つつ(憑憑)

九文里

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冬の雀

もう一人の女の子

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「アハハハハ」

 二人の後ろで笑い声があがった。
 驚いて振り向くと、あの女の子が楽しそうに笑っている。

「雀について行くんじゃないのかい?」
「確かに一匹は本物の雀だよ」
「でも僕が雀を増やしてあげたんだ」
「好きな雀についていきなよ」

 あの男の子が「雀を捕まえろ」と言っていたのを聞いていたのか。童士はそう思いながら雀を見比べた。
 確かに、最初の雀はこの橋に降りたと思ったが、向こうの橋に降りたかもしれない。
 いくらじっと見ても違いが判らない。

「見比べても違いは判らないだろう。だって本物の雀と同じ物を出したんだから」

「舞鼓君、あれじゃない」

真理子は手前から三番目の橋に指をさした。

「あの雀、何だか他のと違う気がする」

 童士も真理子の見ている方を見た。

「なるほど、確かにそうですね」
「色が他の雀に比べて濃いというか、生き生きとしてるというか」

「あの橋を渡る?」

「でも、確証がないと危険ですよ。水の量もそんなに多くないし、川底のコンクリートに叩きつけられたら下手したら死にますよ」

「そうよね、舞鼓君ハッキリ言うわね」
「どうしようか?」

 真理子は、童士の顔を見た。
 あやふやに真理子を危険な目に合わせるわけにはいかない。
 童士は黙って考え込んでいるが、心に引っ掛かっている事があった。

 はっとして、真理子の顔を見た。

「あの時、あの男の子が消える前に言ってましたよね」
「冬の雀を捕まえろって」

「うん、確かに言ってた。どういう意味だろう」

 真理子も童士の顔を見て話す。

「ちょっと、君達、落ち着きすぎじゃない。もっと焦りなよ」

 後ろで女の子が怒った声をあげた。
 二人は、ちらりと女の子を見る。
 すると女の子の様子がおかしいのに気がついた。その子の視線は二人を見ずに遠くの方を見ている。

「何だ、あれは?」
 と女の子が呟く。

 二人は、女の子の視線を追って川下の方に目をやった。
 するとそこには、赤い着物を着た女の子が、後ろ姿を向けて歩いていた。後ろにいる女の子と同じ姿である。

「あれは、僕だ。あんなもの出した覚えはない」

 童士は、後ろの女の子の様子が戸惑っているのを見てとって、「いきましょう」と真理子の手をとって川下の女の子を追いかけた。
 
「どうやら、あの女の子はこの世界では異物の者みたいです。あの子についていけばここから出られるかも知れません」
 
 童士は真理子の手を握って走った。
 だが次の瞬間、二人は足を止めてしまう。
 目の前に赤い着物を着た女の子が何人も現れた。
 10人以上はいる。その内何人かは橋を渡り始めている。そして、後ろ姿で歩く女の子達の、一番後ろにいる子が立ち止まり振り向いた。

「僕と同じ姿の子を出して導こうとしても無駄だよ。僕と同じ者なんていくらでも出せるから」

 そう言ってまた前を向いて歩き出し、女の子達のなかに紛れていった。







 
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