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新たな世界
第七話 爆発寸前
しおりを挟む「お姉ちゃん、あ、遊んでください!」
ニムのところにやってきたのはイチカだ。
この前買ってもらったおもちゃをいくつか持ってニムの部屋に来た。
「うん、いいよー! 何したい?」
ニムは微笑んでそれを快諾する。
年上の妹ではあるものの、幼く見えるイチカはニムにとってもかわいく思えるのだ。
イチカが持ってきたのはゲームの類だ。
盤上で遊ぶすごろくのようなものである。だが運だけではなく、ある程度の駆け引きがあるゲームだ。
どんどん進む駒、そして戦略カードと呼ばれる特殊なアイテムを駆使し、ゲームは進む。
そしてしばらく遊び、最終的にイチカが勝利する。
設定の上では二歳前後しか離れておらず、そして知能が低いわけではないイチカは強かった。
幼いだけで、単純に遊び慣れていることを除いても弱くはないのだ。
少しずつ悪くなっていく戦況をニムは青い顔で見ていた。
「もう一回! もう一回!」
ニムはまさか負けると思っていなかったため、悔しさのあまりリベンジを申し込む。
イチカはふふん、と誇らしげにそれを受けた。
ちなみにこのゲームで一番強いのは言うまでもなくご主人様である。
知能を使うゲームというものにおいては遊び相手にならないほどだった。
何せ賢者の石という奇跡の結晶を作れるほどの頭脳なのだから。そして、大人げないほど加減を知らない。人の感情の機微や、社会常識のようなレベルのことには疎くても、限られた範囲で知性を発揮する分野においては文句なく天才なのだ。
そのため、最弱だったイチカは遊び相手を求めたのだ。
「お姉ちゃん、弱い……です」
笑いをこらえるような、そんな表情のイチカにニムは少しイラっとする。
「い、いや違うよ! きっと運が悪いんだよ! そうだよ! もう一回!」
ニムは年下相手に必死で取り繕っていた。
それはもう必死で、顔を真っ赤にするほどだ。
ニムは知能で言うなら他と変わらないのだが、どうにも短絡的な性格だった。
そのため、終盤が大事であるこのゲームは非常に向いてない。
そのくせ負けず嫌いという面倒なタイプだった。
その様子をご主人様は陰から見ていた。
何ともほほえましく、二人ともが楽しそうに見えた。
(ニムを精製したのは正解だったな。イチカも楽しそうだし、俺も存外楽しい)
レームやイチカとはまた違う癒しだった。
自分以外に向けている顔も好感が持てた。
「全然勝てない……まさか、イカサマ!?」
「ち、違います! お姉ちゃんが弱いだけ、です……」
戦績はひどいもので、一回も勝つことはなかった。
惜しい、というところまでもたどり着けなかったのだ。
ニムが戦法を変えればイチカがそれに対応し、イチカが変えた時はニムが対応できないというワンサイドゲームだった。
「ニムはそういうのが苦手のようだな」
「ご主人様!? 見ていたんですか、この惨事を……」
「結構最初から見てたぞ。途中は見ていないがな」
合間の試合の際はレームの家事を手伝っていたのだ。レームの負担が大きい気がしたので、その分自分が動かなければならない。
レームは別に大丈夫、とのことだったが、ご主人様的には見過ごせない。なにせ最愛の存在なのだから。
それをわかっているからこそ、レームはそれを強くは止めない。嬉しいからである。
そしてそれがひと段落して戻ってくると、ニムが惨敗の挙句、イチカをイカサマ呼ばわりをしていたというわけである。
「お前は短絡的なんだ。この手のゲームというのは終盤に向けて如何に形成を有利にしていくか、というところに肝があるんだ。それを意識してみれば、多少は勝負になるのではないかと思うぞ」
「……ご主人様は最強です。ゲームで負けたところを見たことがないです」
イチカが不満そうに言った。何度も挑んでは完膚なきまでに叩き潰されているのだ。
唯一、レームだけは匹敵する実力を持っている。だが勝つ気概がないため、ご主人様の無敗伝説はいまだ更新中である。
「え? じゃあそれでもう一回!」
ニムはビシッと人差し指をイチカに向ける。
だが止めに入る者がいた。
「俺がここに来たのは食事の用意ができたからだ。ということでいったん中止だ」
「くうう。リベンジの機会を、何とぞ……! 何とぞ……!」
「別に食事の後でもいいじゃないか。せっかくレームが一人で作ってくれたんだぞ。冷ますのはもったいないだろう?」
もっともな意見だったので、ニムは自分の人差し指をもう片方の手で握り、悔しそうにする。
「後で教えてやろう、フェアにイチカも一緒にな」
ご主人様はフッ、とニムに笑顔を向ける。
ニムは少しきゅんとしたものを感じた。
食事の間中、ニムは戦略を立てていた。
イチカはのんびりと、嬉しそうに食事を口に運んでいる。
口が小さいため、少しずつしか食べられないのだ。
今が好機、そう判断し頭をフル活用していた。
「ご主人様、こぼれていますよ、もう、仕方ないですね♡」
「あ、ああ、すまんレーム……だがちょっと恥ずかしいな」
レームがご主人様の膝に流れ落ちたスープをクロスでふき取る。
その姿は完全に夫婦、しかも新婚のような様子で、ニムは思わず目を奪われる。
ご主人様は恥ずかしながらもまんざらではない表情で、それが憎らしいとニムは思った。
(いいなぁ。あれだけ仲いいんだもん、そりゃああなるよね)
考えているのは夜に行われている情事のことである。
ニムが生まれてから毎晩行われていて、ここ一週間、ニムも皆勤で覗きに行っている。
全裸で覗きに行って、その場で何度もオナニーをしていたこともあった。
いっそバレてしまえば、と思っていたのだが、ご主人様はそれには気づかずレームとの情事を必死で楽しんでいた。
自分から誘うのは非常識で、はしたないことだというのは理解している。
それに、もし拒絶されてしまうと今の関係性は崩壊してしまうのだ。
性の興味はあっても、普段一緒に過ごしていること、それはかけがえのない楽しさだった。
覗きの後は部屋で一晩中オナニーをしており、こっそり部屋に持ち込んでいるエリクサーで体力を回復させている。
だがレームにはすべてバレているようで、ご主人様にお願いしてみたら、というアドバイスまでもらってしまっていた。
お願いとは情事に混ぜてくれ、ということである。
お姉さまは何も思わないのかな、と思ったが、なんとなく聞きにくく、結局ずっと我慢している。
ここ最近、ニムは最初の頃とは違う感情でオナニーをしている。
最初は単純な性の興味とそれからやってくる快感がメインだったのだが、最近はご主人様個人に興味があったのだ。
大きな手や自分たちとは違う、筋肉質な体つき。そういうことを考えては股間をどっぷりと濡らしていた。
話しかけられると複雑な気持ちになるし、触られでもすればそこが敏感に反応してしまう。
晩酌に付き合っているときなどは切なく感じるほどだった。
今は二人きりなのに、ご主人様は私に興味がないのかな、と落ち込むこともあった。
「お姉ちゃん、ど、どうしたんですか……? ぼーっとして」
心配そうに聞いてきたのはイチカだ。
その声でハッと我に返り、ずっとご主人様を見つめていたのに気づく。
「あ、いや、大丈夫、ちょっとぼーっとして……」
レームの方を見ると、くすくすと小さく笑っていた。
ニムは顔が赤くなるのを感じ、そして自分の股間がひどいことになっているのに気づく。
ぬるぬるとしたものが太ももまで伝って、パンツに擦れるクリトリスが大きくなっているのがわかる。
「ご、ごめんなさい、ちょっと体調が悪くて、その、部屋に戻ります!」
そう言って席を立ち、小走り気味で部屋に戻る。
走っている最中もクリトリスがこすれ、愛液が足を伝っているのがわかる。
もうイッてしまいそう、そう思って、ニムは声を上げるのを手を使い必死で抑え、部屋に入って、ベッドに倒れこむのと同時に絶頂した。
「んひぃぃ!♡」
一人の部屋で、ベッドの上に顔を必死で押さえつけ、声を押し殺しながら絶頂する。
足をぴったりと閉じ、その足はぴんと伸び切っている。
びくびくと、体の痙攣が収まらず、その痙攣のせいでオマンコがこすれ、またイキそうになる。
「はぁ、はぁ!♡」
息を荒らげながら必死でズボンを脱ぐ。ぬちゃついたものが股間にしみており、何とも言えない不快感を覚える。上半身はそのまま服を着ている。ニムはオマンコに夢中で、乳首などにはそれほど興味がなかった。
そしてそのままパンツを片足に引っ掛けたまま、オマンコに手を伸ばす。
パンツは水気で重くなっており、外気に触れて少し冷え始めていた。
ぐちょぐちょ♡と音を立て、必死に穿り回す。
最初のうちは外側の刺激で満足していたのだが、ご主人様のチンポが入ってくる妄想をしていると、自然に指を入れるようになったのだ。
それでもまだ慣れておらず、一本の指を入れるので精いっぱいだった。
ベッドに寝そべったまま、M字の形に足を開き、オマンコをほじくる様は昼間の様子からは考えられないほど淫らだった。
目を瞑り、ご主人様に何度も突かれている妄想でオナニーをする。
それはとても気持ちのいいもので、最近はずっとこの妄想をしていた。
「ご主人様、ご主人様!♡」
ぐちょぐちょ♡という音が室内に卑猥に響く。
ご主人様のあの声や手を想像するだけで、イキそうになる。
肩に手を置かれた時の感触を思い出し、さらに手を速めていく。
「あ、あ!♡ ご主人様、イキそうです、イキそうです!♡ 私の中にもご主人様の欲しいです!♡」
誰もいない部屋にそう告げて、ビクンッと体を跳ね上げる。
ご主人様の意図を超えて、ニムの体は異常に感度が高く、そのせいで天然ものの淫乱が誕生していた。
「ニム、大丈夫なのか? 急に体調が悪くなることが多い気がするのだが、一度検診してみるか……?」
「ミスはしていないはずなんだが……一応、お前たちも一度検診しよう。何かあってからでは遅い」
エリクサーで体力の回復や治癒ができても、根本的なところをミスしている可能性が出てきた、と考えたのである。
それはもう恐怖としか言えなかった。外的要因ではなく、自分が原因でみんなを失う可能性が出てきたからだ。
真っ青な顔をしているご主人様をレームは微笑ましく思う。
本気で心配してくれているということがわかる顔、そしてニムの気持ちに気づいていない鈍感さを愛おしく思う。
「ご主人様、大丈夫ですよ。ニムの病はそう言ったものではないですから」
そう、ニムの病はただの恋煩いなのだから。
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