51 / 78
深窓の婚約者
しおりを挟む
王家から正式な婚約の承認の書類と結婚許可証が届いて、エリアスは6ヶ月後に式をすることに決めた。
「まあ、では式は6月になりますのね?」
「ええ、初夏なので良い式ができるでしょう。アルザス領の他の領地が海辺にもありますから、式の後は、そこへ旅行へ出かけましょう」
「では、準備に忙しくなるわね?」
「ええ」
エリアスは愛しいセシリアに優しい笑みを浮かべているが、心の中は穏やかではなかった。アルザス公爵家のお庭番からアルザス領で殺した筈のハインリッヒの死体が、隣国のエミレーツで発見されたという報告を聞いたからだ。
「公爵家なので、すぐに挙式できなくて、すみません」
「いいのよ?侍女たちも大喜びだと思うわ」
エリアスが不在時には、公爵家を切り盛りするだけで華やかな行事はなく、公爵家の侍女達はセシリアが来てから、着飾ったり、お手入れの仕事ができると張り切っていた。
「お義母様からも一緒に素敵なウエディングドレスを考えましょう?といわれているの。ドレスの採寸から作成まで、半年かかるというし、丁度いいわ」
「ええ」
「セシリア様、公爵様、お茶のおかわりはいかがですか?」
「ありがとう、エミリア」
セシリアがエミリアにお菓子の追加をお願いして、たわいのない話をしだすと、エリアスは先ほどの考えに頭を戻した。エミレーツで自国の皇太子が殺害されたと聞けば、好戦的なルーレシアは攻め込んでくるだろう。陸を通じて、隣国であるティールザードも危険になる。だが、現在エミレーツはルーレシアと同等の軍事国家であるパラディア国との同盟を結んでおり、エミレーツ出身の姫を妃に迎えて、目の中に入れても痛くないほど可愛がっている若き王が後ろ盾にいるエミレーツにすぐには攻め込んでこないだろう。国の基盤が弱った時やパラディアの隙を突いて攻めるには綿密な計画と準備が必要であったので、攻め込むにしても早くて、1年後だろう。そして、ルーレシアの第2皇子はハインリッヒを嫌っていたという。王位継承権を持つ王弟の宰相もこの突然の出来事に笑みを浮かべていることだろう。なので、ルーレシアの国内はしばらく揺れることになる。
今から半年は大丈夫でしょう。
それまではセシリアを大切に公爵家に保護するつもりだ。自慢の婚約者を見せびらかしたい気持ちもあったが、彼女の安全のために、式までは公式の夜会などは出ないことにする。
どうしてもという場合はエリアスのみで出席したため、アルザス公爵の異国からの異国の婚約者は大変な美人で、公爵が溺愛しており、片時もそばから離さないのだ、という噂が社交界に流れ始めていた。
それに、アルザス公爵夫人としての教育することもたくさんあるのだ。
王女であるセシリアは外交やマナーは一流だが、ティールザードのことを知らない。夫婦で王家を支えていくためにたくさん学んでもらうことがあった。
「エリアス?」どうしたの?」
「これからのことを考えてたですよ。色々忙しくなりますね」
「ええ。お式に招待する方達のリストも作って招待状も送らないと」
「ええ」
そして、エリアスはセシリアの両親も式に招待するつもりでいた。それを内密に揉めずにどう実行するのか?
考えることはたくさんあった。
「まあ、では式は6月になりますのね?」
「ええ、初夏なので良い式ができるでしょう。アルザス領の他の領地が海辺にもありますから、式の後は、そこへ旅行へ出かけましょう」
「では、準備に忙しくなるわね?」
「ええ」
エリアスは愛しいセシリアに優しい笑みを浮かべているが、心の中は穏やかではなかった。アルザス公爵家のお庭番からアルザス領で殺した筈のハインリッヒの死体が、隣国のエミレーツで発見されたという報告を聞いたからだ。
「公爵家なので、すぐに挙式できなくて、すみません」
「いいのよ?侍女たちも大喜びだと思うわ」
エリアスが不在時には、公爵家を切り盛りするだけで華やかな行事はなく、公爵家の侍女達はセシリアが来てから、着飾ったり、お手入れの仕事ができると張り切っていた。
「お義母様からも一緒に素敵なウエディングドレスを考えましょう?といわれているの。ドレスの採寸から作成まで、半年かかるというし、丁度いいわ」
「ええ」
「セシリア様、公爵様、お茶のおかわりはいかがですか?」
「ありがとう、エミリア」
セシリアがエミリアにお菓子の追加をお願いして、たわいのない話をしだすと、エリアスは先ほどの考えに頭を戻した。エミレーツで自国の皇太子が殺害されたと聞けば、好戦的なルーレシアは攻め込んでくるだろう。陸を通じて、隣国であるティールザードも危険になる。だが、現在エミレーツはルーレシアと同等の軍事国家であるパラディア国との同盟を結んでおり、エミレーツ出身の姫を妃に迎えて、目の中に入れても痛くないほど可愛がっている若き王が後ろ盾にいるエミレーツにすぐには攻め込んでこないだろう。国の基盤が弱った時やパラディアの隙を突いて攻めるには綿密な計画と準備が必要であったので、攻め込むにしても早くて、1年後だろう。そして、ルーレシアの第2皇子はハインリッヒを嫌っていたという。王位継承権を持つ王弟の宰相もこの突然の出来事に笑みを浮かべていることだろう。なので、ルーレシアの国内はしばらく揺れることになる。
今から半年は大丈夫でしょう。
それまではセシリアを大切に公爵家に保護するつもりだ。自慢の婚約者を見せびらかしたい気持ちもあったが、彼女の安全のために、式までは公式の夜会などは出ないことにする。
どうしてもという場合はエリアスのみで出席したため、アルザス公爵の異国からの異国の婚約者は大変な美人で、公爵が溺愛しており、片時もそばから離さないのだ、という噂が社交界に流れ始めていた。
それに、アルザス公爵夫人としての教育することもたくさんあるのだ。
王女であるセシリアは外交やマナーは一流だが、ティールザードのことを知らない。夫婦で王家を支えていくためにたくさん学んでもらうことがあった。
「エリアス?」どうしたの?」
「これからのことを考えてたですよ。色々忙しくなりますね」
「ええ。お式に招待する方達のリストも作って招待状も送らないと」
「ええ」
そして、エリアスはセシリアの両親も式に招待するつもりでいた。それを内密に揉めずにどう実行するのか?
考えることはたくさんあった。
0
あなたにおすすめの小説
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました
春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。
名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。
誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。
ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、
あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。
「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」
「……もう限界だ」
私は知らなかった。
宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて――
ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
いなくなった伯爵令嬢の代わりとして育てられました。本物が見つかって今度は彼女の婚約者だった辺境伯様に嫁ぎます。
りつ
恋愛
~身代わり令嬢は強面辺境伯に溺愛される~
行方不明になった伯爵家の娘によく似ていると孤児院から引き取られたマリア。孤独を抱えながら必死に伯爵夫妻の望む子どもを演じる。数年後、ようやく伯爵家での暮らしにも慣れてきた矢先、夫妻の本当の娘であるヒルデが見つかる。自分とは違う天真爛漫な性格をしたヒルデはあっという間に伯爵家に馴染み、マリアの婚約者もヒルデに惹かれてしまう……。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる