私は私で幸せになりますので

あんど もあ

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 フランツの家には、王立学園の三年生の夏の長期休暇の時に挨拶に訪問させてもらいました。
 王都から遠く離れた所に嫁いでくれる嫁をよくフランツが見つけた! と大歓迎でした。

 私とフランツが結婚後に住む事になる「離れ」は、私の「離れ」のイメージとはかけ離れた大きさの邸宅でした。先々代が隠居するために建てたそうです。
「王都と違ってここは土地がいくらでもあるから」
と言われましたが、そういうものでしょうか?

 市場では、王都では襟や袖にちょっと使うだけで大金がふっ飛ぶ毛皮が無造作に売られていて驚きました。
「ここじゃあ貴重じゃないんだよ。毛皮が欲しかったら自分で狩るからね」
 私の婚約者はワイルドでした。

 だから、家族で夕食をいただいていた時に彼の妹が
「私も王都に行きたいわ。素敵な人にめぐり逢いたい!」
と言った事に
「フランツを見慣れていたら、王都の男性は物足りないと思いますわ」
と、答えてしまったのです。

「わあ……、私、おのろけって初めて聞きましたわ」
 赤くなった彼女に、私がいつのろけたの!?、と必死に頭を巡らせて、気付きました。

 王都の男性は軽佻浮薄な人が多いので、毛皮が欲しかったら自分で狩るようなフランツを見慣れてたら物足りないのでは?、というつもりで言ったのに、「王都にはフランツ以上の男性はいませんわ」って言ったみたいになってる!

 フランツも赤くなって、控えてる使用人たちにも温かい目で見られて、居たたまれなくなって
「今のは無し!」
と叫んでしまい、部屋は大爆笑に包まれました。

 でも、それからフランツのご両親の雰囲気が柔らかくなった事に気付きました。
 きっと、私の事を調べて、次女を「予言姫」と盲信している子爵家の長女と知って、どんな娘が息子をたぶらかしたんだと心配してたのでしょう。
 いいご両親ですね……。
 
 私がご両親に好意を持っている事は相手にも伝わり、私とフランツの家族はとても仲良くなれました。
 

「兄さんたら、オーレリー姉様が『自分と二人だけで冬を過ごすために家事を習っている』って自慢して大変なんだよ」
「やだ! フランツったら皆に話したの?」
「お兄様は嬉しいんですわ」
「もう……」

 家事を習い始めたのは、確かに最初は使用人たちを家族と冬を過ごさせるためでした。でも、「使用人がいないという事は、二人っきり?」と気づいてますます気合が入りました。メイドたちもそれに気付いて、張り切って私を指導してくれたのでした。
 二人っきりだなんて、そんなままごとのような生活が出来るなんて、自分が貴族だと自覚した時から諦めていた事が出来るだなんて。
 だからフランツが「帰省してオーレリーの毛皮を作るために狩りをして来た」と言った時、私も実は……と話してしまったのです。


「家事を習ったと言っても、まだヒヨコですわ。きっと失敗して『助けてお義母様~!』と雪を掻き分けながら本邸に駆け込む事になりますわよ」
「オーレリーなら大歓迎よ!」
 笑いが起こる。

「ローム家の皆さん」
 フランツのお父さまが口を開きました。
「素晴らしいお嬢さまを私共の息子に託してくださり、感謝いたします」

「い、いえ、こちらこそ!」
 お父様は、寒い田舎に嫁いで苦労すると思ってた娘が、幸せそうに嫁ぎ先の家族と和気あいあいとしてるのが理解出来ないようです。

 私の家族が戸惑っている間に、教会の案内の人が式の時間だと迎えに来ました。




 皆が式場に入り、私とお父様だけが閉じられた扉の前で扉が開くのを待っています。

「オーレリーは、私たちを恨んでいるのか……?」

 あまりに見当違いな言葉に驚きました。

「恨みなんてありませんわ。私は、私を大切にしてくれる家族と、私を一番に愛してくれる男性を手に入れた、この上ない幸せ者です」


 扉が開き、私は式場へ足を踏み出しました。
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