つつ(憑憑)

九文里

文字の大きさ
26 / 34
冬の雀

棘(おどろ)

しおりを挟む
 童士と真理子は立ちつくし、女の子達が好き勝手な方へ歩いていくのを見ていた。
 後ろから見ていると、皆同じ姿なので最初の女の子がどれだか見当がつかない。ただ、分かったのは、奴は突如現れた女の子を恐れているという事だ。きっと出口を示してくれる存在なんだろう。

 しかし、童士はしばらく女の子達を見ていると違和感を感じ始めた。何だろうと思っていると横から「あっ」という声が聞こえた。

「そう言うことか」 
 
 真理子は、じっと女の子達を見て言った。
 そして、一人の女の子が橋を渡り始めると、「あの橋だ」と言って童士の手を握った。

「舞鼓君行こう」

 今度は、真理子が童士の手を掴んで走り出した。
 
「邪魔されない内に一気にいくわよ」

二人は女の子達の中を駆け抜けると一つの橋にたどり着いた。

「この橋よ」

 真理子が橋の上に乗ろうとすると「待って下さい」と童士が止めた。

「僕が先に行きます。安全を確認したら後から来て下さい」

 童士は真理子の目を見て言った。

「分かった」と真理子が返すと童士は橋の上にあがった。
 橋は消えなかった。大丈夫だと思い真理子の方を振り向くとギョッとした。
 真理子の背後の女の子の中から
凄い勢いでやって来る女の子がいた。
 髪を振り乱し赤い着物ははだけ、目がつり上がっている。

「後藤さん早くこっちに来て」

 童士は叫んだ。

 真理子は、童士の様子がただ事ではないのを察知して、弾かれたように飛び出した。

「おのれ何故分かった。逃しはせぬぞ」

 叫びながらやって来るその者は、もはや女の子では無く、つり上がった目は血走り口は耳まで裂け、ざんばらに乱れた髪の中に二本の角が見えた。そして体は大人程に膨れ上がり着物は腰を覆うだけになっていた。それは、鬼だった。
 真理子は、背後から恐ろしいものが来るのを感じながら、後ろを振り返らずに走った。
 橋の長さは、5メートル程もある。真理子が中程にかかる頃には、その者はもう彼女に手が届く程すぐ後ろに来ていた。
 童士は、真理子を待ちながら走っていた。そして橋を渡り切ろうかというところで真理子を振り返ると、その後ろにいる巨大な鬼を見上げた。
 体は半分、橋を出ていたが真理子を助けるために戻ろうと体を反転させようとしたら、誰かに腕をがっと掴まれ橋の外に引き出された。
 その横を真理子は何とか橋から走り出ようとしていた。
 しかし、体が全部出ようとしてた時、わずかに残った左腕を鬼に掴まれた。
 真理子はグイと腕を引っ張られつり上げられると思った刹那、鬼の腕が飛んだ。真理子を掴んでいる腕だった。そして、次の瞬間真理子は橋を渡りきった。
 真理子はその場にへたり込んだ。何があったのだろうと横の童士の方を見上げると、そこには刀を振り上げてる見知らぬ少年がいた。
 
  
    
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

処理中です...