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本編
遠乗りデート(後)
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アリステア様は、思っていたよりも、ちょっとS気味な人だったのに気づき始めたのは、この遠乗りの頃だったと思いますわ。
お昼は、穏やかにおいしいものをいただきながら、幸せな時間を過ごしましたわ。
会話はそんなにはありませんでしたわね。
アリステア様はそんなにおしゃべりな方ではありませんし。
アリステア様の好みが知りたくて、好みの食べ物をお聞きしたぐらいかしら?
「軍人はどのようなものでも食べて戦いに備えないと。なので苦手なものはありません」
といわれて会話は終わりましたけれど。
わたくしはどんなものが好きだと聞かれて、甘い物を羅列してしまいましたわ。
なぜだか知らないけれどすごくウケてたような?気がします。
事件が起こったのは、お昼を終えてからでしたの。
いつも紳士な方と思っていたのですけれど、わたくしの間違いでしたわ。
わたくしがアリステア様の腕の中がジタバタしているのを楽しんでらっしゃるフシがあるような気がするのです。
「レティー、少し飛ばすぞ?」
アリステア様が普段の調子で広い小川や、ちょっとした荒地や丘を駆けるのは、令嬢のわたくしには辛いものがありましたわ。
基本、馬車が移動手段の令嬢は馬に乗れない方もたくさんいらっしゃいますのよ?
わたくしのように乗馬を嗜んでも、あくまで見通しの良いなだらからところでゆっくりと乗るぐらいで、あまり本気のスピードで走ったりはいたしませんわね。
聖なる森までの乗馬は思っていたよりもロマンチックではなく、デートという色合いも薄れるほど真剣な遠乗りというか早駆けでしたわ。
乗馬服に身を包んできてよかったと思ったのはいうまでもありませんわ。
「はあ、はあ、はあ」
わたくしがちょっと涙目になって真っ赤になっているのを見て、なんだか嬉しそうなのは何故なのかしら?
淑女が苦しそうにしていたら、微笑んでないで、介抱するものではないかと思うのだけれど?
「アリステア様、少しスピードを落としていただけない?わたくしこんな激しい乗馬は初めてで、慣れておりませんの」
「そうか、それなら少しスピードを落とすが、慣れてもらわないと困る」
「えっ?」
「あなたはあくまでもフィリップの婚約者候補だ。友人として普通にできることといえば、遠乗りぐらいしかない」
アリステア様の「友人」という言葉の棘が胸に突き刺さる。
「ええ」
それでも感情を表すことを良しとしない淑女教育を受けたわたくしは微笑むことができるのですけれど、市井で育ったマリアンヌ様が少し羨ましくなりましたわ。
「私が遅く感じるスピードでも、早すぎるとは。なかなかコツが掴めなくてね、すまない」
「いえ、わたくし、頑張りますから、大丈夫ですわ」
わたくしの言葉にアリステア様は満足そうに頷かれて、綺麗な景色の森や丘を駆け抜けましたわ。
「ここをまっすぐに行くと、私の領地になるのだが、今日は時間がない。また次の機会に招待しよう」
「ありがとうございます」
「そろそろ戻らないと公爵に心配される。戻ろう」
まだお昼を少し過ぎた頃だったけれど、お茶の時間に間に合うぐらいに帰るのが「恋人同士ではない間柄の健全な振る舞い」とされているから仕方ないですわ。
あまりのスピードでサラスはついてこられるか心配だったけれど杞憂に終わりましたわ。
あっという間に我が家に送り届けられて、わたくしのお部屋についた頃にはアリステア様に密着した緊張とスピードでかなり疲れが押し寄せたのですけれど。
普段はお茶に顔を出さないお父様がわたくしの疲労困憊の顔を見て「何も怪しい間柄ではなかった」と安心されていましたわ。
とりあえずこの遠乗りデートの収穫はアリステア様の胸筋に顔を埋められたこと、ぐらいかしら?
2人きり(サラスがいたとはいえ)のデートだったのに大した会話もなく何の進展もありませんでしたわ。
まさかわたくしの方からアリステア様の恋愛事情など聞くわけにもいけませんしね。
サラスの調査ではお見合いの話などは公爵が「まだ早い」と却下されているようですけれど。まず良き軍人になることが先決だそうで。
やはり乙女ゲーの設定通りマリアンヌ様と恋に落ちるのかしら?
望んでないのにどんどん逆ハーが進んでいるわたくしの状況を考えてみたら、充分あり得る話だわ。
わたくしはもっとがんばらなくては!
そしてアリステア様とのラブラブルートを確立するのよ!
でもどうすればいいの?
この時代の女性が男性を押し倒すなんてできませんものね。
肉食女子は(表向きには)存在しないのですから。
決意したものの具体的に何をしていいのかわからなくて、途方にくれたのいうまでもないことですわ。
お昼は、穏やかにおいしいものをいただきながら、幸せな時間を過ごしましたわ。
会話はそんなにはありませんでしたわね。
アリステア様はそんなにおしゃべりな方ではありませんし。
アリステア様の好みが知りたくて、好みの食べ物をお聞きしたぐらいかしら?
「軍人はどのようなものでも食べて戦いに備えないと。なので苦手なものはありません」
といわれて会話は終わりましたけれど。
わたくしはどんなものが好きだと聞かれて、甘い物を羅列してしまいましたわ。
なぜだか知らないけれどすごくウケてたような?気がします。
事件が起こったのは、お昼を終えてからでしたの。
いつも紳士な方と思っていたのですけれど、わたくしの間違いでしたわ。
わたくしがアリステア様の腕の中がジタバタしているのを楽しんでらっしゃるフシがあるような気がするのです。
「レティー、少し飛ばすぞ?」
アリステア様が普段の調子で広い小川や、ちょっとした荒地や丘を駆けるのは、令嬢のわたくしには辛いものがありましたわ。
基本、馬車が移動手段の令嬢は馬に乗れない方もたくさんいらっしゃいますのよ?
わたくしのように乗馬を嗜んでも、あくまで見通しの良いなだらからところでゆっくりと乗るぐらいで、あまり本気のスピードで走ったりはいたしませんわね。
聖なる森までの乗馬は思っていたよりもロマンチックではなく、デートという色合いも薄れるほど真剣な遠乗りというか早駆けでしたわ。
乗馬服に身を包んできてよかったと思ったのはいうまでもありませんわ。
「はあ、はあ、はあ」
わたくしがちょっと涙目になって真っ赤になっているのを見て、なんだか嬉しそうなのは何故なのかしら?
淑女が苦しそうにしていたら、微笑んでないで、介抱するものではないかと思うのだけれど?
「アリステア様、少しスピードを落としていただけない?わたくしこんな激しい乗馬は初めてで、慣れておりませんの」
「そうか、それなら少しスピードを落とすが、慣れてもらわないと困る」
「えっ?」
「あなたはあくまでもフィリップの婚約者候補だ。友人として普通にできることといえば、遠乗りぐらいしかない」
アリステア様の「友人」という言葉の棘が胸に突き刺さる。
「ええ」
それでも感情を表すことを良しとしない淑女教育を受けたわたくしは微笑むことができるのですけれど、市井で育ったマリアンヌ様が少し羨ましくなりましたわ。
「私が遅く感じるスピードでも、早すぎるとは。なかなかコツが掴めなくてね、すまない」
「いえ、わたくし、頑張りますから、大丈夫ですわ」
わたくしの言葉にアリステア様は満足そうに頷かれて、綺麗な景色の森や丘を駆け抜けましたわ。
「ここをまっすぐに行くと、私の領地になるのだが、今日は時間がない。また次の機会に招待しよう」
「ありがとうございます」
「そろそろ戻らないと公爵に心配される。戻ろう」
まだお昼を少し過ぎた頃だったけれど、お茶の時間に間に合うぐらいに帰るのが「恋人同士ではない間柄の健全な振る舞い」とされているから仕方ないですわ。
あまりのスピードでサラスはついてこられるか心配だったけれど杞憂に終わりましたわ。
あっという間に我が家に送り届けられて、わたくしのお部屋についた頃にはアリステア様に密着した緊張とスピードでかなり疲れが押し寄せたのですけれど。
普段はお茶に顔を出さないお父様がわたくしの疲労困憊の顔を見て「何も怪しい間柄ではなかった」と安心されていましたわ。
とりあえずこの遠乗りデートの収穫はアリステア様の胸筋に顔を埋められたこと、ぐらいかしら?
2人きり(サラスがいたとはいえ)のデートだったのに大した会話もなく何の進展もありませんでしたわ。
まさかわたくしの方からアリステア様の恋愛事情など聞くわけにもいけませんしね。
サラスの調査ではお見合いの話などは公爵が「まだ早い」と却下されているようですけれど。まず良き軍人になることが先決だそうで。
やはり乙女ゲーの設定通りマリアンヌ様と恋に落ちるのかしら?
望んでないのにどんどん逆ハーが進んでいるわたくしの状況を考えてみたら、充分あり得る話だわ。
わたくしはもっとがんばらなくては!
そしてアリステア様とのラブラブルートを確立するのよ!
でもどうすればいいの?
この時代の女性が男性を押し倒すなんてできませんものね。
肉食女子は(表向きには)存在しないのですから。
決意したものの具体的に何をしていいのかわからなくて、途方にくれたのいうまでもないことですわ。
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