群青の夏、僕らは明日を願った。

青葉はな

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149.

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「ああ、あの苦し紛れの演技で何とか装ったやつな」


「メニューが割引になるからってさ、頑張ったんだよね」


「もうやらねぇけどな」


「それには賛成」


だって絶対どっかでボロが出るに決まってる。そして店員さんに白い目で見られることを想像したらとてもじゃないけどチャレンジする気は起きない。


「私、マロンホイップラテにしよ」


「俺はライチティーでいいや。すみませーん」


「はい!只今おうかがい致します」


店員さんにメニューを伝え、持ってきてもらうまで暫し待つ。少し混んでいるから、時間かかりそう。


「……なあ」


若干声を潜めて聞いてくるものだからどうしたのかと顔を携帯画面から上げる。


「さっきから周りのやつらに見られてんだけど」


言われ、私もさり気なく辺りに目を向ければチラチラと皐月に視線を寄越してる人達が。


「やっぱ俺浮いてるんじゃね?」


いや、恐らくこの店に男がいるから珍しがられてるとかではなく、皐月のその無駄にハイスペックな外見に熱視線を送っているんだと思う。


中には頬を赤く染めている人もいるくらいで。そりゃ、こんなスタイルよし顔よしの男が目の前に現れたら目をハートにしちゃうのも頷ける。


けど事実をそのまま皐月に伝えると調子に乗りそうなので敢えて言わないでおこう。


「うん、そうなんじゃない?浮いてるんじゃない?」


「てっめ!」


「いや、もしかしたら視線を集めているのは皐月じゃなくて私っていう可能性も……」


「もっとマシな冗談言えよ」


「ですよねぇー」


くすくすと2人で笑い合う。


静かに流れる今どきの洋楽に耳障りでないあちこちから聞こえる笑い声、コーヒーの香り。とても落ち着く空間で心が休まる。


ゆったり流れる時間に身を任せるのも、たまにはいいよね。


「お待たせいたしました~。ライチティーとマロンホイップラテでございます」


「あざーす」


「はい!」


店員さんが運んできてくれた飲み物を受け取り、さっそく一口飲むと栗のほのかな甘みが広がった。


美味しい、今度は菜流と一緒に来よう。菜流もこういうお店好きだしね。皐月も頼んだものが正解だったのか、頬を緩ませてる。


「……最近さあ、思うんだよね」


「何をだよ」


「藍の家や春さんとの問題も月野さんと皐月の関係のことも、碧音君のことについても。一段落したっていうか、一歩前進したじゃん?それもあって今は皆気兼ねなく楽しく過ごせてると思うんだよね」


藍は弟の結人さんと言い合いになることもあるけど距離は縮まってきてるって嬉しそうに話してくれる。


春さんとのデートはどうでしたかと聞けば、照れながらも惚気話もしてくれて。


皐月だって、月野さんが次期社長として頑張っているという話を共通の友達から聞いたり経済雑誌のインタビューにちょこっとだけだけど載ったのを見たりする度に自分も頑張らないと、と張り切っている。


碧音君も、ちゃんと自分の本音で喋ってくれることが多くなった。


「次のライブも決まったんだよね?」


「ああ。冬な」


「だから今ってすごく穏やかで充実した時間を共有出来てるなーって」


だから、ふと考える。


「続けばいいのにね。この時間が」


続いて欲しい。


「皐月も、そう思わない?」


「…………」


「皐月さーん」


別の方に意識が向いてる気がしたから呼びかける。さっきもCDショップで似たようなことあったよね。


「お、おう。続くんじゃねぇの」


「えー、はっきりしないなぁ。らしくない」


「珍しくお前が真面目なこと言ってっから感心してたんだよ」


「私だってたまには真面目な話します!」


「お前も感傷に浸ることってあるのかー。『こんな時間が続けばいいのに』とか格好いい台詞言っちゃうようになったのかー。先輩は涙が出そうだ」


「白々しいな!」


何だよ、人がせっかくいいこと言ったのにこの男は。急に顔が熱くなって喉が渇いたからラテをごくごく飲み干していく。


ゆっくり味わいたかったけど仕方ない。周りの同い年くらいの女子みたいにストローでちょこっとずつ可愛らしく飲みたかったけど、これも仕方ない。


「でもさ、このままの時間が続いて本当にいいわけ?」

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