1 / 1
甲斐性無し王子と共働き聖女
「これをもってアイル第ニ王子と聖女ルーナの婚約が成立した。二人とも、王子として聖女として今後ますますの活躍を期待しているぞ」
王宮の謁見の間。
玉座に座った国王の前に立つアイル王子と聖女ルーナが「……はい」と渋々頷いた。
そんな二人の様子に頓着せず、左右に並ぶ見届け人の貴族たちが異例の王子と平民聖女の婚約に祝福の拍手をする。
「なんでこんな平民と!」
アイル王子の呟きにしては大きすぎる声は皆に聞こえないふりをされるが、一人だけ
「あなたが甲斐性無しだからです」
と答える声がした。
たった今婚約した聖女ルーナだ。
さすがに皆の拍手が止まる。
「甲斐性無しとは何だ!」
ルーナに詰め寄るアイル。
「結婚しても妻を働かせないと食べていけない旦那様を、世間では甲斐性無しと言うんですよ?」
平民の私でさえ知ってるのに、そんな事も知らないのかという目で答える聖女に、
「意味を聞いているのでは無い! 私のどこが甲斐性無しなのだ!」
と、怒るアイル王子。
「私、王子様と結婚できるって聞いて、やっと血まみれゲロまみれの職場から寿退職できると思ったんです……。なのに、結婚しても聖女を続けなくちゃいけないなんて……。共働きしなくちゃいけないくらい王子が薄給だったなんて……」
聖女とは、傷や病を治癒する聖魔法が発現した女性の事。
五年前に20年ぶりの聖女となった平民のルーナは、只今18歳。周りの友人たちが次々と結婚していくお年頃なのに、自分は連日治療所に医者では手に負えない病人と怪我人が運び込まれてオーバーワーク。怪我人の傷口から噴き出す血にまみれ、意識の混濁した病人の吐いたゲロをかぶる日々。
「さっさと寿退職したいー!」が口癖となるのもむべなるかなだった。
国唯一の聖女に退職されては困ると国王たちは第二王子との婚約を決めたのだが、ルーナの脳内はとことん平民であった。
「何を言う! 貴様には天から与えられた聖魔法があるのだから、それを使うのは聖女の義務であろう」
「じゃあ、殿下と結婚する必要は無いでしょう? ただの聖女から共働きの聖女って、家事や育児などの仕事が増えるだけじゃないですか!」
いや、聖女を退職させないための結婚だから、と全員が思っているが口には出さない。
「貴様は……、私と婚約出来て光栄ではないのか?」
「何が光栄なんですか。貴族の御令嬢に共働きなんて出来ないから平民の私になったんでしょう?」
「そ……そうなのか……?」
違います、とは誰も言えず、肯定されたとショックを受けるアイル王子。
「そもそも、王子ってどんな仕事をしてるんです? 私の父さんは大工をしながら母さんと私たち三人の子を養ってくれましたよ」
「ほう、大工とは給金がいいのだな」
「重い物を持ったり、高い所に上ったり、大変な仕事ですから。でも、見習い時代は給金が安くて……ああっ!」
ルーナが気付いた。
「そうか……。“王子”は“国王”の見習い。だから給金が少ないのね」
「なるほど。……だが、国王になるのは兄だ。私は……一生見習いなのだ……」
しょんぼりしたアイル王子にきゅんと来るルーナ。
「し、仕方ありませんね。私は手に職がありますから働いて助けてあげます」
「そうしてくれるか」
「で、でも、殿下も家事を覚えてくださいね。私が産休の時は殿下がするんですからね」
「かじとは何だ?」
「そこからですか!」
無事に聖女の続行が決まって安心した国王たちが、一人、また一人と謁見の間を去っていくのに気付かず話し続ける二人だった。
王宮の謁見の間。
玉座に座った国王の前に立つアイル王子と聖女ルーナが「……はい」と渋々頷いた。
そんな二人の様子に頓着せず、左右に並ぶ見届け人の貴族たちが異例の王子と平民聖女の婚約に祝福の拍手をする。
「なんでこんな平民と!」
アイル王子の呟きにしては大きすぎる声は皆に聞こえないふりをされるが、一人だけ
「あなたが甲斐性無しだからです」
と答える声がした。
たった今婚約した聖女ルーナだ。
さすがに皆の拍手が止まる。
「甲斐性無しとは何だ!」
ルーナに詰め寄るアイル。
「結婚しても妻を働かせないと食べていけない旦那様を、世間では甲斐性無しと言うんですよ?」
平民の私でさえ知ってるのに、そんな事も知らないのかという目で答える聖女に、
「意味を聞いているのでは無い! 私のどこが甲斐性無しなのだ!」
と、怒るアイル王子。
「私、王子様と結婚できるって聞いて、やっと血まみれゲロまみれの職場から寿退職できると思ったんです……。なのに、結婚しても聖女を続けなくちゃいけないなんて……。共働きしなくちゃいけないくらい王子が薄給だったなんて……」
聖女とは、傷や病を治癒する聖魔法が発現した女性の事。
五年前に20年ぶりの聖女となった平民のルーナは、只今18歳。周りの友人たちが次々と結婚していくお年頃なのに、自分は連日治療所に医者では手に負えない病人と怪我人が運び込まれてオーバーワーク。怪我人の傷口から噴き出す血にまみれ、意識の混濁した病人の吐いたゲロをかぶる日々。
「さっさと寿退職したいー!」が口癖となるのもむべなるかなだった。
国唯一の聖女に退職されては困ると国王たちは第二王子との婚約を決めたのだが、ルーナの脳内はとことん平民であった。
「何を言う! 貴様には天から与えられた聖魔法があるのだから、それを使うのは聖女の義務であろう」
「じゃあ、殿下と結婚する必要は無いでしょう? ただの聖女から共働きの聖女って、家事や育児などの仕事が増えるだけじゃないですか!」
いや、聖女を退職させないための結婚だから、と全員が思っているが口には出さない。
「貴様は……、私と婚約出来て光栄ではないのか?」
「何が光栄なんですか。貴族の御令嬢に共働きなんて出来ないから平民の私になったんでしょう?」
「そ……そうなのか……?」
違います、とは誰も言えず、肯定されたとショックを受けるアイル王子。
「そもそも、王子ってどんな仕事をしてるんです? 私の父さんは大工をしながら母さんと私たち三人の子を養ってくれましたよ」
「ほう、大工とは給金がいいのだな」
「重い物を持ったり、高い所に上ったり、大変な仕事ですから。でも、見習い時代は給金が安くて……ああっ!」
ルーナが気付いた。
「そうか……。“王子”は“国王”の見習い。だから給金が少ないのね」
「なるほど。……だが、国王になるのは兄だ。私は……一生見習いなのだ……」
しょんぼりしたアイル王子にきゅんと来るルーナ。
「し、仕方ありませんね。私は手に職がありますから働いて助けてあげます」
「そうしてくれるか」
「で、でも、殿下も家事を覚えてくださいね。私が産休の時は殿下がするんですからね」
「かじとは何だ?」
「そこからですか!」
無事に聖女の続行が決まって安心した国王たちが、一人、また一人と謁見の間を去っていくのに気付かず話し続ける二人だった。
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
使い捨て聖女の反乱
あんど もあ
ファンタジー
聖女のアネットは、王子の婚約者となり、瘴気の浄化に忙しい日々だ。 やっと浄化を終えると、案の定アネットは聖女の地位をはく奪されて王都から出ていくよう命じられるが…。 ※タイトルが大げさですがコメディです。
婚約破棄のお相手は
あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、ギリアム王子が平民の婚約者に婚約破棄を宣言した。
幼い頃に「聖女では」とギリアムの婚約者として引き取られたものの、神聖力が発現しなかったロッティナ。皆は婚約破棄されるのも当然だと思っていたが……。
精霊姫の追放
あんど もあ
ファンタジー
栄華を極める国の国王が亡くなり、国王が溺愛していた幼い少女の姿の精霊姫を離宮から追放する事に。だが、その精霊姫の正体は……。
「優しい世界」と「ざまあ」の2バージョン。
卒業パーティーのその後は
あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。 だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。
そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。
神様が怒っています、と理系聖女は言った
あんど もあ
ファンタジー
瘴気が発生したある国が、異世界から聖女を召喚した。現れたのは、不機嫌な顔をした眼鏡をかけて薄汚い白衣を着た女性。『聖女のイメージと違う……』内心がっかりの人たちに、聖女は言った。「神様が怒っています」
神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない・完結
まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。
【本日付けで神を辞めることにした】
フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。
国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。
人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
アルファポリスに先行投稿しています。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!