28 / 48
本編
強制力には勝てません?
しおりを挟む
「お嬢様、元気を出してください」
サラスがわたくしの大好きなローズヒップティーと焼き菓子を出しながらいう。
「あんなところを見られたら、誤解されるしかないわ」
「お嬢様…」
あれから孤児院を訪問したフィリップ様一行は、そのままお城に帰ってしまった。
「あんないい方をされたら、恋人同士だと思われるしかないじゃないの。アリステア様にも誤解されたわ」
怖くて顔をあまり見られなかったけれど、アリステア様は苦い顔をされていた。
ふしだらな女と思われたに違いないわ。
意味深なリチャード様の言葉とキスで、フィリップ様の婚約者候補としての立場だけでなく、恋い焦がれているアリステア様までも、わたくしの立場を悪くしてしまいましたわ。
「もう、終わりよ!公爵家にも恥をかかせてしまったわ!」
「アリステア様は聡明な方だと思いますけれど。見たままを信じる方ではありませんよ」
「フィリップ様にもどう申し開きをしたらいいのか…」
わたくしが取り乱しているこのタイミングに、会いたくなかったお客様がやってきた。
サラスがドアを開けると、戸口に立っていたのはサロモン様とサーティス様でしたわ。
サロモン様は空色の瞳と同色の髪がやたら目立つ黒いローブ姿で、サーティス殿下は対称に白い礼服、多分紫の色彩が映えるものを意図して選んでいるのか、見かけは2人とも乙女ゲームの政略対象者だけあって
とてつもない美形に見える。
2人を居間に通して、サラスがお客様方のお茶を入れると、
「突然すまない。いてもたってもいられなくなって」
サーティス様が沈黙を破ったのをきっかけにサロモン様も口を開く。
「リチャードとなんて本気なんですか?」
「あれは、誤解ですわ!」
「フィリップが、君を自由にしようと考えているらしい」
「えっ?」
「リチャードという相手がいるなら、王家の婚約者としての責務を解いてやるのはどうかと、私に意見を聞いてきました」
あいかわらず表情の読めない顔でサロモン様がいう。
「アリステア様は、なんと?」
「アリステアは、どうだろう。あいつは読めない」
サーティス様がいう。
「リチャードが君に近づくなら、他国の王家の婚約者候補だからと距離を置く必要はない」
「ええ。私も同意見です。もともと王位継承権の外でただの魔術師として生きていきたいという未来図を描いていました。あなたを手に入れられるなら、それを取り戻す。ただの伯爵家のリチャードのものになるなんて許さない」
「だから、それは誤解だと…わたくしとリチャード様の間には何もありません!」
「候補としての立場が解消されたら、側室になれ!」
「他国の王家に嫁ぐより、住みなれた祖国が1番です。私と添い遂げましょう」
「お二人とも、落ち着いてくださいませ!」
「好きな女が他の男に取られそうになっているのにか?」
「マリアンヌ様の為に嘘をつかれたのです!何も変わってませんわ」
「そうでないとしても、面白くありませんね」
サロモン様の言葉にサーティス様が頷いた。
「フィリップはマリアンヌに夢中だから、彼女の助言を聞いて、君を自由にするつもりだよ」
「それはフィリップ様の一存でお決めになられるわけには…」
「確かにそうだが、この機会にあいつに私達の決意を伝えたら、本気で国王陛下と話をつけることにしたらしいですよ。これであなたは自由の身です」
「ああ。で、遠慮なくお前さんを口説くことができる」
リチャード様との事件が思わぬ火種となって、恋の情熱に火を点けてしまったわ。
「とりあえず、誤解ですから!それにわたくしは未だ婚約者候補ですから!」
「サーティス様、サロモン様、お嬢様は大変お疲れですので、事情もわかったことだし、今日はこれまでにしていただけますか?」
普通一介の使用人が高貴な者にこういう口を聞けるわけがないが、サラスは違いますの。わたくし至上主義だそうですから。
「諦めないからな」
「これからが楽しみだ」
2人はサラスに押されながら、出て行かれましたわ。
冷静に考えると、サーティス様、サロモン様、リチャード様に告白されるイベントを消化したという感じになるのかしら?
と、すると逆ハーエンドに向かって爆走しているということではないかしら?
乙女ゲームでの逆ハーエンドがどんなバッドエンドだったかわからないけれど、現実的に考えて、リアルな世界でもロクなことにならないと思うわ。
唯一振り向かせたいアリステア様がこの中に入っていないのですけれど。
もし入っていたら即、お受けしますわ。
「お嬢様、新しくカモミールのお茶をお入れしましょうね。
「ありがとう。サラス。わたくし、これからどうなるのかしら?」
小さな頃から頑張ってバッドエンドにならないように、悪役令嬢にならないように努力してきたのに、どんどんどんどん逆ハーエンドに近づいているのは何故かしら?
俗にいうゲームの強制力?
運命は変えられないのかしら?
「わたくしの人生はわたくしが創造するわ。絶対に!」
「それでこそお嬢様です!」
わたくしはサラスの入れてくれたお茶を飲みながら、これからの対策について考えることに決めたのだった。
サラスがわたくしの大好きなローズヒップティーと焼き菓子を出しながらいう。
「あんなところを見られたら、誤解されるしかないわ」
「お嬢様…」
あれから孤児院を訪問したフィリップ様一行は、そのままお城に帰ってしまった。
「あんないい方をされたら、恋人同士だと思われるしかないじゃないの。アリステア様にも誤解されたわ」
怖くて顔をあまり見られなかったけれど、アリステア様は苦い顔をされていた。
ふしだらな女と思われたに違いないわ。
意味深なリチャード様の言葉とキスで、フィリップ様の婚約者候補としての立場だけでなく、恋い焦がれているアリステア様までも、わたくしの立場を悪くしてしまいましたわ。
「もう、終わりよ!公爵家にも恥をかかせてしまったわ!」
「アリステア様は聡明な方だと思いますけれど。見たままを信じる方ではありませんよ」
「フィリップ様にもどう申し開きをしたらいいのか…」
わたくしが取り乱しているこのタイミングに、会いたくなかったお客様がやってきた。
サラスがドアを開けると、戸口に立っていたのはサロモン様とサーティス様でしたわ。
サロモン様は空色の瞳と同色の髪がやたら目立つ黒いローブ姿で、サーティス殿下は対称に白い礼服、多分紫の色彩が映えるものを意図して選んでいるのか、見かけは2人とも乙女ゲームの政略対象者だけあって
とてつもない美形に見える。
2人を居間に通して、サラスがお客様方のお茶を入れると、
「突然すまない。いてもたってもいられなくなって」
サーティス様が沈黙を破ったのをきっかけにサロモン様も口を開く。
「リチャードとなんて本気なんですか?」
「あれは、誤解ですわ!」
「フィリップが、君を自由にしようと考えているらしい」
「えっ?」
「リチャードという相手がいるなら、王家の婚約者としての責務を解いてやるのはどうかと、私に意見を聞いてきました」
あいかわらず表情の読めない顔でサロモン様がいう。
「アリステア様は、なんと?」
「アリステアは、どうだろう。あいつは読めない」
サーティス様がいう。
「リチャードが君に近づくなら、他国の王家の婚約者候補だからと距離を置く必要はない」
「ええ。私も同意見です。もともと王位継承権の外でただの魔術師として生きていきたいという未来図を描いていました。あなたを手に入れられるなら、それを取り戻す。ただの伯爵家のリチャードのものになるなんて許さない」
「だから、それは誤解だと…わたくしとリチャード様の間には何もありません!」
「候補としての立場が解消されたら、側室になれ!」
「他国の王家に嫁ぐより、住みなれた祖国が1番です。私と添い遂げましょう」
「お二人とも、落ち着いてくださいませ!」
「好きな女が他の男に取られそうになっているのにか?」
「マリアンヌ様の為に嘘をつかれたのです!何も変わってませんわ」
「そうでないとしても、面白くありませんね」
サロモン様の言葉にサーティス様が頷いた。
「フィリップはマリアンヌに夢中だから、彼女の助言を聞いて、君を自由にするつもりだよ」
「それはフィリップ様の一存でお決めになられるわけには…」
「確かにそうだが、この機会にあいつに私達の決意を伝えたら、本気で国王陛下と話をつけることにしたらしいですよ。これであなたは自由の身です」
「ああ。で、遠慮なくお前さんを口説くことができる」
リチャード様との事件が思わぬ火種となって、恋の情熱に火を点けてしまったわ。
「とりあえず、誤解ですから!それにわたくしは未だ婚約者候補ですから!」
「サーティス様、サロモン様、お嬢様は大変お疲れですので、事情もわかったことだし、今日はこれまでにしていただけますか?」
普通一介の使用人が高貴な者にこういう口を聞けるわけがないが、サラスは違いますの。わたくし至上主義だそうですから。
「諦めないからな」
「これからが楽しみだ」
2人はサラスに押されながら、出て行かれましたわ。
冷静に考えると、サーティス様、サロモン様、リチャード様に告白されるイベントを消化したという感じになるのかしら?
と、すると逆ハーエンドに向かって爆走しているということではないかしら?
乙女ゲームでの逆ハーエンドがどんなバッドエンドだったかわからないけれど、現実的に考えて、リアルな世界でもロクなことにならないと思うわ。
唯一振り向かせたいアリステア様がこの中に入っていないのですけれど。
もし入っていたら即、お受けしますわ。
「お嬢様、新しくカモミールのお茶をお入れしましょうね。
「ありがとう。サラス。わたくし、これからどうなるのかしら?」
小さな頃から頑張ってバッドエンドにならないように、悪役令嬢にならないように努力してきたのに、どんどんどんどん逆ハーエンドに近づいているのは何故かしら?
俗にいうゲームの強制力?
運命は変えられないのかしら?
「わたくしの人生はわたくしが創造するわ。絶対に!」
「それでこそお嬢様です!」
わたくしはサラスの入れてくれたお茶を飲みながら、これからの対策について考えることに決めたのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
248
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる