罪の卵

山田ポミエ

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第二話 留守番

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「ここは、そうだ。解き方はあってる」
「うーん、難しいよ」

トモヤの自宅のトモヤの部屋。トモヤとワタルの二人は算数の問題集に向かっていた。

「後は自分でやってみろ。そこまでわかったなら解けるだろ」
「えー!一緒にやってくれないのかよ!」
「自分で解かないと身にならないだろ」

トモヤはげんなりした。トモヤの両親は親戚に会う用事のため遠出する必要があり、姉は部活の合宿で外泊。トモヤを残して家を留守にする事を心配したトモヤの母親に、ワタルはトモヤと共に留守番をして欲しいと頼まれたのであった。トモヤは一人でも平気だと言ったのだが、ワタルにトモヤと一緒に留守番を頼もうかと言い出したらトモヤはすっかり乗り気になった。ついでにトモヤの宿題も見てやって欲しいと言われたワタルは家庭教師という名のトモヤが宿題をサボらないかどうかの見張りも担っている。まさか宿題までセットになっていると思わなかったトモヤは机に突っ伏した。

「もう飽きた、ゲームしたい」
「ゲームは宿題が終わってからだ」
「え~」
「ぶーぶー言うな、宿題しないとおばさんに怒られるぞ」
「ううう」

今日はにいちゃんと二人きりだ。宿題をやらなければいけないのは嫌だけれど、嬉しい。とはいえ宿題にすっかり飽きてしまった。ワタルはトモヤに勉強を教えている合間は本を読んでいて相手にしてくれない。トモヤはワタルの本の中を覗いてみるとぎょっとした。両ページとも文字がびっしりだったからだ。国語の本より断然字が小さくて、頭がくらくらしてしまう。そんな難しそうな本読んで面白いんだろうか。

「何読んでるの?」
「文学」
「ふーん」

そんな本より俺のこと見て欲しい。控えめにクーラーの音が部屋に響く中、どうしたらいいか頭をフル回転させる。真剣に何かを考えているトモヤを、問題を考えていると勘違いしているワタルは気に留めることもなく本を読み進める。しばらく経って、トモヤはそうだと閃いた。いいことを思いついたからだ。突然その場から立ち上がってドタドタと部屋を出ていくトモヤ。トイレにでも行ったのだろうかとさして気にせずワタルは読書を続ける。

しばらく経ったがワタルはすっかり読書に集中してしまい、トイレに行ったにしては時間が経ち過ぎていることに気づいていなかった。物語がいいところに差し掛かったところでガチャ、とドアの音が聞こえる。少しだけ意識が現実に引き戻されトモヤが戻ってきたことがわかったが、目線は字を追って手元に向いたままだった。

「にいちゃん」
「今度はなんだよ」

トモヤが側に立つ気配を感じたワタルはようやく目線を上げると、トモヤの姿を見て固まってしまった。白の涼しげなワンピースとリボンがついたカンカン帽。少し明るい髪色の髪の毛は胸ぐらいの長さだった。一体この娘は?と一瞬困惑し、焦ったが、にこっとはにかんだ口から見える八重歯からはっとし、トモヤだとわかった。

「ど、どうしたんだそれ…!?」
「ねーちゃんが昔着てた服と帽子だよ」

帽子のつばを持ってくるっと回って見せる。シフォンのワンピースがふわっと膨らんだ。

「ふ、服はそうだとして、髪はどうした?ウィッグだろそれは!?」
「ねーちゃんこの間修学旅行で東京行ったんだけどさ、原宿で買ったんだって」

左右それぞれの毛先を摘んで遊んでみせる。トモヤの姉はバリバリの運動部で髪がショートヘアなこともあり、ロングヘアに憧れていた。値段が手頃なこともあって友達同士と修学旅行特有のお祭り感覚のノリで買ってしまったらしい。

「どう?似合うかな?」

以前母親がクローゼットを片付けていた際、そのうち親戚の子達が大きくなったらお下がりにあげようと選抜された姉の小さい頃の服が興味深く、その中にあった何着かのワンピースをふざけて着た時がある。ほんとうにおふざけ半分で、ワタルの反応が気になって偶然ワタルの母親と用事で自宅に来ていたワタルに見せた時だった。何をやってるんだとお決まりの呆れた反応が返ってくるのかと思いきや。

「案外似合うな」

予想外にも褒めてもらえた。ワタルはあまり口数が多い方じゃないため褒めてもらえて嬉しく、心躍ったトモヤは褒めてもらえるなら、にいちゃんが喜ぶならまたしたいと思っていたのだ。あの時は短い地毛の髪の毛だったから、ロングヘアのウィッグを身につけた今なら多分、前やった時よりグッと女の子に近づいてよくなったはず。

「なあ俺、結構可愛くない?」

クラスのませた女子を思い出して肩を少し上げ、腰に手を当て、可愛らしくポーズを決めてみる。姉の物だが甘い香りがして少し色がつくリップも塗ってきた。ウィッグは面白いから使っていいか?と聞いたら許可が降りたが、リップは許可が降りていない。これも東京で買ったらしいがちょっと高かったらしい。使ったことが姉にバレたら殺されるが、ちゃんとドレッサーの元の位置に戻してきたから多分バレない。できることは尽くしてトータルコーディネートできたと思うので、何だか誇らしい気持ちだ。だがワタルはトモヤを全身見たあと、目を逸らしてしまった。

「どうしたの?」

目をあわせてくれないワタルにトモヤは不安になる。結構自信あったのに、変だっただろうか。

「似合う?似合わない?」
「…そんなことどうだっていいだろ。早く着替えてきて、宿題済ませろ」

ワタルのそっけない言葉にトモヤはむすっとする。前は割と似合うって言ってくれたのに。今の方が前より絶対かわいいのに。

「ねえってば!」

あの時と同じ言葉、いやそれ以上の言葉が欲しいと、何だかムキになってしまい、座っているワタルにトモヤは詰め寄った。

「!?ト、トモヤこっちくるな…!」

トモヤはワタルの制止を無視して近づき、馬乗りになるとうっかりワタルの股間に触れてしまいはっとする。なんだか硬い、もしかしてこれは。トモヤは恐る恐る顔を上げるとワタルのバツの悪そうな顔が目に入る。

「えっと…」

カランと麦茶のグラスに浸る氷が鳴り、気まずいムードが流れ二人とも無言になってしまう。何か喋った方がいいだろうか?と焦ったトモヤが目を泳がせながら慌てて口を開く。

「ど、どうすればいい?」
「…ほっとけば治まる」

男性が興奮すると勃起するというのはトモヤ自身も小さくとも男だから何となく知っている。とはいえトモヤは精通すらまだなので未知の世界だったが興味津々だった。にいちゃんは俺見てそういう気持ちになったのだろうか。トモヤは何だかドキドキして、思わず手を伸ばしてしまう。

「だっ、トモヤ!?」

突然、硬くなったワタルの股間をトモヤは撫で始めた。トモヤの思いがけない突飛な行動にワタルは柄にもないひっくり返った声をあげてしまった。トモヤは布越し、ズボン越しにワタルの性器を熱く感じて余計に胸が高鳴る。

「…な、なあ、ちんこいじったら気持ちいいんだろ?」

トモヤは股間を撫で回しながら、ワタルの様子を伺う。

「バカ!そんなことしなくていい!」

叱責されたトモヤだが、さっきよりワタルの股間がキツく固くなっているのがわかった。

「どうしたら気持ちいいの?教えてよ!」

前のめりになってワタルにぐいっと顔を近づけるトモヤ。

「ほ、ほら、俺も大きくなったら使えるかもしれないじゃん!」

そうトモヤは力説するが、本心はただワタルに触りたかっただけだった。本音と建前。

「何考えてるんだ、駄目に決まってるだろ!」
「なんでダメなんだよ!」
「駄目なものは駄目だ!」

頑なに拒否するワタルにトモヤはムキになる。

「何で!?俺にいちゃんのこと気持ちよくしたいだけなのに…」

気持ちのやり場がわからず、トモヤは目頭が熱くなってきた。トモヤはなぜか自分の目に涙が溢れていることに気づいて少し驚いたが、そんな理由考えている暇はない。涙目のままワタルを見上げると、ワタルは息を呑んだ。

「ねぇ、どうしても駄目…?」

鼻の奥がツンとして、鼻にかかった声が出てしまいトモヤは恥ずかしかったが、ワタルの瞳が揺れているのがわかってトモヤはハッとした。ワタルの気持ちを動かせた?トモヤはワタルの答えを恐る恐る待った。再び訪れた沈黙。ワタルの瞳は今も揺れていて、もしかして自分が子供すぎて下手くそかもしれないことを心配しているのだろうか。

「ねえ、下手かもしれないけど一生懸命やるから、だから…わっ」

突然頭を撫でられて驚くトモヤ。あんまり強く撫でられて少しウィッグがずれてしまった。

「ちょっと!力強す…!」
「馬鹿トモヤ、お前ってほんと馬鹿だ…」

馬鹿を連呼されてトモヤはムッとし、ウィッグを直しながら言い返そうとした時だった。ワタルはため息をつくとズボンのベルトをカチャカチャといじり始めた。

「…嫌になったらすぐ言えよ」

一瞬きょとんとしたトモヤだったがすぐに状況を把握してぱあっと表情を明るくさせた。ワタルは一生懸命なトモヤに何も言い返せなくなったのか諦めたのかわからないが、気持ちが伝わったのなら嬉しいとトモヤはそう思った。ワタルはどうやらズボンを脱ごうとしているらしい、トモヤはその様子を見守りつつもズボンを脱ぐのを手伝った。ボクサーパンツ一枚になった時、ズボンの時よりも勃起しているのがわかってトモヤはより緊張と胸の高まり度合いが上がった。

「俺が脱がしてもいい?」

そうトモヤがお願いすると、渋々ワタルは頷いてくれたのでトモヤはそっとボクサーパンツに手をかけた。ゆっくり脱がすとぶるんと勢いよくワタルの性器が飛び出てきてびっくりしたトモヤは思わず「ひゃっ!」と素っ頓狂な声をあげてしまった。ワタルと昔風呂に入ったことはある。プールに行ったことも。でも裸を見たのは随分前で、性器をまじまじと見るのはもっと久しぶりで昔と見た目や形が全然違っていた。トモヤはワタルが自分より大人であると実感が湧いてきて、そそり立った性器を見上げてこくんと喉を鳴らす。トモヤはそっとワタルの性器に触れた。硬いけど、ちょっとだけふにふにしていて変な感じがする。と、今この瞬間も少し固くなったような気がして不思議だ。トモヤはワタルを見つめる。

「どうするの?手でやるの?」

壊れ物を触るようなたどたどしい手つきで性器を触るトモヤに、ワタルが目を逸らしながら、ゆっくり口を開く。

「いや、手じゃなくて、その、口…」
「口?舐めればいい?」

トモヤの方から言葉にする。ワタルは一瞬はっとしたような素振りを見せたが、また黙ってしまった。トモヤは心臓が破裂しそうなぐらい緊張していたが、にいちゃんのためにしたいと、不思議とそう思った。

「どうやって舐めればいい?教えて」

熱心に聞いてくるトモヤにワタルは渋々堪える。

「…裏側、下からゆっくり上に向かって、舐めて」

トモヤは言われた通りゆっくり裏側を下から上へ舐め上げる。何だか少し緊張して、舌べろが震えてしまう。上手くできているかトモヤが不安に感じていた時何か頭に触れたと思ったら、ワタルが頭を撫でてくれていることに気づいた。心地よくてもっと一生懸命な気持ちになった。

少しすると先端から液体が溢れていることに気づいて、思わず舐めてしまった。ワタルが息を呑んだ気がしたが、咎めて来なかったのでそのまま舐める。変な味がするが、嫌ではない。トモヤが舐めても舐めても溢れてくるので、ぺろぺろと舐めているうちにてっぺんが溢れてきた液体と唾液まみれでべちょべちょになってしまった。濡れた先端をはむっと咥えるとワタルがびくりと震える。

「…っ、無理に咥えなくていい、そこはその…かなり敏感なところだ」

そうなのか、とトモヤは素直に納得する。

「…咥えなくていいから、アイスを舐めるみたいに、そう、っ」

アイスを舐める時の事を思い出してみた。早く食べてしまうのが惜しくて、唇で遊んでみたり、舌先で遊んでみたりしていた気がする。母親には行儀が悪いと叱られるが、今みたいな場合はどうだろう。唇でつうっと優しくぐるっと擦ったり、舌先でちろちろと何度か往復して舐めたりするとワタルの太ももの根元がピクピクと痙攣したのが視界に入り、目線を上げるとはあはあと息を少し荒く呼吸をしているのがトモヤにもわかった。もしかして気持ち良くなってくれてる?

「ん、気持ちいい?」
「…っ、喋るな、息が…」

にいちゃんは少し苦しげで、さっきより性器全体が固くなっている。どうやら気持ちよくなってくれているらしい。トモヤは嬉しくなって液体が溢れて来るところに優しくちゅうっとキスした。するとトモヤが手を添えていたワタルの性器の根元がどくどくと波打つような感覚がしたと思ったら、ワタルが少し呻いて性器先端から白い液体が飛び出した。トモヤはびっくりして思わず口を離してしまい、顔に白い液体がかかってしまった。少し遅れてにいちゃんが射精したんだとトモヤは理解し実感が湧いてくる。すごい、本当に出るんだ。

「悪い…!気持ち悪いだろ」

ワタルが慌てて少し離れた先に置いてあるテッシュを手に取ろうとする。トモヤは手にもついた白濁をまじまじと眺める。独特の匂いがし思わず口の端についた精液をペロリと舐めた。変わった味がするが、気持ち悪くない、むしろ…。感じたことがないような不思議な気持ちが湧き上がって少し戸惑いを感じていた時、ワタルがテッシュを片手に戻ってきた。顔を痛いぐらいゴシゴシと拭いてもらう。手のひらに射精する瞬間のどくどくという感触が残っていて、ぼうっとしているとワタルがトモヤに手を伸ばしてきた。ぎゅっと抱きしめられてトモヤはきょとんとする。

「…少しだけこうさせてくれ」

ワタルの声はトモヤにはいつもと違って聞こえた。少し、震えてるような。トモヤが恐る恐る背中に手をまわすと、ワタルがほんの少し、ピクッと震えた。お互いの体温が暖かい。どれくらいそうしていたのかわからないが、しばらくするとワタルはトモヤの肩をそっと掴んで身体を離した。ワタルのぬくもりが離れていって、少し寂しく感じたトモヤは視線を上げるとワタルと目があった。ワタルの瞳は少し震えていて、でも何か含んでいた。なんだかためらっているような。見たことない表情だ。ワタルが違う人に見えるとトモヤがそう感じた時、程なくして再びトモヤの肩を抱いたワタルはトモヤに顔を近づけてきて二人の唇が触れ合った。

これはキス?

トモヤは誰かとキスをするのは初めてで、キスされると思った瞬間身体が動かなかった。動けなかったのは怖いからではなく、どこかで期待していたからのように思う。柔らかくて、不思議な感触。理由はわからないけれど、ずっとにいちゃんとこうすることを待ち望んでいた気がする。
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