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しおりを挟む———そして全身で空間に響き渡る音を受け止めて、ライブが終了。
「格好良かったね!特に2曲目」
「あの疾走感溢れる感じが好きだわ」
BLACKのライブが終わり、ステージから離れる。
「菜流、投票する?」
「しておこうかな」
「私も。野外であれだけ音がブレないなら十分だよ」
インターネットにアクセスして、イベントHPへ。このイベントでは観客に『どのバンドが一番良かったか』の投票を呼びかけていて、HPで投票するのだ。
そして、投票数が一番多い上位4位のバンドが各ステージ2組ずつ分かれて、アンコールで演奏してくれるというシステム。バンドは全10組。
10組中4位なら案外楽じゃないかと思うかも知れないが、1位と2位はゲストとして呼ばれているインディーズバンドが必然的になる。
だから実質2枠を争うことになる。
「次は碧音君達の見なきゃ」
「星渚の歌を一番前で聞くのは私!」
菜流のよく分からない闘争心に若干怯みつつも、第2ステージへ直行した。
――――――
――……
念入りに楽器の音をチェックし、集中力を高める。いつも通りの音と寸分も狂わないように。
「皐月、緊張してる?」
「緊張なんかしねえよ。むしろ早くやりてえ」
今更不安になってきただとか心配だとか言うわけねえだろ俺が。逆だっつーの。
「それでこそ皐月!やる気が空回りってこともないか」
「はは、それはないだろ。な、皐月」
藍が俺の隣りのパイプ椅子に座り、口角を上げる。
「あったりまえだろーが。集中してたんだよ、集中」
藍も、ライブ数分前だというのに緊張した様子もなく落ち着いて構えていて。
「おい星渚、……って、何笑ってんだよ?」
控え室の壁に凭れかかり、にやついた口元を手で覆う星渚。
「いやぁ、ほんと菜流可愛い。見てこれ」
星渚にズイッと携帯の画面をつき出された。何なんだよ、仕方なく画面を見る。
「『星渚、私ステージの前の方の真ん中にいるからね』?」
読み上げた文章と共に送られてきていたのは、投げキッスにウィンクした菜流の画像。
こいつら本当どんだけシスコンとブラコンなんだよ!
ライブの度に菜流のやつ写メ送ってきやがって。星渚も星渚でこの画像を大事に保存していて壁紙に設定してる。
これで星渚のやる気が上がるんだから、どうしようもねえ。
「そりゃー良かったな」
「羨ましいの?あげないよ」
「これっぽっちも羨ましくねえよ!」
携帯を適当に放り投げると、星渚が何てことないように見事にキャッチする。
「さて、と」
膝に手をつき腰を上げ、控え室を出た。少し離れた場所にある大木の幹に寄りかかっている人物が1人。
「あーおーい。時間」
戻ると言っていた時間を過ぎても控え室に来ないから、呼びに来てやったのだ。
「……あ、ごめん」
黒のイヤホンを外し、集中するために閉じていた瞳を開く。
「ステージの反対側見たか?去年より人多いぞ」
「多いほど良いじゃん」
木陰から俺のいる方へ怠慢な動きで出てきて、瞳の奥を好戦的に光らせた。
「隣のステージの奴より、絶対人集めてやろうぜ!」
「集められるよ」
確固たる自信を隠さない台詞。でも碧音は左の手の平に人差し指で人の字を書き、飲み込む動作をする。
「それ、お前がやっても意味なくね?」
不安な心を落ち着かせるためのものを、緊張しない碧音がやっても無駄じゃねえか。
けど、碧音は大きなライブ前は必ずこれをやってからステージに立つ。
「意味ある。やると絶対成功するっていうイメージしか沸いてこなくなるから」
「にしても、高校生にもなってまだ人の字飲めば大丈夫とかやる奴、お前くらいじゃね?」
今時いるか?やっても小学生か中学生のガキくらいなもんだろ。
「他のじゃダメ」
碧音は夏の眩しい空を見上げ、ふっと力の抜けた表情をした。
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