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本編
遠乗りという名の略奪ですか?
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サーティス様のところにお邪魔して数時間後のことでしたわ。
なぜか、正装で現れたアリステア様がいらしたのは。執事の方がオロオロとついてこられるのを無視して、ずんずんサロンの方に進まれると、
「こんにちは、ムルシリ殿下」
と優雅に挨拶をされましたわ。
「これはこれは、アリステア殿。ちょうど君の話をしていたところだ。噂をすれば影が差したね?」
とサーティス様が答えられましたわ。
「今日は我が婚約者と遠乗りの約束をしていましてね、迎えに上がりました」
アリステア様はサーティス様にそういうと微笑まれましたの。
遠乗りをしようね!というお話はしましたけれど、いつ、という話まではしていない筈ですわ。
「なるほど。これ以上王家の婚約者を引き止めるのは無粋ということだね?」
「お気遣いありがとうございます。殿下」
アリステア様はサーティス様に礼をすると、わたくしの手を掴んで、部屋を出て行こうとされましたわ。
アリステア様ってこの間のお義母様の時もそうだけど、こういう感じで乱入するのが癖なのかしら?
「サーティス殿下、それでは失礼いたしますわ」
わたくしは淑女の礼を素早く取ってアリステア様に引っ張られるようにして、公館を脱出いたしました。
サーティス様はわたくしを馬に乗せるとそのままわたくしを抱くようにして馬を走らせましたわ。
王都の中で馬を走らせることはあるけれど、普通は並足程度のスピードしか出さないのに、結構なスピードが出ていたと思います。
わたくしは乗馬服でなくドレスのためバランスも取りづらい為、アリステア様に抱きつくようにしていないと、馬から落ちそうでしたので、人の目も気にせずに公衆で抱くつくという行為をしてしまいました。
しばらく馬を走らせると、郊外の自然の豊かな田園地帯に広がり場所に出たところで、馬のスピードが落ちましたわ。
「すまない…」
「えっ?」
「レティーがサーティスに呼び足されたと聞いて、居ても立ってもいられなくて、あのような事になってしまった」
「その話はお父様から?」
「ああ。婚約者である私が顔を出せば丸く収まるのではないかといわれてね。普通に話し合いをするつもりが…すまなかった。早く走りすぎたか?」
「しっかり支えてくださったから落ちませんでしたわ」
「ああ」
「他国の王族の方にちょっとやり過ぎだったかもしれませんけれど、なかなか帰してもらえなかったので、助かりましたわ」
わたくしの言葉に少し元気を取り戻したアリステア様が、こわばった体をリラックスさせる。
「そうか」
「ええ」
「それに王都の町民の方にはわたくしたちのことをアピールできたと思いますわよ?」
「すまない」
「婚約者同士なのですから、大丈夫ですわ」
それからしばらく馬の蹄の音だけが響いた。
春の緑の香りは心をウキウキさせるものがありますわ。
「レティー」
「はい?」
「大丈夫だったか?」
「えっ?」
「あの部屋で2人きりだっただろう?」
扉の外には護衛がいたけれど、実質的には(サラスを除いて)2人きり、という事になるのかしら?
「サラスが、いましたけれど…」
「私は、婚姻の夜まで紳士でいるつもりだから、その…」
「変なことはされませんでしたわ。ご安心くださいませ?」
「そうか、よかった」
わたくしの言葉に安心されたのか、わたくしをきつく抱いていた腕が緩められましたわ。
「大切にするから」
「ありがとうございます」
「その服装ということは、何か行事がございましたの?」
「いや、王太子の護衛の服よりもこの方が君を迎えに行く服装としてふさわしいと母上にもいわれてね」
少し赤くなりながらいうアリステア様は可愛い、ですわ。
「本当はこれから護衛の仕事があるからあまりゆっくりできないんだ。君をこれから公爵家に送り届けて、仕事に戻らないといけない。今度もっと時間をゆっくり取るから」
「ありがとうございます、アリステア様」
「とりあえずサーティスのことはなんとかするから安心しておいてくれ」
「はい」
帰りのライドは比較的ゆっくりしたスピードで家に向かったのだけれど、無事にアリステア様に送り届けられたわたくしを見て、お父様とお兄様は大変お喜びになりましたわ。
サーティス殿下の呼び出しを受けた娘は必ず側室に上げられる。即お手つきになることも珍しくないという噂がまことしやかに流れていたことを知らなかった2人はわたくしを送り出した後、その話を侍女たちから聞いて慌てふためいてアリステア様に連絡したのだとか。
もちろんその噂を知っていたアリステア様は大急ぎてわたくしを取り返しにサーティス殿下のいる公館に迎われたそうですの。
その話を聞いて心が温かくなりましたわ。
なぜか、正装で現れたアリステア様がいらしたのは。執事の方がオロオロとついてこられるのを無視して、ずんずんサロンの方に進まれると、
「こんにちは、ムルシリ殿下」
と優雅に挨拶をされましたわ。
「これはこれは、アリステア殿。ちょうど君の話をしていたところだ。噂をすれば影が差したね?」
とサーティス様が答えられましたわ。
「今日は我が婚約者と遠乗りの約束をしていましてね、迎えに上がりました」
アリステア様はサーティス様にそういうと微笑まれましたの。
遠乗りをしようね!というお話はしましたけれど、いつ、という話まではしていない筈ですわ。
「なるほど。これ以上王家の婚約者を引き止めるのは無粋ということだね?」
「お気遣いありがとうございます。殿下」
アリステア様はサーティス様に礼をすると、わたくしの手を掴んで、部屋を出て行こうとされましたわ。
アリステア様ってこの間のお義母様の時もそうだけど、こういう感じで乱入するのが癖なのかしら?
「サーティス殿下、それでは失礼いたしますわ」
わたくしは淑女の礼を素早く取ってアリステア様に引っ張られるようにして、公館を脱出いたしました。
サーティス様はわたくしを馬に乗せるとそのままわたくしを抱くようにして馬を走らせましたわ。
王都の中で馬を走らせることはあるけれど、普通は並足程度のスピードしか出さないのに、結構なスピードが出ていたと思います。
わたくしは乗馬服でなくドレスのためバランスも取りづらい為、アリステア様に抱きつくようにしていないと、馬から落ちそうでしたので、人の目も気にせずに公衆で抱くつくという行為をしてしまいました。
しばらく馬を走らせると、郊外の自然の豊かな田園地帯に広がり場所に出たところで、馬のスピードが落ちましたわ。
「すまない…」
「えっ?」
「レティーがサーティスに呼び足されたと聞いて、居ても立ってもいられなくて、あのような事になってしまった」
「その話はお父様から?」
「ああ。婚約者である私が顔を出せば丸く収まるのではないかといわれてね。普通に話し合いをするつもりが…すまなかった。早く走りすぎたか?」
「しっかり支えてくださったから落ちませんでしたわ」
「ああ」
「他国の王族の方にちょっとやり過ぎだったかもしれませんけれど、なかなか帰してもらえなかったので、助かりましたわ」
わたくしの言葉に少し元気を取り戻したアリステア様が、こわばった体をリラックスさせる。
「そうか」
「ええ」
「それに王都の町民の方にはわたくしたちのことをアピールできたと思いますわよ?」
「すまない」
「婚約者同士なのですから、大丈夫ですわ」
それからしばらく馬の蹄の音だけが響いた。
春の緑の香りは心をウキウキさせるものがありますわ。
「レティー」
「はい?」
「大丈夫だったか?」
「えっ?」
「あの部屋で2人きりだっただろう?」
扉の外には護衛がいたけれど、実質的には(サラスを除いて)2人きり、という事になるのかしら?
「サラスが、いましたけれど…」
「私は、婚姻の夜まで紳士でいるつもりだから、その…」
「変なことはされませんでしたわ。ご安心くださいませ?」
「そうか、よかった」
わたくしの言葉に安心されたのか、わたくしをきつく抱いていた腕が緩められましたわ。
「大切にするから」
「ありがとうございます」
「その服装ということは、何か行事がございましたの?」
「いや、王太子の護衛の服よりもこの方が君を迎えに行く服装としてふさわしいと母上にもいわれてね」
少し赤くなりながらいうアリステア様は可愛い、ですわ。
「本当はこれから護衛の仕事があるからあまりゆっくりできないんだ。君をこれから公爵家に送り届けて、仕事に戻らないといけない。今度もっと時間をゆっくり取るから」
「ありがとうございます、アリステア様」
「とりあえずサーティスのことはなんとかするから安心しておいてくれ」
「はい」
帰りのライドは比較的ゆっくりしたスピードで家に向かったのだけれど、無事にアリステア様に送り届けられたわたくしを見て、お父様とお兄様は大変お喜びになりましたわ。
サーティス殿下の呼び出しを受けた娘は必ず側室に上げられる。即お手つきになることも珍しくないという噂がまことしやかに流れていたことを知らなかった2人はわたくしを送り出した後、その話を侍女たちから聞いて慌てふためいてアリステア様に連絡したのだとか。
もちろんその噂を知っていたアリステア様は大急ぎてわたくしを取り返しにサーティス殿下のいる公館に迎われたそうですの。
その話を聞いて心が温かくなりましたわ。
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