群青の夏、僕らは明日を願った。

青葉はな

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「入場まで後15分だよ。長かった」

スマホに表示される時刻を確認。

「明日歌、前の方に行って見れるようにパッパと動くからね」

気合い十分な声。

それに笑いつつバッグの中を漁りペットボトルのお茶を見つけ出して、少しばかり温くなってしまったお茶を喉に流し入れる。

「菜流、ちょっと自販機でお茶買ってくる」

「え?ここに来る前に買ってきたじゃん」

「でも1本じゃ足りない気がしてきた。会場内で売ってるけど、絶対並ぶし」

これだけ人が集まり、更に炎天下となれば行列に並ばないと飲み物すら買えないはず。

「菜流は大丈夫?買ってこようか?」

「どうしようかな……。なら、私は小さいペットボトルのやつ買って来て欲しい」

「オッケー」

「15分しかないから急いでね」

「大丈夫、大丈夫」

そう言って自販機を目指し反対側の道路へ小走りで行き、更に細い路地へ。

「どれにしよっかなぁ」

スポーツドリンクか、緑茶か紅茶か。……暑いし、これにしよう。

ピッとボタンを押して購入したのは、イオンがサプライできるスポーツドリンク。

菜流はお茶が良いかな、小銭を投入して一まわり小さいペットボトルのお茶を買った。

ペットボトル2本を落とさないように抱え、ジャラジャラ出てきたお釣りを財布に入れようとした、ら。

「あっ!」

チャリンチャリン!危うく落としそうになったペットボトルに気をとられ、逆にお釣りをアスファルトの上に落としてしまった。

「あぁ、やっちゃった」

屈んで小銭を1枚1枚拾う。

光に照らされて白っぽい色になっているアスファルトに、ユラリと黒い影が。

「どうぞ」

「……え?」

上から降ってきた声に顔を上げ――――。

「っ、な、何で」

「ん?」

私が落とした小銭の内の数枚を手の平に乗せ、愛想の良い笑みを浮かべる人物は。

「も、もしかして……結人さん、ですか?」

ですか?なんて疑問系で聞いているけど、実際は確信しかない。

藍の弟の、結人さん。

私が尋ねると結人さんは一瞬怪訝な表情をしたものの、どうやら気づいてくれたらしい。

「…………そういえば、スタジオにいたよね」

はい、と小銭を手渡してくれた。

藍より明るめなマロンブラウンの髪を遊ばせ、清潔感漂う爽やかな淡いブルーのシャツを羽織り、インナーは白でワンポイントの刺繍がアクセント。

靴もデザインが凝っていて、色使いに遊び心がある。

自分の魅力を最大限に引き出してますこのお方。

「あの、私midnightのファンでよく練習見学させてもらっているんです」

「だからスタジオにいたんだ?」

「そうなんです!」

「今日もライブに応援に来たってことかな」

「は、はい」

目の前の柔らかな表情、オーラの結人さんを疑わずにはいられない。

え、だって藍と言い合ってた時と違い過ぎません?

あの時は、もっと刺々しくて優しさを削いだ感じだったよね。振り幅が大きくて動揺が隠しきれない。

今の結人さんは、藍の雰囲気とほぼ変わらないじゃないか。

それにも吃驚したけど、重要なのは別のことだ。


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