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本編
フィリップ様の決断
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リチャード様との事件の後、至急登城するように使者から王命の手紙が来て、公爵家ではプチパニックが起こりましたわ。
わたくしを溺愛しているお父様とお兄様が取り乱されたのが主な原因なんですけれど。
「こんな時期に登城とはどういったことなんだ?」
「父上、リチャードの件で不敬罪の裁きを受けるのでは?」
「そうなれば、公爵家の全ての力を持ってお前を守らせてもらう。婚約の件を頼んできたのはあちらの方で、家としては慣例に従っただけ。なのにこんなことになろうとは!」
「お父様、お兄様、落ち着いてください。フィリップ様はお優しい方ですわ。お父様達が考えているような事態になるとは思いません。そもそもわたくしよりもマリアンヌ様をお好きでしたから」
「でも面子というものがあるだろう?」
「とりあえず、支度を整えてお話を伺ってきましょう」
ということで、急いで支度を整えて、お父様と共にお城に上がったのは使いが来てから5時間ほどのことだった。
*****
登城して通されたのは王宮の広間で、そこには王太子であるフィリップ様と、陛下だけではなく、フィリップ様の隣にはマリアンヌ様が座っていた。
婚約も結んでいないのに下位の貴族の娘が王太子の隣に座るとは異例だったが、「聖女様」として認められているので、そこは黙認されているらしかった。
「今回は突然の呼び出し、その理由はわかったおるな?」
陛下が口を開かれる。
「はい。この度は申し訳ございませんでした」
ブラッドストーン公爵の言葉と共にレティシアは頭を下げる。
「フィリップから話を聞いたが、そなたの口からも直接事情を聞きたい。リチャードとの交際の件は誠か?」
「いえ、誤解でございます。王家の婚約者候補としてフィリップ様や王家にふさわしい行動をとるように常に心がけてきました」
「だが、噂によれば、サロモンや隣国のムルシリ殿下にも寵愛を受けているそうではないか?」
「確かにわたくしに好意を寄せておられるようなお言葉をお聞きしましたが、王家の婚約者候補だからとお断りしてきました」
「甥のサロモンは継承権を放棄してきたのにそれを取り消せといってきた。あれが好き勝手にできているのはその強大な魔力のせいに過ぎぬ。ムルシリ殿下にしても、国際問題になるようなことは避けたい」
「陛下、わたくしはサロモン様ともムルシリ殿下ともお付き合いはするつもりはありません。どなたが正式な婚約者になるのかはフィリップ様がお決めになること、でもわたくしはフィリップ様が他の方を選ばれたとしても必要ならば務めを果たしたいと思っております。慣例により我が一族と王家は婚姻を結んできました。その慣例に従うのが公爵家の令嬢としての務めだと思っております」
「なるほど。そなたの決意はわかった。フィリップ、そういうことだそうだ」
「父上、私は次回の夜会でマリアンヌを婚約者指名したいと思っています」
フィリップ様の言葉にマリアンヌ様は勝ち誇ったように微笑まれ、わたくしを見下ろされましたわ。
「そうか」
「この間の件で自分の気持ちと向かい合うきっかけになりました。で、わかったのです。マリアンヌも私と共にこの国を支えていきたいと答えてくれました。ブラッドストーン公爵、そういうことですので、了解していただけますか?」
この言葉にわたくしもお父様も頷くしかなく、
「フィリップとレティシアの気持ちはわかった。王族は他にもいる。これからのことは改めて話し合おう」
という陛下の言葉で話し合いの場が閉められましたわ。
あれからリチャード様には王家からのお咎めはありませんでしたけれど、孤児院で姿を見かける事はなくなりましたわ。噂によると伯爵が大層お怒りのようで、辺境の領地に送られたとか。
わたくしを溺愛しているお父様とお兄様が取り乱されたのが主な原因なんですけれど。
「こんな時期に登城とはどういったことなんだ?」
「父上、リチャードの件で不敬罪の裁きを受けるのでは?」
「そうなれば、公爵家の全ての力を持ってお前を守らせてもらう。婚約の件を頼んできたのはあちらの方で、家としては慣例に従っただけ。なのにこんなことになろうとは!」
「お父様、お兄様、落ち着いてください。フィリップ様はお優しい方ですわ。お父様達が考えているような事態になるとは思いません。そもそもわたくしよりもマリアンヌ様をお好きでしたから」
「でも面子というものがあるだろう?」
「とりあえず、支度を整えてお話を伺ってきましょう」
ということで、急いで支度を整えて、お父様と共にお城に上がったのは使いが来てから5時間ほどのことだった。
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登城して通されたのは王宮の広間で、そこには王太子であるフィリップ様と、陛下だけではなく、フィリップ様の隣にはマリアンヌ様が座っていた。
婚約も結んでいないのに下位の貴族の娘が王太子の隣に座るとは異例だったが、「聖女様」として認められているので、そこは黙認されているらしかった。
「今回は突然の呼び出し、その理由はわかったおるな?」
陛下が口を開かれる。
「はい。この度は申し訳ございませんでした」
ブラッドストーン公爵の言葉と共にレティシアは頭を下げる。
「フィリップから話を聞いたが、そなたの口からも直接事情を聞きたい。リチャードとの交際の件は誠か?」
「いえ、誤解でございます。王家の婚約者候補としてフィリップ様や王家にふさわしい行動をとるように常に心がけてきました」
「だが、噂によれば、サロモンや隣国のムルシリ殿下にも寵愛を受けているそうではないか?」
「確かにわたくしに好意を寄せておられるようなお言葉をお聞きしましたが、王家の婚約者候補だからとお断りしてきました」
「甥のサロモンは継承権を放棄してきたのにそれを取り消せといってきた。あれが好き勝手にできているのはその強大な魔力のせいに過ぎぬ。ムルシリ殿下にしても、国際問題になるようなことは避けたい」
「陛下、わたくしはサロモン様ともムルシリ殿下ともお付き合いはするつもりはありません。どなたが正式な婚約者になるのかはフィリップ様がお決めになること、でもわたくしはフィリップ様が他の方を選ばれたとしても必要ならば務めを果たしたいと思っております。慣例により我が一族と王家は婚姻を結んできました。その慣例に従うのが公爵家の令嬢としての務めだと思っております」
「なるほど。そなたの決意はわかった。フィリップ、そういうことだそうだ」
「父上、私は次回の夜会でマリアンヌを婚約者指名したいと思っています」
フィリップ様の言葉にマリアンヌ様は勝ち誇ったように微笑まれ、わたくしを見下ろされましたわ。
「そうか」
「この間の件で自分の気持ちと向かい合うきっかけになりました。で、わかったのです。マリアンヌも私と共にこの国を支えていきたいと答えてくれました。ブラッドストーン公爵、そういうことですので、了解していただけますか?」
この言葉にわたくしもお父様も頷くしかなく、
「フィリップとレティシアの気持ちはわかった。王族は他にもいる。これからのことは改めて話し合おう」
という陛下の言葉で話し合いの場が閉められましたわ。
あれからリチャード様には王家からのお咎めはありませんでしたけれど、孤児院で姿を見かける事はなくなりましたわ。噂によると伯爵が大層お怒りのようで、辺境の領地に送られたとか。
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