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第九章 アスフィ 交流篇 《第二部》
第139話『楽園創造計画』
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男の名は日名川 刃。彼は、日名川ビルディングを江四留という男に乗っ取られた。
「エルシアが……エルシアが…………」
「大丈夫です。エルちゃんは私達の子です。きっと見つかります」
「すまない……ワシが付いておきながら……」
男は女に自分の子が行方不明になったと伝えていた。もちろん嘘だ。しかし、男は自分の子が人体実験されていたなどと言える訳もなかった。
「エルちゃんはしっかりした子です。そうでしょう?」
金髪の女は男の手を優しく握る。
「ああ……そうだな…………ありがとう、エルザ」
「きっと何とかなります……きっと……」
女の目からは今にも涙がこぼれそうだった。我慢していた。
自分の子が居なくなって心配しないわけが無い。そんな女の表情を見て男は立ち上がった。
「……ワシがエルシアを助ける」
「辞めてください。私は嫌な予感がするのです。エルちゃんが居なくなって貴方まで居なくなったら私は…………」
「心配するな。ワシはお前とずっと一緒だ、エルザ」
男は女の頭を撫でた。
「俺は諦めん」
(江四留は必ずワシが殺す。そしてエルシアは返してもらう)
男は本気だった。
***
「……またここに来るとはな。江四留……まだ生きているか知らんが、娘は返してもらうぞ。ワシの命に変えても」
男はエルシアが実験されていた部屋、江四留の研究所に来ていた。江四留は既にここには居ない。日名川ビルディングを乗っ取りそこを拠点としているからだ。蜘蛛の巣が張り、歩く度に埃が舞う。老朽化が進み今にも崩れそうだ。
「……エルシア。ワシは必ずお前を救う」
男は江四留の荒れた研究所を漁った。
「これじゃない……! これでもない! くそ! どれだ!!」
研究所はエルシアによって破壊され紙が散乱していた。床には江四留が書き起こしたと思われる紙が何千枚も落ちていた。
「何処だ! くそっ!!」
男は見ては捨て、見ては捨てを繰り返す。そして――
「あった……これだ!」
男が手にしたのは、酷く汚れた日記の様なものだった。字はかすれていたが、かろうじて読むことは出来る。そこには『楽園創造計画』と書かれていた。
「『楽園創造計画』……? 江四留のやつは何をする気なんだ?」
男はその紙に目を通した。
『楽園創造計画
【二千五十一年 十二月四日】これから私は日本だけじゃ無く、世界を救おうと思う。この世界はダメだ。終わりきっている。私の論文を理由なく否定する。愚か者共め。今に見ていろクソッタレ。
【二千五十一年 十二月二十日】だがその方法が見つからない。私は研究者としてなんて未熟者なんだ。何度考えてもアイツら老害共を見返す考えが思い浮かばない。私は本当にアイツらの言うようにただの研究者に憧れているだけの『凡人』なのだろうか。
【二千五十一年 十二月二十五日】もうクリスマスだ。外がうるさい。研究に没頭できないでは無いか。私の邪魔をするな愚民共。
【二千五十二年 一月一日】年が明けてしまった。未だ私は何も成し遂げられていない。それどころか一歩も進んでいない。このままだと理想で終わってしまう。……私には『才能』が無かったのだろうか。
【二千五十三年 三月九日】また一年経った。時間が経つのは早い。拾って飼っていた犬も死んだ。やはり生物はダメだ。死なない体が必要だ。いっそ人体実験でもしてみよかとも思った。だが、それはダメだ。私は研究者であって犯罪者では無い。この考えは破棄だ。
【二千五十三年 六月十日】 やってしまった。私は子供を誘拐してしまったのだ。これで私も犯罪者だ。だが、もう後戻りは出来ない。誘拐した子供で実験してみようと思う。
【二千五十三年 十月四日】子供が死んだ。食事も与えた。寝る場所も与えた。何故死んだ? 感情が邪魔をしていたのか? 実験台に乗せると毎回暴れる。感情を無くすにはどうすればいいのだろうか。しかし、私にはもう誘拐する気は無い。今回はたまたま上手くいったが、警察に捕まっては研究どころでは無い。諦めよう。死んだ子供は山にでも捨てて来るとしよう。
【二千六十年 四月一日】あれから七年経った。何も成果が無かったが、今回ばかりはこの白紙だった紙に久しぶりに記そうと思う。というのも、日名川という研究者がある物を作ったらしい。
私も噂に聞いただけだが、どうやらどんなものでも見通せるとか? どういうものか分からないが、私の行き詰まっていた計画が進むかもしれない。明日にでも会いに行くとしよう。
【二千六十年 四月二日】私は日名川という男に会いに行った。私の思った通り。いや、それ以上の代物だった。あれがあれば私の研究は上手くいくはずだ。しかし、大き過ぎる。盗むなんて事は出来そうにない。どうするか。
【二千六十年 四月六日】私の元にガキが来た。日名川の娘の様だ。ガキはもう懲り懲りだ。さっさと帰す気だった。だが、今回のガキは前のとは違う。感情がコントロール出来ない。病気だ。私はこのガキを使って兵器を作ってみようと思う。成果が無かった七年の間でボツになった『神創造計画』を実行する。どうせ失敗したらまた山にでも捨てればいい。
エリュシオンと言えば、神だ。しかし、いい名前が思い付かなかった。まぁ名前なんてどうでもいい。さっそく実行するとしよう。
【二千六十年 五月六日】ガキは毎日の様に私のところに来る。わざわざ誘拐しなくてもいいのは手間が省けて助かる。お父様の為と言ったら私から言わずとも、ガキの方から実験をしようと言ってくる。どれだけバカなんだこのガキは。
【二千六十年 十月十日】日名川が私の元へ来たようだ。だが、もう遅い。私の実験は既に完成している。結果は明日書こう。
【二千六十年 十月十一日】日名川のやつ怒り狂っていた! アイツの目の前でガキを兵器に変えてやった! 久々に笑った気がする。これで私も研究者だ。ついでに研究所も奪ってやった。このガキが居れば警備の者など紙切れ同然。今時ナイフなんかで私の兵器が倒せる訳が無いと言うのに。
【二千六十年 十月十二日】『イリアススコープ』。これは凄い。悔しいがあの男を認めざるを得ない。覗いた者の望んだモノが何でも見れる。私はさっそく色々試しに見てみる事にした。結果から言うと、私の計画は成功すると出た。あとは実行に移すのみ。だが、そう焦らなくてもいい。まだ、やるべき事が残っている。日名川だ。天才と持て囃されたあの男。私を蹴ったあの男を追い詰めてやろう。考えただけでゾクゾクする。
【二千六十年 十月十三日】やってやった。アイツの家を燃やしてやった。しかも私では無く自らの子から燃やされるという。なんと残酷なのだろうか。やはり私は天才だ。
【二千六十年 十二月二十日】やつは何もしてこない。家を燃やされ、ガキは兵器になった。その上ガキには逃げられた。今は何処にいるのか私にも分からない。まぁいい。もう用済みだ。私は私の計画に集中するとしよう。
【二千百四十二年 四月二日】やられた。白狐とかいう女が私の邪魔をしてきた。こいつが私の邪魔をしたせいで完成までかなり時間が掛かった。私も老いた。早く実行に移すとしよう
』
――この先のページは破られていた。
「………………ふざけるな」
「エルシアが……エルシアが…………」
「大丈夫です。エルちゃんは私達の子です。きっと見つかります」
「すまない……ワシが付いておきながら……」
男は女に自分の子が行方不明になったと伝えていた。もちろん嘘だ。しかし、男は自分の子が人体実験されていたなどと言える訳もなかった。
「エルちゃんはしっかりした子です。そうでしょう?」
金髪の女は男の手を優しく握る。
「ああ……そうだな…………ありがとう、エルザ」
「きっと何とかなります……きっと……」
女の目からは今にも涙がこぼれそうだった。我慢していた。
自分の子が居なくなって心配しないわけが無い。そんな女の表情を見て男は立ち上がった。
「……ワシがエルシアを助ける」
「辞めてください。私は嫌な予感がするのです。エルちゃんが居なくなって貴方まで居なくなったら私は…………」
「心配するな。ワシはお前とずっと一緒だ、エルザ」
男は女の頭を撫でた。
「俺は諦めん」
(江四留は必ずワシが殺す。そしてエルシアは返してもらう)
男は本気だった。
***
「……またここに来るとはな。江四留……まだ生きているか知らんが、娘は返してもらうぞ。ワシの命に変えても」
男はエルシアが実験されていた部屋、江四留の研究所に来ていた。江四留は既にここには居ない。日名川ビルディングを乗っ取りそこを拠点としているからだ。蜘蛛の巣が張り、歩く度に埃が舞う。老朽化が進み今にも崩れそうだ。
「……エルシア。ワシは必ずお前を救う」
男は江四留の荒れた研究所を漁った。
「これじゃない……! これでもない! くそ! どれだ!!」
研究所はエルシアによって破壊され紙が散乱していた。床には江四留が書き起こしたと思われる紙が何千枚も落ちていた。
「何処だ! くそっ!!」
男は見ては捨て、見ては捨てを繰り返す。そして――
「あった……これだ!」
男が手にしたのは、酷く汚れた日記の様なものだった。字はかすれていたが、かろうじて読むことは出来る。そこには『楽園創造計画』と書かれていた。
「『楽園創造計画』……? 江四留のやつは何をする気なんだ?」
男はその紙に目を通した。
『楽園創造計画
【二千五十一年 十二月四日】これから私は日本だけじゃ無く、世界を救おうと思う。この世界はダメだ。終わりきっている。私の論文を理由なく否定する。愚か者共め。今に見ていろクソッタレ。
【二千五十一年 十二月二十日】だがその方法が見つからない。私は研究者としてなんて未熟者なんだ。何度考えてもアイツら老害共を見返す考えが思い浮かばない。私は本当にアイツらの言うようにただの研究者に憧れているだけの『凡人』なのだろうか。
【二千五十一年 十二月二十五日】もうクリスマスだ。外がうるさい。研究に没頭できないでは無いか。私の邪魔をするな愚民共。
【二千五十二年 一月一日】年が明けてしまった。未だ私は何も成し遂げられていない。それどころか一歩も進んでいない。このままだと理想で終わってしまう。……私には『才能』が無かったのだろうか。
【二千五十三年 三月九日】また一年経った。時間が経つのは早い。拾って飼っていた犬も死んだ。やはり生物はダメだ。死なない体が必要だ。いっそ人体実験でもしてみよかとも思った。だが、それはダメだ。私は研究者であって犯罪者では無い。この考えは破棄だ。
【二千五十三年 六月十日】 やってしまった。私は子供を誘拐してしまったのだ。これで私も犯罪者だ。だが、もう後戻りは出来ない。誘拐した子供で実験してみようと思う。
【二千五十三年 十月四日】子供が死んだ。食事も与えた。寝る場所も与えた。何故死んだ? 感情が邪魔をしていたのか? 実験台に乗せると毎回暴れる。感情を無くすにはどうすればいいのだろうか。しかし、私にはもう誘拐する気は無い。今回はたまたま上手くいったが、警察に捕まっては研究どころでは無い。諦めよう。死んだ子供は山にでも捨てて来るとしよう。
【二千六十年 四月一日】あれから七年経った。何も成果が無かったが、今回ばかりはこの白紙だった紙に久しぶりに記そうと思う。というのも、日名川という研究者がある物を作ったらしい。
私も噂に聞いただけだが、どうやらどんなものでも見通せるとか? どういうものか分からないが、私の行き詰まっていた計画が進むかもしれない。明日にでも会いに行くとしよう。
【二千六十年 四月二日】私は日名川という男に会いに行った。私の思った通り。いや、それ以上の代物だった。あれがあれば私の研究は上手くいくはずだ。しかし、大き過ぎる。盗むなんて事は出来そうにない。どうするか。
【二千六十年 四月六日】私の元にガキが来た。日名川の娘の様だ。ガキはもう懲り懲りだ。さっさと帰す気だった。だが、今回のガキは前のとは違う。感情がコントロール出来ない。病気だ。私はこのガキを使って兵器を作ってみようと思う。成果が無かった七年の間でボツになった『神創造計画』を実行する。どうせ失敗したらまた山にでも捨てればいい。
エリュシオンと言えば、神だ。しかし、いい名前が思い付かなかった。まぁ名前なんてどうでもいい。さっそく実行するとしよう。
【二千六十年 五月六日】ガキは毎日の様に私のところに来る。わざわざ誘拐しなくてもいいのは手間が省けて助かる。お父様の為と言ったら私から言わずとも、ガキの方から実験をしようと言ってくる。どれだけバカなんだこのガキは。
【二千六十年 十月十日】日名川が私の元へ来たようだ。だが、もう遅い。私の実験は既に完成している。結果は明日書こう。
【二千六十年 十月十一日】日名川のやつ怒り狂っていた! アイツの目の前でガキを兵器に変えてやった! 久々に笑った気がする。これで私も研究者だ。ついでに研究所も奪ってやった。このガキが居れば警備の者など紙切れ同然。今時ナイフなんかで私の兵器が倒せる訳が無いと言うのに。
【二千六十年 十月十二日】『イリアススコープ』。これは凄い。悔しいがあの男を認めざるを得ない。覗いた者の望んだモノが何でも見れる。私はさっそく色々試しに見てみる事にした。結果から言うと、私の計画は成功すると出た。あとは実行に移すのみ。だが、そう焦らなくてもいい。まだ、やるべき事が残っている。日名川だ。天才と持て囃されたあの男。私を蹴ったあの男を追い詰めてやろう。考えただけでゾクゾクする。
【二千六十年 十月十三日】やってやった。アイツの家を燃やしてやった。しかも私では無く自らの子から燃やされるという。なんと残酷なのだろうか。やはり私は天才だ。
【二千六十年 十二月二十日】やつは何もしてこない。家を燃やされ、ガキは兵器になった。その上ガキには逃げられた。今は何処にいるのか私にも分からない。まぁいい。もう用済みだ。私は私の計画に集中するとしよう。
【二千百四十二年 四月二日】やられた。白狐とかいう女が私の邪魔をしてきた。こいつが私の邪魔をしたせいで完成までかなり時間が掛かった。私も老いた。早く実行に移すとしよう
』
――この先のページは破られていた。
「………………ふざけるな」
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