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プロローグ

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私は実家暮らしだ。
一人暮らしをしようとしたら、母に泣きつかれそのままなし崩し的に実家にいる。
はじめは家を出たいと思ったが、仕事から帰ったらご飯があり掃除と洗濯が終わっている、そんな暮らしが楽に思えてきた。

わたしの母はメシマズだ。
とは言い過ぎかも知れない。
大概の料理は美味しい。

どのくらい美味しいかというと、初めてサ◯ゼ◯アでドリアを食べた時この世にこんなまずいものがあるとは!と思ったほどだ。

しかし、なぜかとある瞬間メシマズを発動する。
ちょっと味付けに失敗しただけではない。
なんというか、完成し尽くされたメシマズ!

まさに奇跡!
メシマズの天才とも言えるだろう。


そして、その被害者であるのが私たち家族だった。
メシマズ夕食をみな、黙って完食する。

食後にラーメン?
そんな裏切りは許さない。
メシマズを完食するのがわたしたち家族の任務なのだ。


うちの祖母、ミヨは甘党だ。
京都の出身で、何を作っても甘い味付けになる。

それに反して父、リョージはしょっぱ党。
なんでも醤油をかけまくる。

祖父、トクジはおつまみが好きで、母はミサはメシマズの天才。

そんな家庭で育ったわたし、ワコの味覚はもちろん偏っていた。

魚の一夜干しが嫌いだ。
なぜ魚を干すと油が不味くなるのか。魚は新鮮な方がうまいのだから、干す必要はあるのか?!
そして、化学調味料たっぷりの練り物は苦手な部類だ。(手作りの練り物は好き)
野菜はなんでも好きで、特に薬味が好き。生姜、ネギ、ミョウガ、パクチー、紫蘇、セロリなどなど。
好きな料理は?と聞かれて薬味と答えたら、それは料理ではないと言われたことがあるが、それは違う。

脂っこい豚の煮物もネギと生姜を添えるとあら不思議!どんな料理でも薬味ひとつでさっぱり、あっさり食べられる。
まさに薬味は主役!

と、話が逸れてしまった。
ここでは母のメシマズ料理を紹介したいと思う。
間違っても皆さんは真似をしようとしないでくれ。
メシマズに耐える方法は、家族愛だけなのだ。
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