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本編
小さな館での出来事
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アリステア様と婚約してから何事もなく穏やかな日々が過ぎて行きましたわ。
恐れていたマリアンヌ様の妨害もなく。
でも最近ちょっとおかしなことがありましたの。
わたくしの思い違いかも、ええそうですわ、きっとそうなんだと思うのですけれど。
アリステア様は相変わらず紳士だったのですけれど、そこの館を管理していた管理人の奥さんから、変なお話を聞きましたのよ。
あの日、アリステア様は雨に濡れたわたくしを、そのまま送り返すなんてできないし、このまま馬を走らせれば風邪をひくことになるから、とシャルトル家所有の小さな館に連れてこられましたの。
「こんなところですまない」
小さな館は綺麗に手入れされていて、暖炉と、寝室が4部屋、それにダイニングルームがある作りになっておりましたわ。
わたくしは一番大きな寝室に通されて、その寝室についている浴室で、サラスに体を洗ってもらって、香油をつけてもらい、多分シャルトル夫人のドレスだと思うのですけれど、そのドレスを借りて、アリステア様のところに顔を出しましたわ。
アリステア様は既に身支度を終えられていて、ダイニングルームで管理人のおじさんとおしゃべりをされているところでしたわ。
管理人の奥さんがここのお料理を担当しているらしくて、簡単なお茶菓子とお茶を出されましたわ。
日本で食べたことのあるマドレーヌに似た焼き菓子を摘んで、紅茶を飲み干すと、体が内側からポカポカとしてきました。
「まあ、坊っちゃま、やっとこんな綺麗な娘さんを…一時はどうなることかとこのマーサ心配しておりました」
「突然婚約ということになって、こんな形の紹介になったが、これからもよろしく頼む」
「へい。お嬢さん、坊ちゃんをよろしくお願いします」
「こちらこそ。よろしくお願いします」
「坊っちゃまは小さな頃この館で過ごされましてね。お館様のいいつけで」
公爵家の跡継ぎにはふさわしくない、この館は別荘というより隠れ家の印象を与える。
「ここに滞在なさってたの?アリステア様」
「ああ」
「坊っちゃまには持病というか…」
奥さんの言葉が放たれて部屋中に変な空気が流れましたわ。
「こら、お前。もう治られただろう。いや、大したことじゃないんですよ。この場所ですっかり良くなられたから
もう何も心配はありません」
「アリステア様、ご病気でしたの?」
わたくしの言葉にアリステア様は綺麗な微笑みを浮かべられて、
「もう大丈夫だと思うから、何も心配することはないよ」
とおっしゃられましたわ。
わたくしは見るからに元気そうなアリステア様がご病気だったということが信じられませんでしたけれど、とりあえず元気そうなアリステア様を見て安心いたしましたわ。
この時に気づいていればよかったのですけれど。
わたくし恋の病に侵されておりましたから少し「えっ?」と思ったことも流してしまいましたの。
美味しいお茶をいただいて、雨が上がった後、我が家の公爵家まで送り届けてもらった時にはすっかり忘れてしまっておりましたわ。
サラスは、気付いていたようなんですけれど、わたくしがアリステア様にあまりにも夢中だから水を差すこともないと黙っていたようですわ。
とりあえず、婚約期間はあっという間に過ぎて、半年後の挙式の準備もどんどん整って行きましたの。
マリアンヌ様とフィリップ様の結婚式が1年後に取り決められたことで、わたくしたちの結婚はそれより後か先にしなければならなくなったことで、大貴族の婚礼としては比較的こじんまりした挙式を行うことに決まりましたわ。
シャルトル家は華美を好まない家柄でしたし、わたくしも派手にし過ぎてマリアンヌ様のご機嫌を損ねたくありませんでしたから。
なので、あの時の疑問の答えを知るまでかなりの時間がかかったのですけれど。
恐れていたマリアンヌ様の妨害もなく。
でも最近ちょっとおかしなことがありましたの。
わたくしの思い違いかも、ええそうですわ、きっとそうなんだと思うのですけれど。
アリステア様は相変わらず紳士だったのですけれど、そこの館を管理していた管理人の奥さんから、変なお話を聞きましたのよ。
あの日、アリステア様は雨に濡れたわたくしを、そのまま送り返すなんてできないし、このまま馬を走らせれば風邪をひくことになるから、とシャルトル家所有の小さな館に連れてこられましたの。
「こんなところですまない」
小さな館は綺麗に手入れされていて、暖炉と、寝室が4部屋、それにダイニングルームがある作りになっておりましたわ。
わたくしは一番大きな寝室に通されて、その寝室についている浴室で、サラスに体を洗ってもらって、香油をつけてもらい、多分シャルトル夫人のドレスだと思うのですけれど、そのドレスを借りて、アリステア様のところに顔を出しましたわ。
アリステア様は既に身支度を終えられていて、ダイニングルームで管理人のおじさんとおしゃべりをされているところでしたわ。
管理人の奥さんがここのお料理を担当しているらしくて、簡単なお茶菓子とお茶を出されましたわ。
日本で食べたことのあるマドレーヌに似た焼き菓子を摘んで、紅茶を飲み干すと、体が内側からポカポカとしてきました。
「まあ、坊っちゃま、やっとこんな綺麗な娘さんを…一時はどうなることかとこのマーサ心配しておりました」
「突然婚約ということになって、こんな形の紹介になったが、これからもよろしく頼む」
「へい。お嬢さん、坊ちゃんをよろしくお願いします」
「こちらこそ。よろしくお願いします」
「坊っちゃまは小さな頃この館で過ごされましてね。お館様のいいつけで」
公爵家の跡継ぎにはふさわしくない、この館は別荘というより隠れ家の印象を与える。
「ここに滞在なさってたの?アリステア様」
「ああ」
「坊っちゃまには持病というか…」
奥さんの言葉が放たれて部屋中に変な空気が流れましたわ。
「こら、お前。もう治られただろう。いや、大したことじゃないんですよ。この場所ですっかり良くなられたから
もう何も心配はありません」
「アリステア様、ご病気でしたの?」
わたくしの言葉にアリステア様は綺麗な微笑みを浮かべられて、
「もう大丈夫だと思うから、何も心配することはないよ」
とおっしゃられましたわ。
わたくしは見るからに元気そうなアリステア様がご病気だったということが信じられませんでしたけれど、とりあえず元気そうなアリステア様を見て安心いたしましたわ。
この時に気づいていればよかったのですけれど。
わたくし恋の病に侵されておりましたから少し「えっ?」と思ったことも流してしまいましたの。
美味しいお茶をいただいて、雨が上がった後、我が家の公爵家まで送り届けてもらった時にはすっかり忘れてしまっておりましたわ。
サラスは、気付いていたようなんですけれど、わたくしがアリステア様にあまりにも夢中だから水を差すこともないと黙っていたようですわ。
とりあえず、婚約期間はあっという間に過ぎて、半年後の挙式の準備もどんどん整って行きましたの。
マリアンヌ様とフィリップ様の結婚式が1年後に取り決められたことで、わたくしたちの結婚はそれより後か先にしなければならなくなったことで、大貴族の婚礼としては比較的こじんまりした挙式を行うことに決まりましたわ。
シャルトル家は華美を好まない家柄でしたし、わたくしも派手にし過ぎてマリアンヌ様のご機嫌を損ねたくありませんでしたから。
なので、あの時の疑問の答えを知るまでかなりの時間がかかったのですけれど。
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