよぉ、むしろ委員長にはよく『見て』もらわないと」
半ば無理やりに椅子に座らされる。これでいいのかと思ったものの、かといって事態を荒げるのも間違っているような気がしたため、宮園は諦めて静観する事に決めた。一応、部外者というのもある。
「っ……こんなの舐めて……楽しいかよ……んっ……♡」
「センパイのちょっぴり小ぶりなおっぱい、ボクは大好きですよ♡」
「お前の方が……あっ♡……大きいくせにっ……くそっ」
「ひゃうっ♡センパイ、ブラ越しに吸わないでくださいよっ♡ちゃんと外してあげますからぁ♡」
時に相手の乳首を攻めたて、時に相手の乳房を愛撫する。互いに横に向き合う形になって、机に寝ころんでいる2人の女子。甘い声が時々、室内に広がる。
「はぁ、オレももう少し……あんっ♡大きく描いてもらえたら……ひうっ♡良かったのにっ……」
「センパイは、大きい方がいいんですか。――今の笹倉センパイ、と~ってもカワイイのに」
「へっ……?カワイ……んにぁゃっ♡」
疑問への答えを待たず、彼女のワレメに指が入り込む。
「少しだけですけど、嬉しそうでしたよ♡さっきカワイイって言われたときに」
「言うナっ…クっ♡」
耳元で囁かれる誉め言葉で、笹倉の顔が赤らむ。どちらともなく、二人の少女が唇を近づけ、そして重なる。
「ん…ちゃぷ♡んむっ♡あっ……」
「ちゅっ♡ぺろっ♡――どうしたんですか、センパイ。物欲しそうな顔をして♡」
接吻を途中でやめた浦添が、挑発的な言い方をする。満足しきれない片方は、しかし求めることができない。
「ぅう、なんでお前にずっとしてやられてるんだよ……オレは」
「――ダメですよ、センパイ。甘えたくて、気持ちよくなりたかったら、しっかり言うんです……こんな風にっ♡」
「んんっ!?」
二度目のキスは、互いを求めあう激しいもの。唾液と唾液、舌と舌。相手を自分のものにせんとばかりに、抱き合った二人が重なる。
「じゅるっ♡あむぅ♡ふうっ♡んうっ♡」
「んっ♡んむっ♡むぅぅ♡」
実際にはそうでないにしても、宮園には甘い香りがしたように思えた。姉妹が甘えるような、しかし肉欲に溺れた、アンバランスな乱れ合い。
「ぷはぁっ♡んうぅ……ふふっ。センパイはいつも堂々としてて、格好いい。男の時、ボクはずっとそう思ってたんです」
「はぁ……はぁっ……ありがとう、よ」
「でも、不良っぽい恰好。あの服って疲れませんか」
笹倉は虚を突かれたかのように、言葉を失う。神田のペンタブ操作も止まった。浦添が、ゆっくりと彼女を抱きしめる。
「無理、してたんですよね?」
「そこまでの話じゃあねえよ……引っ込みがつかなくなっただけで。1年の頃、クソッタレ共を黙らせれば、それでよかったのにさ」
宮園が1年生の頃、隣のクラスが荒れていたのを思い出す。テストの成績が半端に良いものの、教師に従わない数人の生徒が授業をボイコットするなどして、学級崩壊しかけていたらしい。それが二学期の初めを境に、全員大人しくなったのを噂話で聞いた。
「喧嘩も別に得意じゃあねえさ。だけど見てくれだけ整えて、数人を一度ビビらせて大人しくさせりゃ充分だったんだよ」
「笹倉先輩と普段から接して思うのは、逆に不良っぽい格好なのが不思議なんですよ。……だけど、校舎裏でボクを助けてくれた時は、その姿が一番だったとは思います」
聞いていた宮園も合点が行く。普段からツッパリっぽい服装の同学年が居る事は知っているが、何か問題を起こしたという話は聞かない。あれは教師への反発というより、他の学生への圧力をかけるものだということ。――そんなことを、3年も続けていたとは。
「笑っちまったけどな、アレは。高1にもなって好きな漫画が買えないからって、カツアゲなんざするかよ」
「そんなもんですよ。――でも、ボクはとっても怖かったです。ずっとこんな生活が、3年間続くんだって思ってましたから。先輩が助けてくれて、部活に誘ってくれなかったら。学校がずっと嫌になってました」
生徒会という組織はあるものの、学生同士のイザコザには殆どソレは関与できない。決して真面目というわけではない宮園だが、1年生のイジメを見過ごす事になっていたのを、少なからず申し訳なく思った。
「ボクがもし、女の子だったら。あるいは、先輩が女の人だったら。憧れ以上になってしまいそうでしたよ」
「あぁ……今は両方だけどよ」
軽く笑い合う2人。だが、次の一言には宮園も度肝を抜かれる。
「でも、今のセンパイはカッコよくはないんですよ」
「……は?」
「逆にボクが守ってあげたいぐらいに小っちゃくて、いやらしくて、可愛い女の子なんですもの♡」
「ちょっ……まっ……ひゃっ♡やめてっ♡ひゃめろぉっ♡」
再び、膣への攻めが始まる。指が二本、三本と水音と共に入り込み喘ぎ声が響き渡る。
「あっ♡やっ♡くうんっ♡んんんぅ♡やめっ♡うぁぁ♡」
「ふふっ。今のセンパイ、本当にえっちで……好きになっちゃいそうです♡」
脱力しきった笹倉の衣服を更に脱がし、スカートと制服をはぎとった浦添。グジュリ、と互いの肉壺が重なり合った。
「うぁぁっ♡はぁっ♡あうっ♡やめてっ♡やめてよっ♡」
「あぁっ♡センパイっ♡いますっごく女の子みたい♡かわいいっ♡」
甲高い嬌声が重なる。どちらの体液かが分からなくなるぐらい、お互いの肉体が触れ合い、擦れ合う。隣で物凄い勢いで神田が線画を描いているのが分かるが、彼女らからも目が離せずにいた。あの不良っぽい格好をした生徒が、少女のように声を上げて喜んでいる。
「ああう♡もうっ♡だめっ♡きてるっ♡」
「そう、そうですっ♡いっしょにっ♡イキましょうっ♡」
「あっ――ああああっ♡♡♡」
別々の2人が、全く動じのタイミングで跳ねる。潮が机に広がり、隙間から床にポタリと垂れてゆくのが宮園にも見て取れた。女同士の、雌同士の乱れ合い。実際に入り込んでいる訳ではないのに、自分自身も異様に興奮しているのが宮園にもわかった。
「……うぅぅ、くそっ、ばかぁ」
「そんなに涙目で色っぽく言われても、嬉しいだけですよっ♡」
「ひゃんっ♡」
再び抱き合い、二回戦になりそうな雰囲気すら出している。その時、宮園の隣で行われていた神田の作業が止まる。ペンタブを机に置き、神田がニヤリと笑った。
「ねぇ、委員長。ずっと人のエロい所ばっかり見てて、もどかしくなってそうですね」
「あっ……あはは……失礼。分かったよ、ここの部活には全員女子しか居なかった。記録上そうなってるんだからそうなんでしょう」
離席しようとした宮園。しかし、神田に肩を掴まれる。
「だーめ♡」
「へっ?」
「もう準備は出来たんです。折角だから、『宮園直』先輩にも楽しんでほしいんですよ?後は保存するだけ――」
PC画面のマウスポインタを神田が動かし、保存アイコンのフロッピーディスクが押される。瞬時に、宮園はくらりと眩暈がして――
――――――――――――――――――――――――――――――
椅子にぐったり座りこんでいた自分の状態を、『宮園奈緒』は確かめる。風紀委員で有る以上、あまりオシャレと称して校則ギリギリの格好は出来ない。膝下までしっかり隠れたスカートに、飾り気のないセーラー服、マニキュアができない分、しっかり手入れした爪――うん、『いつも通りの自分』だ。
「ねぇ、だいじょうぶ?」
頭上から、聞き覚えのある声が降ってくる。2年生の『志保お姉ちゃん』だ。確か部活の予算の関係で部室に来たんだっけ、と自分の記憶を奈緒は掘り返す。
「ちょっと気分が悪くなったのかも、ごめん。今は大丈夫だよ」
「よかったぁ……心配したんだよぉ」
志保ねぇがそう不安げな声をかけ、抱き着いてきた。大好きな、お姉ちゃんのにおい。小さい頃は、ずっとお姉ちゃんに抱き着いていたなぁ、と昔の事を思い出して。――『なんで、お姉ちゃんの方が年下なんだっけ?』
「ちょっと、おねえちゃん……ここ、学校の中だからっ……!」
「ぎゅーってされるの、嫌なの……?」
「いや、じゃ、ないけどっ……びっくりするよ……」
「えへへ、よかったぁ」
『志保お姉ちゃん』に優しく抱かれたまま、頭を撫でられる。この時間がいつも好きで、『私』の緊張やストレスがほぐれてしまう。だけど、今は少し気分が違った。体がくっついたときに、自分の身体に当たる胸の膨らみに、心穏やかではいられない。心臓が、ココロが、なんだかドキドキする。
「――あれぇ?スカートに、何か入れてる?」
自分の体温が、急激に下がるのを奈緒は感じる。隠そうとする動きよりも先に、志保にその先端部分を握られた。
「うぁっ♡」
「どうしたの、なにか変なものでも入ってるんじゃ……?」
「やめっ……あっ……♡」
志保は大胆にも、奈緒のスカートの内側にある『ソレ』を掴んだ。もう、否定のしようがない。ショーツからはみ出るように勃ち上がったペニス。見られてしまった、というショックで全身の血の気が無くなっていくのを、奈緒は感じていた。嫌われてしまう、そんな単語が頭をよぎる。しかし。
「――そっかぁ、お姉ちゃんでドキドキしちゃった、かな?」
いつもの優しい笑顔で、志保姉ちゃんが囁く。だけど、耳元に触れるお姉ちゃんの吐息が。くっついている身体が。どうしても奈緒の興奮を抑えさせてはくれない。何故だか、彼女の手から宮園は逃げられなかった。
「ごめんね、知ってたんだ。奈緒ちゃんの身体が、ちょっとお姉ちゃん達と違うってこと」
「それ、って……んうぅっ♡♡」
志保のなめらかで、柔らかい指先に奈緒のアソコが握られていて。何故か、手慣れているかのように肉棒を扱かれる。いつも奈緒が、隠れて自室で行っている自慰よりも、射精までの昂ぶりが早い。抑えが効かなくなり、何とか堪えようと歯を食いしばった、が。
「そんな悲しそうな顔しないでっ♡ほら、がーんばれ♡がーんばれ♡いーっぱいお姉ちゃんに甘えていいんだよっ♡♡♡♡」
「はぁん♡んむぅ♡もうっ♡」
ペニスを弄られるのと同時に、奈緒の制服越しに『初めて感じるような』胸への愛撫の感覚。いつもより乱暴で、だけどじんじんしてキモチイイ。知っている感覚なら耐えられても、知らないものに耐えようがない。限界が、すぐそこまで来ていた。
「あっ♡あ゛あっ♡♡♡ひぁぁあっ♡♡♡♡」
「わぁっ♡すっごい♡いーっぱいでてるぅ♡」
潮吹きと射精が同時に起こり、全身が爆発したかのようにぼやけた暖かさで満たされる。射精したときの喪失感よりも、イッたあとの快楽がじんじんと続く。こんなのは初めてだ、と宮園は感じ……思案する。
「はぁっ……ハァっ……ぐっ……待って……」
『宮園直』は思い出す。神田の描いた絵。体つきは明らかに女子生徒に見えるが、股間部分に男性器が付いている少女が描かれていた。あれが、『宮園奈緒』だと直感で理解する。
「なにすんのさ……こんなにする必要、ある?」
「――やっぱり、委員長は改変の影響が薄いってことですね。ともあれ、最後まで付き合ってもらいますよ、『奈緒ちゃん』」
その一言で、考えていたことが一瞬にしてぼやける。纏まりかけていた思考が、一瞬にして靄に溶けてしまう。――今、何を考えようとしていたのだろう。
「うん……やっぱり、男子とセックスするのは、流石に抵抗あるけど……男の娘とか、ふたなりとかなら抵抗感が薄くなるのかな……?」
『志保お姉ちゃん』が、良く分からない事を言っている。――そして、志保の口がそそり立つソレを飲み込む。亀頭から竿の一部まで、彼女の口に飲み込まれて。生暖かい感触が局部から伝わり、奈緒は悶えるような声しか出せない。
「くぅう♡きたないよっ♡やめてっ♡♡♡……やめ、ろぉっ♡♡」
「ふごいっ♡んんっ♡じゅぽっ♡♡♡んじゅるる♡♡♡」
床に座り込んでフェラチオをする『志保お姉ちゃん』の表情。いつも笑顔で、優しくて――そんな志保お姉ちゃんが、今日だけはなんだか違って見えた。雌であるかのように。自分の性を、全身でアピールしているかのようで。
体が痺れたかのように、奈緒は逃げようという動きが出来ない。自分の精液で汚れてしまったスカートが志保によってまくられて、ショーツをもずらされる。志保も、自身の下着を脱いでスカートをたくし上げた。
「委員長が悪いんですよぉ……?男の時の姿をちょっと弄っただけで、こんなに可愛い姿になるんですから♡やっぱり素材が良いんですよ♡♡♡」
「――絵の才能があるのは認めるけどお前怖いよ!?」
一瞬だけ、宮園ナオは正気を取り戻しかける。しかし、既に神田の淫壺は濡れていて。たくし上げたスカートで、宮園の局部を隠すようにして座り込み、そして。
「うぁっ♡」
「ひぃぅ♡――んぅぅ♡ぷふぅ、はいっ、たぁ♡」
対面座位の形で、性交が始まる。痛みのために、神田は宮園の体に強く抱き着いた。ようやく自分の身体が動くことに、『奈緒』は気が付く。だが、今更突き飛ばす気持ちにはなれなかった。
「だいじょうぶ、かよ……痛いでしょソレは……」
「はぁっ……はぁっ……少し、落ち着いたッス」
男口調に戻ってしまった神田志保。呼吸も絶え絶えな事から、結構な激痛なのではないかと推測して、宮園は背中をさする。『妹』としての恋慕の情だろうか。
「本来の口調はどっちなんだよ、普段からキャラ付けでヤンスとか言ってるんじゃ……」
「ふんっ♡んうぅ♡」
「ぐぅっ♡きゅうにっ♡うごくなぁっ♡」
神田が動き出すのに対抗するように、宮園も腰をゆっくり動かす。パン、パンッと肉と肉のぶつかる音。一瞬、上下の動きが噛み合うと互いから洩れる喘ぎ声。どちらも少女の声で、知らぬ人が見れば女子生徒同士が乱れ合っているようにすら見える。
「あっ♡はっ♡あ゛っ♡♡♡やんっ♡♡♡♡いいん♡ちょっ♡すごっ♡い゛いっ♡♡♡♡う゛あぁっ♡♡♡♡」
「うぁっ♡ひやぁっ……♡からだ、ぽわぽわするっ♡♡♡」
男性器を突き上げ、締まる膣にぶち込みながらも、女性としての昂ぶりも起こっている。本来ならば片方の性別でしか味わえない快楽に、脳が侵される。どちらが犯されているのか、宮園も分からなくなってきていて。肉体は欲望には抗えず、宮園は自らの蜜壺を慰め始めた。
「うあぁっ♡ぐぅぅ♡♡♡むうぅぅ♡♡♡」
「あぁん♡すごくえっち♡♡♡♡♡かわいいっ♡ぼくもっ♡♡♡♡あああっ♡♡♡♡」
可愛いと言ったのは、誰に対してだろうか。鏡に映った誰かなのか、それとも今の自分なのか。宮園の思考も、もはや限界に達していて。だが、絶頂がすぐそこであることだけ理解している。
「射精るっ♡♡♡もうむりっ♡♡♡♡いくっ♡♡♡くるっ♡♡♡」
「だしてっ♡かわいい顔♡♡みせてっ♡♡♡いってっ♡♡いっしょにっ♡♡♡きもちよくなってっ♡♡♡♡」
爪が立つほどに、体を締め付ける。ぐっと全身に力が漲り、そしてすべてが放出された。
「イ゛っ――♡♡♡♡♡ああっ♡♡♡♡♡♡うあぁっ♡♡♡あ゛あ゛ああっ――♡♡♡♡♡♡」
「あ゛っ♡♡♡きてる゛っ♡♡♡♡膣内にっ♡♡♡♡あ゛ぁぁっ♡♡♡♡♡」
獣のように、生娘のように、2人は達する。部屋に充満する、雌の匂いと僅かに雄の匂い。フェロモンで充満されたこの部屋に、正気を保つ者は居ない。ただ体が疲れ果てるまで、互いを求めあう4人が居るのみであった。
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