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● 告白 ●

方言女子 × 告白

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現在時刻 午後5時20分。


        『…明日も、この時間、この教室。』


昨日そう告げられ俺はもう、既に教室で待機中だ。


昨日の彼女はとても可愛かった。


顔は隠れていたものの 耳は真っ赤で。

普段は明るすぎてうるさいくらいの彼女に
あんな THE・女の子 みたいな顔されたら意識してしまうに決まっている。


授業に集中なんて出来るはずもなく
今日は一日中思索にふけっていた。


告白された時の返事の仕方を考え
そもそも告白なのかと自分自身に問い正す。

そんなループを繰り返し
結局答えに辿り着かないまま時間が来てしまった。


本を開き 平然を装っているが
本の内容なんて頭に入ってくるわけがなかった。


文化部で放課後の活動がないはずの彼女は
帰りのSHR が終わったあと、何故か急ぎ足で教室を出ていった。

鞄は置いたままだから戻ってくるはずだが…。


こうして彼女の事ばかり考えていた時
教室のドアがガラガラッと音をたてて開いた。

反射的にドアの方を見てしまいそうになり
慌てて本に視線を移すものの、気になるものは気になるのでゆっくりとドアを見てみる。


そこに立っていたのは案の定彼女で
息が上がり頬は赤く、心なしかいつもより可愛く見えた。


「ひ、柊呂!ま、まだおったとね~…!」

声は裏返っていたし、目は泳いでいるし、なにより不自然。
明らかに緊張している。


「…九州が呼んだんだろ。」

冷静に。冷静に。 と鼓動が早まる心臓に言い聞かせて言う。


「そ、そうやったね!…あはは。」

震える声と引きつった笑み。

話が広がらなすぎる。


しかし不思議なもので

もどかしすぎるこの状況に慣れ始め
次第に緊張が解けていった。


俺くらいは冷静でいないと、話が前進しないどころか後退することは明白だった。


「そんなとこに突っ立たないでこっち来れば?」


「あっ、そ、そうやね!」


ドアのところでモジモジしていた彼女を呼ぶと
ゆっくりとこちらに歩いてくる。


しかし、俺の席の近くになると立ち止まって
またモジモジしだした。


「…これ。」


事前に机の中に仕込んでおいた紙袋。

昨日 貸すと約束していた短編集だ。


「あ!ありがとう!!」

彼女は両手でそれを受け取り、強ばっていた頬を緩ませる。


「それ、1冊は昨日言ってたやつ。
もう1冊は、九州が好きそうなやつ。」


「わぁあありがとう!早めに返すけん!」

簡単な説明をすると、
紙袋を覗きながら嬉しそうに笑う。

その興奮した様子に思わず釣られて笑ってしまう。


「そんなに急がなくていいよ。
返すのもいつでもいいし。」


「ほんと?ありがとう!
じゃあゆっくりしっかり読むけん、感想待っとって!」


ガッツポーズをして、ドヤ顔でそう言った彼女は
いつもと変わらない明るさだ。


「うん、楽しみにしてる。」

やっと調子が戻ってきたようで少しホッとする。

正直、呼ばれたのは本を貸すからだけだと思っていた。

しかしルンルンしているだけで一向に帰る気のない彼女を見て
話そうとしていたことは忘れているものの、話は終わってないのだと悟る。


「で、なんか話があるんじゃないの?」


こっちから振るしかないと思い、話しかける。


「へっ!?」


完璧な不意打ちだったようで、動揺して声が裏返った。


「九州が今日俺をここに呼んだのって
なにか話があるからだと思ってたけど、違うの?」


「えっ、えっと…その…。」


目を逸らし、またモジモジし始める彼女。

次の言葉が出るのをじっと待っていると
絞り出したような声で彼女が話し始めた。


「私が…もし…
柊呂のこと、好きやとしたら、どがんする…?」


これは…紛れもない告白の前兆。

そう心の中で確信した途端、心臓がドクドクと音を立て出した。


椅子に座ったまま、さりげなく彼女の方に体を向ける。


「…びっくりする。」


「そ、そういう意味やなくて!だからその、」


これは率直な感想だが、彼女の求める答えではないことは分かっていた。


「嬉しいよ。」


彼女の言葉を遮ってそう伝えると
驚いたように目を見開き、パクパクと口を開け閉めした。

明らかに焦っている。


彼女はバッと下を向いて、大きく、ゆっくりと深呼吸をした。

そして顔を上げ、俺を真っ直ぐに見据える。


「あの、私、ずっと前から

柊呂の事が、す、す好きっちゃん。

やけん、私と付きおーてほしいと……!」


半ば叫ぶようにそう言った彼女。

紙袋を持つその手は震えていて顔は真っ赤。
目をぎゅっと瞑り、俯いて俺の返事を待っている。


返事なんてものは決まっていた。


「…ありがとう、俺も九州のこと好きだよ。」


そう言った瞬間、彼女は驚き顔でこちらを見た。


「へ、ほ、ほんと…?嘘ついとらん…?」

「つくわけない。」


なぜか疑ってくる彼女に即答で否定する。


「ああありがとう…!むっちゃ嬉しか!!」


緊張の糸がほどけ、喜びと安堵の混ざった満点の笑みを向けてくる彼女に無性に恥ずかしくなる。


「うん、…よろしく、これから。」


少し照れながらそう告げると彼女は
目を潤ませながら笑った。


「うんっ!!」




---------------- キリトリセン ---------------- 


どうも、作者です。
2話目、読んでくださり感謝しかありません、ありがとうございます。


とりあえず、この話で一つ突っ込みたくなるところは

いやお前が告れよ、柊呂! ってところですよね。


確信した時点で男気見せて欲しいところだったんですが…。

どうしても方言で告白してもらいたかったので…これは私の責任です。すいませんでした。


いつか、告白された時の反応もちょっと書いてみたいと思っております。


九州の出番はまだあります!


引き続き、
脳内おっさん系 (ry を宜しくお願いします。
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