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第九章 アスフィ 交流篇 《第二部》
第138話「成功者」
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エルシアが人を殺したじゃと? そんな……いや有り得るか。
急いでいかねば更に犠牲者が増えるかもしれん!
「アイリス、ワシらも行くぞ!」
「はい! わたくしが案内します」
アイリスに案内され後を付いていくエルブレイド。
人が殺された割には静かな気がするのう。どういうことじゃ?
辺りには数人倒れているが、野次馬等の姿は居なかった。
「あそこです」
「……うむ、確かにアレはエルシアじゃな」
「彼女を止めてくださいエルブレイド。今のわたくしでは彼女を止める事は出来ません。彼女はなんというか……人間でも無ければ、神でもないような……うーん」
アイリスは言葉に詰まる。どう言えば良いのかが分からないでいたのだ。
「……何言っとるんじゃ。あの子は人間じゃ。あと、ワシだって止められる気がせんわい……」
「あなたで駄目なら誰があれを止めるので――」
こちらにまで風が。風と言うより、圧……じゃな?
エルシアのやつ、今度は何を巻き込んだんじゃ……。
エルシアはその綺麗な金髪を激しく揺らしながら暴走状態に入っていた。
「くそっ! なんだコイツ! 剣が刺さらねぇ!! ぐはっ」
男はエルシアに剣を突き立てた。しかし、男の剣は通らない。鎧を着ているから? そうでは無い。エルシアの皮膚が弾いているのだ。
「よせ! 辞めるんじゃエルシアよ!」
「…………お父様。エルシア頑張りました」
エルシアは無邪気な笑顔を見せた。その姿を目にしたエルブレイドはエルシアの元へと歩き出し、宥めるかのように優しく頭を撫でた。エルシアは嬉しそうな顔だ。
「さて……これはなんじゃエルシア」
「エルシアに喧嘩を売ってきたので返り討ちにしました」
「返り討ちか……これが……」
エルシアの近くに転がっていたのは、鎧を着た血まみれの男達だった。その誰もが意識は無い。
エルブレイドは倒れている者達の生死を確認した。
「…………生きてはいる。そっちはどうじゃアイリス」
「……はい。こちらも生きています」
「エルシアは喧嘩を売られたので返り討ちにしただけです。殺してなどいません」
「じゃが、死の一歩手前と言った所じゃ」
「お父様はエルシアが悪いと言うのですか?」
「いや……それは」
エルブレイドは黙り込んでしまう。エルシアを責めることが出来ない。エルシアをこんな風にしてしまったのは自分のせいだと、その罪悪感がエルブレイドの口を閉ざしてしまう。
「――あなたが悪いです、エルシア」
エルブレイドが黙る中、代わりに発言したのはアイリスだった。
「どうして? エルシアは被害者ですよ?」
「いいえ、わたくしは見ていました。肩がぶつかった。それだけの事」
「……それだけ?」
「はい、それだけです。肩がぶつかったくらいで喧嘩を売られたと勘違いし、相手を半殺しにするなんて野蛮すぎます」
「……辞めてやってくれんか、アイリス」
エルブレイドはエルシアを庇った。彼女は悪くないと……。
その庇う姿を見たアイリスは当然疑問に思う。
「どうして? 彼女は罰せられるべき事をした。それを自覚せず、あまつさえ反省すらしていない。庇うなんてもってのほかです」
「…………そっか……エルシアはまたやってしまったのですね」
「――待つんじゃ! どこへ行くエルシア!!」
「エルシアはお父様の元を離れます。日本に帰ってお母様と過ごします」
「じゃから帰る手段が無いと――」
ブォンッ
大きな風を切る音と共にエルシアは姿を消した――。
「……どういう事ですかエルブレイド。彼女は何者ですか?」
「……………ワシの子じゃ」
「……はい? あなたの子はエルフォードですよね? わたくしはそう認識しておりますが?」
「話は後じゃ。まずはエルシアを追うんじゃ。でなければこの世界が滅ぶ事になる」
「……………………滅ぶ? ……よく分かりませんが、後で必ず話して下さい」
エルブレイドとアイリスはエルシアの後を追う。奇跡的にも何かが通った様な跡が残っていた。エルシアは姿を消したのでは無い。高速で移動した。それも視認できない速度で。
二人はその何かが通った様な跡を辿って行く……。
……
…………
………………
「……何処まで続くのでしょう?」
「エルシアじゃからな。そう簡単には行くまい」
「…………ではこの時間で話してくれませんか? 彼女が何者なのかを」
アイリスはエルブレイドの顔を見る。その真剣な眼差しにエルブレイドは負けた。これは逃してはくれないと。
「………………はぁ……エルシアは人間では無い。正確には、人間ではなくなったんじゃ」
「どうしてでしょうか」
「ワシのせいじゃ……」
エルブレイドは後悔していた。あの時、エルシアを殺しておけば……息の根を止めていれば……と。そうすれば彼女は苦しまなくても済んだはずだと。
「ワシはこの世界の生まれじゃない。アスフィ……フィーと同じ日本から来た、『逸脱者なんじゃよ』
「…………お兄様と同じ……貴方は何者なのです、エルブレイド。人間でありながら神とも互角に戦える。わたくしはずっと疑問に思っておりました。いいえ、わたくしだけでは無いはず。神はこの世界の『事象』を司る存在。ただの人間が勝てる訳が無いのです」
火は水に勝てない。木は火に勝てない。水は雷に勝てない。
人間はこの全てに勝つことは出来ない。溺死、焼死、雷死。
それらとエルブレイドは互角に戦える。アイリスはそのありえない現象を聞きたかった。
「…………ワシもまた人間では無いからじゃろうな」
「ではなんだと言うのです?」
「……ただのバカオヤジじゃ」
「……………………訳分かりません」
求めていた回答ではなかった事にアイリスは呆れた表情を見せるのだった。
急いでいかねば更に犠牲者が増えるかもしれん!
「アイリス、ワシらも行くぞ!」
「はい! わたくしが案内します」
アイリスに案内され後を付いていくエルブレイド。
人が殺された割には静かな気がするのう。どういうことじゃ?
辺りには数人倒れているが、野次馬等の姿は居なかった。
「あそこです」
「……うむ、確かにアレはエルシアじゃな」
「彼女を止めてくださいエルブレイド。今のわたくしでは彼女を止める事は出来ません。彼女はなんというか……人間でも無ければ、神でもないような……うーん」
アイリスは言葉に詰まる。どう言えば良いのかが分からないでいたのだ。
「……何言っとるんじゃ。あの子は人間じゃ。あと、ワシだって止められる気がせんわい……」
「あなたで駄目なら誰があれを止めるので――」
こちらにまで風が。風と言うより、圧……じゃな?
エルシアのやつ、今度は何を巻き込んだんじゃ……。
エルシアはその綺麗な金髪を激しく揺らしながら暴走状態に入っていた。
「くそっ! なんだコイツ! 剣が刺さらねぇ!! ぐはっ」
男はエルシアに剣を突き立てた。しかし、男の剣は通らない。鎧を着ているから? そうでは無い。エルシアの皮膚が弾いているのだ。
「よせ! 辞めるんじゃエルシアよ!」
「…………お父様。エルシア頑張りました」
エルシアは無邪気な笑顔を見せた。その姿を目にしたエルブレイドはエルシアの元へと歩き出し、宥めるかのように優しく頭を撫でた。エルシアは嬉しそうな顔だ。
「さて……これはなんじゃエルシア」
「エルシアに喧嘩を売ってきたので返り討ちにしました」
「返り討ちか……これが……」
エルシアの近くに転がっていたのは、鎧を着た血まみれの男達だった。その誰もが意識は無い。
エルブレイドは倒れている者達の生死を確認した。
「…………生きてはいる。そっちはどうじゃアイリス」
「……はい。こちらも生きています」
「エルシアは喧嘩を売られたので返り討ちにしただけです。殺してなどいません」
「じゃが、死の一歩手前と言った所じゃ」
「お父様はエルシアが悪いと言うのですか?」
「いや……それは」
エルブレイドは黙り込んでしまう。エルシアを責めることが出来ない。エルシアをこんな風にしてしまったのは自分のせいだと、その罪悪感がエルブレイドの口を閉ざしてしまう。
「――あなたが悪いです、エルシア」
エルブレイドが黙る中、代わりに発言したのはアイリスだった。
「どうして? エルシアは被害者ですよ?」
「いいえ、わたくしは見ていました。肩がぶつかった。それだけの事」
「……それだけ?」
「はい、それだけです。肩がぶつかったくらいで喧嘩を売られたと勘違いし、相手を半殺しにするなんて野蛮すぎます」
「……辞めてやってくれんか、アイリス」
エルブレイドはエルシアを庇った。彼女は悪くないと……。
その庇う姿を見たアイリスは当然疑問に思う。
「どうして? 彼女は罰せられるべき事をした。それを自覚せず、あまつさえ反省すらしていない。庇うなんてもってのほかです」
「…………そっか……エルシアはまたやってしまったのですね」
「――待つんじゃ! どこへ行くエルシア!!」
「エルシアはお父様の元を離れます。日本に帰ってお母様と過ごします」
「じゃから帰る手段が無いと――」
ブォンッ
大きな風を切る音と共にエルシアは姿を消した――。
「……どういう事ですかエルブレイド。彼女は何者ですか?」
「……………ワシの子じゃ」
「……はい? あなたの子はエルフォードですよね? わたくしはそう認識しておりますが?」
「話は後じゃ。まずはエルシアを追うんじゃ。でなければこの世界が滅ぶ事になる」
「……………………滅ぶ? ……よく分かりませんが、後で必ず話して下さい」
エルブレイドとアイリスはエルシアの後を追う。奇跡的にも何かが通った様な跡が残っていた。エルシアは姿を消したのでは無い。高速で移動した。それも視認できない速度で。
二人はその何かが通った様な跡を辿って行く……。
……
…………
………………
「……何処まで続くのでしょう?」
「エルシアじゃからな。そう簡単には行くまい」
「…………ではこの時間で話してくれませんか? 彼女が何者なのかを」
アイリスはエルブレイドの顔を見る。その真剣な眼差しにエルブレイドは負けた。これは逃してはくれないと。
「………………はぁ……エルシアは人間では無い。正確には、人間ではなくなったんじゃ」
「どうしてでしょうか」
「ワシのせいじゃ……」
エルブレイドは後悔していた。あの時、エルシアを殺しておけば……息の根を止めていれば……と。そうすれば彼女は苦しまなくても済んだはずだと。
「ワシはこの世界の生まれじゃない。アスフィ……フィーと同じ日本から来た、『逸脱者なんじゃよ』
「…………お兄様と同じ……貴方は何者なのです、エルブレイド。人間でありながら神とも互角に戦える。わたくしはずっと疑問に思っておりました。いいえ、わたくしだけでは無いはず。神はこの世界の『事象』を司る存在。ただの人間が勝てる訳が無いのです」
火は水に勝てない。木は火に勝てない。水は雷に勝てない。
人間はこの全てに勝つことは出来ない。溺死、焼死、雷死。
それらとエルブレイドは互角に戦える。アイリスはそのありえない現象を聞きたかった。
「…………ワシもまた人間では無いからじゃろうな」
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「……ただのバカオヤジじゃ」
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