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しおりを挟むあ、皐月の匂いだ。爽やかでキツくない香水の香り。
「大丈夫だって。ちゃんと指定された部分握ってれば火傷しないようになってんだよ」
「ごめん」
花火の勢いもだんだん収まっていき、最後白っぽい黄色の火花がゆっくり地面に落ちる途中でパッと消えてなくなった。
終わった、胸を撫で下ろす。
「皐月、あの、手」
もう大丈夫だから。
「おう」
皐月の手が離れると一緒に温もりもなくなり、ひんやりした夜風が肌を撫でる。
男の人に手を握られる経験なんて滅多にないから、余計心臓に悪い。
私自分で言うのもどうかと思うけど純情だから。恥ずかしくなる。
「星渚ー、花火あとどれくらいある?」
「1人1、2本ってとこ」
「げ!無くなるの早いな」
皐月は気にした様子もなく焚き火に筒形の花火を入れて、新しい花火を物色中。やはり年上は違う。
私も皆が花火を選んでる中に交じり、好みのやつを手に入れた。
「この花火綺麗なんだよね」
焚き火の火をつけようと体の向きを変えたら、土手に座り空を仰ぐ碧音君が視界の端に映る。
花火を手に持ったまま、気になって土手を上り碧音君の隣に座らせてもらった。
「綺麗だよね、今日の星空」
「ああ」
墨を垂らしたような真っ黒な空とは言い難い、紺色や藍色の空に点々と存在する無数の星。
「碧音君!あの星めっちゃ光ってるよ……てか動いてない?」
「飛行機の光だよお前の目は飾りか」
「似てるじゃんか」
言われてみれば、私が星と間違えた光は輝き過ぎかも。
「真ん中ら辺に見えるのってカシオペヤ座?」
「それはちゃんと分かるんだな」
「安心したように言わないで碧音君」
碧音君は私が持っていた手持ち花火の先端を星に合わせて、秋の第四四辺形について説明してくれる。
「前から思ってたけど碧音君て星座好き?」
「暗闇を照らしてくれるから」
一瞬切な気な顔をしたけど、すぐにポーカーフェイスに戻った。
「んで、視線をずっと横にずらすと」
「んー?どれ?」
「今花火で指したとこから右のとこがペガスス座」
空に瞬く星は大きさも輝きの強さも様々で、いまいち分からない。むしろ違いを理解して星座を見つけられる碧音君がすごいと思う。
花火の先に注意して目を凝らす。
「第四四角形はあの一番光ってる2つの星を中心としてて」
「分かりません先生」
碧音君の言う通り、私の目は飾りかもしれない。
「だーから」
花火を下ろして碧音君が振り返り――。
「………っ」
呼吸が、止まった。
油断すれば唇と唇が触れあってしまう、距離。かさつきのない唇、長い睫毛、夜の紺色が映った瞳。
どれをとっても美少年の顔のパーツ。
その1つ1つから、色香が漂う。
こんな近くだと、碧音君の呼吸音まで聞こえてきそう。空に散りばめられた無数の宝石よりも、私には碧音君の方が魅力的で。
「……ご、めん」
「あっ、えと、ううん私こそ」
碧音君の声にハッとして慌てて顔を離す。
ドッ、ドッ、ドッ。煩い心臓、おさまれおさまるんだ。
「せ、星座の話また聞かせて」
「お前がちゃんと星を見つけられたら」
ああ、今が夜で本当に良かった。私の顔は真っ赤に違いないから。頬が熱い、指の先から足の先まで熱い。
グサリと心臓に何かを突き刺されたような衝撃が、体を駆け巡った。
私、こんなの今まで体験したことないよ。
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