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しおりを挟む殴られたり蹴ったりされるわけじゃないんだろ?
体中が痛くなることは、ないんでしょ。
「……嫌だよ……」
掠れた自分の声が狭い空間に響く。真っ暗闇が怖いからぎゅっと目を閉じて体を丸める。
早く、早く時間が過ぎればいい。1分でも1秒でも早く時が進んで欲しい。
「……っは……」
息が苦しい。カタカタ震えが止まらない。いつ鍵を外して戸を開けてくれるんだ、早く早く早く。まだかな、まだかなもう結構時間経ったよ許してお父さん。
ひたすら目を閉じて黒に侵食された空間に座り続けていると―――。
カチャッ!
あ、この音は鍵を開けた音だ。ついでカタリと戸を開ける軽い音も。
ゆっくりと目を開ければ少しずつ開いていく戸の隙間から一筋の光が差し込んできた。
…………やっと、開けてもらえたんだ。
「おら、出ろ」
「あっ」
また強く腕を引っ張られ押し入れから部屋に出される。部屋には、夕日のオレンジが侵入していて閉じ込められてから約4時間は経ったのかと計算する。
「てめえ、今度今日みたいなことしたらただじゃおかねえからな!」
パン!!乾いた音が虚しく響いたのは、お父さんが俺の頬を平手打ちしたせいだった。
じんじんと鈍い痛みが広がる。ねえ、お父さん何で叩くの。そう思っても口から出る言葉はいつだって。
「ごめんなさい。もうしません」
「分かればいいんだよ」
お父さんはそう言ってさっさとテレビの前に座って、お母さんと番組を見始める。
俺が平手打ちされた時もお母さんは今みたいに平然とテレビを見てビールを飲んでいたのが視界の端に映った。
ゆっくり窓に目を向け、夕日の眩しさに目を細める。
光に、酷く安堵した。
———————
——……
「次のニュースは、虐待により5歳の男の子が搬送された病院で死亡したという事件についてです。警察の調べによると男の子の体には何か所か痣があり頭蓋骨が――」
テレビから流れるアナウンサーの台詞に、ギリリと心臓が痛む。こういうニュースを見るたび、思う。
いつかは自分もああなるんじゃないか、と。
お母さんとお父さんは他人に自分達が子供に暴力を振るっていると疑われないようにしている。
例えば、学校の健康診断で服を脱いで体を医者に見せるからその時期になると暴力はほぼなくなる。
体育で水泳の授業が始まると同じように痣があると先生に不審がられる危険があるから殴ったり蹴ったりされる回数は減るのだ。
だから今まで、周りの人に気づいてもらえなかった。
それに、お母さんにもお父さんにも繰り返し言われた、『もし痛い目に遭わされてるって他の奴に言ったら、ただじゃおかない』って。
普段よりも更に強い力で暴力を振るわれるかもしれないと思うと、どうしても怖くて言い出せないんだ。
一言、助けてって言えばいいんだろうけど。
周りからすれば簡単すぎること。でも、俺は口から出せない。
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