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「それは嘘です! 嘘って言うか、団長が流した噂です! 何で王都の人まで知ってるんですかー!」
ディアナが頭を抱える。
「私なんかが最強のわけ無いでしょう…。私なんて、騎士団の一番下っ端、見習いですよ。それも家柄のおかげのコネ入団」
体力作りのために騎士団の運営している無料の剣術教室に通っていたら、公爵令嬢とバレて見習いとして入団となったそうだ。
「魔獣が離れた町に現れて遠征に行く時、公爵令嬢がいたら、地元の権力者に『うちの畑には入らずに魔獣を討伐しろ!』とか言われても、『控えおろう! こちらに御座すお方をどなたと心得る! アンデラス公爵家の姫であられるぞ!』と言えば平伏するさ」
という、騎士団長の思惑によって。苦労してるんですね……。
「ところが、意外なところで私が役に立ったんです」
遠征先で、見るからに騎士団の下っ端の女の子が井戸で夕飯作りのための水を汲んでいると、周りで洗濯をしていたおかみさんたちが、強面の騎士にわざわざ言うほどでは無いけど、と気軽に話しかけてくる。
「リンダの家じゃあ、横にヤギがいたのに鶏が食べられたんだってさ。ヤギの方が食べがいがありそうなのにね。あの家のやつらは捻くれてると思ったら、あの家に来る魔獣まで捻くれてるわぁ」
「うちの息子ったら、木の幹に残ってた魔獣の長い毛と鱗を取っておくのよ。男の子って何でああいうのが好きなのかしら」
「そろそろ家畜を家畜小屋に入れないと。まだ明るいけど、魔獣が現れるのって暗くなりかけの夕方なのよ」
「この前来た冒険者は、足跡の大きさからまだ子供じゃないかと言ってたわね」
ヤギより鶏を好み、長毛で鱗があり、夕方に活動。子供なら、近くに兄弟がいるかもしれない。
ディアナのもたらした情報に魔獣の種族が推察出来て騎士団は喜び、「もうちょっと村を散歩してこい」とディアナを放り出し、数時間後、更なる情報とお土産にもらった野菜を抱えてディアナが帰って来た時、騎士団の皆は思った。
「女性騎士を増やそう!」
情報量が対策を生み、騎士団の生存率に直結しているのだ。躊躇する必要など無い。
「それで……、赤の女神が既に活躍している騎士団、という設定にして女性騎士を募集しているんです」
まるで、「当社は、女性管理職のいる、女性が働きやすい会社です!」と宣伝している会社みたいなやり口だが、この求人は、学が無くて仕事に就けない女性、持参金が用意できなくて結婚が出来ない女性に新しい生きる道を示した。
今、剣術教室にはたくさんの女性が入会し、騎士団を目指している。
「だから噂をほっといたのに……。尾ひれがついて広まってるなん…てっ!!」
上着の内側に手を入れたディアナは、一瞬でナイフを投げてルチーナの後ろにすり寄って来た侍女服の女性の右腕を切り裂いた。女性の握っていた折り畳みのナイフが落ちる。
「陽動だ!! 持ち場を離れるな!」
女性を取り押さえに行こうとした王子の護衛に指示を投げて、ディアナは素早くアーロンの後ろに回り込んで、アーロンにナイフを振りかざそうとした生徒の父兄のような男の腹に思いっきり蹴りを入れた。吹き飛ばされる男。
アンデラス騎士団の一番下っ端……? 最強ではない……?
いや、立派に赤の女神でしょ。
もしかして、騎士団は成人しないと正式入団出来ないって知らないのでは……?
もう何度目かの、皆の気持ちが同じくなった瞬間だった。
ディアナが頭を抱える。
「私なんかが最強のわけ無いでしょう…。私なんて、騎士団の一番下っ端、見習いですよ。それも家柄のおかげのコネ入団」
体力作りのために騎士団の運営している無料の剣術教室に通っていたら、公爵令嬢とバレて見習いとして入団となったそうだ。
「魔獣が離れた町に現れて遠征に行く時、公爵令嬢がいたら、地元の権力者に『うちの畑には入らずに魔獣を討伐しろ!』とか言われても、『控えおろう! こちらに御座すお方をどなたと心得る! アンデラス公爵家の姫であられるぞ!』と言えば平伏するさ」
という、騎士団長の思惑によって。苦労してるんですね……。
「ところが、意外なところで私が役に立ったんです」
遠征先で、見るからに騎士団の下っ端の女の子が井戸で夕飯作りのための水を汲んでいると、周りで洗濯をしていたおかみさんたちが、強面の騎士にわざわざ言うほどでは無いけど、と気軽に話しかけてくる。
「リンダの家じゃあ、横にヤギがいたのに鶏が食べられたんだってさ。ヤギの方が食べがいがありそうなのにね。あの家のやつらは捻くれてると思ったら、あの家に来る魔獣まで捻くれてるわぁ」
「うちの息子ったら、木の幹に残ってた魔獣の長い毛と鱗を取っておくのよ。男の子って何でああいうのが好きなのかしら」
「そろそろ家畜を家畜小屋に入れないと。まだ明るいけど、魔獣が現れるのって暗くなりかけの夕方なのよ」
「この前来た冒険者は、足跡の大きさからまだ子供じゃないかと言ってたわね」
ヤギより鶏を好み、長毛で鱗があり、夕方に活動。子供なら、近くに兄弟がいるかもしれない。
ディアナのもたらした情報に魔獣の種族が推察出来て騎士団は喜び、「もうちょっと村を散歩してこい」とディアナを放り出し、数時間後、更なる情報とお土産にもらった野菜を抱えてディアナが帰って来た時、騎士団の皆は思った。
「女性騎士を増やそう!」
情報量が対策を生み、騎士団の生存率に直結しているのだ。躊躇する必要など無い。
「それで……、赤の女神が既に活躍している騎士団、という設定にして女性騎士を募集しているんです」
まるで、「当社は、女性管理職のいる、女性が働きやすい会社です!」と宣伝している会社みたいなやり口だが、この求人は、学が無くて仕事に就けない女性、持参金が用意できなくて結婚が出来ない女性に新しい生きる道を示した。
今、剣術教室にはたくさんの女性が入会し、騎士団を目指している。
「だから噂をほっといたのに……。尾ひれがついて広まってるなん…てっ!!」
上着の内側に手を入れたディアナは、一瞬でナイフを投げてルチーナの後ろにすり寄って来た侍女服の女性の右腕を切り裂いた。女性の握っていた折り畳みのナイフが落ちる。
「陽動だ!! 持ち場を離れるな!」
女性を取り押さえに行こうとした王子の護衛に指示を投げて、ディアナは素早くアーロンの後ろに回り込んで、アーロンにナイフを振りかざそうとした生徒の父兄のような男の腹に思いっきり蹴りを入れた。吹き飛ばされる男。
アンデラス騎士団の一番下っ端……? 最強ではない……?
いや、立派に赤の女神でしょ。
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もう何度目かの、皆の気持ちが同じくなった瞬間だった。
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