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しおりを挟む「真面目な生徒だったよー。平凡で、問題なく過ごしてた」
「んな訳ねえだろ!お前教師辞めさせ」
「さーつき?黙ろうか」
「すみませんでした」
せ、星渚さん目が笑ってないです怖い!
うん、星渚さんは持ち前の性格でクラスはおろか学年の実権を握っていたに違いない。
――――――――
―………
それからも話題は尽きず暫く談笑していたけど私は帰らなければいけない時間になった。
片付けは星渚さんがやってくれるとありがたいお言葉を頂いたので、自分の荷物を纏めた。
「明日歌ちゃん、じゃあね」
「はい。練習頑張ってください」
「てめえみたいな色気ない女を襲う奴はいねえから、安心しとけ」
「素直に帰り道気をつけろよ、って言えばいいじゃないですかこのチャラ男」
危うく怒りで玄関のドアを蹴り飛ばすところだったが、理性で踏みとどまる。
セーフ!落ち着け自分。
星渚さんと皐月は既にくるっと体の向きを変えリビングに戻っていったのに、碧音君はまだこの場に残っていた。
「碧音君も頑張ってね。帰ってる間もずっと応援してるから」
「……あのさ」
「ん?」
いつもなら何かしら罵声を浴びせられるのに、さらっとスルーした碧音君。
「外、平気なの」
外って……ああ、なるほど。遠回しに何を言いたいのか理解出来て、口元が緩む。
「うん、平気。もう暗いし」
碧音君は私が夕方が苦手かことを心配してくれているんだ。幸い時刻は夕方過ぎで空は暗い。
それになんと、碧音君の家から私の家まで自転車で20分の距離なのだ。
同じ駅を利用してるからそんなに離れてはないんだろうな、とは予想していたけど、ここまで近いとは驚き。
「碧音君が急に優しくなるなんて……。え、もしかして私のこと!!」
「頭ん中24時間お花畑だなお前」
綺麗な青みがかった灰色の目を細め、トン、と壁に寄りかかる姿が様になっている。
「ポジティブ思考って、褒めてくれてるの?!」
「褒めてない。大丈夫ならさっさと帰れば」
「送ってくれないんですか!漫画やドラマでは結局送ってくれるのが定番でしょう」
初めて碧音君に会った日も、同じセリフを言ってたな自分。
だって、帰り道にお互い意識しあっちゃってさ。恋の予感かも、なんて。
「送らねえよ。調子乗んな」
そんな甘いものは私たちの関係にないけども。
バッサリ切り捨てられてしまった。
「はい、サヨーナラ」
「あっ!待って碧音君」
玄関に踏み止まろうとしたけど、呆気なく碧音君に追い出された。薄情め。
停めてあった自転車に鍵を差し込みロックを解除して、勢いよくペダルを漕ぐ。
空に星は輝いていなくて、ただ果てしなく黒い。今日は体が疲れたというより気疲れしたなあー。
1日一緒に行動した間に、少しずつ分かってきた碧音君と藍さんの、言わば“影”の部分。ほんのちょっと、垣間見た程度だけれど。
……まあ、人にはそれぞれあるか。なんて物思いに耽りながら、家を目指したのだった。
――この時、全てにおいて私は、知らな過ぎた。
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