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3話
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街の中では冒険者と街の商人や住人がものめずらしそうにあるものを指差しながら、ひそひそと話している。
その指さす先には、よく分からない魔物を引き連れて帰ってきた今話題の冒険者。
「ちゃんとおとなしくしておけよ。じゃないとあとから色々とお前に対する対応が厳しくなる。ちゃんとおとなしくしてたら俺の言葉で何とか収められるかもしれん」
引き連れて帰るうちにこいつに更に愛着が湧いてきて、どうにか自分で管理が出来ないものかと考えるようになった。
いくつかめんどくさい手順は踏まなければならなそうだが、なんとか殺処分や実験体にされるのだけは避けてやりたい。
それくらい悔しくも愛情が湧いてきている。どうも俺は動物好きらしい。
そんな俺の思いを感じているのか感じていないのか知らないが、俺の横をぴったりとおとなしく静かに横を歩いている。ほかの人間の視線を気にすることなく相変わらずフンっと鼻息を鳴らしながら。
そんな様子を俺は横目で見ながら、今回のクエストの報告をするべく街中心の酒場に戻ってきた。
こちら酒場内にて。
「でさ、今回のサンダーバードを俺がしっかりと強烈な電撃攻撃を俺がこうしっかりと盾で受け止めたあと、俺の剣でね__」
「はいはい、お疲れ様です。討伐は確認されました。今から依頼者からの報酬をお渡ししますね」
得意げに語る上級冒険者の話を適当に流してさっさと話を進める。
クエストの受付嬢というものはきれいな女性がやる花形職業だ。冒険者に口説かれるということは誰だって経験することなのだが……私はあまりこれが好きではない。
もちろん大体この職に就いた女性は上級冒険者と仲良くなって結ばれるケースが多い。
でも私はそれにあこがれてこの職に就いたのではない。
私は冒険者という存在にあこがれているわけであって、冒険者という人間が好きなわけではない。
冒険者。それはこの世界で街、村、集落に住んでいる人たちの困っている問題や危機を解決するかっこいい存在。ただかっこいいだけでなく、命を懸けてみんなのために力を尽くすのだ。
そんな人たちに温かく出迎えてせめて街に帰ってきたときに安心できるような場所を、空間を提供したいという思いだけでこの職に就いた。
しかし____。
「なんだ、つれねぇなぁ。そうだ、リアちゃん彼氏っているの?」
「個人情報ですのでお答えしません」
上級冒険者ってこういう連中しかいないということがこの職に就いてから嫌というほど突き付けられた。
確かにクエストはこなしてみんなのために働いている。それは事実だ。でも、クエストの依頼者を見て若い女性の依頼ばかり受けて高齢者の依頼には全く受けないといったやつや、受付嬢に今日何クリアーしたらデートしてくれる?とかそんなことばかり。
それにいいように答えてやらないと機嫌を悪くしたりする。
結局、”俺らがやってあげている”という上から目線なのだ。
力があることをいいことに若い女性に性的な関係を脅迫したり、依頼の報酬だけでなく追加の報酬を強要しに行くはっきりといって最低な連中までいる。
私は冒険者というものは子供のころから描いていたヒーローとは違ったのだ。
でも、そんな中でも私は理想の冒険者を、”彼”をやっと最近見つけた。
その人はどんな依頼でもこなす。それだけではない。
本当に貧しくて報酬が出せないという人の依頼も嫌顔なくこなす。それどころか、モンスターを倒したときに得られたお金、ドロップアイテムを換金してそれをすべて分け与えるなどといったことをしていた。
そんな彼の姿を見て_
ああ、これが私の描いていた人だと思った。
カランカランと酒場の扉の開いたときになる鈴の音が鳴る。
そこから帰ってきたのはその”彼”。
だから私は最高の笑顔で、最高の声で、最高の思いを込めて
「おかえりなさい」
と言った。
彼は手をあげて私の声に反応するとまっすぐ私のもとに向かってくるが、彼のあとについてきた存在を見て私を含めて酒場内にいた冒険者が声をあげて大騒ぎになった。
「お、お疲れ様です……。あ、あのその後ろにいる魔物は……」
「今回のクエストのターゲットがこいつだったらしい。どうも魔物的な性質がない。だから連れて帰ってきた。ある程度こちらの言っていることが理解できているようで危害は与えないように立ち振る舞えるようだ。だから連れて帰ってきた」
彼はあっけにとられる私たちに気にすることもなく、ただ淡々と事実と自分の考えを話した。
「だ、だからってそんなやつを街の中に入れていいわけねぇだろ!お前最近調子にのりやがっ……」
「あ?」
そう言いかけた上級冒険者の言葉を彼は一言で黙らせる。その一言には周りの冒険者を凍り付かせるほどの威圧があった。
「お前らみたいな女の体と金にしか興味ないケダモノ以下の存在よりこいつは何億倍も常識も品格もある。お前らに否定する権利はない。どうしても気に入らないなら俺と勝負して勝つか、その言葉に見合う行動をしてからにしろ」
その威圧と文句の言い返せない言い分に冒険者たちはグッと悔しそうに引き下がった。
やはり私と同じで冒険者のそういう部分に彼も嫌悪感を抱いているようだ。
やはり彼は私の理想とする冒険者なのだ。そんな彼が見定めてこの結論を出したのだから私は信じたい。信じたいところなのだが……。
「私のとこじゃ決めかねるからなぁ……」
当然、受付嬢にはこのような未知の生物の行方を判断する権利はない。
「ああ、ここに来たのはクエスト報告と冒険者最高協議会会長に連絡を取って欲しい。そこで直接話をする」
「さ、最高協議会会長にですか!?」
ま、まさかその言葉が出るとは思わなかった。それくらい彼がこのとなりにいる存在を認めさせようと本気だということだ。
そして彼は続けて信じられない言葉を口にした。
「まぁ、これだけで奴ら出てこないだろうからな。面会に応じないなら、俺は国籍変更をして認められるところにでも行ってやると伝えてくれ」
この言葉に酒場内にいたすべての人の腰が浮きだった。
「ほ、本気ですか!?」
「ああ、マジだ」
どうして彼がそこまでするのかそれは分からない。しかし、この世界では国籍変更をするということはとてつもないことなのだ。
まずこの国で主に冒険者は3つの国のどこかに在籍することになる。まだそれだけならただ国籍が変わるだけだということにしか過ぎない……が。
問題はそんな簡単な事ではない。
問題なのはモンスターと戦うだけでなく、この3つの国は常に戦争をして領土を取り合っている。
過去は冒険者同士が平然と殺し合いをしていた。今でこそ、休戦協定が結ばれ、領土がグレーゾーンのところはクエスト貢献率と言って、そのエリアでよりクエストをクリアーして貢献したところが一か月占有権を得られるという仕組みがとられている。
休戦中とはいえ、国同士の関係は最悪で常に煽り合いといった状態が続いている。冒険者同士もその国の方針の影響を受けてお互いに激しくにらみ合っている。
だから常々もめ事が大きな事件に発展したりもする。
そんな状態である今、ここで国籍を変更して我々の敵になろうという発言をしたのだ。
普通の冒険者ならまだ叩かれて逮捕されて処罰される。しかし、彼は違う。
なんと言おうが最強の冒険者で他国からも恐れられている存在にまで成長した彼が敵になるかもしれない。
そうなれば、この国は大きな戦力を失うことになる。
「わ、分かりました……」
電話を取ってつなぐ。要件を伝えると電話越しに慌てふためく声や物音が聞こえる。どうやら、彼の目論見はうまくはまっているようだ。
「3日後にに協議室にその子を連れてくるようにと……」
「了解だ。手間かけさせたな……」
「い、いえ……」
驚きと不安など色んな感情に襲われた私を安心させるように彼は私の頭をポンポンと叩いて、
「安心しろ、調子に乗っている上の連中に少し物申す感覚だ。本気じゃない。不安にさせてすまんかったな」
しっかりと私にやさしく声をかけたあと彼は静かに酒場から出て行った。
酒場はまだあっけに全員とられたままで針が落ちても聞こえそうなほど静寂が包まれたままだった。
その指さす先には、よく分からない魔物を引き連れて帰ってきた今話題の冒険者。
「ちゃんとおとなしくしておけよ。じゃないとあとから色々とお前に対する対応が厳しくなる。ちゃんとおとなしくしてたら俺の言葉で何とか収められるかもしれん」
引き連れて帰るうちにこいつに更に愛着が湧いてきて、どうにか自分で管理が出来ないものかと考えるようになった。
いくつかめんどくさい手順は踏まなければならなそうだが、なんとか殺処分や実験体にされるのだけは避けてやりたい。
それくらい悔しくも愛情が湧いてきている。どうも俺は動物好きらしい。
そんな俺の思いを感じているのか感じていないのか知らないが、俺の横をぴったりとおとなしく静かに横を歩いている。ほかの人間の視線を気にすることなく相変わらずフンっと鼻息を鳴らしながら。
そんな様子を俺は横目で見ながら、今回のクエストの報告をするべく街中心の酒場に戻ってきた。
こちら酒場内にて。
「でさ、今回のサンダーバードを俺がしっかりと強烈な電撃攻撃を俺がこうしっかりと盾で受け止めたあと、俺の剣でね__」
「はいはい、お疲れ様です。討伐は確認されました。今から依頼者からの報酬をお渡ししますね」
得意げに語る上級冒険者の話を適当に流してさっさと話を進める。
クエストの受付嬢というものはきれいな女性がやる花形職業だ。冒険者に口説かれるということは誰だって経験することなのだが……私はあまりこれが好きではない。
もちろん大体この職に就いた女性は上級冒険者と仲良くなって結ばれるケースが多い。
でも私はそれにあこがれてこの職に就いたのではない。
私は冒険者という存在にあこがれているわけであって、冒険者という人間が好きなわけではない。
冒険者。それはこの世界で街、村、集落に住んでいる人たちの困っている問題や危機を解決するかっこいい存在。ただかっこいいだけでなく、命を懸けてみんなのために力を尽くすのだ。
そんな人たちに温かく出迎えてせめて街に帰ってきたときに安心できるような場所を、空間を提供したいという思いだけでこの職に就いた。
しかし____。
「なんだ、つれねぇなぁ。そうだ、リアちゃん彼氏っているの?」
「個人情報ですのでお答えしません」
上級冒険者ってこういう連中しかいないということがこの職に就いてから嫌というほど突き付けられた。
確かにクエストはこなしてみんなのために働いている。それは事実だ。でも、クエストの依頼者を見て若い女性の依頼ばかり受けて高齢者の依頼には全く受けないといったやつや、受付嬢に今日何クリアーしたらデートしてくれる?とかそんなことばかり。
それにいいように答えてやらないと機嫌を悪くしたりする。
結局、”俺らがやってあげている”という上から目線なのだ。
力があることをいいことに若い女性に性的な関係を脅迫したり、依頼の報酬だけでなく追加の報酬を強要しに行くはっきりといって最低な連中までいる。
私は冒険者というものは子供のころから描いていたヒーローとは違ったのだ。
でも、そんな中でも私は理想の冒険者を、”彼”をやっと最近見つけた。
その人はどんな依頼でもこなす。それだけではない。
本当に貧しくて報酬が出せないという人の依頼も嫌顔なくこなす。それどころか、モンスターを倒したときに得られたお金、ドロップアイテムを換金してそれをすべて分け与えるなどといったことをしていた。
そんな彼の姿を見て_
ああ、これが私の描いていた人だと思った。
カランカランと酒場の扉の開いたときになる鈴の音が鳴る。
そこから帰ってきたのはその”彼”。
だから私は最高の笑顔で、最高の声で、最高の思いを込めて
「おかえりなさい」
と言った。
彼は手をあげて私の声に反応するとまっすぐ私のもとに向かってくるが、彼のあとについてきた存在を見て私を含めて酒場内にいた冒険者が声をあげて大騒ぎになった。
「お、お疲れ様です……。あ、あのその後ろにいる魔物は……」
「今回のクエストのターゲットがこいつだったらしい。どうも魔物的な性質がない。だから連れて帰ってきた。ある程度こちらの言っていることが理解できているようで危害は与えないように立ち振る舞えるようだ。だから連れて帰ってきた」
彼はあっけにとられる私たちに気にすることもなく、ただ淡々と事実と自分の考えを話した。
「だ、だからってそんなやつを街の中に入れていいわけねぇだろ!お前最近調子にのりやがっ……」
「あ?」
そう言いかけた上級冒険者の言葉を彼は一言で黙らせる。その一言には周りの冒険者を凍り付かせるほどの威圧があった。
「お前らみたいな女の体と金にしか興味ないケダモノ以下の存在よりこいつは何億倍も常識も品格もある。お前らに否定する権利はない。どうしても気に入らないなら俺と勝負して勝つか、その言葉に見合う行動をしてからにしろ」
その威圧と文句の言い返せない言い分に冒険者たちはグッと悔しそうに引き下がった。
やはり私と同じで冒険者のそういう部分に彼も嫌悪感を抱いているようだ。
やはり彼は私の理想とする冒険者なのだ。そんな彼が見定めてこの結論を出したのだから私は信じたい。信じたいところなのだが……。
「私のとこじゃ決めかねるからなぁ……」
当然、受付嬢にはこのような未知の生物の行方を判断する権利はない。
「ああ、ここに来たのはクエスト報告と冒険者最高協議会会長に連絡を取って欲しい。そこで直接話をする」
「さ、最高協議会会長にですか!?」
ま、まさかその言葉が出るとは思わなかった。それくらい彼がこのとなりにいる存在を認めさせようと本気だということだ。
そして彼は続けて信じられない言葉を口にした。
「まぁ、これだけで奴ら出てこないだろうからな。面会に応じないなら、俺は国籍変更をして認められるところにでも行ってやると伝えてくれ」
この言葉に酒場内にいたすべての人の腰が浮きだった。
「ほ、本気ですか!?」
「ああ、マジだ」
どうして彼がそこまでするのかそれは分からない。しかし、この世界では国籍変更をするということはとてつもないことなのだ。
まずこの国で主に冒険者は3つの国のどこかに在籍することになる。まだそれだけならただ国籍が変わるだけだということにしか過ぎない……が。
問題はそんな簡単な事ではない。
問題なのはモンスターと戦うだけでなく、この3つの国は常に戦争をして領土を取り合っている。
過去は冒険者同士が平然と殺し合いをしていた。今でこそ、休戦協定が結ばれ、領土がグレーゾーンのところはクエスト貢献率と言って、そのエリアでよりクエストをクリアーして貢献したところが一か月占有権を得られるという仕組みがとられている。
休戦中とはいえ、国同士の関係は最悪で常に煽り合いといった状態が続いている。冒険者同士もその国の方針の影響を受けてお互いに激しくにらみ合っている。
だから常々もめ事が大きな事件に発展したりもする。
そんな状態である今、ここで国籍を変更して我々の敵になろうという発言をしたのだ。
普通の冒険者ならまだ叩かれて逮捕されて処罰される。しかし、彼は違う。
なんと言おうが最強の冒険者で他国からも恐れられている存在にまで成長した彼が敵になるかもしれない。
そうなれば、この国は大きな戦力を失うことになる。
「わ、分かりました……」
電話を取ってつなぐ。要件を伝えると電話越しに慌てふためく声や物音が聞こえる。どうやら、彼の目論見はうまくはまっているようだ。
「3日後にに協議室にその子を連れてくるようにと……」
「了解だ。手間かけさせたな……」
「い、いえ……」
驚きと不安など色んな感情に襲われた私を安心させるように彼は私の頭をポンポンと叩いて、
「安心しろ、調子に乗っている上の連中に少し物申す感覚だ。本気じゃない。不安にさせてすまんかったな」
しっかりと私にやさしく声をかけたあと彼は静かに酒場から出て行った。
酒場はまだあっけに全員とられたままで針が落ちても聞こえそうなほど静寂が包まれたままだった。
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