転生したら、まさかの脇役モブでした ~能力値ゼロからの成り上がり、世界を覆すは俺の役目?~

水無月いい人(minazuki)

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第二章:騎士団への道と戦場の初陣

第十話:脱出の道と深まる信頼

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ゴブリンの追撃を洞窟の罠で足止めし、俺たちはその奥へと進んでいた。古びた剣を杖のように使いながらも、ライオネルは俺のすぐ後ろを付いてくる。

彼の表情は依然として険しいが、俺への警戒心は薄れ、信頼の色が少しずつ濃くなっているのを感じた。

「アルス、本当にこの先に道があるのか?」

ライオネルが、不安そうに尋ねる。薄暗い洞窟の壁は、どこまでも続き、新たな道など見当たらない。

「はい、俺の勘がそう言ってます」

俺はひやりとしながら言葉を濁した。【鑑定】スキルで周囲の壁を調べると、微かに魔力の痕跡を感じる場所があった。これは、ゲームでいう「隠し通路」のサインだ。

「この壁の、ここです。ここに、隠し扉があるはずです」

俺は特定の場所を指差した。ライオネルは半信半疑といった顔で、俺が指差した壁に触れる。

「ふむ……確かに、ここだけ妙に空気が違うな」

俺は剣の柄で、その壁をコツンと叩いた。すると、壁の一部が沈み込み、小さな隙間が現れた。ライオネルの目が、驚きに見開かれる。

「まさか……本当に隠し扉が!」

彼は唸り声を上げた。俺の言うことが、全て真実だと証明された瞬間だった。

隙間から中を覗くと、さらに奥へと続く、狭い通路が見えた。

「出口だ!」

俺は思わず声を上げた。通路の先には、鬱蒼とした森が広がっていた。しかし、そこは俺たちがゴブリンの群れに追われていた場所とは全く異なる、穏やかな森だった。鳥のさえずりが聞こえ、柔らかな風が頬を撫でる。

「……助かった。本当に、お前には驚かされるばかりだ、アルス」

ライオネルが、心底安心したように呟いた。その顔には、感謝と、そして深い敬意が浮かんでいた。

「ここからエメラルドの都までは、あと半日ほどで着くはずです」

俺は地図を取り出し、都への最短ルートを彼に示した。彼は黙って地図を覗き込み、そして大きく頷いた。

道中、ライオネルは自身の身の上を、ぽつりぽりつと話し始めた。彼はグリフィン侯爵家の次男。

本来なら貴族として都で暮らすべき身だが、幼い頃から剣の腕を磨き、騎士団に入団したという。騎士団の一員として、人々のために戦うことを誇りに思っている。

「……俺は、父が遺した名誉を守るため、そしてこの国の民を守るために剣を振るう。それが俺の矜持だ」

彼の言葉には、揺るぎない信念が宿っていた。ゲームで知っていた彼の性格そのまま、いや、それ以上に生身の彼からは、強い意志と人間味が感じられた。

俺は、彼の言葉を聞きながら、一つの疑問が頭をよぎった。ゲームの知識では、ライオネルはヒロインと出会うまで、それほど目立った活動はしていなかったはずだ。

それが今回、魔物の調査任務で単独行動中に襲撃されるという、本来あり得ない事態に陥った。

やはり、俺がエルヴィーナを助けた影響で、歴史が少しずつ歪み始めているのだろうか? あるいは、魔物の活発化自体が、ゲームでは語られなかった初期の異変なのか。

いずれにせよ、俺のモブ人生は、確実にメインストーリーに絡み始めている。

午後には、遠くの地平線に、巨大な城壁が見えてきた。エメラルドの都だ。白い石造りの壁が、夕日に照らされて輝いている。

「あれが、エメラルドの都か……」

ライオネルが感嘆の声を漏らした。彼自身、王都からの移動中に立ち寄ることはあっても、純粋な旅人として都の全景を見ることは珍しいのだろう。

都の門は、兵士によって厳重に警備されていた。俺は身分を証明するものを持たないが、ライオネルが騎士団の身分証を見せると、門番はすぐに敬礼し、俺たちを中へと通してくれた。

都の中は、想像以上に活気に満ちていた。石畳の道には、多くの人々が行き交い、様々な露店が軒を連ねている。

旅人の喧騒、商人の呼び声、子供たちの笑い声。全てが、俺がこれまでいた村とは比べ物にならないほど、賑やかだった。ここが、俺の新たなスタート地点となる場所だ。

「まずは、宿屋を探すか。その前に、お前に礼をしなければならないな」

ライオネルが、俺の肩に手を置いた。

「いえ、俺はただ、困っている人を助けただけですから」

俺はそう答えたが、ライオネルは首を横に振った。

「命を救われたのだ。それ相応の礼はする。それに、お前はただの子供ではない。その知識と胆力は、並の冒険者では敵わないだろう」

彼はそう言って、都の中心部にある、ひときわ大きな建物を示した。

「まずは、騎士団の詰め所へ案内しよう。そこで、お前の身元を確認し、正式な手続きを取る。そして、お前の望むだけの報酬を約束する」

騎士団の詰め所。それは、ゲームのメインストーリーで、ヒロインが騎士団の面々と出会う場所だ。まさか、俺がこんな形で足を踏み入れることになるとは。

「騎士団、ですか……?」

俺は複雑な心境だった。モブとして、物語の中心人物に深く関わるのは、避けたいと思っていた。

しかし、ライオネルの恩義を無下にするわけにもいかない。それに、騎士団を通じて、この世界の情勢をより深く知る機会にもなるかもしれない。

「ああ、心配するな。はグリフィン家のライオネル。お前の安全は私が保証する」

彼は力強くそう言った。

俺は覚悟を決めた。これで、完全に物語の核心へと足を踏み入れることになるだろう。モブの成り上がり物語は、新たなステージへと突入する。俺は、この世界で、どこまで運命を変えられるのか。
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