攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)

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第六章 ヒ̶ー̶ラ̶ー̶ 絶望篇《第一部》

第74話「消失」

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 ゼウスが自らを犠牲にすると言い出した。当然俺とマキナは反対した。しかしゼウスの覚悟は揺るがない。
 
「離せフィー、我はもういい」
「いい訳あるかっ!」
「お前には我の片割れが居る」
 
 こいつ何言ってんだ!
 こんな時に自暴自棄になりやがって!
 
 ゼウスは俺の手を振りほどき、龍神ハクに向かって歩いていく。
 
「……偽りの神ゼウスよ、まさかお前一人で私を相手をしようと?」
「ああ、我一人で十分だ」
「おい待てっ!」
 
 俺の声にゼウスは振り向かない。ゼウスのその言葉にマキナが口を開いた。 
 
『半身よ、まさか嫉妬しているのか?』
「……」
 
 なに? マキナ今なんて言ったんだ……? 嫉妬……?
 
『我とフィーの関係に』
「……かもしれない。我も元はお前だ。お前の記憶の一部を……いや、大半は我が持っているのだろう」
『なら、尚更我らは力を合わせるべきだ。フィーもそれを望んでいる』
 
 誰でもないマキナの声に反応したゼウス。
 
「……そうだぞゼウス。俺はお前も愛してやる。だから戻ってこいっ!」
「我は幸せ者だ。その言葉を聞けただけで十分だフィー」
 
 ゼウスは再び歩み出す……。
 
「お別れは済みましたか?」
「ああ、我はもう十分だ」
「では、さようなら」
 
 龍神はその言葉の直後、再び大きく口を開き、光り出す。
 
 またあのブレスか!
 
「ありがとう……アスフィー・・・・・。楽しかった」
 
『フィーこっちへ!』
「でもあいつが!!」
『フィーまで死ぬのは我はゴメンだ!』
 
 俺はマキナによって守られた……。しかし、ゼウスは光輝く龍の吐息に呑まれた。
 
 
「…………なに!?」
 
 龍神の様子がおかしい。動きが止まった……?
 
「……我とて考えがない訳では無い」
 
 ゼウスの声は龍神の内側から聞こえてくる。
 
 あいつまさか口の中に入ったのか!?
 何をする気だ!?
 
 龍神の体内から再び声が聞こえる。
 
「防御魔法に護られているというのであれば、内側から攻撃すれば良いだけの話。我はお前が大きく口を開くのを待っていた」
「やめろっ! 私の中から出ていけっ!!」
 
 龍神は空の上で暴れ狂う。よく見ると龍神の体の一部が光りを放っていた。
 
『……半身は内側から攻撃しているようだな』
「……確かにこれなら倒せるかもしれないが」
 
 アイツはどうなるんだよ。倒せてもお前が死んだら素直に喜べないだろ。いまのゼウスは神じゃない・・・・・んだ。
 
 龍神はゼウスの攻撃に為す術なし。空で未だ足掻いていた。
 
 その様子を地上で見守る俺とマキナ。なにができる訳でもない。ただじっと見守る……俺達にはそれしか出来ない。
 
「このっ! このっ!! 出ていけ!」
「無駄だ、我はもうお前と朽ちることを選んだ」
 
 荒れ狂う龍神。
 
『……フィー、あれを見ろ』
「……まさか……本当にやりやがった」
 
 龍神の体に複数穴が開き始めた。その穴から雷が溢れ出す。
 
「だけどよ、アイツもう死んでるんじゃなかったか?」
『正確には、龍神は既に死した体を動かしているだけだ』
「……ってことは不死身という訳ではないのか」
『そうだ』
 
 ならバラバラにしちまえば死ぬってことか。もう死んでるのに死ぬって変な話だが。
 
「があああああああああああああああ」
 
 龍神は荒れ狂う。眼は充血し、その暴れっぷりは流石に上空だけに留まらない。
 
『フィー、我から離れるな!』
「お、おう!」
 
 龍神は無差別にブレスを吐き出した。
 
 おいおい勘弁してくれよ……。ここら一帯破壊する気か? 既に地面に穴が開きまくっているけどよ。
 
 オーディンは地面を抉り、土壁を作り身を守っていた。 
 
「頼むから、はやくくたばってくれ……」
  
 ゼウスは龍神の中で奮闘しているようだ。
 しかし溢れ出していた光がみるみる弱くなっていく。
 
『……力が』
「ああ、弱まってる……」
 
 体中穴だらけになっている龍神。しかしその身はまだ地に落ちない。もう言葉すら発しなくなった。だというのに未だ暴れ、無差別にブレスを吐いていた。
 
『フィー、半身を回復できないか?』
「……中にいる間は無理だ……せめて出てきてくれれば」
『なら我が行こう。……オーディン! フィーを頼む』
「おい! まさかお前までアイツの中に入るのか!? 無茶だやめろ!」
『あんなんでも元は我の一部。フィー、お前を愛した者の一人だ。……どうやら今は違うようだがな』
 
 ……今は違う? どういうことだ?
 
『頼んだぞ! オーディン!』
「任せてよ! 神友しんゆう!!」
「おいっ! マキナっ!!!」
 
 マキナは俺をブレスから守っていたバリアを解き、
 荒れ狂う龍神に向かって空を飛んだ。
 俺はオーディンが作り出した大地の壁によって守られた。
 
「………マキナ……死ぬなよ」
「……大丈夫さフィー、私の親友はこんなんじゃ死なないよ」
 
 神は不滅である。だが、ダメージが蓄積すれば心が死ぬ。
 心が死ねばそれはもう死んでいるのと同じ。今のアスフィーのように。
 
 ポセイドンが心配だな……。
 未だ地面の中に居ると思われるポセイドン。あれからなにも反応がない。
 
 地面は龍神のブレスにより赤くなり、一部マグマのように煮えたぎっていた。
 
 ………
 ……………
 …………………
 
「あ! みてフィー! マキナだ!」
「本当だ……」
 
 マキナは龍神の体内に居たゼウスを連れて戻ってきた。
 龍神は未だ荒れ狂いブレスを吐き続ける。
 なんとかそれを避けながらこっちに向かってくる二人。
 
『……戻ってきたぞ……フィー』
「………ああ、よくやったマキナ。……『ハイヒール』」
 
 俺はゼウスに回復魔法を唱える。
 
「悪いな、フィー。ありがとう」
「礼なんていらない。もうあんな無茶するな」
『話は後だ、ここは引くぞ。アイツをこのまま放っておくのは我としてもしゃくだが……』
 
 そうだな。マキナの言う通りだ。あの龍神は我を失い、暴走している。いずれ落ちるかもしれないし、あのままかもしれない……。
 なんにせよ今の俺達にあの暴龍をどうこうできる手段は無い。
 
「……マキナ、ポセイドンはどうするんだ?」
『……あいつはあんなので死ぬようなやつじゃない。あれでも誰よりメンタルが強いんだ』
 
 ポセイドンには悪いが、一旦引くしかないか。
 
「マキナ、頼む」
『ああ』
 
 俺達は一度ここから引くことにした。マキナは俺に微弱な雷を纏わせ飛行し始める。ゼウスとオーディンは各々で飛んでいる。
  
『……どこへ向かう、フィー』
「……そうだな、ルクス達の所へ頼む。ちょっと確かめたい事がある」
『分かった』
 
 俺はまだ確認していないことがある。
 それは俺の為と言うより、アスフィーお前の為だ。
 お前が確認しなければ始まらない。
 
 俺達は龍神によって焼かれた小さな村へと再び向かうことにした。
 
 
 コルネット村。緑豊かでひっそりと佇むたたず小さな村だった。龍神によって焼かれるまでは。
 
 時間が経ち、もう黒い煙は出ていない。
 そこにあるのは真っ黒な大量の遺体と異臭。
 アスフィーが育った家は真っ黒になり、それが元は家だったとは思えないほど崩壊している。
 
 そして俺は確認する。
  
「…………やっぱりな」
『どうした、フィー』   
「アリアの遺体がない」
 
 アスフィの母、アリアの遺体が無かった。
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