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シャムネコ

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疑惑と確信

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「しかし、それを取り出すのは不可能だと言ったはずだ!一体どうやって…」
「この書類によれば、1つだけ方法がある…」
「どんな…?」
「この"中の"ガルバを親に返す」
「返す!?そんなことをしたらどうなるか分からないぞ!!」

声を荒らげるルキに落ち着いた様子でダットが続ける

「父さんが調べたことが本当なら、何も起こらない寧ろ、平和になるかもしれない…」
「どういう事なの?ダットは…あなたのお父さんは何を…」

ユナは不安そうに聞いた

「母さん、父さんは旅に出る前、なんて言ってたか覚えてる?」
「え?…確か、化物達に返さなきゃならない物がある、不可抗力とは言え、奴らからすれば奪われたも同然だからな…って…」
「そうか!!そういう事だったのか!!」

突然ルキが確信を得たかのように声を出した

「たしかに、その中に居るガルバの子供は、ダットがマガジンを落としてしまって偶然そこに居たガルバの子供を取り込んでしまった…そして今回の群れが街を襲った事………私の考えがあってれば…」

ルキが仮説を立て始めた

「あの群れはマガジンに取り込まれた子供を探していた、そして前回求愛で街に流れ込んできた群れはその取り込まれた子供の代わりに繁殖しようとメスを追いかけていた、その時にダットが"ソイツ"を使った。その銃の特性はガルバの最強最悪の攻撃である"最期の咆哮"…その声が群れの子供の声だった…そして今回のガルバ達の強襲………メスはいなかった…」

続けてダットが

「自分たちの子供を探しに来た…か…」
「恐らくはな…」

しばらく3人は沈黙した
そしてダットが決意したように

「ルキ、急ぎでガルバレーダーの修復を」
「!?……分かった!」
「母さんはシェルターに避難してて…もう誰も死なせたくない…」
「…分かったわ…頑張ってね、ダット」

遠くからトボトボと歩いてくるタツにダットが声をかける

「やっと戻ってきたかバカが」
「うるせぇ…一人でいるよりダット達と居る方が安全だと思っただけだ…」
「そうか…だけど結局1人かもな、シェルターに避難しろ」
「え?」
「ここから先は、俺とルキでやる…解決できるかもしれないんだ」
「本当か!!なら俺も!」

言いかけて、遮られた

「ダメだ!!死ぬぞ…もう俺は誰も死なせたくないんだ…」

ダットの顔を見て寂しそうにするタツは、これから起こることを察したかのように、無言で頷いた

「ルキ、どのくらいかかる?」
「3日あれば修復とグレードアップができる…待てるか?」
「3日か……ルキが納得出来るまで待つよ、最後の大仕事だからさ」
「………分かった、できる限り性能を上げておく」
「シェルターで待機してる、何かあったらすぐ呼んでくれ」
「あぁ……父親に似てきたな」
「え?」
「お前の父さんも自分以外の犠牲は許さなかった…」
「……」
「あの頃が懐かしいな………必ず帰ってきてくれよ」
「…期待はしないでね」
「そうだな…相手が相手だしな」

二人は笑い合った
一息ついた後にルキが珍しく真面目な顔をして言った

「せめて肉体だけは残してくれよ…石だけの墓を作るのはもうゴメンだからな」
「努力するよ」

後ろ手に手を振りながらダットは立ち去る
その背中をルキは見えなくなるまで見つめていた、かつての英雄ダット・クイーバーの様な大きな背中を…
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