群青の夏、僕らは明日を願った。

青葉はな

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「……――、ああ」

そういえば、そうだったな。碧音にとっては特別なんだっけか。

真っ黒な髪の隙間から覗くピアスを、太陽の光が輝かせる。

スカイブルーにコバルトブルー、光の当たる加減で色が変わるそれは、ライブの時にだけ身につけているもの。

「皐月、碧音。準備出来てる?」

控え室の窓からひょっこり顔を出す藍。

「いつでも行けるぜ!」

「うん。大丈夫」

ガラリ、ドアを開け室内に入るなり直ぐに扇風機の前に立った。クーラーなんてものは無いけれど、これで十分だ。

「midnightの皆さーん、お願いします」

スタッフから声がかかる。やっと俺達の出番だ。楽しさと興奮で背筋がゾクゾクしてきた。

この感覚がたまんねえ。

ライブの間観客を、広いステージを、時間を支配し思いのままに出来るのは俺達だ。

「皐月、刹那、藍」

星渚が1人1人の名前を呼ぶ。4人でお互い目を合わせる。

「アンコールに必ず呼ばれる。で、もう1度ライブやるよ」

「あったり前だろ!」

「力、出し切ろうな。俺達なら出来る」

「やろう、アンコール」

各々返事をすると、星渚が満足気に頷いた。

「――行こうか」

星渚の合図で、外へ飛び出す。

大勢の観客がいる、ステージへ。



———————


——……


「……な、菜流」

「また緊張してきたとか言うわけ?明日歌が緊張してどうすんの」

「そうだけど!しちゃうんだもん。トラブルが起きたらどうしようとか!」

理由を挙げてみても菜流は『はーん、ふーん、へーえ』としか返してこない。

適当だな。それは星渚さん達のライブが絶対成功するって確信を持ってるからだろうけど。

「よし、こんな時は」

自分の右手に人の字を書いてゴクン、飲むふりをする。

「そんなおまじない、気休めでしょ?」

「そう?効果あるよ」

「小学生から古くさっ!って言われるんじゃない」

「私の中では、昔教えてもらったこのおまじないが1番いいんだって」

菜流もやるだけやってみたらいいのに。まあ、菜流ならもっと理論的に証明された方法を使うだろうけど。

こういうとこも星渚さんと同じだ。

碧音君達のライブまで、後1分。心の中でカウントダウンする。合宿の成果が試される時がきたのだ。

――そして。

ステージの袖から颯爽と登場してきた4人。

夜の闇に紛れ込める黒い服に身に纏い、ネクタイには細い1本の線が入っている。

碧音君は紺色で皐月は臙脂色、藍は藤色、星渚さんは黄色。

4人共普段よりお洒落なアレンジの髪型にしていて、どこぞのモデルですかと聞きたくなる。

星渚さんや皐月が観客を煽り盛り上げて定位置につくと、少しだけざわめきが収まった。

碧音君が3人に目配せして、カンカンカン、スティックを叩く。

皐月のベースと藍のギター、それに合わさる複雑なリズムを正確に叩く碧音君のドラム。

マイクからスッと視線を上げ、形の良い唇を開けて紡ぎ出される言の葉。

「――Hold my breath――」

たった一言星渚さんが口にすれば、たちまちmidnightの世界に支配される。

観客も、声にならない叫びを上げているはずだ。

「――I just want you look at me alone――」

例えば、甘くドロリとした蜂蜜にバニラビーンズでほのかに香りづけしたようなミルクティー。

そこにスパイシーなシナモンやミントを加えれば、星渚さんの独特な声色の出来上がり。







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