群青の夏、僕らは明日を願った。

青葉はな

文字の大きさ
45 / 155

45.

しおりを挟む


———そして全身で空間に響き渡る音を受け止めて、ライブが終了。

「格好良かったね!特に2曲目」

「あの疾走感溢れる感じが好きだわ」

BLACKのライブが終わり、ステージから離れる。

「菜流、投票する?」

「しておこうかな」

「私も。野外であれだけ音がブレないなら十分だよ」

インターネットにアクセスして、イベントHPへ。このイベントでは観客に『どのバンドが一番良かったか』の投票を呼びかけていて、HPで投票するのだ。

そして、投票数が一番多い上位4位のバンドが各ステージ2組ずつ分かれて、アンコールで演奏してくれるというシステム。バンドは全10組。

10組中4位なら案外楽じゃないかと思うかも知れないが、1位と2位はゲストとして呼ばれているインディーズバンドが必然的になる。

だから実質2枠を争うことになる。

「次は碧音君達の見なきゃ」

「星渚の歌を一番前で聞くのは私!」

菜流のよく分からない闘争心に若干怯みつつも、第2ステージへ直行した。



――――――


――……


念入りに楽器の音をチェックし、集中力を高める。いつも通りの音と寸分も狂わないように。

「皐月、緊張してる?」

「緊張なんかしねえよ。むしろ早くやりてえ」

今更不安になってきただとか心配だとか言うわけねえだろ俺が。逆だっつーの。

「それでこそ皐月!やる気が空回りってこともないか」

「はは、それはないだろ。な、皐月」

藍が俺の隣りのパイプ椅子に座り、口角を上げる。

「あったりまえだろーが。集中してたんだよ、集中」

藍も、ライブ数分前だというのに緊張した様子もなく落ち着いて構えていて。

「おい星渚、……って、何笑ってんだよ?」

控え室の壁に凭れかかり、にやついた口元を手で覆う星渚。

「いやぁ、ほんと菜流可愛い。見てこれ」

星渚にズイッと携帯の画面をつき出された。何なんだよ、仕方なく画面を見る。

「『星渚、私ステージの前の方の真ん中にいるからね』?」

読み上げた文章と共に送られてきていたのは、投げキッスにウィンクした菜流の画像。

こいつら本当どんだけシスコンとブラコンなんだよ!

ライブの度に菜流のやつ写メ送ってきやがって。星渚も星渚でこの画像を大事に保存していて壁紙に設定してる。

これで星渚のやる気が上がるんだから、どうしようもねえ。

「そりゃー良かったな」

「羨ましいの?あげないよ」

「これっぽっちも羨ましくねえよ!」

携帯を適当に放り投げると、星渚が何てことないように見事にキャッチする。

「さて、と」

膝に手をつき腰を上げ、控え室を出た。少し離れた場所にある大木の幹に寄りかかっている人物が1人。

「あーおーい。時間」

戻ると言っていた時間を過ぎても控え室に来ないから、呼びに来てやったのだ。

「……あ、ごめん」

黒のイヤホンを外し、集中するために閉じていた瞳を開く。

「ステージの反対側見たか?去年より人多いぞ」

「多いほど良いじゃん」

木陰から俺のいる方へ怠慢な動きで出てきて、瞳の奥を好戦的に光らせた。

「隣のステージの奴より、絶対人集めてやろうぜ!」

「集められるよ」

確固たる自信を隠さない台詞。でも碧音は左の手の平に人差し指で人の字を書き、飲み込む動作をする。

「それ、お前がやっても意味なくね?」

不安な心を落ち着かせるためのものを、緊張しない碧音がやっても無駄じゃねえか。

けど、碧音は大きなライブ前は必ずこれをやってからステージに立つ。

「意味ある。やると絶対成功するっていうイメージしか沸いてこなくなるから」

「にしても、高校生にもなってまだ人の字飲めば大丈夫とかやる奴、お前くらいじゃね?」

今時いるか?やっても小学生か中学生のガキくらいなもんだろ。

「他のじゃダメ」

碧音は夏の眩しい空を見上げ、ふっと力の抜けた表情をした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。

設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇 ☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。 ―― 備忘録 ――    第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。  最高 57,392 pt      〃     24h/pt-1位ではじまり2位で終了。  最高 89,034 pt                    ◇ ◇ ◇ ◇ 紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる 素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。 隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が 始まる。 苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・ 消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように 大きな声で泣いた。 泣きながらも、よろけながらも、気がつけば 大地をしっかりと踏みしめていた。 そう、立ち止まってなんていられない。 ☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★ 2025.4.19☑~

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...