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第六章 ヒ̶ー̶ラ̶ー̶ 絶望篇《第一部》
第81話「回復魔法の極地」
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《俺はずっとお前の中に居たんだアスフィ・シーネット。
エーシルによって世界が再構築されたこの世界でな。お前は忘れていただけだ……だがゼウスのおかげでこうしてまた記憶を取り戻すことが出来た訳だ》
(……だが待て、まだなにか足りない)
《何がだ? 》
「…………そうだ、ゼウス・マキナ……彼女はどうして二人になった」
《それはお前が一番よく理解しているはずだ》
俺が一番理解している……? 俺はゼウスのおかげで記憶を取り戻した。だが、どうにも彼女が二人になってしまった原因が分からない。なぜだ……?
《……忘れているようだな》
(思い出せない……)
《それはお前自身で思い出してやれ……ではそろそろ時間だ、アスフィ・シーネット》
(なんのだよ)
《過去の俺は消え、お前となる》
(……俺は全てを思い出すのか)
《怖いか? 》
(いや、覚悟が決まった)
《それでこそ俺だ》
真っ白だった空間にヒビが入り始めた。盟約の時間が終了する。
《マキナを……また愛してやれよ》
(当たり前だ……)
***
「…………アスフィ、目が覚めたか?」
俺はどうやらエルザにずっと膝枕をされていたらしい。寝心地はレイラより少し硬いな。でも、暖かい。エルザの愛情の籠った言葉が聞こえてくる。
「ああ……待たせてすまない。全て思い出した。もう大丈夫だ」
「…………そうか。実はゼウスが――」
「知ってる」
ああ、知っているとも。彼女の事は忘れない。忘れてやらない。
彼女ゼウス・マキナは元々一人だった。俺がこの異世界で初めて出会った者であり、俺が愛した女だ。しかし、再構築されたことで、どういう訳か彼女は二人になった。
・ゼウス《記憶》
・マキナ《神》
こうして二人に別れた彼女。俺が愛したのは両方だ。
記憶であるゼウスが消えた今、マキナはもう俺の事をほとんど覚えちゃいないだろう。また俺がゼロから愛してやらなくては。
「エルザ……ありがとな」
俺はエルザに礼を言った。エルザはただ一言。
「……いいのだ」
と。俺は立ち上がる。まだやらなくては行けないことが沢山あるからだ。俺は考えを纏める。
・母さんの行方
・エーシルを追いかけるマキナとオーディン
・ルクス、レイラの死亡
大体こんなところか。一つ目は正直分からない。恐らく母さんはまだ死んではいないと思う。何故か分からないがそんな気がする。二つ目はすぐにでも行動に移すべきだ。だが、その前に三つ目だ。俺は再構築がされる前、つまりマキナと旅をしていた前の世界である魔法を習得していた。これはエーシルとの盟約によって得た力では無い。俺がマキナと愛を育みながら旅をし、努力を重ねた結果得た大切で貴重な魔法だ。マキナとの思い出の魔法でもある。俺は……アスフィ・シーネットという人間は、今までずっとゼウス・マキナを忘れていた。故にこの魔法のことも忘れていた。なぜなら――
――この魔法はゼウス・マキナ、彼女と二人で手に入れた魔法だからだ。
「……エルザ、今からやることは他言無用だ」
「…………ん? あ、ああ。分かった」
エルザはよく分からないという顔で返事をする。
今からやるのは反則的でハッキリ言ってチートだ。
だが、俺がマキナと共に努力して獲得した魔法。その名も――
「『再び生命を吹き込む蘇生魔法』」
俺は真っ黒だったナニカにそれを唱えた。
「おいっ! アスフィ! 何をしている」
「見てろ……」
その真っ黒だったナニカは眩しい光を放つ。やがてそれは色を取り戻していく。真っ黒だったものは人間の形、色、匂い……全てを取り戻す。
「……………そんな……まさかこんな事が……」
「……全て思い出したよ……さぁ蘇れ――」
「――ルクス・セルロスフォカロ」
ルクスだった黒いナニカは、ルクスとなる。
「……アスフィ……これは……」
「蘇生魔法だ。俺がかつて使用していた完全なチート魔法」
「あ……はは……ははは………本当にこれはチートだな……」
エルザは乾いた笑いを見せる。当然の反応だ。俺も初めてこれを使った時、驚いた。その時も初めて使った相手はルクスだったな。
「…………ぁ……あれ? 私……生きてる?」
「ルクスっ!!!!!」
「うわぁっ!?」
エルザはルクスの胸に飛び込んだ。大粒の涙を流しながら。
その反応をみて俺は虚しさを感じた。これは神のなせる技だ。
人間が使っていい代物じゃない……だが、今は……今だけはどうか使わせてくれ。ゼウス。お前のおかげだ。俺はマキナを必ず愛すと誓う。もちろん『呪い』なんて関係ない。そんなもの俺が取り除いてやる……。
「アスフィがやったのですか?」
「ああ。……また会う約束だったろ?」
「……ええ、そうですね」
俺とルクスは笑みを浮かべる。エルザは少し仲間はずれという顔だ。さぁ、次はレイラを……と行きたい所だが、ここからミスタリスは三日はかかるな。今すぐにでも行ってやりたいが……。
「……レイラは後にする」
「……アスフィ、良いのか?」
「…………正直良くはねぇ。今すぐにでも行って会いに行きたい。ただ、マキナ達が心配だ。神は死なない。だが、道化のエーシル……あいつならやりかねない。今のアイツなら神を殺すことも」
エーシルは盟約によりこの世界を自分に物にした。
なら、不滅の存在である神を殺すことも可能かもしれない。
俺はマキナをもう失いたくは無い。俺の蘇生魔法も、神であるマキナに使えるかどうかは正直分からない。もし使えないのであれば、急いで加勢に行かなければ。
「マキナ達を追う……エーシルを。やつを倒すのが先だ」
「そのエーシルとかいう奴に勝てるのか……?」
「………」
俺は黙ってしまった。勝てる自信がない。今のエーシルは恐らく完全無欠だろう。神であるオーディン、ポセイドン、マキナの三人が手も足も出なかった。なのに俺が加勢に行ったところで勝てるのだろうか。
「…………アスフィ。行きましょう」
「ルクス……?」
ルクスは立ち上がった。
「今行かなければきっと後悔しますよ」
「……そうだな。その通りだ」
俺はエルザに、ルクスに、どれだけの人達に支えて貰ってここまで来たのだろうか。それを無下にするわけにはいかないよな。……そうだろ? ゼウス。
「行くぞお前ら」
俺達はマキナを追うために足を動かす。
この世界の全ての元凶を討つ為に。
「そうは行きません。私を忘れてもらっては困りますよ……お前達」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。俺達にとって最悪な声だ。
その声の主はボロボロの翼でこちらに向かって飛んでくると、地面に降り立った。 龍神ハク。彼女が再び俺達の障害となり、立ち塞がったのである。
エーシルによって世界が再構築されたこの世界でな。お前は忘れていただけだ……だがゼウスのおかげでこうしてまた記憶を取り戻すことが出来た訳だ》
(……だが待て、まだなにか足りない)
《何がだ? 》
「…………そうだ、ゼウス・マキナ……彼女はどうして二人になった」
《それはお前が一番よく理解しているはずだ》
俺が一番理解している……? 俺はゼウスのおかげで記憶を取り戻した。だが、どうにも彼女が二人になってしまった原因が分からない。なぜだ……?
《……忘れているようだな》
(思い出せない……)
《それはお前自身で思い出してやれ……ではそろそろ時間だ、アスフィ・シーネット》
(なんのだよ)
《過去の俺は消え、お前となる》
(……俺は全てを思い出すのか)
《怖いか? 》
(いや、覚悟が決まった)
《それでこそ俺だ》
真っ白だった空間にヒビが入り始めた。盟約の時間が終了する。
《マキナを……また愛してやれよ》
(当たり前だ……)
***
「…………アスフィ、目が覚めたか?」
俺はどうやらエルザにずっと膝枕をされていたらしい。寝心地はレイラより少し硬いな。でも、暖かい。エルザの愛情の籠った言葉が聞こえてくる。
「ああ……待たせてすまない。全て思い出した。もう大丈夫だ」
「…………そうか。実はゼウスが――」
「知ってる」
ああ、知っているとも。彼女の事は忘れない。忘れてやらない。
彼女ゼウス・マキナは元々一人だった。俺がこの異世界で初めて出会った者であり、俺が愛した女だ。しかし、再構築されたことで、どういう訳か彼女は二人になった。
・ゼウス《記憶》
・マキナ《神》
こうして二人に別れた彼女。俺が愛したのは両方だ。
記憶であるゼウスが消えた今、マキナはもう俺の事をほとんど覚えちゃいないだろう。また俺がゼロから愛してやらなくては。
「エルザ……ありがとな」
俺はエルザに礼を言った。エルザはただ一言。
「……いいのだ」
と。俺は立ち上がる。まだやらなくては行けないことが沢山あるからだ。俺は考えを纏める。
・母さんの行方
・エーシルを追いかけるマキナとオーディン
・ルクス、レイラの死亡
大体こんなところか。一つ目は正直分からない。恐らく母さんはまだ死んではいないと思う。何故か分からないがそんな気がする。二つ目はすぐにでも行動に移すべきだ。だが、その前に三つ目だ。俺は再構築がされる前、つまりマキナと旅をしていた前の世界である魔法を習得していた。これはエーシルとの盟約によって得た力では無い。俺がマキナと愛を育みながら旅をし、努力を重ねた結果得た大切で貴重な魔法だ。マキナとの思い出の魔法でもある。俺は……アスフィ・シーネットという人間は、今までずっとゼウス・マキナを忘れていた。故にこの魔法のことも忘れていた。なぜなら――
――この魔法はゼウス・マキナ、彼女と二人で手に入れた魔法だからだ。
「……エルザ、今からやることは他言無用だ」
「…………ん? あ、ああ。分かった」
エルザはよく分からないという顔で返事をする。
今からやるのは反則的でハッキリ言ってチートだ。
だが、俺がマキナと共に努力して獲得した魔法。その名も――
「『再び生命を吹き込む蘇生魔法』」
俺は真っ黒だったナニカにそれを唱えた。
「おいっ! アスフィ! 何をしている」
「見てろ……」
その真っ黒だったナニカは眩しい光を放つ。やがてそれは色を取り戻していく。真っ黒だったものは人間の形、色、匂い……全てを取り戻す。
「……………そんな……まさかこんな事が……」
「……全て思い出したよ……さぁ蘇れ――」
「――ルクス・セルロスフォカロ」
ルクスだった黒いナニカは、ルクスとなる。
「……アスフィ……これは……」
「蘇生魔法だ。俺がかつて使用していた完全なチート魔法」
「あ……はは……ははは………本当にこれはチートだな……」
エルザは乾いた笑いを見せる。当然の反応だ。俺も初めてこれを使った時、驚いた。その時も初めて使った相手はルクスだったな。
「…………ぁ……あれ? 私……生きてる?」
「ルクスっ!!!!!」
「うわぁっ!?」
エルザはルクスの胸に飛び込んだ。大粒の涙を流しながら。
その反応をみて俺は虚しさを感じた。これは神のなせる技だ。
人間が使っていい代物じゃない……だが、今は……今だけはどうか使わせてくれ。ゼウス。お前のおかげだ。俺はマキナを必ず愛すと誓う。もちろん『呪い』なんて関係ない。そんなもの俺が取り除いてやる……。
「アスフィがやったのですか?」
「ああ。……また会う約束だったろ?」
「……ええ、そうですね」
俺とルクスは笑みを浮かべる。エルザは少し仲間はずれという顔だ。さぁ、次はレイラを……と行きたい所だが、ここからミスタリスは三日はかかるな。今すぐにでも行ってやりたいが……。
「……レイラは後にする」
「……アスフィ、良いのか?」
「…………正直良くはねぇ。今すぐにでも行って会いに行きたい。ただ、マキナ達が心配だ。神は死なない。だが、道化のエーシル……あいつならやりかねない。今のアイツなら神を殺すことも」
エーシルは盟約によりこの世界を自分に物にした。
なら、不滅の存在である神を殺すことも可能かもしれない。
俺はマキナをもう失いたくは無い。俺の蘇生魔法も、神であるマキナに使えるかどうかは正直分からない。もし使えないのであれば、急いで加勢に行かなければ。
「マキナ達を追う……エーシルを。やつを倒すのが先だ」
「そのエーシルとかいう奴に勝てるのか……?」
「………」
俺は黙ってしまった。勝てる自信がない。今のエーシルは恐らく完全無欠だろう。神であるオーディン、ポセイドン、マキナの三人が手も足も出なかった。なのに俺が加勢に行ったところで勝てるのだろうか。
「…………アスフィ。行きましょう」
「ルクス……?」
ルクスは立ち上がった。
「今行かなければきっと後悔しますよ」
「……そうだな。その通りだ」
俺はエルザに、ルクスに、どれだけの人達に支えて貰ってここまで来たのだろうか。それを無下にするわけにはいかないよな。……そうだろ? ゼウス。
「行くぞお前ら」
俺達はマキナを追うために足を動かす。
この世界の全ての元凶を討つ為に。
「そうは行きません。私を忘れてもらっては困りますよ……お前達」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。俺達にとって最悪な声だ。
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