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第八章:王城決戦編
第九十六話:聖女の禁断魔法──『命涙再詠』
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薄水色の髪が、地下通路のわずかな光を反射して輝いている。澄んだ青い目は、しかし、怒りを宿しルシウスを射抜いていた。それは王女、エルヴィーナだった。
「……自分、これってどうしたらいいんスかね」
流石のルシウスも、王女の登場に驚きを隠せないようだった。その飄々とした口調の裏に、かすかな動揺が感じられる。彼は、この王女という存在が、手加減していい相手ではないと、直感的に理解した。
「貴方が私のアルスさんをここまで傷付けたのですか?」
エルヴィーナの声は静かだが、その奥には氷のような冷たさがあった。
「え、まぁそうッスけど」
ルシウスは、悪びれる様子もなくヘラヘラと答える。彼のこの態度が、エルヴィーナの怒りをさらに煽った。
「そうですか」
エルヴィーナがそう呟いた瞬間、彼女の周囲に黒い茨のような魔力がうねり出し、地下全体を覆い尽くす。通路の壁には黒い影が這い上がり、空間そのものが歪んでいくような錯覚に陥る。
「えっと、王女様?自分、今どういった状況なのか理解出来ないんスけど──」
ルシウスが軽口を叩いた、その瞬間。
「──かはっ」
ルシウスの胸元から、まるで弾丸のように地面から這い出た黒い薔薇に弾き飛ばされた。ルシウスの体が宙を舞い、壁に叩きつけられる。その光景は、あまりにも速すぎて、肉眼では捉えきれない攻撃だった。
ルシウスは壁から着地し、驚愕に目を見開いている。彼は、剣を構え、警戒を強めた。間一髪のところで、攻撃を弾いたようだが、その腕には微かに震えが見える。
「……私の”アルス”。……彼を傷付けた罪は重いですよ」
エルヴィーナは、倒れているアルスに視線を向け、再びルシウスへと向き直った。その目は、獲物を仕留める猛禽のようだ。
「ちょっとちょっと、話が違うじゃないッスか~?自分達はそちらの──」
ルシウスが言い訳をしようとするが、エルヴィーナは聞く耳を持たない。再び、黒い薔薇が、今度は背後からルシウスを襲う。
(後ろッ!?)
ルシウスは、信じられないという表情で背後を振り返る。しかし、またもや防いで見せた。彼の剣は、常軌を逸した速度で振るわれ、黒い薔薇を正確に切り裂いていく。
「……そういえば、私の記憶に貴方のような騎士は存在しませんが、一体どこの誰ですか?」
エルヴィーナは、ルシウスの驚異的な剣技を目の当たりにしても、冷静さを失わない。むしろ、彼への不信感をさらに募らせたようだ。
「それは失礼ッスよ。自分はただの騎士。一応、副隊長の肩書きは貰ってるッスけど」
ルシウスは、相変わらずヘラヘラと笑いながら答える。しかし、その額には冷や汗がにじんでいた。
エルヴィーナは首を傾げた。
「……記憶を辿ってみましたが知りません。それに貴方、本当に人間ですか?」
「これまた失礼ッスね。ちゃんと人間ッスよ」
「魔力が感じられないのですが」
「…………魔力ってのはそんなに大事なものなんッスか?」
ルシウスは、心底不思議そうに問う。まるで、魔力という概念を初めて知ったかのようだ。
「どんな生物も魔力は持っているものです。命を燃やす力、それが魔力です。それが無い貴方は、生命として不自然です」
「そうなんスね。自分はよく分かんないッス」
ルシウスは首を横に振った。彼の言葉は、本当に心からそう思っているようだった。
「極めて不愉快です。『黒薔薇ノ牢』」
エルヴィーナがそう唱えると、ルシウスの足元から巨大な黒い茨が隆起し、彼を瞬く間に閉じ込める。それは、まるで漆黒の薔薇の檻のようだ。
「なんのつもりッスかこれは」
ルシウスは、驚愕に目を見開いている。彼は、この魔法が自分を閉じ込めるためのものだと、一瞬で理解した。
「そこで大人しくしておいて下さい」
「へいへい、仰せのままに……」
エルヴィーナは、ルシウスに背を向け、迷うことなくアルスの方へと近づいていく。
「大丈夫ですか?私のアルス」
エルヴィーナの声は、さっきまでの冷たさが嘘のように、優しく、そして心配そうな響きを帯びていた。
「大丈夫じゃありません!今すぐ治療が──」
アルスの隣で、セレナが必死に叫ぶ。アルスの右腕からは、今もなお、大量の血を流し続けている。
「黙りなさい」
エルヴィーナは、セレナに冷たく言い放った。その声は、王女としての絶対的な威厳に満ちていた。
「……アルス。申し訳ございません。すぐに治療を致します。ご安心下さい」
エルヴィーナは、アルスの傷を癒そうと、その手をかざす。しかし、セレナはそれに抵抗した。
「失礼ですが、王女殿下。貴女に今のアルス様を治療できるとは到底思えません」
セレナは、エルヴィーナを見据え、一歩も引かない。
「黙りなさいと言ったでしょう」
エルヴィーナの瞳に、わずかな怒りが宿る。
「いいえ!黙りません!私がアルス様を治療します。治癒魔法を扱えるのは私の特権ですから!」
セレナは、聖女としての矜持をかけて、エルヴィーナに食い下がった。
「……煩い。……では早くしなさい」
エルヴィーナの言葉に、諦めと、どこか興味を示すような響きが混じる。
「ご理解頂き感謝します」
セレナは、安堵したように息を吐き、魔法を唱え始めた。彼女の魔力は、先ほどの防御魔法でほとんど残っていない。しかし、彼女の顔には、迷いなど微塵もなかった。
(この傷……アレしかない……迷う必要などない!)
セレナの心に、一つの決意が宿る。それは、聖女にしか使えない、禁断の魔法。
「『ああ主よ。願わくば、天に届かぬこの願い、どうかこの地に咲かせたまえ。かつて光を失いし者よ、いま一度、呼び覚まされよ。我が命の杯に、残された刻を注ぎ入れ、我が魂の灯火をあなたの胸に灯しましょう──』」
それは、王女であるエルヴィーナさえ知らない詠唱。
エルヴィーナだけではない。他の誰にも扱えない、聖女であるセレナにしか扱えない、命を代償とする禁忌の魔法だった。
「……貴女……何を……して」
エルヴィーナは、セレナの詠唱から、その魔法が持つ意味を悟ったようだ。その顔に、驚きと焦りが浮かぶ。
「『どうか、目を開けて。貴方はまだ……ここに居ていい。生きていて良い。涙の詩、再び詠まれし祈りと共に──」
セレナの体から淡い光が溢れ、それがアルスの体を包み込んでいく。
「──『命涙再詠』」
アルスの右腕の傷が、まるで時間が巻き戻るかのように塞がっていく。肉が再生し、血管が繋がる。血まみれだった服も元通りになり、痛みも徐々に消えていった。
「この力……伝承に伝わる”聖女の禁断魔法”……ここまでの域に達しているとは……ですが」
エルヴィーナは、セレナの魔法の威力を認めながらも、その代償を理解していた。
セレナは詠唱を終えると、その場に倒れ込んだ。彼女の体からは、全ての魔力が、いや、命の光すらも失われたかのように、力が抜けていく。
「……私は貴女に感謝します。そして──アルスさんを救って頂きありがとうございました、聖女セレナ様」
エルヴィーナは、倒れたセレナに深々と頭を下げた。その姿は、王女ではなく、ただ一人の人間として、聖女への敬意を表しているようだった。
「……自分、これってどうしたらいいんスかね」
流石のルシウスも、王女の登場に驚きを隠せないようだった。その飄々とした口調の裏に、かすかな動揺が感じられる。彼は、この王女という存在が、手加減していい相手ではないと、直感的に理解した。
「貴方が私のアルスさんをここまで傷付けたのですか?」
エルヴィーナの声は静かだが、その奥には氷のような冷たさがあった。
「え、まぁそうッスけど」
ルシウスは、悪びれる様子もなくヘラヘラと答える。彼のこの態度が、エルヴィーナの怒りをさらに煽った。
「そうですか」
エルヴィーナがそう呟いた瞬間、彼女の周囲に黒い茨のような魔力がうねり出し、地下全体を覆い尽くす。通路の壁には黒い影が這い上がり、空間そのものが歪んでいくような錯覚に陥る。
「えっと、王女様?自分、今どういった状況なのか理解出来ないんスけど──」
ルシウスが軽口を叩いた、その瞬間。
「──かはっ」
ルシウスの胸元から、まるで弾丸のように地面から這い出た黒い薔薇に弾き飛ばされた。ルシウスの体が宙を舞い、壁に叩きつけられる。その光景は、あまりにも速すぎて、肉眼では捉えきれない攻撃だった。
ルシウスは壁から着地し、驚愕に目を見開いている。彼は、剣を構え、警戒を強めた。間一髪のところで、攻撃を弾いたようだが、その腕には微かに震えが見える。
「……私の”アルス”。……彼を傷付けた罪は重いですよ」
エルヴィーナは、倒れているアルスに視線を向け、再びルシウスへと向き直った。その目は、獲物を仕留める猛禽のようだ。
「ちょっとちょっと、話が違うじゃないッスか~?自分達はそちらの──」
ルシウスが言い訳をしようとするが、エルヴィーナは聞く耳を持たない。再び、黒い薔薇が、今度は背後からルシウスを襲う。
(後ろッ!?)
ルシウスは、信じられないという表情で背後を振り返る。しかし、またもや防いで見せた。彼の剣は、常軌を逸した速度で振るわれ、黒い薔薇を正確に切り裂いていく。
「……そういえば、私の記憶に貴方のような騎士は存在しませんが、一体どこの誰ですか?」
エルヴィーナは、ルシウスの驚異的な剣技を目の当たりにしても、冷静さを失わない。むしろ、彼への不信感をさらに募らせたようだ。
「それは失礼ッスよ。自分はただの騎士。一応、副隊長の肩書きは貰ってるッスけど」
ルシウスは、相変わらずヘラヘラと笑いながら答える。しかし、その額には冷や汗がにじんでいた。
エルヴィーナは首を傾げた。
「……記憶を辿ってみましたが知りません。それに貴方、本当に人間ですか?」
「これまた失礼ッスね。ちゃんと人間ッスよ」
「魔力が感じられないのですが」
「…………魔力ってのはそんなに大事なものなんッスか?」
ルシウスは、心底不思議そうに問う。まるで、魔力という概念を初めて知ったかのようだ。
「どんな生物も魔力は持っているものです。命を燃やす力、それが魔力です。それが無い貴方は、生命として不自然です」
「そうなんスね。自分はよく分かんないッス」
ルシウスは首を横に振った。彼の言葉は、本当に心からそう思っているようだった。
「極めて不愉快です。『黒薔薇ノ牢』」
エルヴィーナがそう唱えると、ルシウスの足元から巨大な黒い茨が隆起し、彼を瞬く間に閉じ込める。それは、まるで漆黒の薔薇の檻のようだ。
「なんのつもりッスかこれは」
ルシウスは、驚愕に目を見開いている。彼は、この魔法が自分を閉じ込めるためのものだと、一瞬で理解した。
「そこで大人しくしておいて下さい」
「へいへい、仰せのままに……」
エルヴィーナは、ルシウスに背を向け、迷うことなくアルスの方へと近づいていく。
「大丈夫ですか?私のアルス」
エルヴィーナの声は、さっきまでの冷たさが嘘のように、優しく、そして心配そうな響きを帯びていた。
「大丈夫じゃありません!今すぐ治療が──」
アルスの隣で、セレナが必死に叫ぶ。アルスの右腕からは、今もなお、大量の血を流し続けている。
「黙りなさい」
エルヴィーナは、セレナに冷たく言い放った。その声は、王女としての絶対的な威厳に満ちていた。
「……アルス。申し訳ございません。すぐに治療を致します。ご安心下さい」
エルヴィーナは、アルスの傷を癒そうと、その手をかざす。しかし、セレナはそれに抵抗した。
「失礼ですが、王女殿下。貴女に今のアルス様を治療できるとは到底思えません」
セレナは、エルヴィーナを見据え、一歩も引かない。
「黙りなさいと言ったでしょう」
エルヴィーナの瞳に、わずかな怒りが宿る。
「いいえ!黙りません!私がアルス様を治療します。治癒魔法を扱えるのは私の特権ですから!」
セレナは、聖女としての矜持をかけて、エルヴィーナに食い下がった。
「……煩い。……では早くしなさい」
エルヴィーナの言葉に、諦めと、どこか興味を示すような響きが混じる。
「ご理解頂き感謝します」
セレナは、安堵したように息を吐き、魔法を唱え始めた。彼女の魔力は、先ほどの防御魔法でほとんど残っていない。しかし、彼女の顔には、迷いなど微塵もなかった。
(この傷……アレしかない……迷う必要などない!)
セレナの心に、一つの決意が宿る。それは、聖女にしか使えない、禁断の魔法。
「『ああ主よ。願わくば、天に届かぬこの願い、どうかこの地に咲かせたまえ。かつて光を失いし者よ、いま一度、呼び覚まされよ。我が命の杯に、残された刻を注ぎ入れ、我が魂の灯火をあなたの胸に灯しましょう──』」
それは、王女であるエルヴィーナさえ知らない詠唱。
エルヴィーナだけではない。他の誰にも扱えない、聖女であるセレナにしか扱えない、命を代償とする禁忌の魔法だった。
「……貴女……何を……して」
エルヴィーナは、セレナの詠唱から、その魔法が持つ意味を悟ったようだ。その顔に、驚きと焦りが浮かぶ。
「『どうか、目を開けて。貴方はまだ……ここに居ていい。生きていて良い。涙の詩、再び詠まれし祈りと共に──」
セレナの体から淡い光が溢れ、それがアルスの体を包み込んでいく。
「──『命涙再詠』」
アルスの右腕の傷が、まるで時間が巻き戻るかのように塞がっていく。肉が再生し、血管が繋がる。血まみれだった服も元通りになり、痛みも徐々に消えていった。
「この力……伝承に伝わる”聖女の禁断魔法”……ここまでの域に達しているとは……ですが」
エルヴィーナは、セレナの魔法の威力を認めながらも、その代償を理解していた。
セレナは詠唱を終えると、その場に倒れ込んだ。彼女の体からは、全ての魔力が、いや、命の光すらも失われたかのように、力が抜けていく。
「……私は貴女に感謝します。そして──アルスさんを救って頂きありがとうございました、聖女セレナ様」
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