ティルナノーグの扉

Erie

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いきなり異世界!

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「ここ…は?」

「気がついたようですね」

 銀髪に緑の瞳の美形に抱きかかえられている。

 美形はマナナン・マクリールという名の妖精王だと名乗った。

 確か学校を出て、そのまま家に帰る気分のなれなくて、近くの公園に立ち寄ったことまでは覚えている。

 だけどいきなりすぎ!っていうかここはどこ?

「もう少し遅かったら、異空間の歪みに迷い込むところでした。ここはティルナノーグという妖精国です」

「妖精国ってイギリスの?」

 最近ハマってる漫画にそういうのがあるから思わずそういってしまった。

「イギリスではなく、ドーワルという大陸の国の一つ。ティルナノーグというところです」

「ティルナノーグ?」

「ええ。妖精国で、あなたがいらっしゃった3次元の世界とは異なる4次元の世界です」

「4次元の世界?」

「普通の人は見ることも接触することもできない全く別の世界です」

 それってどういう世界よ? 

「間に合って良かった。一度歪みに迷い込むと2度と出られません。延々と異空間を彷徨い続けることになります。体が朽ち果てた後も、魂の状態のままずっと…」

 いや、それは困る、っていうかとりあえず助かってよかった!のかな?

 私は妖精王の腕の中で相変わらず抱きかかえられたままだ。

「大丈夫ですか?」

 鮮やかな緑の瞳を目があってドキドキが止まらない。

 異世界にトリップしたっていうのにドキドキしてる場合じゃないでしょ!

 そうツッコミを入れたけど、美形に抱きしめられて冷静でなんていられるわけない。

「あっあの、ありがとうございます。妖精王様」

「マナナンでいいですよ。体の調子はいかがですか?」

「えっ?」

「私の世界へ迷い込むあなたの世界の人間は数える程しかおりません。だけど、その際、DNA細胞レベルの変化が起こって、元の体とは違う姿になることがよくあるんですよ」

見つめ合うのが恥ずかしくて、ふと目を反らすと、目の前には虹色のクリスタルの扉。彼の説明のよると、私はその扉を通ってこの世界に移動してきたらしかった。

床から立ち上がって見てみると、水晶に写った自分の姿が映し出される。

「えええええ!ありえない!」

 瞳が紫に変化していた。そして、髪の色は黒いままだけれど、やはり紫の光沢のトーンに変化している。

「こんな姿じゃあ、帰れないよ」

 私の呟きを聞いて、緑の瞳が陰る。

「元に世界に帰るのは難しいでしょう。過去にこの地の王族に召喚された巫女姫がいらっしゃったのですが、帰る方法も見つからないまま、この地で生涯を全うされました」

 えええ!帰れないんですか?

 確かに新しい家の居場所もなくて、帰りたくないって思ってたけど!

 こういうのとは違う。

「なんとかして元の世界に帰る方法はないんですか?」

 妖精王が首を振る。

「こちらにお連れしたのは私の責任ですから、なんとかして差し上げたいのですが、この扉に繋がっているのはイギリスの妖精国で、ヒトを連れて行くことはできません。あちらの妖精国の次元はあなたのいた日本とは異っているので、何事もなく移動は難しいかと。時間の進み方も違いますし、戻った瞬間、年老いて死ぬこともあります」

 もし私をイギリスの妖精国に連れて行くことができても、浦島太郎みたいな感じになるらしかった。16歳からいきなり老人化は辛い。恋をしたりとか、学生生活をエンジョイしたりとか、全然考えられないけど、好きな仕事をしたり、結婚したりとか、そういうのすっ飛ばして、いきなり老人はちょっと遠慮したい。

「その代わり、こちらにいる以上はリナが私の元で快適に暮らしていただけるように努力しますから」

 びっくりしすぎて自己紹介を忘れていた。

「なんで、私の名前…」

「毎日学校の花壇の花に水をやってくれていたでしょう?」

「ええ」

 だって園芸部員だし、お花の世話は心が和むから結構好きだ。

「公園の花にも時々水やりをしている」

 暑い時にたまにペットボトルの水を少しあげたりはしていた。

「そこの妖精がね、あなたが異空間に迷い込んだ時に助けを求めたんですよ。そして私がその言葉を聞いた。だからあなたは現在ここにいる。ティルナノーグの国賓として歓迎いたします」

 彼の言葉はありがたかったが、かなり誤解が入っている。

 国賓扱いは違うと思うよ。王様。

 ニッコリと肯定されると、どういっていいかわからない。

 「ありがとうございます」

 とりあえずお礼いうと、「お付きの侍女の妖精」を紹介してくれた。

「プカっていうの!」

 可愛らしい声の黒うさぎの妖精が突然現れる。

 さすが妖精界。やはり異世界なんだ。

「プカはは自己も他者も含めて自由に姿を変えられる為、身の回りの世話をするには最適なんですよ」

「よろしく、リナです」

「では、プカ、リナを宜しく頼んだよ」

「任せて!王!」

「では、私は、公務があるので、失礼しますね。あとで一緒に夕食を取りましょう」

「ありがとうございます!マナナン!」

 私の言葉に微笑を浮かべると、妖精王は姿を消した。


 ◇ ◇ ◇

「では、リナの部屋に行くね!」

 えっ?来たばっかりなのにお部屋があるんですか?

 プカに案内されたお部屋は中世ヨーロッパのお姫様が使うような豪華絢爛のインテリアで埋め尽くされていた。

「すごすぎ」

「王が、地球のヒトの好みに合うように作り変えた。王はすごい!」

 プカが自慢気にいう。

 私の世界とはかなり時代背景が異なっていると思うけど、細かいことは気にしないことにした。中世ヨーロッパ風だけど、少し違うところがある。お風呂だ。やはりシャワーでなくお風呂の好きな日本人としてはこれはありがたい。ユニットバスではなく、別々に分かれている。クリスタルでできているシャワーとミニ温泉の岩風呂。岩風呂だけやけに日本風。バスルームは結構広くて、豪邸拝見のお金持ち風。

「とりあえず、シャワーを浴びたいんだけど?」

「シャワーを浴びるときはクリア!と叫ぶね。そうすればクリスタルの水が綺麗にしてくれるね」

 制服を脱いで、下着姿になる。クリスタルのバスルームには鏡があり、紫の瞳の少女が私を見つめている。典型的な幼い日本人の顔立ちはそのままだけど、目の色が変わっただけでハーフっぽい。

「この姿もなかなかイケてる、かな?」

 シャワーを浴びるためにクリアと叫ぶと虹色のミストがクリスタルのシャワーヘッドから出てきた。先ほどまでに感じていた不安が体の汚れとともに洗い流されていく。洗浄効果だけでなくヒーリング効果もあるみたい。ミストは自然に蒸発したので、タオルは必要なかった。シャワーから出て、隣の温泉を満喫する。

 あー、やっぱりお風呂は最高!

 あまり広くはないけど、大人が数人で入ってもまだ広いミニ温泉の岩風呂には、可愛らしいハーブみたいな蔦が所々に生えている。蔦の先にはスズランみたいなお花が咲いていて、キラキラした雫が温泉のお湯に落ちていく。

 わー可愛い。

 ほっこりしてから温泉を出ると、寝間着のようなローブが用意されてあったので、それを着た。

「リナ、お風呂楽しかった?」

「うん。ありがとう」

 バスルームを出てて、リビングに行くと、プカがいた。

「疲れたから、ちょっと休むね」

 天蓋付きのお姫様そのもののベッドに横たわる。シンプルな家具が好きだけど、こういうのもいいかも。

「了解。おやすみ、リナ!」

 その言葉と同時にプカの姿が消えた。


 ◇ ◇ ◇


 目が覚めると窓の外はすっかり闇に包まれている。結構いろいろあって疲れていたらしい。

「リナ、起きて!そろそろ夕食のための仕度するね!」

 その声と同時にプカが再び現れる。

「うん。わかった」

「チェンジ!」

 と叫んで、プカがウサギのダンス?みたいなものを踊り始める。

 やばい、かなり可愛い。

 あっという間にお姫様が着るようなドレスに包まれる。幸いこの世界にはコルセットがなかったから、肌着もつけているのだけれど。4回ほど色を変えて好きなドレスが見つかった。

「これ可愛い!」

 ゴージャスな他のドレスよる比較的おとなしいラベンダードレスを選択する。

「リナ、お姫様みたい。王も喜ぶ!」

 それからメイクとヘア。それは自分でやった。妖精城には侍女や女官たちがいるらしい。だけど、人間の世話をしたことのある妖精はお城にはいないらしく、どうしていいかわからないらしい。

 別に自分でメイクもヘアもできるから、いいんだけどね!。私は鏡台に置いてあるお粉とチークそれとはちみつを唇に塗り、髪を乾かして櫛を入れ、パパッと身なりを整えた。

「できた」

 鏡の前の自分に向かってにっこり笑う。絶世の美女とかではないけど、それなりに可愛らしく仕上がった。

「リナ、可愛い!王に会いに行く!食事するね!」

 プカに連れられて、部屋を出る。かなり広い王宮内でプカの案内を聞きながら、妖精王のいる食事の間に向かった。

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