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しおりを挟む制服が高校のものとは違うから、中学の頃のだ。うわ、中学の時からぐんと大人っぽくなってる。
これだけ周囲の子より垢抜けた綺麗な顔をしていれば、さぞかしモテたはず。思いがけず昔の碧音君を見ることが出来て嬉しい。
制服、ブレザーだったんだ。私のとこは学ランとセーラー服だったから、羨ましかったなあ。
そっかそっかと1人心の中で呟き、顔がにやけるのも気にしないで写真を見つめる。
――と。
「あれ」
ある一点に目が止まった。おもむろに写真立てを手に取り、目を細め確認してみるも結果は同じ。
お父さんもお母さんも……でも、碧音君は。
「何してんの」
ガラッ、スライドドアに手をかけ入ってきた碧音君の声に吃驚して『わっ!』と体がビクッとなる。
「碧音君、えっ、どうしたの?」
「携帯取りに来た」
流れる動作でローテーブルに置かれていたスマホを取り、私にちらつかせる。
「お前は何突っ立ってんの。宿題は」
「その前にこの写真、見せてもらってて」
「写真?」
こちらまで来た碧音君は、私が見ていた写真を一瞥。
「あのさ、碧音君――」
「写真見てないで、早く宿題やれば」
言葉を被せて言い放ち、私が持って来ていたバッグを指差す。
「うん、やる」
やるけどさ。
写真が気になり『碧音君』再度問いかけようとするも、『俺、戻るから』と表情ひとつ変えずに綺麗な手でドアを開け、行ってしまった。
写真立てを、裏返しにした後に。
これは緩やかな拒否。
写真の話についてではなく、きっとあのことを聞かれることに対しての、だ。
写真をよくよく注意して見たら、誰でも不思議に思うだろう。ああ、一瞬感じた碧音君が線引きしたボーダーライン。
まあ、無理に問いつめる気なんて更々ないし、気になった程度だしね。
でも背を向けた写真立てに何だか心がチクッとしたから、ちゃんと前向きに戻しておいた。
……うん、家族皆でせっかく笑って写ってるんだもん、こうでなくちゃ。
頷いて、自分のバッグから課題を取り出した。
――――――――
――……
トン、トン、トン。
課題を終わらせ、地下室へ続く階段を下りる。凄いよね。地下室まであるなんてさ。
星渚さんに言われた通りに廊下を進み、左側の部屋の扉を開けて端にある椅子に座る。
「もしも君が闇に溺れたら――僕も一緒に堕ちるから。例え君が光を失っても――僕が光を分けてあげるから」
この曲は藍さんが作詞したと言っていた。
歌詞に多かれ少なかれ藍さん自身の体験も含まれているとしたら、歌詞中に出てくる僕と君は、藍さんと大切な女の人なのかな?
なんて切なくて、心に響く言葉なんだろう。
皆の作詞作曲した曲で、私が聞いたことがあるのはまだ藍さんと星渚さんだけ。早く碧音君や皐月の曲も聞きたいなあ。
「――溢れだして零れた君の涙を拭うのは、僕だから――」
皆、私が部屋に入ってきてもまるで眼中になく、演奏に集中していて。
本当に好きだ、この時間が。レベルの高い演奏を生で、しかも好きなだけ聞いていられるのだから。
真剣に取り組む皆の表情に釘付け。
皐月は巧みに長い指を動かし複雑なリズムの音を奏でる。
いつもは穏やかで1歩引いて皆の後ろを見守りながら歩くような藍さんも、演奏の時はそうではなく、全身で力強くギターを操っている。
「――――2人で……」
1寸の狂いもなく、ピタッと演奏が止む。
それと同時に、皆ほっとした表情になった。
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