つつ(憑憑)

九文里

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冬の雀

友達

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「昔は、よく一緒に遊んでくれたのに君は急に居なくなっただろう」
「ずっと君を捜してたんだよ」
「やっと見つける事ができた。また遊べるね」

 先ほど橋と一緒に消えた女の子が立っていた。
 
「前に僕を橋から落としたのは君ですか?何故こんな事をするんです?」

「やだな。君が本物の橋を見つけられるかゲームをしてたんじゃないか」

「あの時は、油断して僕の領域の中に変な者が入って来て中断しちゃったけどね。今度は変なのが入って来ないように、しっかりと結界を張ったからね」

 こいつは人じゃない、危険な奴だ。

「ほら、どれか本物の橋を渡らないと家に帰れないよ」

 そう言って女の子は川下を指差した。
 童士と真理子がその指差した方を見ると、先程まで無かった幾つもの橋が川下に向かって並んでいる。
 いつもは、ぽつりぽつりと2、3個しか見えない橋が、今は10も20も狭い間隔で連なっている。

 どれを渡ったらいいのか分からない。偽物を選ぶと川に落ちて怪我をする。

 童士は心中穏やかではなかった。真理子を自分の事に巻きこんでしまって心苦しかった。

「この子は関係無いんだ、帰してあげてください」

「だめだよ、遊び相手は多い方が面白いじゃないか」

 もとより理屈の通じる相手ではなかった。
 渡って来た橋を戻ろうと思って上側を見たが、そこにも橋が増えていてどれを渡って来たのかわからない。

 童士は川の中を覗き込む。かなり高い。小学生の背丈からすると深淵を覗き込んだとすら感じる。
 壁は石が積み上げられて出来ている。垂直に切り立っているので降りて川底を横切るのは無理そうだ。
 
「すいません後藤さん、こんなことになってしまって」
 
 童士は立ち上がって真理子に謝った。

「舞鼓君が謝ることないわ。私が橋を渡ったんだから」

 真理子も立ち上がって服に付いた土を払った。
 
 童士は土手の反対側に歩いて行く。
 そちらも切り立った崖になっていて、下の方に住宅街が広がっている。

「だめみたいね」

 後に付いてきた真理子が、下を覗き込んで側で呟く。
 やっぱり橋を渡るしかなさそうだと二人ともひしひしと思いいった。

「さあ、どの橋を渡る?」

 女の子は両手を合わせて嬉しそうだ。

 童士と真理子は橋を見ながら土手を歩く。
 なにか本物と偽物に違いはないかじっくり見るが、見分けられない。

 女の子はその場で動かずにニコニコして二人をじっと見ている。

 童士が考えあぐねていると何か視界に入った。目線の先の方で小さな物がピョンピョンと跳ねている。

「あっ、あれはもしかしたら」

 童士は横の真理子を見てから、早足で歩き出した。
 真理子は横について来る。

「やっぱり」

 雀が土手の上で跳ねて動き回っている。
 橋を渡る前にあの男の子が言ってた事を思い出した。あの子は“雀を捕まえろ”と言っていた。

 童士は、あの男の子は味方だと確信していたから、言われた通り雀を捕まえようと近づくと、雀は逃げるように飛び立った。
 二人は飛んで行く雀を追いかける。
 すると雀は一つの橋の欄干に降りた。

「あの橋だ」

 二人は雀の止まった橋の袂までやって来た。
 童士は橋を渡ろうと足を踏み出すと「待って」と真理子が童士の上着の裾を掴んだ。
 童士が真理子の方を見ると「あれを見て」と真理子が川下の方を見ている。
 童士も横を見ると「あっ」と声を上げた。
 下のすぐ隣の橋の欄干にも雀が止まっている。
 そればかりか、その下の橋にもまたその下の橋にもずっと雀が止まっていた。


 
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