「おまえを愛する事は無い」が最期の言葉でした

あんど もあ

文字の大きさ
3 / 4

しおりを挟む
 間もなくして、全力疾走した門番が帰ってきた。
「王様だ! 国王様が何十人もの騎士団と来た!!」

 あたしたちは硬直した。

「ど……どうしたらいいんだい?」
 ファランクスに聞いても答えられない。だろうね、王様の接待なんてしたことないんだろ。
「アニータ! 急いでジェラルミン侯爵に知らせて! ファランクス! 王様を応接室に案内だよ!」
 あたしだって分からないから他の人にやらせる。
 名指しされた二人があたふたと動き出した。

 しかし、応接室を掃除したのって何年前だろう。どうせ客なんて来ないからとずっとほっといたんだけど……。
「埃が積もってて不敬と言われたら、メイドの責任だからね」
 それを聞いてメイドたちの顔色が変わったが、あたしには関係無い。


 ファランクスに案内されて王様と二人の護衛が応接室に入り、すぐに必死に駆けてきたジェラルミン侯爵が入室する。
 部屋から出されたファランクスと、話が気になるあたしたち使用人は、全然声が漏れてこないドアの前でたたずむしか無かった。


 そこに、軽い足取りでフレイアが来た。
 皆が応接室のドアを見ているので「ここにいらっしゃるのね?」とドアをノックしようとするので、慌てて止める。
 
「いいのよ。伯父様が私を迎えに来たのはわかっているから」
「伯父様……?」
「私の母は国王の妹よ。母がリロイ伯爵家に降嫁したのはあなたたちが生まれる前なので、知らなかったみたいだけど」
「あ、あんたが……?」
「ええ。だから王命の結婚なのよ。国王の姪がこの家に潜り込むために」
 な、なんか話が大きくなってきた……?

「女にのめり込んで、国力になるどころか使用人たちにいいように食い物にされてる腐り切ったジェラルミン侯爵家。本来なら、忠告して改善を促すべきなのでしょうが、国はその価値は無いと判断しました。だから侯爵家を潰す事にしたのよ。国民の娯楽になるくらい派手に」
 潰す……?

「そのために私が来たの。不正の証拠も手に入れたから、今ごろは領地の執務官たちも粛清されてるわ」
「……あんた、どうやって王様に連絡を取ったんだ? 手紙は全部握り潰したのに」
「ああ、手紙はダミーですわ。手紙を書いていれば、あなたたちは『手紙しか連絡方法が無い』って思い込むでしょう? 実際は私について来た王家の影が全て報告してましたの」
 必要も無い手紙を何通も書くのは大変でしたのよ、と楽しそうに笑うこの女は本当にあのフレイアなのか?
 
「私の役目は、ジェラルミン侯爵家を徹底的に叩き潰す事。無能なジェラルミン侯爵だけでは無く、厚顔無恥な全ての使用人も地獄に送るの」
 笑顔で何て事を言ってんだ。

「そのための王命の結婚でしたのに、誰も不審に思わなかったのですね。田舎貴族の私が侯爵に一目惚れしたなんて話を鵜呑みにして」
 鵜呑み。そもそも、誰がそんな事を言ったんだっけ……?
 あたしたちは最初から踊らされていたのか。

「何故、一人くらいリロイ伯爵家が本当に田舎貴族か確認しなかったの? リロイ伯爵夫人が国王の妹だなんてすぐに分かったのに」
 ああ、虫けらを見るようなこの目は知ってる。いや、何故忘れてたんだ? 貴族にはあたしたちなんて虫けらだって事を。

「あなたたちは、最後のチャンスをドブに捨てました。私を侯爵夫人として扱えば横領罪だけなので労働刑ですんだのに、あなたたちは国王の姪であり王位継承権を持つ私を虐待しました」
 キーンと音がしそうなほど、沈黙が落ちる。

「みなさんは、国家反逆罪で死刑です」


 え………………?
「五年も甘い汁を吸ったので心残りは無いでしょう? でもご存知? 国家反逆罪って、家族も連座で処刑されますのよ」
 そんな、弟や妹たちが……。

「そ、そんな事、ジェラルミン侯爵が許さないよ!」
 彼が、レナと仲が良いあたしたちを見捨てるものか!
「そうそう、何故かジェラルミン侯爵と私は結婚していないので、これは夫婦の問題では無く、ジェラルミン侯爵が客人のリロイ伯爵令嬢であり国王の姪を監禁して虐待したという事になりますの。彼も極刑は免れないでしょうね」
 あなた達に救いの手を差しのべる人はいない、とほのめかす。
 ファランクスは本当に結婚届を出さなかったんだ。

「庭師のあなた、三ヶ月前に結婚したばかりですよね。お二人の愛は本当に『永遠の愛』になりそうですわ」
「洗濯メイドのあなたのお子さんは三歳と五歳とか。可愛い盛りなのに哀れなこと」
「処刑場には、いったいいくつの首が並ぶ事になるんでしょうねぇ」
 他人事のように楽しそうに話すフレイア。
 そうか、これが「国民の娯楽」か。あたしたちは、愚かな犯罪者として処刑場に首を晒すんだ。

「か、家族は関係無いだろう!」
 誰かが血を吐くような声で言ったが
「あら、ゼニアさんのご家族は『もっとやれ』と言ってたそうですわ」
と、あっさり返されてしまう。 

 全員の目が私に突き刺さる。あんたたちだって楽しんでたくせに!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約を奪った義妹は王太子妃になりましたが、王子が廃嫡され“廃嫡王子の妻”になりました

鷹 綾
恋愛
「お姉様には、こちらの方がお似合いですわ」 そう言って私の婚約者を奪ったのは、可憐で愛らしい義妹でした。 王子に見初められ、王太子妃となり、誰もが彼女の勝利を疑わなかった――あの日までは。 私は“代わり”の婚約者を押し付けられ、笑いものにされ、社交界の端に追いやられました。 けれど、選ばれなかったことは、終わりではありませんでした。 華やかな王宮。 厳しい王妃許育。 揺らぐ王家の威信。 そして――王子の重大な過ち。 王太子の座は失われ、運命は静かに反転していく。 離縁を望んでも叶わない義妹。 肩書きを失ってなお歩き直す王子。 そして、奪われたはずの私が最後に選び取った人生。 ざまあは、怒鳴り声ではなく、選択の積み重ねで訪れる。 婚約を奪われた姉が、静かに価値を積み上げていく王宮逆転劇。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

私ってわがまま傲慢令嬢なんですか?

山科ひさき
恋愛
政略的に結ばれた婚約とはいえ、婚約者のアランとはそれなりにうまくやれていると思っていた。けれどある日、メアリはアランが自分のことを「わがままで傲慢」だと友人に話している場面に居合わせてしまう。話を聞いていると、なぜかアランはこの婚約がメアリのわがままで結ばれたものだと誤解しているようで……。

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

真実の愛は水晶の中に

立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。 しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。 ※「なろう」にも重複投稿しています。

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

そこまで幼馴染が好きというなら、どうぞ幼馴染だけ愛してください

睡蓮
恋愛
リューグ伯爵はソフィーとの婚約関係を結んでいながら、仕事だと言って屋敷をあけ、その度に自身の幼馴染であるマイアとの関係を深めていた。その関係は次第に熱いものとなっていき、ついにリューグ伯爵はソフィーに婚約破棄を告げてしまう。しかしその言葉こそ、伯爵が奈落の底に転落していく最初の第一歩となるのであった。

悔しいでしょう?

藍田ひびき
恋愛
「済まないが、君を愛することはできない」 結婚式の夜、セリーヌは夫であるシルヴァン・ロージェル伯爵令息からそう告げられた。 メロディ・ダルトワ元男爵令嬢――王太子を篭絡し、婚約破棄騒動を引き起こした美貌の令嬢を、シルヴァンは未だに想っていたのだ。 セリーヌは夫の身勝手な言い分を認める代わりに、とある願い事をするが…? 婚約破棄騒動に巻き込まれた女性が、ちょっとした仕返しをする話。 ※ なろうにも投稿しています。

処理中です...