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第六章 ヒ̶ー̶ラ̶ー̶ 絶望篇《第一部》
第82話「おやすみなさい」
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龍神ハク……彼女は俺達の前に再び舞い戻ってきた。
彼女には地獄を見せられた。実際ここに居る二人は死んだ。
エルザも生きていたとはいえ、俺が居なければ死んでいただろう。
「……どけ、龍神ハク。お前を相手にしている場合じゃない」
「私はまだ負けていません」
確かに俺達が負わせた傷では無い。だがもう彼女を相手にしている場合でもない。俺は言う――
「――龍神ハク。これは忠告だ。今すぐ去ると言うなら俺は見逃す。ただし、このまま俺の前に立ち塞がると言うのなら容赦はしない」
「……何を言っているのです? まるで私を倒せるような言い方じゃありませんか?」
「…………聞こえなかったか? 俺はそう言ってるんだ」
彼女はもう怖くない。俺にはもう心強い仲間がいる。構築前の経験値もある。誰も俺の仲間を殺させやしない。
「もう一度言う、どけハク」
「嫌です」
「……何故そうまでしてエーシルとやらに仕えるのですか?」
そんな俺の言葉とは裏腹に、ルクスがハクに問う。彼女の忠誠心の深さに疑問を持ったからだ。はっきり言ってあの道化に仕える価値など無い気がする。それは俺でなくても分かることだろう。
「……私はエーシルとやらを見たことがありません。しかし、ろくな者では無いという事だけは分かります」
「………仕方ありませんね。お前達には特別に答えて差し上げますよ。どうせもう終わるのですから。……約束してくれたからですよ」
龍神ハクは語る。ボロボロな姿になってまで、尚俺達の前に立ち塞がる理由を。エーシルという悪魔のような神に仕える理由を。
「……龍神一族はある神によって滅ぼされました。名をゼウス」
「……ゼウス」
「しかし、恨んではいません。あれは戦争。私達から仕掛けたものでした」
「なぜお前達から仕掛けた」
「……分かりません。いつの間にか仲間が狂った様に暴れ始め、それは伝染していきました。それをゼウス・マキナ……彼女が止めてくれた」
止めてくれた……? 何を言っている? まるで感謝しているような言い方だな。
「……龍神一族。元々は人々を見守る優しい龍種だと聞いたことがある。おじいちゃんからな」
そういうのはエルザ。またもや祖父、エルブレイドの知識であった。
「……ええ、そうですね」
「それならどうして……」
「分かりませんよ。ただ、覚えているのは龍神一族はゼウス・マキナの手によって滅ぼされたという事だけ。私が目覚めた時、目の前にはエーシル様が居た。彼は私にこう言った――」
『――私に仕えれば、龍神一族を復活させてあげますよ』
「私はこれでも龍神。神の位で言えば、下になるかもしれませんが、それがウソかホントかどうかは分かるのです。彼は嘘をついていなかった」
やはりあの道化が絡んでいたのか……龍神一族が狂ったように暴れだしたというのも、エーシルが絡んでいるとしか思えないな。全ては繋がっている気がする。龍神ハク、お前は何も分かってない。エーシルという道化を何も分かっちゃいない。
「エーシルはこの世界の管理者だ。もしかしたらお前の一族を復活出来るという話も本当かもしれない。だが、それでも俺達の前に立ち塞がるというのなら俺は容赦はしない。ルクスを殺した件、忘れてなんかやらない……忘れられるものか」
「……アスフィ」
「…………そうですね。戦いの前に私はなにを言っているのでしょうか。やはり長生きはするものではありません。すぐ楽にして差し上げます」
俺達は分かり合える事など出来なかった。最初からそんな気など無かったがな。俺達は戦闘態勢に入る。しかし俺は、エルザとルクスの前に出る。
「お前達は下がってろ」
「何を言っているのだ!」
「そうです、アスフィ! 私達も戦います!」
相変わらず頑固な奴らだな……前の世界でもそうだった。俺が仲間に罠に嵌められた時、助けてくれたのはエルザ。お前だった。
俺がマキナと喧嘩をして独りの時、慰めの言葉を掛けてくれたのはルクス……お前だった。
そんな大切なお前らだからこそ、俺はお前たちを前に出す訳には行かない。俺は大丈夫と、ルクスとエルザを下がらせ、前に出る。
「私に一度負けたというのにお前一人ですか?」
「ああ」
「私にはあなたの魔法は通じませんよ? それを分かって」
「――それは違う」
……そう、違う。彼女を倒せなかったのは、既に死んでいるのに殺す魔法を唱えたからだ。落ちた葉に水をやるようなものだ。
俺はそんな無駄なことをしていた。なら、落ちる前に水をやればいい。
「龍神ハク……お前は俺に地獄を見せた。大切な者を失うという地獄をな……だがそのお陰で俺も全てを思い出すキッカケとなった。礼なんて言わないし、手加減する気もない。ただ、お前もあの道化に踊らされた哀れな同士だ。せめて楽に|殺してやる」
既に死んでいる龍神ハクに俺は死の宣告をする。
こいつの事情は知らない。恐らく、あの道化が絡んでいるのだろう。あの道化エーシルが、龍神一族を騙し、破滅へと導いた。俺はそう感じている。だから、俺はあえてこう言う。
「眠れ、龍神ハク」
「何……?」
「『再び生命を吹き込む蘇生魔法』」
龍神ハクの体は光に包まれ、ボロボロだった羽は癒え、俺達と出会った時のヒトの姿に戻る。
「これは……どういう? 私の体が回復……した? もう死んでいるはずの体が癒えた……」
「癒したのでは無い、生き返らせたんだ」
「……なに?」
「今、お前は死龍じゃない。全盛期の龍神ハクとなったはずだ」
「……私を蘇生したと? そんな馬鹿げたことがありますか。万が一それが可能だとして、あなたは一体何をしたいのですか。バカですか?」
何をしたいって? まだ分からないのか。もう一度生き返ったのならもう一度殺せばいい。それだけだ。
「終わりだ、龍神ハク。何か言い残すことはあるか」
俺は龍神ハクに敬意を持って問いかける。同じ道化に踊らされた者同士だ。せめて痛みの無いよう眠らせてやる。ここでどうやら龍神ハクも察したようだ。自らの状況を。そして、これから何が起きるのかを。俺の問いかけにヒトの姿となった彼女は口を開く。
「……ありません。皆さん、おやすみなさい」
「…………ああ、おやすみ」
「『死を呼ぶ回復魔法』」
彼女は安らかな眠りについた。
もう二度と目覚めることの無い永劫の眠りに。
……
…………
………………
「………さて、ルクス、エルザ――」
「――反撃開始だ」
「はい」
「うむ」
俺達は龍神の弔いを終え、再び足を動かす。
向かうはエーシル。全ての元凶の元へと。
彼女には地獄を見せられた。実際ここに居る二人は死んだ。
エルザも生きていたとはいえ、俺が居なければ死んでいただろう。
「……どけ、龍神ハク。お前を相手にしている場合じゃない」
「私はまだ負けていません」
確かに俺達が負わせた傷では無い。だがもう彼女を相手にしている場合でもない。俺は言う――
「――龍神ハク。これは忠告だ。今すぐ去ると言うなら俺は見逃す。ただし、このまま俺の前に立ち塞がると言うのなら容赦はしない」
「……何を言っているのです? まるで私を倒せるような言い方じゃありませんか?」
「…………聞こえなかったか? 俺はそう言ってるんだ」
彼女はもう怖くない。俺にはもう心強い仲間がいる。構築前の経験値もある。誰も俺の仲間を殺させやしない。
「もう一度言う、どけハク」
「嫌です」
「……何故そうまでしてエーシルとやらに仕えるのですか?」
そんな俺の言葉とは裏腹に、ルクスがハクに問う。彼女の忠誠心の深さに疑問を持ったからだ。はっきり言ってあの道化に仕える価値など無い気がする。それは俺でなくても分かることだろう。
「……私はエーシルとやらを見たことがありません。しかし、ろくな者では無いという事だけは分かります」
「………仕方ありませんね。お前達には特別に答えて差し上げますよ。どうせもう終わるのですから。……約束してくれたからですよ」
龍神ハクは語る。ボロボロな姿になってまで、尚俺達の前に立ち塞がる理由を。エーシルという悪魔のような神に仕える理由を。
「……龍神一族はある神によって滅ぼされました。名をゼウス」
「……ゼウス」
「しかし、恨んではいません。あれは戦争。私達から仕掛けたものでした」
「なぜお前達から仕掛けた」
「……分かりません。いつの間にか仲間が狂った様に暴れ始め、それは伝染していきました。それをゼウス・マキナ……彼女が止めてくれた」
止めてくれた……? 何を言っている? まるで感謝しているような言い方だな。
「……龍神一族。元々は人々を見守る優しい龍種だと聞いたことがある。おじいちゃんからな」
そういうのはエルザ。またもや祖父、エルブレイドの知識であった。
「……ええ、そうですね」
「それならどうして……」
「分かりませんよ。ただ、覚えているのは龍神一族はゼウス・マキナの手によって滅ぼされたという事だけ。私が目覚めた時、目の前にはエーシル様が居た。彼は私にこう言った――」
『――私に仕えれば、龍神一族を復活させてあげますよ』
「私はこれでも龍神。神の位で言えば、下になるかもしれませんが、それがウソかホントかどうかは分かるのです。彼は嘘をついていなかった」
やはりあの道化が絡んでいたのか……龍神一族が狂ったように暴れだしたというのも、エーシルが絡んでいるとしか思えないな。全ては繋がっている気がする。龍神ハク、お前は何も分かってない。エーシルという道化を何も分かっちゃいない。
「エーシルはこの世界の管理者だ。もしかしたらお前の一族を復活出来るという話も本当かもしれない。だが、それでも俺達の前に立ち塞がるというのなら俺は容赦はしない。ルクスを殺した件、忘れてなんかやらない……忘れられるものか」
「……アスフィ」
「…………そうですね。戦いの前に私はなにを言っているのでしょうか。やはり長生きはするものではありません。すぐ楽にして差し上げます」
俺達は分かり合える事など出来なかった。最初からそんな気など無かったがな。俺達は戦闘態勢に入る。しかし俺は、エルザとルクスの前に出る。
「お前達は下がってろ」
「何を言っているのだ!」
「そうです、アスフィ! 私達も戦います!」
相変わらず頑固な奴らだな……前の世界でもそうだった。俺が仲間に罠に嵌められた時、助けてくれたのはエルザ。お前だった。
俺がマキナと喧嘩をして独りの時、慰めの言葉を掛けてくれたのはルクス……お前だった。
そんな大切なお前らだからこそ、俺はお前たちを前に出す訳には行かない。俺は大丈夫と、ルクスとエルザを下がらせ、前に出る。
「私に一度負けたというのにお前一人ですか?」
「ああ」
「私にはあなたの魔法は通じませんよ? それを分かって」
「――それは違う」
……そう、違う。彼女を倒せなかったのは、既に死んでいるのに殺す魔法を唱えたからだ。落ちた葉に水をやるようなものだ。
俺はそんな無駄なことをしていた。なら、落ちる前に水をやればいい。
「龍神ハク……お前は俺に地獄を見せた。大切な者を失うという地獄をな……だがそのお陰で俺も全てを思い出すキッカケとなった。礼なんて言わないし、手加減する気もない。ただ、お前もあの道化に踊らされた哀れな同士だ。せめて楽に|殺してやる」
既に死んでいる龍神ハクに俺は死の宣告をする。
こいつの事情は知らない。恐らく、あの道化が絡んでいるのだろう。あの道化エーシルが、龍神一族を騙し、破滅へと導いた。俺はそう感じている。だから、俺はあえてこう言う。
「眠れ、龍神ハク」
「何……?」
「『再び生命を吹き込む蘇生魔法』」
龍神ハクの体は光に包まれ、ボロボロだった羽は癒え、俺達と出会った時のヒトの姿に戻る。
「これは……どういう? 私の体が回復……した? もう死んでいるはずの体が癒えた……」
「癒したのでは無い、生き返らせたんだ」
「……なに?」
「今、お前は死龍じゃない。全盛期の龍神ハクとなったはずだ」
「……私を蘇生したと? そんな馬鹿げたことがありますか。万が一それが可能だとして、あなたは一体何をしたいのですか。バカですか?」
何をしたいって? まだ分からないのか。もう一度生き返ったのならもう一度殺せばいい。それだけだ。
「終わりだ、龍神ハク。何か言い残すことはあるか」
俺は龍神ハクに敬意を持って問いかける。同じ道化に踊らされた者同士だ。せめて痛みの無いよう眠らせてやる。ここでどうやら龍神ハクも察したようだ。自らの状況を。そして、これから何が起きるのかを。俺の問いかけにヒトの姿となった彼女は口を開く。
「……ありません。皆さん、おやすみなさい」
「…………ああ、おやすみ」
「『死を呼ぶ回復魔法』」
彼女は安らかな眠りについた。
もう二度と目覚めることの無い永劫の眠りに。
……
…………
………………
「………さて、ルクス、エルザ――」
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「はい」
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