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新章 第三幕【NEO: Crossing】
Re:第二十九話『君が教えてくれたもの』
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──冷たい風が吹き抜ける中、会話の余韻がまだ空気に残っていた。
「そういえば、どうしてここにいるって思ったの?」
少女が唐突に問いかけた。
緑色の髪が風に靡き、その瞳はどこか試すようにこちらを見据えている。
「簡単な話だ。エルフォードがエルザの位置を感知したようでな」
スドウは淡々と口を開く。まるで最初から全て分かっていたかのように。
「で、お前なら一際目立つ大きな木の上から眺めるだろうと踏んだ。……それでこうして、居場所を割り出した」
視線を大樹へと向けながら、静かに言葉を続ける。
「まぁ一つだけ誤算だったのは……お前が地上で俺たちを待ち伏せしてたことだ」
「ふーん。よく分かってるね」
少女──オーディンは口元に微笑みを浮かべたが、その奥にあった感情は掴めなかった。
「……オーディン。もうやめにしないか」
スドウの声が低くなる。言葉は、祈りのように静かに。
「これ以上、世界を……人の心を弄んでどうする気だ」
その眼差しはまっすぐに、彼女へと向けられていた。
「もう退屈な時間は過ぎたろ」
しかし。
「君は分かってないね。全然分かってない」
少女はその微笑みを崩さないまま、声色を変えた。
「“人の心が分からないのか”って言いたいんだろう?」
空を見上げながら、静かに問い返す。
「……なら、逆に問おう。神の心は、君に理解できるのかい?」
その問いは、ただの反論ではなかった。
そこには確かな“孤独”が滲んでいた。
「人がどこから生まれ、どこへ向かうのか──そんなもの、記録に過ぎない。誰かが書き残した物語に過ぎない」
オーディンの声音はいつになく静かだった。
「神も同じさ。なぜ、いつ、どこで生まれたかなんて、私にも分からない。気付いた時には──私は“独り”だった。ただ、それだけなんだよ」
その言葉には確かな重みがあった。
永劫の時を生きる者にとって、“孤独”というものがどれほど鋭利な刃か。
スドウは一瞬、言葉を失いかける。
だが──
「だから私が来た」
マキが、凛とした声で会話に割って入る。
「マキナ」
スドウが驚きに目を見開く。
「そう。ある時はマキナ、ある時はマキ──その正体は」
マキはヒーローさながらに決めポーズをとりながら、無邪気に笑う。
「……君の友達、だよ?」
「マキ、お前……」
スドウの口から思わず漏れたその声には、驚きと戸惑いが混ざっていた。
「友達ね。そうだね。私とマキナは“神友”だった……でも──」
オーディンの瞳が鋭く細められる。
その瞬間、彼女の身体がふわりと浮かび上がった。
「それはマキナであって、“君”じゃないっ!」
「──マキナ!!」
オーディンの怒りに呼応するように、空気が震えた。
次の瞬間、スドウはマキに覆い被さるように飛び込む。
「がああああああああああああああっ!!」
空を裂くような絶叫が響いた。
スドウの背に──深々と切り裂かれた傷が浮かぶ。
「スドウくん!?」
「……大丈夫か、マキ」
彼の声は震えながらも、確かに彼女を気遣っていた。
「う、うん……」
「よかっ……た」
その言葉と同時に、スドウの身体は崩れるようにしてマキの胸元へと倒れ込んだ。
「スドウくん!?しっかりして!!」
彼女の叫びも届かず、スドウの意識は闇の中へと沈んでいった。
スドウの体がマキの腕の中に沈む。
その重さに、彼の全てが託されているようで。
マキは震える手で彼を支えながら、前を見据える。
「手加減はしたけど……今の君たちじゃ、それでも致命傷なんだね」
オーディンが呟いた。まるで、自分にも理解できないとでも言いたげに。
「……ほんと、分からない」
空を仰ぎながら、小さく吐いた言葉。
「愛とか、恋とか、友とか……。理解できない感情ばかりだ」
その言葉は、哀しみにも似た響きを持っていた。
「……可哀想」
マキが静かに口を開いた。
「可哀想?私が?」
「うん。だって、もし私があなたの立場なら……きっと、苦しくてたまらないと思う」
オーディンの目が揺れる。
「……だから何さ。勝てるわけないのに、ここまで来て。スドウケンイチは倒れた。今の君に何ができるの?」
その問いに、マキは迷いなく答える。
「……友達を救うこと」
彼女の声は、やわらかく、しかし力強かった。
「スドウくんも、私も……あなたを“攻め”に来たわけじゃない」
「でも、殺してやるって言われたけど~?あはっ!」
それでも笑うオーディンに、マキはまっすぐ言葉を返す。
「それは……ちょっと冷静さを欠いていただけ」
「……」
「いつもスドウくんは冷静で大人しいの。でもね──楓ちゃんのことになると、我を忘れるところがあるの。あなたは、それを分かっていて、あえて話題に出した」
「そうだよ?何も分からないくせに、ベラベラと喋るから。……人間の本性を、曝け出してあげたのさ」
オーディンの声には棘があった。
だが──
「……スドウくん、死なないよね?」
マキの言葉は、それすらも包み込もうとする優しさを持っていた。
「さあ?人間が神の一撃を喰らった。普通に考えれば……分かることでしょ?」
「でも、本気なら……スドウくんの体と、私の体は真っ二つだった」
その言葉に、オーディンは返さない。
沈黙は、否定の代わり。
「あなたはまだ、変われるよ」
マキは、まっすぐにオーディンを見つめた。
「確かに道を誤ったかもしれない。大勢の人を巻き込んだ。……でも、あなたは彼に“救われた”はずだよね?」
「救われた……?」
オーディンが僅かに首を傾げた。
「孤独だった君に、“感情”を与えたのは、スドウくんだった」
マキの言葉が、空気を震わせた。
「彼は、何度も世界を繰り返して、その中で……自分の中に、別の人格さえ生まれた」
「……」
「それでも、彼は──孤独だった君に、感情を与えたんだよ」
「……黙って」
「ううん。黙らないよ」
マキは、スドウをそっと地面に横たえると、ゆっくりとオーディンへと歩を進める。
「あなたは理解して欲しかった。自分の犯した過ちも、立場も、悲劇も──」
「来るな……」
オーディンの声音が揺れ始める。
「それを分かってほしかった。だから、あなたは神を作った。世界を作った」
「来ないで!!」
叫びに近い声が響く。
それでも──
マキは止まらない。
「だから、不器用なあなたは──幻想という力で、世界を、皆の意識を……|《書き換えた》」
その言葉に、オーディンはついに動きを止めた。
目を伏せ、唇を噛み──
「……」
沈黙の中に、罪悪感という名の影が差す。
「罪悪感はあるみたいだね。でもね、その感情は“いいこと”なんだよ」
マキの声は、どこまでも優しかった。
「それを与えたのも、スドウくんだから」
そっと手を差し出すように、言葉を重ねていく。
「だから──もう、終わりにしよう?皆を、元の“いるべき場所”に戻してあげて?」
その一言に、オーディンは小さく首を横に振った。
「……無駄だよ。もう止まらない」
「なぜ?」
「世界は……もう、私の力だけでは元に戻せなくなってしまったから」
「……え……?」
「もう、気づいてるんじゃないかな」
オーディンはゆっくりと地に降り立ち、背中越しに続けた。
「この世界には、もう一人“神”がいる」
「──!」
「私を説得しても、意味がないよ。だってもう……」
その瞬間だった。
マキがなにかを言おうとした刹那──
「私だよ、マキ。久しぶり」
背後から聞こえた声と共に、彼女の背中に“熱”が走った。
「そういえば、どうしてここにいるって思ったの?」
少女が唐突に問いかけた。
緑色の髪が風に靡き、その瞳はどこか試すようにこちらを見据えている。
「簡単な話だ。エルフォードがエルザの位置を感知したようでな」
スドウは淡々と口を開く。まるで最初から全て分かっていたかのように。
「で、お前なら一際目立つ大きな木の上から眺めるだろうと踏んだ。……それでこうして、居場所を割り出した」
視線を大樹へと向けながら、静かに言葉を続ける。
「まぁ一つだけ誤算だったのは……お前が地上で俺たちを待ち伏せしてたことだ」
「ふーん。よく分かってるね」
少女──オーディンは口元に微笑みを浮かべたが、その奥にあった感情は掴めなかった。
「……オーディン。もうやめにしないか」
スドウの声が低くなる。言葉は、祈りのように静かに。
「これ以上、世界を……人の心を弄んでどうする気だ」
その眼差しはまっすぐに、彼女へと向けられていた。
「もう退屈な時間は過ぎたろ」
しかし。
「君は分かってないね。全然分かってない」
少女はその微笑みを崩さないまま、声色を変えた。
「“人の心が分からないのか”って言いたいんだろう?」
空を見上げながら、静かに問い返す。
「……なら、逆に問おう。神の心は、君に理解できるのかい?」
その問いは、ただの反論ではなかった。
そこには確かな“孤独”が滲んでいた。
「人がどこから生まれ、どこへ向かうのか──そんなもの、記録に過ぎない。誰かが書き残した物語に過ぎない」
オーディンの声音はいつになく静かだった。
「神も同じさ。なぜ、いつ、どこで生まれたかなんて、私にも分からない。気付いた時には──私は“独り”だった。ただ、それだけなんだよ」
その言葉には確かな重みがあった。
永劫の時を生きる者にとって、“孤独”というものがどれほど鋭利な刃か。
スドウは一瞬、言葉を失いかける。
だが──
「だから私が来た」
マキが、凛とした声で会話に割って入る。
「マキナ」
スドウが驚きに目を見開く。
「そう。ある時はマキナ、ある時はマキ──その正体は」
マキはヒーローさながらに決めポーズをとりながら、無邪気に笑う。
「……君の友達、だよ?」
「マキ、お前……」
スドウの口から思わず漏れたその声には、驚きと戸惑いが混ざっていた。
「友達ね。そうだね。私とマキナは“神友”だった……でも──」
オーディンの瞳が鋭く細められる。
その瞬間、彼女の身体がふわりと浮かび上がった。
「それはマキナであって、“君”じゃないっ!」
「──マキナ!!」
オーディンの怒りに呼応するように、空気が震えた。
次の瞬間、スドウはマキに覆い被さるように飛び込む。
「がああああああああああああああっ!!」
空を裂くような絶叫が響いた。
スドウの背に──深々と切り裂かれた傷が浮かぶ。
「スドウくん!?」
「……大丈夫か、マキ」
彼の声は震えながらも、確かに彼女を気遣っていた。
「う、うん……」
「よかっ……た」
その言葉と同時に、スドウの身体は崩れるようにしてマキの胸元へと倒れ込んだ。
「スドウくん!?しっかりして!!」
彼女の叫びも届かず、スドウの意識は闇の中へと沈んでいった。
スドウの体がマキの腕の中に沈む。
その重さに、彼の全てが託されているようで。
マキは震える手で彼を支えながら、前を見据える。
「手加減はしたけど……今の君たちじゃ、それでも致命傷なんだね」
オーディンが呟いた。まるで、自分にも理解できないとでも言いたげに。
「……ほんと、分からない」
空を仰ぎながら、小さく吐いた言葉。
「愛とか、恋とか、友とか……。理解できない感情ばかりだ」
その言葉は、哀しみにも似た響きを持っていた。
「……可哀想」
マキが静かに口を開いた。
「可哀想?私が?」
「うん。だって、もし私があなたの立場なら……きっと、苦しくてたまらないと思う」
オーディンの目が揺れる。
「……だから何さ。勝てるわけないのに、ここまで来て。スドウケンイチは倒れた。今の君に何ができるの?」
その問いに、マキは迷いなく答える。
「……友達を救うこと」
彼女の声は、やわらかく、しかし力強かった。
「スドウくんも、私も……あなたを“攻め”に来たわけじゃない」
「でも、殺してやるって言われたけど~?あはっ!」
それでも笑うオーディンに、マキはまっすぐ言葉を返す。
「それは……ちょっと冷静さを欠いていただけ」
「……」
「いつもスドウくんは冷静で大人しいの。でもね──楓ちゃんのことになると、我を忘れるところがあるの。あなたは、それを分かっていて、あえて話題に出した」
「そうだよ?何も分からないくせに、ベラベラと喋るから。……人間の本性を、曝け出してあげたのさ」
オーディンの声には棘があった。
だが──
「……スドウくん、死なないよね?」
マキの言葉は、それすらも包み込もうとする優しさを持っていた。
「さあ?人間が神の一撃を喰らった。普通に考えれば……分かることでしょ?」
「でも、本気なら……スドウくんの体と、私の体は真っ二つだった」
その言葉に、オーディンは返さない。
沈黙は、否定の代わり。
「あなたはまだ、変われるよ」
マキは、まっすぐにオーディンを見つめた。
「確かに道を誤ったかもしれない。大勢の人を巻き込んだ。……でも、あなたは彼に“救われた”はずだよね?」
「救われた……?」
オーディンが僅かに首を傾げた。
「孤独だった君に、“感情”を与えたのは、スドウくんだった」
マキの言葉が、空気を震わせた。
「彼は、何度も世界を繰り返して、その中で……自分の中に、別の人格さえ生まれた」
「……」
「それでも、彼は──孤独だった君に、感情を与えたんだよ」
「……黙って」
「ううん。黙らないよ」
マキは、スドウをそっと地面に横たえると、ゆっくりとオーディンへと歩を進める。
「あなたは理解して欲しかった。自分の犯した過ちも、立場も、悲劇も──」
「来るな……」
オーディンの声音が揺れ始める。
「それを分かってほしかった。だから、あなたは神を作った。世界を作った」
「来ないで!!」
叫びに近い声が響く。
それでも──
マキは止まらない。
「だから、不器用なあなたは──幻想という力で、世界を、皆の意識を……|《書き換えた》」
その言葉に、オーディンはついに動きを止めた。
目を伏せ、唇を噛み──
「……」
沈黙の中に、罪悪感という名の影が差す。
「罪悪感はあるみたいだね。でもね、その感情は“いいこと”なんだよ」
マキの声は、どこまでも優しかった。
「それを与えたのも、スドウくんだから」
そっと手を差し出すように、言葉を重ねていく。
「だから──もう、終わりにしよう?皆を、元の“いるべき場所”に戻してあげて?」
その一言に、オーディンは小さく首を横に振った。
「……無駄だよ。もう止まらない」
「なぜ?」
「世界は……もう、私の力だけでは元に戻せなくなってしまったから」
「……え……?」
「もう、気づいてるんじゃないかな」
オーディンはゆっくりと地に降り立ち、背中越しに続けた。
「この世界には、もう一人“神”がいる」
「──!」
「私を説得しても、意味がないよ。だってもう……」
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