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第四幕【NEO: Healing Re:Genesis】
Re:第四十七話『救いを求めて』
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──数え切れぬ世界がある。
どれも似ていて、どれも違う。
そのすべてを、私は“観測”してきた。
けれど、私がただの“神”であったのなら──
干渉などという愚を犯すことは、決してなかったはずだった。
……どうしてだろう。
それは、あまりにも小さく。
あまりにも儚くて。
なのに、どの世界でも懸命に“誰かを癒そうとする”その姿が、
ひどく、哀しくて、美しかった。
ある日、私は決めた。
“干渉”という禁忌を犯すのだと。
──あの夜のことを、私は忘れられない。
---
冷たい夜の街角。
行く先々で宿を断られ、彼らは疲弊しきっていた。
そして。
「……私が居るからでしょうか」
彼女──ルクスが、ぽつりと呟いた。
自分の異名が、また仲間に迷惑をかけたと信じてしまって。
その空気の中に、私は飛び込んだ。
「――違うよ!この街はね、本当にいっぱいなんだよ!」
笑って、声をかけた。
嘘だった。
本当は空いてる宿なんて、いくらでもあった。
でも私は──あの瞬間、どうしても“彼らに関わりたかった”。
名前を名乗った。
「ディン」と、嘘の名を。
そして彼らも、名を返してくれた。
アスフィ。
エルザ。
ルクス。
その時、私は思った。
(あぁ……これが“選ばれた”世界なんだ)
この世界のアスフィは、まだ壊れていない。
まだ“彼女”を、失っていない。
まだ、光を信じている。
そう──レイラは、この世界にはもういない。
彼女の死は、アスフィの心に深い傷を残した。
けれどそれでも、彼は壊れなかった。
泣いた。怒った。誰も救えないと絶望もした。
……それでも、癒すことをやめなかった。
だから、私はこの世界を選んだ。
私のすべてを、託した。
……けれど。
笑っていたのに。
冗談を言っていたのに。
一緒にゲームをしていたのに。
私は、どうしても見ておかなければならなかった。
“彼が、自らの死をどう受け止めるのか”。
そうしなければ、何も始まらないから。
試練は、私自身の涙でもあり、今まで見てきた世界の一部でもあった。
もしかしたら、自分の弱さで知った経験を理解して欲しかったのかもしれない。
そして今、私はこうして神に戻り、また無数の世界を見ている。
そのほとんどが、壊れていた。
そのほとんどが、絶望だった。
けれど、どの世界でもアスフィは、
最後の最後まで、“人を癒そうとしていた”。
例え、届かなくても。
例え、誰にも気づかれなくても。
「どうか……もう誰も、苦しみませんように」
その祈りだけは、変わらなかった。
一方私はというと、壊れた。
神としての器を保てないほどに、崩れた。
(ねぇ……私、もう神じゃないのかもしれない)
ただ、ただ。
君の手に、触れたかった。
その心に、寄り添いたかった。
もしも君が、この先のどこかで、ほんの一瞬でも「自分を赦そう」と思えたのなら──
私は、やっと報われるのかもしれない。
神としてじゃない。
エルシアという、ただの少女として。
私は、君に出会えて、幸せだった。
ありがとう、アスフィ。
(……そして、いつか)
(君が誰かを救い終えたその時には)
(私も、どうか──救ってほしい)
壊れてしまった私の心ごと。
この名もなき祈りごと。
君の“癒し”が届く世界であれと──私は願う。
なんて走馬灯のように振り返ってきたけれど、
私は救われなかった。……罪の重さを考えれば当然だよね。
人間と神……なぜ生まれ、何が違うのか最後まで分からなかった。
ねぇ。……もし救われるなら君が良かったよ、”アスフィ”。
どれも似ていて、どれも違う。
そのすべてを、私は“観測”してきた。
けれど、私がただの“神”であったのなら──
干渉などという愚を犯すことは、決してなかったはずだった。
……どうしてだろう。
それは、あまりにも小さく。
あまりにも儚くて。
なのに、どの世界でも懸命に“誰かを癒そうとする”その姿が、
ひどく、哀しくて、美しかった。
ある日、私は決めた。
“干渉”という禁忌を犯すのだと。
──あの夜のことを、私は忘れられない。
---
冷たい夜の街角。
行く先々で宿を断られ、彼らは疲弊しきっていた。
そして。
「……私が居るからでしょうか」
彼女──ルクスが、ぽつりと呟いた。
自分の異名が、また仲間に迷惑をかけたと信じてしまって。
その空気の中に、私は飛び込んだ。
「――違うよ!この街はね、本当にいっぱいなんだよ!」
笑って、声をかけた。
嘘だった。
本当は空いてる宿なんて、いくらでもあった。
でも私は──あの瞬間、どうしても“彼らに関わりたかった”。
名前を名乗った。
「ディン」と、嘘の名を。
そして彼らも、名を返してくれた。
アスフィ。
エルザ。
ルクス。
その時、私は思った。
(あぁ……これが“選ばれた”世界なんだ)
この世界のアスフィは、まだ壊れていない。
まだ“彼女”を、失っていない。
まだ、光を信じている。
そう──レイラは、この世界にはもういない。
彼女の死は、アスフィの心に深い傷を残した。
けれどそれでも、彼は壊れなかった。
泣いた。怒った。誰も救えないと絶望もした。
……それでも、癒すことをやめなかった。
だから、私はこの世界を選んだ。
私のすべてを、託した。
……けれど。
笑っていたのに。
冗談を言っていたのに。
一緒にゲームをしていたのに。
私は、どうしても見ておかなければならなかった。
“彼が、自らの死をどう受け止めるのか”。
そうしなければ、何も始まらないから。
試練は、私自身の涙でもあり、今まで見てきた世界の一部でもあった。
もしかしたら、自分の弱さで知った経験を理解して欲しかったのかもしれない。
そして今、私はこうして神に戻り、また無数の世界を見ている。
そのほとんどが、壊れていた。
そのほとんどが、絶望だった。
けれど、どの世界でもアスフィは、
最後の最後まで、“人を癒そうとしていた”。
例え、届かなくても。
例え、誰にも気づかれなくても。
「どうか……もう誰も、苦しみませんように」
その祈りだけは、変わらなかった。
一方私はというと、壊れた。
神としての器を保てないほどに、崩れた。
(ねぇ……私、もう神じゃないのかもしれない)
ただ、ただ。
君の手に、触れたかった。
その心に、寄り添いたかった。
もしも君が、この先のどこかで、ほんの一瞬でも「自分を赦そう」と思えたのなら──
私は、やっと報われるのかもしれない。
神としてじゃない。
エルシアという、ただの少女として。
私は、君に出会えて、幸せだった。
ありがとう、アスフィ。
(……そして、いつか)
(君が誰かを救い終えたその時には)
(私も、どうか──救ってほしい)
壊れてしまった私の心ごと。
この名もなき祈りごと。
君の“癒し”が届く世界であれと──私は願う。
なんて走馬灯のように振り返ってきたけれど、
私は救われなかった。……罪の重さを考えれば当然だよね。
人間と神……なぜ生まれ、何が違うのか最後まで分からなかった。
ねぇ。……もし救われるなら君が良かったよ、”アスフィ”。
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