30 / 48
本編
魔術師の提案
しおりを挟む
子供の頃に転生者としての記憶を思い出してから、ひたすらバッドエンドにならないように努力してきたつもりだけれど、冷静に考えたら、わたくしの周囲の状況は逆ハーエンドに向かって進んでるような気がしますわ。
陛下とお話しした後でもサロモン様、サーティス殿下からのラブコールが絶えませんの。毎日贈り物やお手紙が送られてきて正直困っておりますのよ。
サロモン様は本格的に王位継承権奪回するために動き出したそうですわ。
なのにアリステア様はあいかわらずで、いつも顔を出していたカフェテリアにもクラスのにも出席されてなくて、顔をあわせる機会がございませんの。
どうして良いのかわからなくなりましたわ。
そう考えたわたくしはブラッドストーン公爵家が懇意にしている魔術師の家を訪ねることにしましたの。
わたくしの家の家系は人よりも魔力に秀でているためにエネルギー関係や見えない世界の説明などを受けることもあるため、魔術師や薬師などとは古くから深い関係を築いていますわ。
週末の朝早く、サラスと共に寮を出て、王都の外れの家に向かう。
ここはお父様に連れられて何度か訪れたことがあったから、なんとなく土地勘があって家はすぐに見つかりましたわ。
一見普通の薬剤師の店に見える木戸の扉を開ける。
「予想より早いお着きですね、お嬢様」
わたくしの目の前には長い黒髪黒目のすごい美形が立っている。
「お久しぶりね、イルーシャ」
「最後にお会いしたのはあなたの能力が芽生えた頃ですね」
イルーシャはとんでもなく若く見えるけれども、お祖父様の代からその容姿は変わらないので、多分お祖父様よりは年上の凄腕の魔術師で、一見さんお断り主義の為紹介がないと会えない貴重な存在。それは王家であっても同じことで、彼の存在を知る者は限られている。
「ええ。ピアス、ありがとう。役に立っているわ」
王家に魔力のことを隠すためにわたくしの魔力抑制のピアスを作ったのはこのイルーシャだ。
目の前に暖かい薬草茶が出される。これは美容に良いお茶だそうで、サラスもそれを黙って飲んでいる。
「で、今回はどのようなご用件ですか?」
「わたくしに前世の記憶があるのは最後にお会いした時にお話ししましたわよね?」
「ええ」
「あの時の前世の記憶通りの展開になっていますのよ?あの頃から努力してきましたのに。このままではわたくし悲劇的な最後を迎えそうですの」
イルーシャは目を閉じて、何かにフォーカスしているようですわ。
「運命の輪の流れが見える。そしてリピートされている」
「運命の輪?」
「人の人生には無限に時間軸があるのですが、本人の選択やその時の魂の波動の状態によって、その時間軸を行き来しています。普通の人はその時間軸の移動はさほど差がないので、たとえは未来視をしてもらって当たる、ということがあるのですが」
「ええ」
「本人の信じていること、がその時間軸の範囲を狭めているということが多々あります」
「そうなの?」
「ええ。無意識に信じ込んでいることやトラウマなども影響しますから、元の魂が歩く筈だったあなたの時間軸を全然別のものにするには、ただ行動を起こすだけでは無理です」
「どうすればいいのかしら?」
「運命の強制力のようなモノも、エネルギーですから、手放すことが唯一の方法です」
「手放す?」
「今の現実を受け止めて抵抗を止める。抵抗すればするほど、同じ時間軸がリピートしますから」
「乙女ゲームの強制力も運命の強制力と考えていいのかしら?」
「ええ」
「でも何もしなかったらバッドエンドになっちゃうじゃない」
「何もしないわけではなく、今、ここにフォーカスして浮かんでくる思いや感情を味わい尽くすのです。簡単にいうとこの状況を作っている元のエネルギーを味わうことで中立に戻すのです」
「戻したらどうなるの?」
「時間軸のリピートは無くなるでしょうね」
「はあ、何もしないでそういう見えないものにフォーカスするだけなんてなんだか不安だわ」
わたくしは考えるより先に行動を起こしたい性格なので、魔術師のいうように何もしないのは苦手ですわ。
「行動だけ起こしても何も解決しませんよ。この世は全てエネルギーでできているのですから。幸いあなたには強い魔力があります。私の提案を聞いて手放すということをやってみたら、周りの状況も変わり始めるでしょう。人の気持ちは行動では変えられませんよ、お嬢様?」
「はあ、わかったわ。とりあえずやってみるわ」
恋する乙女は藁にもすがるのよ!
*****
わたくしはその日から早速イルーシャに教えられた方法を実行することにした。
彼が提案したことは4つ。
1頭ではなく、ハートで全て浮かんでくる感情を味わい尽くすこと。
2それが辛い感情でも逃げないで味わうこと。
3過去でも未来でもなく今、ここにフォーカスすること(そうすることでこの時間軸の崩壊が起こるらしい)
4もしハートでピンときた時は行動を起こしてもOK!
とりあえず、バッドエンドになるかもしれないという恐れの感情と、アリステア様と恋愛シチュエーションにならないかもしれないという不安、この2つの感情を味わい尽くすことに決めましたの。
毎日の生活がありますから、やれる時やることに決めてとりあえずトライですわ。
とにかく近いうちにお父様に会いに行きましょう。
そして少しでもわたくしの気持ちを話してみようと決めましたわ。
陛下とお話しした後でもサロモン様、サーティス殿下からのラブコールが絶えませんの。毎日贈り物やお手紙が送られてきて正直困っておりますのよ。
サロモン様は本格的に王位継承権奪回するために動き出したそうですわ。
なのにアリステア様はあいかわらずで、いつも顔を出していたカフェテリアにもクラスのにも出席されてなくて、顔をあわせる機会がございませんの。
どうして良いのかわからなくなりましたわ。
そう考えたわたくしはブラッドストーン公爵家が懇意にしている魔術師の家を訪ねることにしましたの。
わたくしの家の家系は人よりも魔力に秀でているためにエネルギー関係や見えない世界の説明などを受けることもあるため、魔術師や薬師などとは古くから深い関係を築いていますわ。
週末の朝早く、サラスと共に寮を出て、王都の外れの家に向かう。
ここはお父様に連れられて何度か訪れたことがあったから、なんとなく土地勘があって家はすぐに見つかりましたわ。
一見普通の薬剤師の店に見える木戸の扉を開ける。
「予想より早いお着きですね、お嬢様」
わたくしの目の前には長い黒髪黒目のすごい美形が立っている。
「お久しぶりね、イルーシャ」
「最後にお会いしたのはあなたの能力が芽生えた頃ですね」
イルーシャはとんでもなく若く見えるけれども、お祖父様の代からその容姿は変わらないので、多分お祖父様よりは年上の凄腕の魔術師で、一見さんお断り主義の為紹介がないと会えない貴重な存在。それは王家であっても同じことで、彼の存在を知る者は限られている。
「ええ。ピアス、ありがとう。役に立っているわ」
王家に魔力のことを隠すためにわたくしの魔力抑制のピアスを作ったのはこのイルーシャだ。
目の前に暖かい薬草茶が出される。これは美容に良いお茶だそうで、サラスもそれを黙って飲んでいる。
「で、今回はどのようなご用件ですか?」
「わたくしに前世の記憶があるのは最後にお会いした時にお話ししましたわよね?」
「ええ」
「あの時の前世の記憶通りの展開になっていますのよ?あの頃から努力してきましたのに。このままではわたくし悲劇的な最後を迎えそうですの」
イルーシャは目を閉じて、何かにフォーカスしているようですわ。
「運命の輪の流れが見える。そしてリピートされている」
「運命の輪?」
「人の人生には無限に時間軸があるのですが、本人の選択やその時の魂の波動の状態によって、その時間軸を行き来しています。普通の人はその時間軸の移動はさほど差がないので、たとえは未来視をしてもらって当たる、ということがあるのですが」
「ええ」
「本人の信じていること、がその時間軸の範囲を狭めているということが多々あります」
「そうなの?」
「ええ。無意識に信じ込んでいることやトラウマなども影響しますから、元の魂が歩く筈だったあなたの時間軸を全然別のものにするには、ただ行動を起こすだけでは無理です」
「どうすればいいのかしら?」
「運命の強制力のようなモノも、エネルギーですから、手放すことが唯一の方法です」
「手放す?」
「今の現実を受け止めて抵抗を止める。抵抗すればするほど、同じ時間軸がリピートしますから」
「乙女ゲームの強制力も運命の強制力と考えていいのかしら?」
「ええ」
「でも何もしなかったらバッドエンドになっちゃうじゃない」
「何もしないわけではなく、今、ここにフォーカスして浮かんでくる思いや感情を味わい尽くすのです。簡単にいうとこの状況を作っている元のエネルギーを味わうことで中立に戻すのです」
「戻したらどうなるの?」
「時間軸のリピートは無くなるでしょうね」
「はあ、何もしないでそういう見えないものにフォーカスするだけなんてなんだか不安だわ」
わたくしは考えるより先に行動を起こしたい性格なので、魔術師のいうように何もしないのは苦手ですわ。
「行動だけ起こしても何も解決しませんよ。この世は全てエネルギーでできているのですから。幸いあなたには強い魔力があります。私の提案を聞いて手放すということをやってみたら、周りの状況も変わり始めるでしょう。人の気持ちは行動では変えられませんよ、お嬢様?」
「はあ、わかったわ。とりあえずやってみるわ」
恋する乙女は藁にもすがるのよ!
*****
わたくしはその日から早速イルーシャに教えられた方法を実行することにした。
彼が提案したことは4つ。
1頭ではなく、ハートで全て浮かんでくる感情を味わい尽くすこと。
2それが辛い感情でも逃げないで味わうこと。
3過去でも未来でもなく今、ここにフォーカスすること(そうすることでこの時間軸の崩壊が起こるらしい)
4もしハートでピンときた時は行動を起こしてもOK!
とりあえず、バッドエンドになるかもしれないという恐れの感情と、アリステア様と恋愛シチュエーションにならないかもしれないという不安、この2つの感情を味わい尽くすことに決めましたの。
毎日の生活がありますから、やれる時やることに決めてとりあえずトライですわ。
とにかく近いうちにお父様に会いに行きましょう。
そして少しでもわたくしの気持ちを話してみようと決めましたわ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
248
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる