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しおりを挟む「碧音君にライブ始まる前に頑張ってって言いたかった。そして美少年オーラに憑りつかれた人たちに襲われないようにねって言いたかった」
「今まで散々頑張れって碧音に言ったんだろ?んな心配する必要ねぇから。あと襲われないように俺らが守る」
皐月が呆れ顔で私の頭をバシバシ叩いてくる。
「ねえ星渚、今日は何の曲演奏するの?」
必要以上に密着してるのは、周りの女子を威嚇するために違いない。
チラリとその人達を一瞥して、勝ち誇ったように口角を上げているのがその証拠だ。小悪魔恐るべし。
「今日1曲目はLiarかな。l hold my breathから始まるやつ」
「あれね!私その曲好き」
たった曲始めの数単語で直ぐに記憶から引っ張り出せるって、菜流は星渚さんが大好きだけどバンドも好きなんだな、と思う。
菜流がねだれば、どこでも星渚さんが歌ってくれるんだろうから羨ましい。
「アンコールがあれば、また追加で1曲やるけどな!」
「え!アンコールの時演奏する曲って?」
皐月の嬉しい一言に勢いよく食いついた。
「まだお前が聞いたことねえやつ。結構前に作った曲なんだよ。俺が作曲して、碧音が作詞」
「ええ!?碧音君が?」
ズイズイズイッ、前のめりになると皐月が『鬱陶しいわ』と手で顔面を押し戻す。
どうして皆顔面狙ってくるのかな。優しく肩に手を置いて引き離すとか出来ないのかな。
「私、碧音君が作詞した曲ってちょっと想像つかない」
いつも平気で毒を吐く碧音君が書いた歌詞って、どんなものなんだろう。
案外心に染みる感動系なのか、はたまたセンセーショナルなものなのか。
碧音君が歌詞に込めた想いを、早く知りたい。
「作曲は俺だからな!素晴らしい曲に決まってんだろ」
「自分で言っちゃうとこがね」
「その顔ムカつくから止めろ」
頬をビヨヨーン、冗談とは思えない力強さで伸ばしてくる皐月。
「皐月、そろそろ行くよ~」
「ん?時間か」
星渚さんに呼ばれると、やっと頬をつねっていた指を離してくれた。ジンジン痛む頬を擦る。
「星渚、もう行っちゃうの?」
「一応ね。早めに集まれって言われてるから」
「私、星渚達以外のバンドなんて正直興味ない」
「菜流!!素直過ぎるお口にチャックしようか!?」
慌てて菜流の口を塞ぐ。けど一緒に鼻も手で覆ってしまったため、息が出来ないと目で訴えられパッと手を離す。
「なーる、それは言っちゃダメ」
「本当だもん」
「悪い子だなぁ」
星渚さんは苦笑いしながら、菜流にデコピン。何だこの甘々な雰囲気は。
キャラメルと砂糖と蜂蜜を合わせても足りないくらい、甘ったるい。
皐月と私は顔を見合せ、溜め息をひとつ。
「他のバンドのライブ、全部忘れさせるくらいのパフォーマンスするからさ」
星渚さんが、好戦的かつ自信に満ち溢れる表情で笑った。
「約束ね」
名残惜しそうに、ゆっくりと星渚さんから離れる菜流。まるでドラマのワンシーンだ。
「皐月、藍と碧音君に言っておいてね。楽しみにしてるって」
「はいはい」
皐月にお願いしておく。2人は列から遠ざかり、まだ関係者しか入れない会場へと戻って行った。
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