不死にて最弱から最強に昇る竜とともに。

れおさん

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2話

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 いくら大勢のゴブリンとあれどミニゴブリンであるため、素手で振り払うだけで数メートル飛ぶくらい弱い。
 しかし、油断してはいけない。この親玉に率いられているときのみ、ミニゴブリンは戦闘の仕方が変わったりする。
 指揮にそった動きをする以外にも、親玉の悪知恵が生かされた嫌な戦闘をすることが多い。
 その中でも最も注意すべきなのは__。

 「雑魚全員が短剣持っているということは毒をつけて切りつけるっていう知識を親玉が吹き込んだか」

 先ほどから竜をいじめていたときから短剣を持っているゴブリンがいたことには気がついていたが、何でも拾ったり、盗んだりするような奴でただ持ってましたという例のほうが多いので特に気にもしなかった。
 しかし、このミニゴブリンの親玉が指揮をすると毒を扱うという知識が発達するということは今までの情報で確定されていることであるため、あれで切りつけられると色々と後から自分が苦しい思いをすることになる。
 俺は油断することなく一匹ずつ丁寧に倒す。自分の着ている装備の隙間を短剣で刺されないように立ち回りながら一匹ずつ倒していく。
 ゴブリンはもともと不衛生な生活をしているので、こいつらが作り上げる毒は、人間が扱う毒の何倍もの効果がある。
 これに当たるとしばらく体調不良が続く上に、最悪抗体がないと死んでしまう事例もある。

 「ってことはこいつは毒がついた短剣でさっき散々切りつけられていたのにちょっと休んだら全く平気なのか」

 俺が来てからも少なくとも短剣攻撃を何十発ともらっていた。その上で体の傷を確認したときにはさらにそれ以上に切りつけられていたことは明確だった。
 だが、隣を見るとピンピンしている上に先ほどいじめられたミニゴブリンに対して動じることないどころか簡単に一匹ずつ俺と同じように倒していく。

 「ほぉ……。毒無効に怪我してもすぐに回復するだけでなくちゃんと学習までするのか」

 自分の元に群がっていた最後のゴブリンを吹き飛ばした後俺のほうを向いてふんっと鼻息をならして得意そうにしていた。

 「……」

 所詮ゴブリンといったところでそんな得意そうにされても困る。しかし、先ほどまでの状態から考えるととんでもない成長と言ってもいいのだろう。
 
 さてゴブリンの親玉からすると自分の手下がどんどん倒されていく光景を見て驚き、初めて動揺を見せた。
 そしてついに自分の引き連れた手下はこのよく分からない得物程度に考えていた奴に全て倒されてしまった。

 「さぁ、後はお前だけだ。新米冒険者くらいに思ったのだろうが……運が悪かったな。死んでから恨むがいい」

 追い詰められて逃げられないと判断した親玉は一際大きなさびた自慢のサーベルを抜いて戦う意志を示した。
 
 「ほう……。お前を倒してそれをもらって帰るとしよう」

 このNMの特有のアイテムはこの錆びた大きなサーベルのようだ。どこにでもありそうでない一品であり、意外と色んな上位武器の素材に入っていたりしている割に手に入らないので高値で取引されるのだ。
 ゴブリンの親玉と俺がそれぞれの武器を構えて今にもお互いに飛び掛ろうとしたとき、いきなり竜が俺の前に出てきて

 「ガウガウ!」

 身振りで何かを訴え始めた。
 大きな爪の生えた指でゴブリンの親分をさしてなにか少しガウガウと言った後、今度は自分の指を自分自身ののほうにさしてなにやらまたガウガウと。
 その無駄に器用な身振り手振りで俺に伝えたかったことは、”自分があいつを倒したい”ということらしい。

 「ふむ。そういうことならやってみるといい。だがお前が死んでも俺は知らんからな。それでもいいならやってみたらいい」

 いくら手下を簡単に倒せると言ったところで親玉のレベルは何段も違う。正直倒せるとは思えないが、危なくなったら自分が出て倒せばいい。先ほどの様子であればかなりの怪我をしてもすぐに回復できるようであるしな。
 そう思った俺は小竜の背中をポンと叩いて押し出すと、勢いよくゴブリンの親玉に向き合った。
 そんな様子を見て親玉は俺が出てきて戦うものだとすっかり思っていたところに先ほどまで手下に散々いじめられていたやつが自分と戦うと言うことが分かって自身を取り戻すだけでなく、持っていたサーベルをブラブラと持て遊び始め、余裕を出し始めた。
 そんな様子に気にすることも無く、小さき竜は、自分の手に生えた鋭い爪を顔の前まで持ってくるとともに、口を大きく膨らませて紫色のブレスを吐いた。
 そしてブレスは自分の顔の前にあった爪に吐きつけるような形になり、爪に当たったブレスは付着して爪を通して滴る紫色の液体となり、ぼこぼこと炭酸の泡のようにあわ立っている。

 「何をしているんだ……」

 俺の疑問をよそに小竜はその爪の状態を見て満足そうに頷くと、ゴブリンの親玉に向かって飛び掛った。
 すっかり油断していたゴブリンの親玉は反応が遅れ、その爪の一振りを交わすことなくもろに受けた。
 しかし、その爪の威力は一振りで倒せるどころか、少しの深めの引っかき傷程度にしかならなかった。

 「やっぱり、差が大きすぎるか……」

 長い経験上、こうなるだろうと言う算段と同じ結果となった。
 ゴブリンの親玉がその自分の体に出来た傷を見てにやりと笑った。

 「そろそろ俺の出番かな」

 最初にああは言ったものの、やばりであったときの痛めつけられていた痛々しい光景を見ていると傷つくとこまで傍観という気にはどうしてもなれず、一度納めた剣を抜こうとしたときだった。

 「ごぶ……ごぶ……」

 竜の爪攻撃を受けたゴブリンの親玉の様子がおかしい。先ほどまでニヤついていたが、だんだんと苦しそうな顔に歪んでいき、引っかかれた部分に自分の手を当てて激しく掻き毟っている。

 「???」

 俺はその様子に理解が出来ず、そのままぽかんとそのゴブリンの様子を観察した。

 「……ご……ぶ……」

 どさりと崩れ落ちた。ぴくぴくとしばらく痙攣した後、ついに動かなくなって目を見ると白目をむいて口からはぶくぶくと泡を吹いている。

 「これは……」

 この症状から考えれることは。
 俺はゴブリンの体にある竜が引っかいた傷を見て、確認すると___。

 「お、お前……!これは!」

 傷口が大きく腫れ上がってものすごい勢いで出血をしていた。
 これらの症状から推測されることそれは__。

 この竜は猛毒を使えるということだ。

 丁寧に毒を拭きかけた爪を綺麗に磨いて落としている小竜。
 またまたふんっと得意げに鼻息を鳴らして横目で見ている。

 「これは素直にすごいわ……。もしかしてわざとやられてたのか」

 その問いに対してはプルプルと全力で首を振る。嘘をついているとは思えないが、わざとやられているとも考えにくい。
 一体こいつは何のためにここにいて何があって底辺モンスターに痛めつけられていたのか。
 全く謎は増えるばかりになった。
 しかし、この竜は人を傷つけたり殺めたりするような感じではないしどうもなつかれてしまって自分の手で殺したりするのは出来ない。
 これはもう素直に報告するしかないのだろう。

 俺は死んだゴブリンの親玉からお金と持っていたアイテムと錆びたサーベルを奪い取るとそれをまとめて帰る支度をした。
 その間もちゃっかりと俺の横にいて俺についていくぞといわんばかりに鼻息をふんふんとならして、俺の帰り支度が終わるのをひたすら待っていた。
 
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