転生したら、まさかの脇役モブでした ~能力値ゼロからの成り上がり、世界を覆すは俺の役目?~

水無月いい人(minazuki)

文字の大きさ
28 / 152
第四章:真実への扉、動き出す世界

第二十七話:囚われの聖女と闇の結界

しおりを挟む
王城の地下深部。鉄格子の扉の向こうから響く、透き通るような歌声。そして、【危機察知】が告げる強い「影」の気配と、圧倒的な「生命の魔力」。

「ライオネルさん、この扉を開けましょう」

俺は、ライオネルに言った。

ライオネルは、警戒しながら扉に近づいた。鉄格子には、複雑な魔法陣が刻まれており、並大抵の力では開けられないだろう。

「これは……強力な封印魔法が施されているな。しかも、闇の魔力で強化されている」

ライオネルが、顔を険しくして言った。

俺は【鑑定】スキルを集中させた。

【オブジェクト名:闇の封印扉】
【概要:強大な闇の魔力によって封印された扉。内部に強力な存在を幽閉している。解除には、光属性の魔力、あるいは特定の鍵が必要】

(やはり、闇の魔法か……。俺の【ファイアボール】では、破壊は難しいだろうな)

俺は、どうにかしてこの扉を開ける方法はないかと考えた。
光属性の魔力が必要、とある。

しかし、俺は光属性の魔法は使えない。

その時、扉の奥から聞こえる歌声が、さらに大きくなった。
歌声には、助けを求めるような切実な響きが込められている。

【共感性】が、その歌声の主の苦痛を、俺の心に直接伝えてきた。

「……助けて……」

微かな声が、歌声の合間に聞こえた。それは、確かに助けを求める声だ。

「くそっ、何とかして開けるぞ!」

ライオネルが、戦斧を構え、扉に叩きつけようとした。

「待ってください、ライオネルさん! 無理に開けようとすると、罠があるかもしれません!」

俺は、ライオネルを制した。
闇の魔法で強化された封印だ。無闇に攻撃すれば、反撃を受ける可能性もある。

俺は、扉に刻まれた魔法陣を【鑑定】でさらに詳しく調べた。
すると、魔法陣の一部が不自然に歪んでいるのが分かった。

これは、以前、宰相グラハムが使おうとしていた転移魔法陣と同じような、未完成な、あるいは無理やり起動しようとした痕跡だ。

(この歪み……もしかしたら、この魔法陣を逆手に取れるかもしれない)

俺は、自分の【魔力操作】スキルを信じることにした。

【魔力操作】のレベルは5.5。以前よりも格段に向上している。
俺は、扉に手をかざし、魔法陣に微かに残る魔力の流れを読み取った。

そして、自分の魔力を、その魔法陣の歪んだ部分へと流し込み、まるでギアを回すかのように
慎重に、そしてゆっくりと陣の流れを読みながら回していく。

俺の【魔力操作】スキルがフル稼働する。

するると、ギギギ……と、扉が微かに音を立てた。
魔法陣が、わずかに光を放ち、そして闇の魔力が揺らめいた。

「アルス、何を……!?」

ライオネルが、俺の行動に驚いたように声を上げた。

俺は、集中力を途切れさせないよう、ライオネルの言葉には答えず、魔力を流し込み続けた。

(まだだ……まだ油断はできない)

闇の魔法陣が、俺の魔力によって、徐々にその均衡を崩していく。
そして、パキィン!と、ガラスが割れるような音がした。

闇の魔力が、霧のように晴れていく。
そして、鉄格子の扉に施されていた封印が、解除されたのだ。

「開いた……!」

ライオネルが、驚きの声を上げた。

俺は、扉をゆっくりと押し開いた。
扉の奥には、広い空間が広がっていた。

その空間の中央には、巨大な魔法陣が描かれ、その中心に、一人の女性が鎖に繋がれて座り込んでいた。

彼女の髪は、まるで夜空の星のように輝く銀色で、その瞳は、深い海の底を思わせるような、美しい蒼色だった。
身に纏うのは、純白の衣。

しかし、その衣は、汚れ、血に染まっている。

そして、彼女の周囲には、無数の「影」の魔物たちが、まるで護衛するかのように漂っていた。

彼女こそが、歌声の主。そして、ゲームで「囚われの聖女」と呼ばれた、聖女セレナである。

「聖女様……!」

ライオネルが、その姿を見て、思わず声を上げた。
聖女セレナは、ライオネルの声に反応し、ゆっくりと顔を上げた。

その瞳は、虚ろで、生気が感じられない。
無理もない。目も当てられない酷い有様だ。

「……貴方たちは……」

聖女セレナが、弱々しい声で呟いた。

その時、彼女の周囲を漂っていた「影」の魔物たちが、一斉に俺たち目掛けて襲いかかってきた。

【危機察知】が、最大レベルで警告を発する。

「くそっ、まだいたのか!」

ライオネルが、戦斧を構え、影の魔物たちに斬りかかる。
俺も、剣を抜き、影の魔物たちを迎え撃った。

だが、聖女セレナの周囲にいる影の魔物たちは、これまで戦ってきたシャドウクリーパーとは異なっていた。

彼らは、聖女セレナから放出される強大な魔力を吸収し、より強靭な存在へと変貌していた。

【鑑定】スキルで影の魔物を調べる。

【種族:シャドウガーディアン】
【特徴:闇属性の魔物。聖女の魔力を吸収し、再生能力と防御力が大幅に向上している。】
【危険度:高】

シャドウガーディアン。やはり、聖女の魔力が利用されている。
このままでは、聖女の魔力が吸い取られ続け、彼女の命が危ない。

「ライオネルさん! 聖女様を助け出すのが先です!」

俺は叫んだ。

「分かっている! だが、こいつらが邪魔で……!」

ライオネルが、影の魔物たちに囲まれ、苦戦している。

俺は、聖女セレナへと視線を向けた。
彼女の周囲に展開されている魔法陣は、彼女の魔力を吸い取り、影の魔物たちを強化しているようだった。

この魔法陣を破壊しなければ、聖女セレナを助け出すことはできない。

俺は、剣に魔力を集中させ、【魔力剣】を発動する。
蒼白い光を放つ剣で、影の魔物たちを切り裂きながら、聖女セレナの元へと駆け寄った。

「聖女様、大丈夫ですか!」

俺は、聖女セレナの鎖に手をかけた。
鎖は、闇の魔力で強化されており、簡単には壊せない。

(やっぱ無理か……)

その時、聖女セレナが、俺の黒い瞳を見た。
彼女の虚ろだった瞳に、微かな光が宿った。

「……貴方の瞳……」

聖女セレナが、そう呟いた。
そして、彼女の口元が、かすかに微笑んだように見えた。

【共感性】スキルが、強く反応する。

聖女セレナの心から、驚きと、そして、かすかな「希望」の感情が伝わってきた。
彼女は、俺の黒い瞳に、何かを感じ取ったようだ。

その瞬間、聖女セレナの体から、微かな光の魔力が溢れ出した。
その光は、彼女を繋ぐ闇の鎖を、わずかに弱らせた。

「これなら……!」

俺は、その光の魔力を逃さない。
俺は、剣にさらに魔力を集中させ、溢れ出た光の魔力と共鳴させるように、鎖に斬りかかった。

キィン!と、甲高い音が響き渡る。
そしてついに、聖女を縛っていた闇の鎖が砕け散った。

「聖女様、今です!」

俺は、聖女セレナの手を取り、魔法陣の中心から引き離した。

聖女セレナが魔法陣から離れた瞬間、シャドウガーディアンたちの動きが鈍くなった。
彼らの強化源である魔力供給が途絶えたからだ。

「よし、今だ、ライオネルさん!」

俺は叫んだ。
ライオネルも、その隙を逃さず、残りのシャドウガーディアンたちを次々と撃破していく。

「おらああああああああああッ」

聖女セレナは、解放されたことで、少しだけ生気を取り戻したようだった。
しかし、長年の幽閉と魔力の吸い取りによって、彼女の体はひどく衰弱している。

「聖女様、すぐに安全な場所へ!」

俺は、聖女セレナを抱きかかえ、この場所から脱出しようとした。

(んぐ……筋力は上がったはずなのに何故か思うように力が入らない……)

だが、その時、部屋の奥から、新たな闇の魔力が沸き上がった。
そして、その闇の中から、あの忌まわしい声が響き渡った。

「……まさか、聖女まで解放されるとはな……。だが、無駄だ。儀式は、すでに最終段階に入っている」

そこに現れたのは、ロード・オブ・シャドウだった。

(こんな時に……!)

彼の体からは、以前よりもさらに強力な闇の魔力が放出されている。
そして、彼の背後には、複数の「影」の魔物たちが控えていた。

「ロード・オブ・シャドウ……!」

ライオネルが、警戒しながら聖女セレナと俺の前に立ちはだかった。

「貴様ら、聖女を解放したところで、この世界の運命は変えられん。魔王様は、まもなく完全な復活を遂げられるのだ」

ロード・オブ・シャドウが、冷笑を浮かべた。
彼の言葉に、俺は背筋が凍る思いがした。

奴は言っていた。
儀式は、すでに最終段階に入っている、と。

まさか、俺たちがここで足止めされている間に、別の場所で儀式が進められているというのか?

俺の【危機察知】が、最大レベルで警告を発している。
この場所は、もはや安全ではない。
聖女セレナを連れて、ここから脱出しなければ。

「聖女様を連れて、ここから脱出します! ライオネルさん、援護を!」

俺は叫んだ。
ライオネルは、頷き、ロード・オブ・シャドウへと向かっていく。

俺のモブ人生は、聖女を救い出し、そして、魔王の復活を阻止するという、新たな使命を背負うことになった訳だ。

しかし、その道のりは、想像以上に険しいものになりそうだ。

(くッ……それにしても抱き抱えていると胸が手に当たるんだが…………)

これ以上ない程にピンチであるにも関わらず、俺の意識はあらぬ方へと向いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

処理中です...