転生したら、まさかの脇役モブでした ~能力値ゼロからの成り上がり、世界を覆すは俺の役目?~

水無月いい人(minazuki)

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第四章:真実への扉、動き出す世界

第二十八話:聖女の力と古の記憶

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ロード・オブ・シャドウの出現は、王城地下を再び戦場へと変えた。

彼の言葉「儀式はすでに最終段階に入っている」が、俺の脳裏に重く響く。

聖女セレナを抱きかかえ、ここから脱出することが最優先だ。

「聖女様を連れて行きます! ライオネルさん、頼みます!」

俺は叫び、衰弱した聖女セレナを抱きかかえて、来た道を戻ろうとした。ライオネルは、戦斧を構え、ロード・オブ・シャドウと、彼が召喚した新たな影の魔物たちへと向かっていく。

「了解した!くそっ、しぶとい奴らだ!」

ライオネルが、怒りの声を上げた。彼一人では、多勢に無勢だ。

ロード・オブ・シャドウは、俺の動きを封じるように、闇の魔法を放ってきた。
俺は、聖女セレナを抱えながら、ギリギリで闇の魔法をかわす。

しかし、その一撃は、俺のすぐ後ろの壁を破壊し、轟音と共に土煙が舞い上がった。

「アルス、危ない!」

ライオネルが叫ぶ。

聖女セレナは、俺の腕の中で、かすかに震えていた。
その体は、ひどく冷たい。長年の幽閉と魔力の吸い取りで、彼女の生命力は限界に近い。

「大丈夫ですか、聖女様!」

俺が問いかけると、聖女セレナは弱々しく首を振った。

「……私は……もう……」

彼女の瞳は、再び虚ろになりかけていた。

(このままでは、聖女様が持たない!)

俺は焦った。聖女セレナは、魔王復活の儀式における重要な鍵だ。彼女を失うわけには……!

その時、俺の【共感性】スキルが、聖女セレナの心の中から、わずかな「光」を感じ取った。

それは、かすかな希望の光であり、そして、彼女の内に秘められた、計り知れないほどの「癒しの力」の源だった。

俺は、聖女セレナの意識を繋ぎ止めるため、彼女の瞳を真っ直ぐに見つめた。

「聖女様、諦めないでください! あなたは、この世界の希望です! まだ、諦めるには早すぎる!」

俺の言葉が、聖女セレナの心に届いたのか、彼女の瞳に、再び微かな光が宿った。

「……希望……」

彼女は、俺の黒い瞳をじっと見つめた。
その瞬間、聖女セレナの体から、温かな光が溢れ出した。
その光は、彼女の傷ついた体を癒し、俺の魔力枯渇の疲労すら、わずかに和らげる。

【スキル:自己回復:未習得 → 0.5】
【スキル:光魔法:未習得 → 0.5】
【共感性】が、聖女セレナの心を読み取る。彼女の持つ、純粋な「癒しの力」が、俺の言葉に反応し、一時的に発動したのだ。

「これは……!」

俺は驚いた。彼女の癒しの力が、俺の体に新たなスキルを覚醒させたのか!?

その光に、ロード・オブ・シャドウが反応した。

「馬鹿な! 聖女の力が、まだ生きているだと!?」

ロード・オブ・シャドウが、怒りの声を上げた。
奴は再び、聖女セレナを目掛けて闇の魔法を放とうとする。

「──させるか!」

ライオネルが、間一髪でロード・オブ・シャドウの攻撃を阻止した。

俺は、聖女セレナのわずかな回復を感じ取り、彼女を抱えながら、通路の奥へと駆け出した。
ロード・オブ・シャドウは、ライオネルに足止めされている。彼には悪いが今しかない。

薄暗い地下通路を走りながら、俺は聖女セレナに語りかけた。

「聖女様、俺の瞳に、何か感じたのですよね? 俺は、あなたを助けます。この世界を救うために、あなたの力が必要です!」

聖女セレナは、俺の言葉に、弱々しく頷いた。

「……貴方の瞳……懐かしい……。古の……勇者と……同じ……」

聖女セレナの言葉に、俺は心臓が跳ね上がった。

古の勇者と、同じ……?

やはり、俺の黒い瞳は、この世界における特別な意味を持っていたのか……?

俺はモブである故に、キャラメイクの手抜きだと思っていたんだが……。


そして、地下祭壇で聞こえた「勇者の魂の一部」という声と繋がった。

(……まさか俺の瞳は、転生者の証であり、同時にこの世界の「勇者」と何らかの繋がりがあるということか……!?)

俺の脳内で、新たな情報が次々と結びついていく。
俺が知っているこのゲームの世界観における『勇者』は、特定の血筋や、特別な能力を持つ者とされていた。

しかし、俺はただのモブに過ぎない。それが、なぜ……?

その時、背後から追ってくる影の魔物たちの気配が、さらに近づいた。
ロード・オブ・シャドウが、ライオネルを突破してきたようだ。

「くそっ、マジかよ!もう来たのか!」

俺は焦る。このままでは、再び追い詰められてしまう。こんな時に勇者でも助けに来てくれれば……なんて甘い考えが頭をよぎった。

その時、聖女セレナが、再び微かな光を放った。
その光は、通路の壁に触れると、壁に描かれた古の紋様を浮かび上がらせた。

その紋様は、俺が【鑑定】で「古代の魔力制御装置の残骸」と判断したものと似ていた。

「この紋様は……」

聖女セレナが、その紋様を指差した。

「……ここを……通れば……隠された……通路が……」

聖女セレナは、力を振り絞って、そう告げた。
【鑑定】スキルが、その紋様から微かな魔力の流れを読み取る。
それは、まさしく隠し扉の起動術式だった。

「ライオネルさん! ここです!」

俺は、聖女セレナが示した紋様を指差した。
ライオネルも、俺たちの元へとなんとか追いついてきた。

「今だ!」

ライオネルが、紋様の一部を力強く叩いた。
ゴゴゴゴゴ……と、重い音を立てて、壁の一部が横にスライドし、新たな隠し通路が現れた。

「さすがだ、聖女様!」

俺は聖女セレナを抱え直し、その隠し通路へと飛び込んだ。
ライオネルも、俺たちに続いて通路へと入った。

直後、通路の入り口が、轟音と共に閉ざされた。
ロード・オブ・シャドウの、怒りの咆哮が、壁の向こうから響いてくる。

「待てええええ!逃がさんぞおおおお!必ず、次こそは必ず始末してやる!ガキィィィィィィィィッ」

俺たちは、辛くも追撃を振り切ることができた。
しかし、安心している暇はない。聖女セレナの体は、限界に近い。

隠し通路の先は、王城の地上へと続く、秘密の階段だった。それを上っていくと、やがて王城の裏庭の一角へと繋がっていた。

薄暗い地下から、まばゆいばかりの陽光が差し込む。
聖女セレナは、その光に目を細めた。
彼女は、長年の幽閉生活で、太陽の光を浴びることもなかったのだろう。

(これでようやく……)

「聖女様、安全な場所へ行きましょう。早急にに治療が必要です」

俺は、聖女セレナを抱きかかえながら、騎士団の詰所へと急いだ。
その途中、聖女セレナが、弱々しい声で俺に尋ねた。

「……貴方の……名前は……?」

「俺は、アルスです」

俺がそう答えると、聖女セレナは、かすかに微笑んだ。

「……アルス……。貴方が……光……」

聖女セレナの言葉は、まるで謎かけのようだった。

(俺が……光……?)

聖女セレナを救い出したことで、魔王復活の儀式を阻止する手がかりは掴めたはずだ。

そして、俺の黒い瞳と、古の勇者との関係。
この世界の真実が、少しずつ、俺の目の前で明らかになり始めている。

モブからの成り上がりは、今や、世界の命運を賭けた、勇者と聖女を巡る壮大な物語へとなりつつある。

「……モブって一体何なんだ」

俺はポツリと呟いた。
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