102 / 213
102:ダリル鍛冶屋にて1
しおりを挟む
皆と別れた僕は、猪鹿亭に帰り少し早めの夕食を食べた後、ダリル鍛冶屋を訪ねる事にした。
旧市街へ向かって歩いていると後ろから聞き覚えのある声がした。振り返ると、報告が終わって孤児院に帰る所だったサラと偶然出会った。
「あら、こっちに用事でもあったの?」
サラとは何日も共にダンジョン探索を行ってきたので、初めの頃に比べれば随分と気安く会話が出来るようになってきたと思う。
「うん、今日の狩りで短杖を左手に持って戦ったんだけど、盾が使い難くてね……まあ右手に持って戦えば良い事なんだけど、強敵相手だと手数が欲しくてね」
僕は長年の修行の成果で回避と防御には自信を持っているが、攻撃力が足りない自覚があった。
「そうね、私も武器に助けられてるから偉そうな事は言えないけど、使えるなら一緒に使いたい所ね」サラの剣の技量を見ていると、【風刃】無しでも十分な威力が有りそうだ。
ダリル鍛冶屋が見えてきたのでサラに別れの挨拶をしようとすると興味があるらしく付いてくるらしい。
「エルフィーデではドワーフの鍛冶屋しか見たことがないから、人間の鍛冶屋がどんな感じか気になるわね」
僕達はお客の気配のないダリル鍛冶屋に二人で入っていった。
◻ ◼ ◻
「よう久しぶりだな、今日はどうした?」ダリルさんは、作業の手を止めこちらを見た。
「あの、盾の裏側に棒を固定したいんですけど、何か方法はありますか?」
短杖を見せる訳にもいかないのでサイズの近い棒を見せようとポーチから適当なサイズの物を出そうとすると……
「あら~、あなたハーフドワーフなのね~」突然、姿を見せたフィーネがそうダリルさんに告げた。
「ほお、さすがに精霊には分かるんだな、すると俺が弱いが火属性の浮遊精霊の契約者なのも分かるよな」
そう言うと手のひらの上に、とても小さな炎の玉のような物が浮き上がった。
「俺の父親がエルフィーデ出身のドワーフでな、母親は人間だ。両親はエルフィーデにいて父親の元で修行してなんとか一人前にはなったんだが……俺みたいな半端者は、あの名工だらけのエルフィーデでは独立は難しくてな、景気のいいガザフに流れて来たって訳さ」
相変わらず饒舌なダリルさんが、聞いてない事まで色々教えてくれた。
「ユーリ~、彼なら武器を見せても構わないわ~」
フィーネなりの何か基準でもあるのか、精霊契約者だからなのか許可がおりたので、経緯を含めてダリルさんに説明を行った。
「ほ~、これを領営工房で量産ね……いかにもあそこの技師が考えそうな、廉価品だぜ……だが魔道具として考えれば割りきった良い品だな」ダリルさんは受け取った短杖を見ながらそう評した。
「あら、貴方が褒めてくれるなんて珍しい事もあるものね」突然、店の外から女性の声がして店の中に入ってきた。
僕は慌てて武器を隠そうとしたが、ダリルさんが「心配しなくても、彼女なら問題ない」と言った。
「ごめんなさいね、立ち聞きするつもりはなかったんだけど、店に寄ったら見たことのある武器が見えたもので、驚いて声をかけるのが遅れたわ」
まだ若い女性で美しいが、男性的な雰囲気のある人だった。僕がそう感じたのは彼女の服装にも理由があったかもしれない。
彼女は制服を着用しており、それは男性用に近いものだったからだ。ギルド職員と色違いの制服を着用しているので何処かの職員かもしれなかった。
「いけない! 自己紹介がまだでしたわね。私は領営工房の主任技師長をしていますサリナと申します」彼女はそう告げたのだった。
旧市街へ向かって歩いていると後ろから聞き覚えのある声がした。振り返ると、報告が終わって孤児院に帰る所だったサラと偶然出会った。
「あら、こっちに用事でもあったの?」
サラとは何日も共にダンジョン探索を行ってきたので、初めの頃に比べれば随分と気安く会話が出来るようになってきたと思う。
「うん、今日の狩りで短杖を左手に持って戦ったんだけど、盾が使い難くてね……まあ右手に持って戦えば良い事なんだけど、強敵相手だと手数が欲しくてね」
僕は長年の修行の成果で回避と防御には自信を持っているが、攻撃力が足りない自覚があった。
「そうね、私も武器に助けられてるから偉そうな事は言えないけど、使えるなら一緒に使いたい所ね」サラの剣の技量を見ていると、【風刃】無しでも十分な威力が有りそうだ。
ダリル鍛冶屋が見えてきたのでサラに別れの挨拶をしようとすると興味があるらしく付いてくるらしい。
「エルフィーデではドワーフの鍛冶屋しか見たことがないから、人間の鍛冶屋がどんな感じか気になるわね」
僕達はお客の気配のないダリル鍛冶屋に二人で入っていった。
◻ ◼ ◻
「よう久しぶりだな、今日はどうした?」ダリルさんは、作業の手を止めこちらを見た。
「あの、盾の裏側に棒を固定したいんですけど、何か方法はありますか?」
短杖を見せる訳にもいかないのでサイズの近い棒を見せようとポーチから適当なサイズの物を出そうとすると……
「あら~、あなたハーフドワーフなのね~」突然、姿を見せたフィーネがそうダリルさんに告げた。
「ほお、さすがに精霊には分かるんだな、すると俺が弱いが火属性の浮遊精霊の契約者なのも分かるよな」
そう言うと手のひらの上に、とても小さな炎の玉のような物が浮き上がった。
「俺の父親がエルフィーデ出身のドワーフでな、母親は人間だ。両親はエルフィーデにいて父親の元で修行してなんとか一人前にはなったんだが……俺みたいな半端者は、あの名工だらけのエルフィーデでは独立は難しくてな、景気のいいガザフに流れて来たって訳さ」
相変わらず饒舌なダリルさんが、聞いてない事まで色々教えてくれた。
「ユーリ~、彼なら武器を見せても構わないわ~」
フィーネなりの何か基準でもあるのか、精霊契約者だからなのか許可がおりたので、経緯を含めてダリルさんに説明を行った。
「ほ~、これを領営工房で量産ね……いかにもあそこの技師が考えそうな、廉価品だぜ……だが魔道具として考えれば割りきった良い品だな」ダリルさんは受け取った短杖を見ながらそう評した。
「あら、貴方が褒めてくれるなんて珍しい事もあるものね」突然、店の外から女性の声がして店の中に入ってきた。
僕は慌てて武器を隠そうとしたが、ダリルさんが「心配しなくても、彼女なら問題ない」と言った。
「ごめんなさいね、立ち聞きするつもりはなかったんだけど、店に寄ったら見たことのある武器が見えたもので、驚いて声をかけるのが遅れたわ」
まだ若い女性で美しいが、男性的な雰囲気のある人だった。僕がそう感じたのは彼女の服装にも理由があったかもしれない。
彼女は制服を着用しており、それは男性用に近いものだったからだ。ギルド職員と色違いの制服を着用しているので何処かの職員かもしれなかった。
「いけない! 自己紹介がまだでしたわね。私は領営工房の主任技師長をしていますサリナと申します」彼女はそう告げたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【短編】子猫をもふもふしませんか?〜転生したら、子猫でした。私が国を救う!
碧井 汐桜香
ファンタジー
子猫の私は、おかあさんと兄弟たちと“かいぬし”に怯えながら、過ごしている。ところが、「柄が悪い」という理由で捨てられ、絶体絶命の大ピンチ。そんなときに、陛下と呼ばれる人間たちに助けられた。連れていかれた先は、王城だった!?
「伝わって! よく見てこれ! 後ろから攻められたら終わるでしょ!?」前世の知識を使って、私は国を救う。
そんなとき、“かいぬし”が猫グッズを売りにきた。絶対に許さないにゃ!
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました
たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。
「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」
どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。
彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。
幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。
記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。
新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。
この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。
主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。
※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる