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22.
しおりを挟む「はぁ、喉渇いた。水飲みてー」
我が物顔でリビングにドカドカ入っていく皐月に、遠慮というものを教えてあげたい。
「橘、こっち」
「あ、うん」
こっちに着いてこいと碧音君に目配せされ、皆の後を追う。
リビングは対面式キッチン、透明なガラステーブルに椅子、インテリアの照明と、モデルルームさながらの内装。
そこに冷蔵庫にはプリントがマグネットで張ってあったり適当に積み上げられた本があったりして、生活感が出ている。
「冷蔵庫の材料とさっき買ったやつ使って」
「うん、分かった」
肉と魚と野菜、一通りあるからと冷蔵庫の中身を確認する碧音君。
皐月は椅子に座り水をガブガブ飲んで渇いた喉を潤し、星渚さんはスマホを弄っていて、藍さんは雑誌を手に取り読んでいる。
私はこの間に夕飯の下準備をしてしまおうと、早速料理に取りかかった。
これまたデザイン性の高い冷蔵庫から材料を取り出し、始めにベーコンを短冊切り。生クリームもあったから、手作りカルボナーラはばっちり作れる。
誰かの家で手料理を作るのは初めてだなあ。ベーコンを熱したフライパンで炒める間、何気なく皆がどうしてるのか気になって、様子を窺う。
「皐月、退け」
「俺は今、体で風を受け止めるのに必死なんだよ」
「扇風機に当たってるだけだろ。退け」
「碧音、俺が暑いの苦手だって知ってんじゃんよ。うっわ、まじで熱中症かも」
皐月と碧音君は、どちらが扇風機の冷たく気持ち良い風に当たるかでケンカ中。
その扇風機は細長くてプロペラが無いのだ。私の家は、勿論昔ながらの扇風機。
「2人とも邪魔。俺に風が当たらないじゃんかー」
「星渚がこう言ってんだぞ?碧音退け」
「そういうことばっか言ってるから、背低いんだよ皐月」
「関係ないとこで傷を抉るな!」
わーわー言い合う3人は、端から見ればじゃれ合っているようにしか見えない。
そして藍さんのスルースキルが素晴らしい。別段気にする様子もなく、雑誌を読んでいる。
「パスタは……ここか」
お湯が沸騰してきたタイミングを計らい、パスタを6人分投入。男子だから、多い方がいいはず。
「じゃんけんだ、じゃんけん!勝った奴が扇風機の真ん前に居られる」
「皐月さあ、じゃんけん弱いのに。自滅?」
「自ら負けを買って出てくれるのか」
「次は負けねぇ!」
皐月の提案で、決着は公平にじゃんけんで決定するらしい。
もう皆で仲良く扇風機を使えばいいのに。再度掛け声とともに手を突き出すと。
「負けちまった……!」
「いい加減、自分がじゃんけんの1発目でいつも同じやつ出してるって気づけよ」
「皐月残念でしたー」
私の位置からではそれぞれ何の手の形を出したかは分からないけど、皐月1人が負けたことが態度で見当がつく。
前にも皐月は誰が買い出しに行くかを賭けたじゃんけんで負けていたのだ。どうにも弱いらしい。
「刹那と俺でじゃんけん。最初はグー、じゃんけん」
どっち?どっちが勝ったの?パスタをお皿に盛り付ける手を止め、爪先立ちで覗く。
「はい、俺の勝ち。残念だったね刹那」
「星渚はじゃんけん強すぎ」
勝者は星渚さん。碧音君は渋々立ち上がり、ソファで寛いでいる藍さんの隣に座った。
「皐月もあっち行ってねぇ」
「くっそ!……分かった、3回勝負にしようぜ。後2回じゃんけんして勝った奴が扇風機独占」
「往生際悪いな皐月」
「碧音だって最後まで粘ってたじゃねえか!」
「今はこうやってどいただろ」
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