暗黒

シャムネコ

文字の大きさ
7 / 8

疑惑と確信

しおりを挟む

「しかし、それを取り出すのは不可能だと言ったはずだ!一体どうやって…」
「この書類によれば、1つだけ方法がある…」
「どんな…?」
「この"中の"ガルバを親に返す」
「返す!?そんなことをしたらどうなるか分からないぞ!!」

声を荒らげるルキに落ち着いた様子でダットが続ける

「父さんが調べたことが本当なら、何も起こらない寧ろ、平和になるかもしれない…」
「どういう事なの?ダットは…あなたのお父さんは何を…」

ユナは不安そうに聞いた

「母さん、父さんは旅に出る前、なんて言ってたか覚えてる?」
「え?…確か、化物達に返さなきゃならない物がある、不可抗力とは言え、奴らからすれば奪われたも同然だからな…って…」
「そうか!!そういう事だったのか!!」

突然ルキが確信を得たかのように声を出した

「たしかに、その中に居るガルバの子供は、ダットがマガジンを落としてしまって偶然そこに居たガルバの子供を取り込んでしまった…そして今回の群れが街を襲った事………私の考えがあってれば…」

ルキが仮説を立て始めた

「あの群れはマガジンに取り込まれた子供を探していた、そして前回求愛で街に流れ込んできた群れはその取り込まれた子供の代わりに繁殖しようとメスを追いかけていた、その時にダットが"ソイツ"を使った。その銃の特性はガルバの最強最悪の攻撃である"最期の咆哮"…その声が群れの子供の声だった…そして今回のガルバ達の強襲………メスはいなかった…」

続けてダットが

「自分たちの子供を探しに来た…か…」
「恐らくはな…」

しばらく3人は沈黙した
そしてダットが決意したように

「ルキ、急ぎでガルバレーダーの修復を」
「!?……分かった!」
「母さんはシェルターに避難してて…もう誰も死なせたくない…」
「…分かったわ…頑張ってね、ダット」

遠くからトボトボと歩いてくるタツにダットが声をかける

「やっと戻ってきたかバカが」
「うるせぇ…一人でいるよりダット達と居る方が安全だと思っただけだ…」
「そうか…だけど結局1人かもな、シェルターに避難しろ」
「え?」
「ここから先は、俺とルキでやる…解決できるかもしれないんだ」
「本当か!!なら俺も!」

言いかけて、遮られた

「ダメだ!!死ぬぞ…もう俺は誰も死なせたくないんだ…」

ダットの顔を見て寂しそうにするタツは、これから起こることを察したかのように、無言で頷いた

「ルキ、どのくらいかかる?」
「3日あれば修復とグレードアップができる…待てるか?」
「3日か……ルキが納得出来るまで待つよ、最後の大仕事だからさ」
「………分かった、できる限り性能を上げておく」
「シェルターで待機してる、何かあったらすぐ呼んでくれ」
「あぁ……父親に似てきたな」
「え?」
「お前の父さんも自分以外の犠牲は許さなかった…」
「……」
「あの頃が懐かしいな………必ず帰ってきてくれよ」
「…期待はしないでね」
「そうだな…相手が相手だしな」

二人は笑い合った
一息ついた後にルキが珍しく真面目な顔をして言った

「せめて肉体だけは残してくれよ…石だけの墓を作るのはもうゴメンだからな」
「努力するよ」

後ろ手に手を振りながらダットは立ち去る
その背中をルキは見えなくなるまで見つめていた、かつての英雄ダット・クイーバーの様な大きな背中を…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...