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新章 第二幕 【NEO: Divergence】
Re:第十九話「ルクス・カエデと道化」
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ルクス・カエデは歩く。
ただ一人、この真っ暗で広い世界をひたすらに。
自分が何者だったのか。
何をしようとしていたのか。
そんな記憶すら曖昧なまま、彼女の足は止まることを知らない。
――ザッ……ザッ……。
乾いた足音が、虚ろな世界に響く。
音のない世界に、ただ一つだけ確かな証として。
そんな彼女の前に、それは現れた。
暗闇から這い出すように、巨大な魔獣が姿を見せる。
獰猛な瞳、血に飢えた牙。
「……邪魔です」
彼女はそう呟き、ただ杖を軽く振る。
瞬間、青白い雷が空を裂いた。
閃光が魔獣の頭上へと落ち、次の瞬間には肉も骨も消え去っていた。
燃え尽きた魔獣の灰が、ゆっくりと風に舞う。
その様子を、彼女は何の感慨もなく見つめていた。
そして、再び歩き出す。
だが――
「あなたは……なるほど、今度はあなたがこの世界の“呪われし者”というわけですか」
突如として響いた声に、ルクスは足を止めた。
振り返ることなく、ただ静かに応じる。
「……アスフィ」
「違います。私はただの道化です」
道化。
そう名乗った男は、仮面を外していた。その素顔は誰もが知っている顔と瓜二つであった。
「……仮面、外したんですね」
「ええ。私が仮面を外すことで、この世界にどのような影響を与えるのか、興味がありましてね。
……しかし、早速効果があったようですねぇ」
「……我が選ばれたようです」
「ええ、そうみたいですね」
ルクスは静かに前を見据える。
道化の瞳は、その姿を探るように細められていた。
「……我に何か用ですか」
黒と白が混じり合う髪が、かすかに揺れた。
刹那――
轟音とともに、稲妻が辺りを貫いた。
「おっと、危ないですねぇ。しかし、これは非常に厄介だ。このままあなたを野放しには出来ません。……ハク、二人がかりで行きますよ」
「……この者を討つ……のですか」
静かに問いかけるのは、かつての龍神である。
「もう彼女は選ばれた。選ばれてしまった。これは世界が終わるまで変えられない。まさに運命。残念ながら生かしておくと後々厄介ですからねぇ。それとも、彼女に何か言いたいことでも?」
「……いいえ」
「では行きますよ」
道化が両手の白の手袋を外すと、
「――死を呼ぶ回復魔法」
その手から放たれた邪悪な魔法が、ルクスを包み込む。
生命を削り、死へと導く最悪の呪詛。
しかし――
「……効いていない?これは一体……」
ルクスは微動だにしない。
まるで、それが無意味なものであるかのように。
「道化エーシル。あなたなど我の敵ではありません。あなたの探し物はレイラ。我の探し物は……」
彼女はそこから続けなかった。
いや、続けることが出来なかった。
何を探せばいいのか。
その答えすら、彼女の中から抜け落ちていた。
「まさに全盛期ゼウス・マキナの再来ですか。面白い。かつての私では、彼女の前に立つことさえ許されなかった。……しかし、ルクス。あなたはまだ未完成です。今の私は一人じゃない」
道化の目が細められる。
「ハクッ!行きなさい!」
その声とともに、龍神は漆黒の姿へと変貌する。
巨大な翼が広がり、獰猛な咆哮が響き渡る。
――飛び上がる。
はずだった。
「――かはっ」
「ハク!?……バカな。なんです……その力は」
龍神の姿が、地へと崩れ落ちる。
その肉体は焼け焦げ、生命の光を失っていた。
「まずは一匹」
ルクスの声が、冷たく響く。
道化の顔から、焦りが消えない。
(見えなかった……この私が……?)
「くっ……どうやら私はあなたを侮っていたようです。ここからは私も本気で行かなければいけないようだ」
しかし――
全盛期のゼウス・マキナに勝てなかった自分が。それを超える存在を倒せるはずがない。
どうする。どうにかしてハクの死体を連れ出し、撤退を――
「先生……先生ですよね?」
突如として響いた、少年の声。
アスフィ少年……!?
「ダメです!今の彼女は君の知る先生では――」
道化は、その瞬間を見た。
愛する者以外が死する瞬間を、目の前で。
それも、二人も。
沈黙が落ちる。
焦げた肉の臭いが、鼻をつく。
「バカな……」
道化は、ただ呆然と立ち尽くしていた。
ただ一人、この真っ暗で広い世界をひたすらに。
自分が何者だったのか。
何をしようとしていたのか。
そんな記憶すら曖昧なまま、彼女の足は止まることを知らない。
――ザッ……ザッ……。
乾いた足音が、虚ろな世界に響く。
音のない世界に、ただ一つだけ確かな証として。
そんな彼女の前に、それは現れた。
暗闇から這い出すように、巨大な魔獣が姿を見せる。
獰猛な瞳、血に飢えた牙。
「……邪魔です」
彼女はそう呟き、ただ杖を軽く振る。
瞬間、青白い雷が空を裂いた。
閃光が魔獣の頭上へと落ち、次の瞬間には肉も骨も消え去っていた。
燃え尽きた魔獣の灰が、ゆっくりと風に舞う。
その様子を、彼女は何の感慨もなく見つめていた。
そして、再び歩き出す。
だが――
「あなたは……なるほど、今度はあなたがこの世界の“呪われし者”というわけですか」
突如として響いた声に、ルクスは足を止めた。
振り返ることなく、ただ静かに応じる。
「……アスフィ」
「違います。私はただの道化です」
道化。
そう名乗った男は、仮面を外していた。その素顔は誰もが知っている顔と瓜二つであった。
「……仮面、外したんですね」
「ええ。私が仮面を外すことで、この世界にどのような影響を与えるのか、興味がありましてね。
……しかし、早速効果があったようですねぇ」
「……我が選ばれたようです」
「ええ、そうみたいですね」
ルクスは静かに前を見据える。
道化の瞳は、その姿を探るように細められていた。
「……我に何か用ですか」
黒と白が混じり合う髪が、かすかに揺れた。
刹那――
轟音とともに、稲妻が辺りを貫いた。
「おっと、危ないですねぇ。しかし、これは非常に厄介だ。このままあなたを野放しには出来ません。……ハク、二人がかりで行きますよ」
「……この者を討つ……のですか」
静かに問いかけるのは、かつての龍神である。
「もう彼女は選ばれた。選ばれてしまった。これは世界が終わるまで変えられない。まさに運命。残念ながら生かしておくと後々厄介ですからねぇ。それとも、彼女に何か言いたいことでも?」
「……いいえ」
「では行きますよ」
道化が両手の白の手袋を外すと、
「――死を呼ぶ回復魔法」
その手から放たれた邪悪な魔法が、ルクスを包み込む。
生命を削り、死へと導く最悪の呪詛。
しかし――
「……効いていない?これは一体……」
ルクスは微動だにしない。
まるで、それが無意味なものであるかのように。
「道化エーシル。あなたなど我の敵ではありません。あなたの探し物はレイラ。我の探し物は……」
彼女はそこから続けなかった。
いや、続けることが出来なかった。
何を探せばいいのか。
その答えすら、彼女の中から抜け落ちていた。
「まさに全盛期ゼウス・マキナの再来ですか。面白い。かつての私では、彼女の前に立つことさえ許されなかった。……しかし、ルクス。あなたはまだ未完成です。今の私は一人じゃない」
道化の目が細められる。
「ハクッ!行きなさい!」
その声とともに、龍神は漆黒の姿へと変貌する。
巨大な翼が広がり、獰猛な咆哮が響き渡る。
――飛び上がる。
はずだった。
「――かはっ」
「ハク!?……バカな。なんです……その力は」
龍神の姿が、地へと崩れ落ちる。
その肉体は焼け焦げ、生命の光を失っていた。
「まずは一匹」
ルクスの声が、冷たく響く。
道化の顔から、焦りが消えない。
(見えなかった……この私が……?)
「くっ……どうやら私はあなたを侮っていたようです。ここからは私も本気で行かなければいけないようだ」
しかし――
全盛期のゼウス・マキナに勝てなかった自分が。それを超える存在を倒せるはずがない。
どうする。どうにかしてハクの死体を連れ出し、撤退を――
「先生……先生ですよね?」
突如として響いた、少年の声。
アスフィ少年……!?
「ダメです!今の彼女は君の知る先生では――」
道化は、その瞬間を見た。
愛する者以外が死する瞬間を、目の前で。
それも、二人も。
沈黙が落ちる。
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「バカな……」
道化は、ただ呆然と立ち尽くしていた。
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